1 生まれてきた事後悔しないって、今決めた
初連載。中長編。
よろしくお願いします。
「君、大丈夫?」
その言葉が、疲弊した体に染み渡る。
決して忘れない。大切な思い出。
しとしとと雨の降る夕暮れ。
閑静な貴族街から一段下がった商業区の一画。
そこから更に路地を進んだ先の汚れた路地裏。
大きな業を抱えた少女が蹲っていた。
黒髪。それはこの世界では忌み嫌われる色であった。
黒は魔族の色。邪悪な色。
赤い瞳も、恐れの対象であった。
ゆえに彼女は迫害され、親に捨てられた。
孤児院にも受け入れを拒否され、ストリートチルドレンになった。
盗み、詐欺、他のストリートチルドレンを踏台にして逃げ延びる生活。
彼女に希望はなかった。
そこに雨から逃れてきたのか、端正な少年が駆け込む。
冬の空を思わせる淡い青色の髪。瞬く瞳は琥珀のような金色。
平民の様な形をしているが、よく見ればその生地は質の良いものだとわかる。
貴族だろうか?
「怪我してるの?」
整った眉尻を下げ少年は問う。
少年と目があったその瞬間。
クロエの世界が開けた。
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自分は周りから浮いている。
兄が五人。由緒ある騎士の家系に生まれた彼女。
幼い頃より兄達について回った彼女は、毎日のように剣を握っていて、気づいた時には世間一般の令嬢像とはかけ離れていた。
沢山の貴族の子供達を集めたガーデンパーティー。
日焼けした肌に、短く切った茶色の髪。場違いなのは分かっていた。
だからってこんな、こんな扱いないと思う。
普段なら避けられた筈なのに、このふわふわのドレスでは動きが鈍る。
小さな淑女達の悪意により、彼女は泥だらけの濡れ鼠になった。
周りからくすくすと囁く声が聞こえる。
どんなに剣術が得意でも、数の暴力には勝てなくて、彼女はただ俯いてやり過ごすしかなかった。
不意に、手が引かれた。
顔を上げれば、少女の手を引く少年の背中が見える。
自分と同じくらいな背格好。パーティーの招待客だろうか?
「ごめんね、着替え、僕のしかないんだ。でも、風邪ひいちゃうよりマシでしょ?」
そう言って冬空色の髪の少年は、どこからともなく取り出した着替えを押し付け、少女を化粧室へ押し込んだ。
渡された着替えを抱きしめる。
この香りを、ノエリスは堪らなく愛していた。
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この国で最も高貴な存在として生を受けた。
最高峰の技術で磨かれた髪はきらきらと銀星に輝き。
愛らしい顔は全ての者を虜にする。
類稀なる癒しの力が、彼女を神聖視させる。
望んだもの全てが手に入る。誰もが羨む地位に、彼女はいた。
食事も、服も、アクセサリーも。その全てが一級品だ。
当然、施される教育もこの国一番のもの。
彼女の肩にはこの国の未来が乗っていた。
幼い彼女は臆病だった。
いつも険しい顔をしている父も、笑顔を常に貼り付けている母も。
きついひっつめ髪の教師も、金属音を鳴らす騎士達も。
その全てが、彼女を観察している。それがとても恐ろしかった。
そこは、小さな港町。
母に連れられて訪れた視察先で、彼女は迷子になった。
いや、逃げ出したのかもしれない。
このまま積荷に隠れれば、誰も自分を知らない場所に行けるだろうか。
そんな事を考えながら、ただぼーっと停泊した船を眺めていた。
「君、迷子?」
そんな彼女に声をかけてきた少年。
キラキラと輝く琥珀の瞳は、朝焼けの海の様に美しかった。
「泣かないで。一緒に家族を探してあげるから」
繋いだ少年の手は、フィリアナの奥に眠る、あの暖かな夜を思い起こさせた。
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シリアスさん、クランクアップでーす!
シリアス「お疲れ様デーっす」




