2 黒髪ぱっつんは主人の趣味? 違うから
荘厳な玉座の間。
その作りは何処か陰鬱で、じっとりとした嫌らしさを感じさせる。
そんな人魔最終決戦の場には、剣戟の音に、破裂音。
瓦礫と砂埃が舞う。
戦いはすでに始まっているようだ。
「死ねぇ! 無限暗黒魔法、ヘルイグニシオン!!」
「なんの! 来い! 聖剣、イクスキャリバー!!」
「くらいなさい! 極大神聖魔法、リトリビュージョン!!」
「まままっ待って!! ここでそんな盛大に喧嘩したら!! あぁぁぁぁぁーー! 俺死んじゃうからぁぁぁぁ!!」
「あぁぁぁぁあああああーーーー!!!」
ジリアードは布団を跳ね上げ飛び起きた。
またあの夢。僕が、俺だった頃の、死んだ夢。
あ、ジリアードって、僕の事ね。
今世ではずいぶん立派な名前をもらったもんだよ。
わかる? そう、生まれ変わりってやつね。
巷では生まれ変わって前世の知識を使って大冒険! なんていう冒険小説が溢れてるもんね。
生まれ変わりものって言えば、だいたい察してくれるでしょ?
「マスター、大丈夫?」
んで、朝っぱらから僕に跨って下履きを脱がそうとしてるやつが、我が家で雇ってる侍女。
「クロエ、おはよう。とりあえず、そこ退こうか」
「マスターの朝の、処理は、奴隷の役目」
違う、侍女だから。奴隷じゃないから。
あと、僕はもっとこうメリハリの効いた女性が好みであって、つるペタ幼女はお呼びじゃないのよ。
まだ朝処理が必要な年でもねぇよ。こちとらぴちぴちの十ニ歳ですよ。え? 人による? だよね。
「マスター、着替え」
「うん、自分で出来るから、クロエは自分の仕事しなさい?」
僕はクロエを自室から追い出す。
そうなの、あの子、別に僕付きの侍女とかじゃないの。
普通男には男の使用人がつくものでしょ? でもね、朝になってもそいつ来ないの。
そんでもって何故かクロエが部屋にいるの。夜這いならぬ朝這いかけようとすんの。
え、鍵は? なんなの? 恐いんだけど。
仕方なく一人で着替えをする。
一通り自分で出来る様になっちゃったよ。理由はお察しだよ。
伯爵ぞ? 僕、伯爵令息ぞ?
でだ、前世ね、前世。僕が俺だったとき。
何してたかって言うと。
『遊び人』してました。
は? って思ったでしょ。ねぇ今、は? って思ったでしょ?
いやほんと、遊び人ってのは立派な職業なんですよ。
そんでもって僕は勇者パーティーに所属してたの。
凄くない?
主な仕事内容は、そうだなぁ。
ナンパしたり、カジノ行ったり、おねえさん買ったり?
あと、お酒飲んだり、奴隷市場冷やかしたり、あ、コロシアムで賭けもしたなぁ。あれ楽しかったな。血湧き肉躍るっていうの?
まぁ僕は肉体労働しない派だからさ、そう言うのは観る専だったんだけど。けっこう稼いだよ。
なにせ遊び人。運がいい。
賭ければ賭けるだけ金になる。
僕のおかげで勇者パーティーはそこそこいい旅できたってわけ。
まぁ、勝手にお金持ち出して全額スッて怒られた事もあったけどね。
総合的な収支で言えばプラス……だと思う多分きっとめいびー。
そんな僕、運がいい遊び人のくせに、何故か女運は悪かった。
いやそこまで悪くはなかったと思うんだ。ワンナイトの成功率だって九割は行ってたよ。
残りの一割がやばかったんだよ。
ほんとに、死ぬかと思……いや、死んだんだったわ。
最終決戦の地、魔王城で僕を巡ってキャットファイト繰り広げるなんて、誰が予測出来たよ!!
僕の防御力五よ?!
ファイブ!! わかる?
普段最後尾でヘラヘラ踊ってるような奴が、世界トップスリーの戦闘しのげると思う?
無理でしょ!!
どうにかしろって前衛に連れてこられてあんなん見せられたって、どうにも出来ねぇっつーの!!
ちょっとかすっただけで爆発四散。ちーん。
おお遊び人よ、死んでしまうとはなさけない。
じゃねーよ!!
なんなの? お前なんなの!? え? 神様?
情けなさすぎるから平和になった未来に生まれ変わらせてやる?
まじで?
とまぁこんな感じで生まれ変わったわけよ。
はぁ、ちょっとスッキリしたわ。聞いてくれてありがと。
ちょうど身支度も済んだので学校行こうかね。
僕も貴族の端くれですから、王立学園なんて立派なとこに通ってるわけですよ。
玄関で見送りしてくれる君はあれだね、僕付きの侍従だね。
なんで見送ってんのかな? んでもってしれっとクロエが一緒に魔動車に乗り込んでくるのなんでかな? 君ら立ち位置逆だよね?
行ってらっしゃいませって、光なくした目で見送らないでくれる!?
恐いんだけど!
我が家の使用人達が段々と濁った目になってくの、ほんと恐いんだけど!
クロエさん、聞いてる?!
あとクロエ今更かもしれないけど、君普通に制服着てるね。一応ボンボンが通う学校なんだよ?
君元ストリートチルドレンだよね、いや、差別するつもりじゃないんだけどさ、学力とかさ、そもそも学費は?
え? 父上が出してる? あーそうですね! 父上の目濁ってますもんね!!
それからそれから、そのスカート丈なんとかならない?
短すぎるよ? それ街角に立ってるおねえさんが着てる丈だからね?
クロエが奴隷だなんだって言うから、僕の評判やばいんだからね?
わかってる? え? わざと?
ですよね!! 恐いんだけど!!
いつもの事だから、慣れたけどね!
慣れって恐いね!!




