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隣の彼女は自由を夢見る  作者: ふつ
3/3

3 女の子には秘密がいっぱい

「よかった……外に出たくても周りの様子が分からなくて困ってたの」


 掴んでいた手を離すと、彼女は解放された小動物のようにひょいっと一歩前に行く。そして俺と同じ速度で歩きながら喋った。


 言い終わる頃に、彼女は流れる銀河を連想される一色に統一された銀色の長い髪を靡かせる。くるりと振り返るそんな姿にドキッとしながらも、まずは聞きたいことを聞こうと思った。


「どうして、あんな所に?」

「え? そ、それはその……」


 目を見開き、途端に戸惑う彼女。


「訳ありみたいだな。無理には聞かないよ、俺は廉」

「えっと……私は……」


 と、また目を泳がせながら一拍子置く。


「リッカ」


 リッカ……やっぱりかな。あまり聞かない名前といい、髪の色といい、彼女は日本人ではないのだろう。となると、彼女は日本語が上手なハーフか?


「あなた、とってもいい人ね」


 目を細めてそう言うと、またくるりと回って前に歩き出した。


 いい人……か。今までそんなこと言われたことなかったな。あったとしても記憶にない。でもその嬉しい言葉は素直に受け取っておこう。


「大変!」


 突然の言葉に俺の心臓は跳ね起き、リッカの向いてる方向に目をやると、微かに先ほど見た格好の男がいた。今度は1人だった。リッカは外していたフードをさっとかぶる。


 この辺はこんな格好の奴らがうようよいるのか? 


 あっちはこちらに気づいてないようだ。


「捕まるわけにはいかないの、お願い!」


 リッカはこちらに顔を向け、精一杯の力を振り絞ったように上目遣いで言った。


 元から護るつもりだったし……いくつか方法は思いついたが、今は確実に逃げれる選択肢を選ぼう。


「分かった、ついてきて!」


 そして、奴とは反対の方向──つまり繁華街の方に向かった。


 人混みに紛れられるから好都合かもしれない。彼女は服装的に走りづらそうなので、俺たちは駆け足でその場を後にした。


「もうっ、ほんっとにしつこいんだからあの人たち」

「どうして逃げ回ってるの? 奴らは何者なんだ?」

「ちょっと……ね」

「ちょっと?」

「女の子には秘密がいっぱいあるのよ」


 秘密……


 もしかしたら俺はとんでもないことをしてるのかもしれない。


 







 所々で先程の奴のような男を見かけたが、裏道などを使って逃げていると、繁華街が近づいていることが分かった。だんだん明るくなってく街並み、人の音や車の音。個人的に都会の夜は好きだ。


 1日でここの景色を3回見る事になるとはな。今日を機にして、もうないだろう。


「わぁー、ここが繁華街って言う所?」

「感激してる場合ではないよ」


 ここにも奴らがいるかもしれない。


「ほら、置いてくよリッカ」

「待ってよ、女の子には優しくするものよ」


 駆け足で変に目立つのもダメなので、歩くことにして人混みに紛れる。同じようにフードも悪目立ちするんじゃないかと、外してあげようと思ったが、彼女の容貌はきっと人々からも銀河を連想される程余計に目立ってしまうはずなので、やめた。


「俺について来ればいいから俯てて。リッカは今から陰キャだから」


 「陰キャ?」と口ずさむも、知らないのも普通だろうと思い、知らなくてもいいと判断した俺はその質問を無視して次の段階に移ろうとしている。


 逸れないようにリッカの手を──と思ったが、流石に女の子と2人で手を繋いで街中を歩くのは抵抗があるし、内心リッカが嫌がってたら、ショックだが……女の子の意見を尊重したいので俺は腕をパシッと掴んだ。


 途端──


「細っ!」

「わぁ! びっくりした……何が細いの?」

「腕だよ!」

「これ、そんなに細いの?」


 自分の腕のことを"これ"と言うのもどうかと思うが、兎に角細すぎる。しかも柔らかい。そもそも女の子の腕なんか掴んだことないから、これが細すぎるのかは分からないが、見る限りには絶対細い方だ。


「折れたことないのかよ?」

「え、折れるって……私の腕をなんだと思ってるの?」


 自覚のある変な質問に、彼女は小馬鹿にしたようにクスッと笑う。


 





 



 これって側から見ると少女を誘拐している変態にしか見えないんじゃないか? 幸いにも彼女が幼女という体型ではないほどに救われているが……


 ひたすらに歩き、それに引き連れるようにリッカもついて来ているのだが……突然腕が引っ張られた。重心が鈍り、よろっと後ろに傾いたが反射的に片足が出て体を支えることができた。振り返って分かったが、引っ張られたというよりかは俺が引っ張ろうとしていた。


 止まっていたリッカは顔を横に向けていた。輝かせた瞳から、何を見ているのだろうと純粋な好奇心でその視線を追うと、そこにはラーメン屋があった。


「……食べたいのか?」

「え、あ……うん!」

「仕方ない」

「いいの!?」

「いいだろう」


 食べさせてあげたいのもあるが、俺もちょうどお腹が空いていたので半分は俺も食べたいという理由でラーメン屋に入ることになった。

 


 


 


 












 

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