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どうか




「はいビンゴーー!!見ーつけたっ!!」


「ララリア!!大丈夫か!!!!」


 ハロルドとビトレイが扉を蹴り壊した教室内には、顔面蒼白のマリーナと、彼女の傍で倒れるララリアがおり、驚いた2人はすぐ彼女らの元へ駆け寄った。


「ララリア様!!!ララリア様!!!」


 マリーナがいくら呼び掛けても反応は無い。ララリアは既に意識を手放したようだった。


「ララリアが倒れてどれくらい経ちましたか?」


「え、えっと・・3分も経っていないと、思います。ララリア様・・どうして?」


 事態を呑み込めていないマリーナはうろたえるばかりであったが、ビトレイがマリーナを落ち着かせようと彼女の頭を優しくなでた。ビトレイに頭をなでられるとマリーナは深呼吸をし正気に戻る、という昔からの習慣は今も変わらない。


「マリーナ、落ち着いて?・・・まあ俺もビビってはいる訳だけど、とりあえず落ち着こうよ」


 ララリアが意識を手放した姿を初めて見るマリーナとビトレイの横で、ハロルドは魔力供給を始めようとしていた。とにかく手遅れにはならないよう、早く意識を呼び戻せるよう、手を絡ませそっと額をララリアのそれに寄せた。


「魔力供給なら俺がいくらでも引き受ける。ずっと傍にいる。だから、お願いだから、約束を守ってくれよ」


 そう呟きながら流れた魔力はしっかりとララリアの体内に渡り切り、魔力供給は終了した。しかし依然として目を覚まさないララリアを、ハロルドは慣れた様子で抱きかかえた。


「ラ、ララリア様はご無事なんですよね?」


 おろおろと話しかけたマリーナに対し、ハロルドは歩みを進ませながら答えた。


「今のところは、まあ大丈夫です。私は今からララリアを保健室に連れていきます。ロマンヌ嬢、それからビトレイ様も、一緒に来て下さい」


「え・・?は、はい・・」


 何故自分達が付いていく必要があるのか疑問に思う2人であったが、保健室に着き、アーケイン先生の話を聞く事でそれは解決した。


「つまり、ガーベル嬢の病弱な体質?を、マリーナであれば治せる、という事ですか?そしてその為には2人がもっと親密な仲になる必要があると?」


「その通りですな、ビトレイ君。君はロマンヌ嬢と親しいようですからな、彼女の傍にも事情を知る者がいた方がよろしいかと思いましてな。それで君にも同席してもらった次第ですな」


「なるほど」


「このままではララリアはあと4年で・・・。いや、もっと早いかもしれない。とにかく、急いでるんです。どうか、助けて下さい」


 これでもかという程真剣な表情で、極めつけに頭を下げて、ハロルドは協力を願い出た。それを目の前で受け止めたビトレイは困惑の表情を浮かべつつもマリーナに声を掛けた。


「俺に言われても、俺は何も出来ないですから・・。マリーナ!聞こえてたんでしょ?ガーベル嬢が心配なのは良く分かったから、こっちに来て返事をしてくれない?」


 保健室のベッドで気持ちよさそうに眠るララリアの傍から離れなかったマリーナが、ようやくパーテーションから出て来た。そしてすぐにハロルドとアーケイン先生に向かって勢い良く頭を下げた。


「ごめんなさい。協力は・・・できません」


 小さな声で、もごもごとした口調で、マリーナはハロルドからの提案を、拒否した。


「よく聞こえなかった。もう一度、返事をして頂けますか?」


 ハロルドの言葉に、マリーナは今度は彼の目を見て、しっかりとした声で、そしてはっきりとした口調で告げた。


「ごめんなさい。協力はできません」


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