交渉決裂
「……先ほどからのお前のその口調。あれが何なのか知っているのか」
「茨姫、お前らからすれば古代魔法の一つだ。」
「どういう性質のものだ?」
「引きこもり魔法だ。古代種の奴らが賢者の石などと称して私のまねごとをしたのと同じようなもの。ここではない異次元の世界に自分の理想の世界を構築し、その中で魂を捕え生きていく。自分にとって都合のいい夢を見続ける魔法。」
「それじゃ、あまり影響ないとか?」
「侑季を魔女に乗っ取られたままにしておけないだろ、」
流星の言葉に凛清は自分の失言を認め口をつぐむ。
「乗っ取られるままね。まぁ、とは言え古代種のそれよりももっと精度の低い魔法だ。代わりにその影響もデカいがな。」
「端的に分かりやすく説明しろ、」
「してくださいだろ。」
「……その気がないなら構わない。当初の予定通り消し飛ばす、もしくは切り倒すまでだ。軍曹、民間人の救出作戦を急がせろ!その後消し飛ばす」
『アステリアちゃん!!』
「頭の中で叫ぶな、あの魔法は中心の花が咲くと急成長をする。茨がこの島を覆い。さらに広がっていく。そうして魔力の供給源である人間を食らい続け自分の一部にする。そうして茨を広げ、やがて花粉のような微細な種を飛ばし海を渡る、それを吸い込んだ生き物もまたまた憑代となりやがて花を咲かす糧となる。そうして星の全ての命を飲み込み、星の全ての後は核となるあの小娘の世界を維持し続けるための糧とある。
あの花が魔力を食らって咲き続ける限り、あの子娘の夢は終わらない。」
「要は咲く前に片を付けろだな。あんたの助力を加味して、そうだな、20分。」
「嘘をつくな!余裕でもっと時間は稼げる!」
「俺は俺の仲間以上にお前を信用しない。お前の下限が百なら、百だ。」
「まぁ、兄者、そう言ってやるなよ。いいじゃねぇか、あの葬儀屋がこうも感情的に燃える展開じゃねぇか、好きにやらせれば。」
「その猶予は与えた。ここからは俺たちの時間だ。」
「まぁまぁ、どうだお前ら、こいつのダチだろ、お前らも手伝う気はないか?ダチのために命をかける気はないか。」
「馬鹿げた誘導をするな、」
「まぁまぁ、事は一刻を有する。だが、町にはまだ関係のない人間が多数いる、時間稼ぎは有効。利用する者は利用するだろ、兄者。確かに犠牲は仕方がない。そしてその犠牲の命重さも、選択の正しさも俺たちは知っている。だから俺らは兄者に従う。
その強さ、その信念に惚れた。兄者はいつだって正しい。
兄者はいつだって最善だ、でも俺らは、そうじゃない。
間違いを犯す、過ちを犯す。だからさ、こいつの心意気に今一つ賭けさせてくれないか、」
「駄目だ。被害を大きくする。それにこれだけの陣どれほどの影響か分かりはしない。
あの子は消す、事態の収束を図るそれだけだ。弔いの花を用意しておけ」
「だろうな、兄者はそうだ。それでこそだ。それじゃ、今回は俺は俺の好きにやらせてもらう。作戦は俺抜きで頼むわ。何、問題はない、そうだな10分ほど、遅延するだけだ。」
「から揚げさんにできなくても僕にはできます。
この手で触れた相手の記憶を奪う、過去にもこの力で魔女に飲まれた子を救ってきた。
今までは魔女の存在を感じられなかった、今ならきっとできます。
きっと侑季を救って見せます。」
「……呆れるな。確かにできるかもしれないが、それがお前の望む結果になるとは限りはしない。だが、好きにしろ、俺は俺のやり方をやらせてもらう。」
から揚げはそれ以上何も言わず、彼の仲間たちに、指示を出し、職務に戻った。
「さてと、それじゃ純情少年。さっさと立て、時間がないぞ、兄者はやると言ったらやり遂げる。俺らがいようと関係なく消し飛ばすそういう人だ。」
「手伝ってくれるんですか?」
「まぁ、そっちの方が面白そうだ。これでも快楽をつかさどる物、結果が悲劇でもドラマチックに盛り上げる方を選ぶぜ。まぁ、もっとも兄者が力を使う前に俺は逃げさせてもらうがな、そこまでの義理はない。」
そういうとえび天は恋夜を町の全貌が見える位置に引っ張ると頭を掴んで町を舐め回すようにぐるりと動かされる痛いが今はそう言っている暇もない
「まずは状況の把握だ、見てみろ、この町の状況を」
「嫌というほど見てきましたよ、皆普通じゃない」
「そうじゃない、もっと視野を広く大きくもて、ほら時間がないぞ、」
そう言われても、と、えび天が何を言わんとしているのか、彼の思考を読み解くように、思慮深く恋夜は考え込む
「陣って、魔法陣ですか、」
凛清が魔力を感じ取り、街の端々から見えるうっすらと光るに注目する。
「そうだ。魔法の茨によってこの町の地下に描かれた魔法陣だ。」
「こんな規模の魔法陣を、いつの間に」
「描かれたのはさっきだ。」
「さっきって、地下を通るような魔法陣をそんな簡単に、それにあれ自体が魔力を帯びています。どうやって」
「描いたのはさっき、だがその下準備はずっと前からだ、こいつと同じ。あの子に魔力の種を植え付けられたこの町の住民たちだよ。住民の魔力を使い一斉に魔法陣を描かせた。
だから俺らも気づけなかった。この町全体を覆う不穏な空気の中でそんな小さな種の存在なんか感知できるわけがない。今はそれが芽をだし、魔方陣に魔力を供給している。」
「お前ら魔女の姉ちゃんたちの仕事は彼女の依代となった住民の鎮圧だ。」
「鎮圧って暴力的な」
「相手はまともじゃない、麻酔弾や鎮圧弾じゃどうしようもない。俺の仲間は魔術師じゃなくただの人間で構成された軍隊だからな、期待値以上の奇跡は起こせやしない。」
「具体的にはどうやって」
「うちの研究班の話だと同じ魔女の力なら反発し合う、魔力を流し込めば少なからず、まともに魔力のハブとしては機能できなくなる。可能性がある。かもしれない」
「そんな無責任な、」
「とにかくやってみよう、皆を一人でも多く救うために。それにそれが時間稼ぎになるし。」
「おっと、お前はこいつの送迎だ。時間がない。お前を使うのは一番早い。」
「……」
「私なら大丈夫、これでも魔女の端くれ、流星行ってあげて、」
「というわけだ、今うちの方で最上段にたどり着く最適ルートを割り出している。多少無茶にはなるが、お前のその箒の速度はかなり早いなんとかしろ。」
「えび天さん、ありがとうございます。」
「礼はいい、それより行くぞ、嬢ちゃんたち!」
「はい」
「……貴様に命令されるのは気に入らん。ん、うるさい、分かったよ。はいはい、おい、貴様、イロハからの伝言だ。必ず無事に帰って来て、だそうだ。クズ」
「はい、約束します。必ず、」
2人はえび天の後追い、手薄な戦火の中心地に身を投じていった。




