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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/13(金)投稿予定です。
「全く!!なんって事を言ったのよ!?」
「すみません!すみませんっ!」
え?・・・なんだこんな朝早くに。
翌朝早朝、騎士団の執務室から怒声が聞こえ、ぴたりとその扉の前で足を止めた。
ラオル・フィリジスト。ここで勤務している騎士の1人であり、副隊長を担っている人物である。
さっきの怒声・・・タルネだよな?謝っている女の声はハイネだったな・・・あいつ、また書類でヘマをしたのか?
数回に一回は何かしらトラブルを起こす最早彼女の体質のせいではないかと思っているぐらい何かをしているのでラオルはそう考える・・・が。
でも、あんなに怒るタルネも珍しいよな?
声からしてひどく立腹状態の彼女に首を傾げる、彼女はどちらかといえば怒りはするがそれとなしに諭し、そしてフォローしていることが多い。
それならこんなに怒っているのはまずい案件だよなぁ・・・あぁ、折角今から朝飯行こうって思ってたのによ。
出来ることならこのまま素通りしたいがそうも言ってられない。
翡翠の色の頭を乱暴にかいて一呼吸、ラオルは部屋へノックなしに入った。
「おいおい、廊下まで聞こえてんぞ?一体なんの・・・って!おいどうしたんだよハイネ?!なんでそんなに泣いてんだよ?!」
「っう〜 副隊長ぉぉ〜〜。」
泣きはらした目でこちらを見上げてきたハイネを見て、ラオルはこれは自分が思っていた以上に面倒事だと瞬時に悟る。
「・・・おい、こいつが泣くほどって何があったんだよタルネ。」
唯一事情を知り且つ話せられる彼女の方を向くと、タルネはその翡翠の瞳をジッと見つめた後、怒りを鎮めるように深いため息を吐き、観念したように口を開いた。
「この子が彼の子に隊長の婚約者だとか抜かしたんですよ。」
「なっ!お前それ駄目なやつ!?」
言われてすぐに理解したラオルは狼狽する。
「お前、サディアに殺されたいのか?!」
「私そんな自殺願望ないですよぉぉ!」
そう言ってわんわん泣き出したハイネにラオルは何がどうなってそう言う事になったのかわからず混乱していると見かねたハイネが説明をする。
「この子、自分が婚約者とかぬかせば、ティティが焦って何か事を起こすと思ったんですって。」
「お前それ・・・小説の見過ぎだろう・・・いくらサディアの事を知っているからってそんな小説展開あるわけないだろうに、学生の頃から夢見がちだぞ。」
そう、彼らはサディアとは学友からの付き合いであり友人関係でもある。
しかもタルネに至ってはサディアとは従兄弟同士でもあった。
つまりここにいるメンバーは少なからずサディアと彼女ティティルリアの関係を元々知っている故に、ハイネがしでかした事に誰もが信じられないと非難した。
「だって、あれだけサディア先輩が気にかけているならティティルリアさんだってそう思ったんですぅ!」
「・・・もう何から突っ込んでいいのか分からないわ。言っとくけどティティは何も思ってないわよ、むしろ話す機会がなくなってよかったって思っているわ。あの子の貴族嫌いを作ったのはサディア本人だって何度も言っていたのに・・・。」
「・・・あ、そうでした〜どうしよぅお兄ちゃんにも殺されるぅ。」
「今更思い出すのかよ・・・おい、このままだとまずいぞ?どうすんだよ。」
「私だって知らないわよ、あぁもう!サディアはサディアで暴走してるっていうのに。」
さりげなく接触しろって言ってもあんな過剰に接触して・・・どう考えても変に思うって言ってるのに!それでも
辞めないし!
「そういえばサディアはまだ来ていないのか?」
「来てないわよ?」
「あれ?おかしいな・・・俺より大分前にシャワールームから出て行ったんだけどな・・・。」
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「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
ラオルがそんな事を呟いていた同時刻、サディアとティティルリアは黙ったまま見つめあっていた。
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