表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/43

休日のたびに。

しばらく怜羅は、外に出るときには回りを見渡してから行動していた。竜夫がどこかに潜んでいる気がしてならないのだ。スマホやLINEはロックしてあるが、かつては怜羅の都合もお構いなしに電話してきていた竜夫が、家にすら電話すらしてこないので、却って気味が悪いのだ。

そんな毎日を過ごして、週末。家に居るのが怖くて、用事を作って外出し、夕方に帰る。土曜日は怜羅の不在中に家に電話がかかっていた。もちろんかけ直してなどいない。

「“何時頃に帰りますか?”って言ってたわよ。」

日曜日の夜、帰宅したときに母親が言った矢先、家の電話が鳴る。父親が電話を取る。父親は簡単なやりとりをしてから保留にして、怜羅の方を見た。

「野口くんだけど、どうする?」

「部屋で出る。」

部屋に子機を持ち込んで、通話ボタンを押す。

「もしもし…。」

「近くまで来ているんだ。出てきてくれ。」

「行かない。」

「来てくれ。」

「絶対に行かない!」

「お前、どれだけひどいことしてるか、わかってる?」

「わかってるよ。でも別れ話のたびに泣いて、やり直して、何も変わってないじゃない!繰り返したくないの!」

「別れるなら別れるで、いいから。とにかく会ってくれ。」

「嫌よ。今は会う時期じゃないよ。」

「会ってくれ。今のうちに会わないと、もうやり直せなく…。」

「何よ!別れるなら別れるでいいって言っといて、結局、それ?…じゃあ、やり直す気は無し。可能性はゼロ!それでもいいなら会う。」

長い沈黙があって、竜夫が怜羅の言葉を繰り返す。

「やり直す気は無し。…可能性は?」

「ゼロ!」

「何でだよ?俺には怜羅しかいないのに。」

竜夫が電話の向こうで泣く。それを聞いて怜羅のイライラが爆発した。

「アンタ、口ばっかりじゃない!反対されていることを知っていながら、のらりくらりとして!」

「だってお前、駆け落ちしてくれるって言ったじゃないか!」

「アンタのそういう浅はかなところがイヤなのよ!何の努力もしないで、駆け落ちするのを待つ男についていく女いないわよ!」

「だったら、どうして、そう言ってくれなかったんだよ?」

「一生、カンニングして生きていくつもり?こんなことを言わないと何もできないわけ?別れて正解ね。“一緒に生きていく”という意味の捉え方が違うんだもの。」

怜羅は吐き捨てるように言った。ここまで言いたくなかったが、止められなかった。話すほど、竜夫に失望していったから。

「…今日はもう帰るよ…。」

竜夫は弱々しくそう言って電話を切った。

電話を切った後、怜羅は泣いた。後悔ではない。竜夫に対する失望と、こんな男となかなか別れられなかった自分への怒りで泣けてきたのだ。

春の夜は冷たくて、竜夫の涙を凍えるほどに冷やしたが、決意を固めた怜羅の頭を冷ますことはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ