第43話
属性には火が木を燃やすように、水が土に染み入るように、相関関係がある。火に風を吹き付けるように他の属性を強めるエンチャント魔法はあるが、その中でも闇属性は特別だ。闇属性はすべての属性を侵食して、元の属性の性質を損なうことなく闇の高エネルギーを持たせることが可能なのである。それらの浸食された属性による攻撃は極めて危険であり、火ならば決して癒えぬ火傷を残し、水ならば万物を蝕む毒となる。そして、風は・・・・・
「ゴホッ!!、ゴホッ!!・・・・・リーゼ、大丈夫?」
「・・・・キュルルルル」
僕は飛んできた砂でむせながら身を起こした。
リーゼが庇ってくれたこと、自身に防御力強化と衝撃耐性エンチャントに加え、防御魔法も使ったからか、僕はほぼ無傷だ。リーゼも黒かった鱗が剥がれて、下の赤い鱗が少し見えているが、致命傷ではないようだ。とりあえず、僕はレッグホルダーのポーションのふたを開けて、リーゼの口に突っ込んだ。
「ング!?・・・・・・・・・ぷはっ!! デュオ様、ありがとうございます」
ポーションを口に含んだリーゼの姿が揺らいだと思うと、そこには人間の姿をしたリーゼがいた。
「いや、大丈夫そうで良かったよ。こちらこそ、お前がかばってくれなかったらどうなっていたか・・・・・これはスゴイな・・・・」
先ほどまで岩場であった谷底が、今では砂漠になったようだった。辺りに転がっていた岩が、すべてまとめて砂の塊となり、僕らが身じろぎをするたびにボロボロと崩れていった。
「闇と風の複合・・・・・万物を劣化させる腐食の風か」
「範囲攻撃でよかったです。竜の姿で一点狙いされたら間違いなく耐えられませんでした」
リーゼの着ているメイド服にくっついていた黒い鱗がボロボロと崩れて砂になった。メイド服そのものに傷はないから大丈夫だろうが、硬化魔法は解けてしまったのだろう。
範囲攻撃というのはその広さゆえに回避は難しいが、基本的に一点集中の攻撃に比べると威力は低い。リーゼに変化魔法、劣化魔法への耐性があったからその程度で済んだともいえる。
「ゴォオオオオオオオ!!!」
呑気に話していた僕らめがけて、砂煙を上げながら屍竜が突っ込んでくる。そのスピードは砂に足を取られているせいでさっきよりも若干遅い。
「デュオ様っ!!」
「ああ!!」
僕らの周りはリーゼのおかげで岩がまだ残っている。その岩を飛び石のように踏みつけて僕らは再び避ける。
「オオオオオオオオオォオオオオオオオオオオ!!!!」
「うわっ!?」
・・・・避けきったと思ったら、ぶわっと空気の壁が迫って来たように吹っ飛ばされた。咄嗟に衝撃を弱めたおかげでダメージはないが、これは・・・
「あいつ、風属性に慣れ始めてるな・・・・」
リーゼと協力して避けまくってた時は畳まれていた屍竜の翼が、今は大きく開かれている。僕を吹っ飛ばしたのも屍竜が起こした風だろう。もっとも、完全に使いこなせてないのか、威力は大したことないし、闇属性で浸食もさせていないようだ。いや、闇が侵食する前にバカスカ撃ってるだけか?
「アース・ショット!!」
「ステップ!!」
リーゼが飛ばした岩を足場に、ステップで跳ねて移動する。
さっきの嵐の影響を一番強く受けたのはこの広場の中央だ。端の方はまだまだ足場が残っているし、元よりそちらに向かう予定だった。
「リーゼ、魔力は?」
「一応まだあります。 でも、そんなに余裕はないかもしれません」
「そっか・・・僕もさっきので魔力を結構使っちゃったけど・・・・今がチャンス、なのかな?」
メッセージで会話しながら移動し、やってくる攻撃を避け続ける。その間に、東西の岩壁をちらりと見るが、ポロポロと砂が落ちていた。
「そうですね・・・・このまま避け続けてもさっきの魔法を撃たれたらすぐに干上がっちゃいます。それなら、ここで一気に仕掛けましょう!!」
メッセージごしにリーゼの気合の入った声を聞き、僕も頬を叩いて喝を入れる。そうだ、ここで決めるしかない。
「わかった!! それじゃあ、決めた通りに・・・・・西の壁を目指そう!! でも、アイツの正面には行かないようにね!!」
「はい!!」
僕らは会話を終えると、わざとヤツの風が届く範囲に身を置いて移動する。
先ほどから、突風が吹きつけてくるが大したことはない。衝撃は僕には効かず、リーゼも人の姿なら風属性に適性がある。質量がほぼなく、火や雷ほど攻撃的でない風属性は、基本属性ではそれなりに扱いが難しい部類に入る。風を刃の形にするだとか、圧縮して空気弾にするとかしない限り、相手の姿勢を崩す程度しかできないのだ。さきほどのように魔力を溜めて撃てばその限りではないだろうが、今の屍竜は僕らを追いかけるのに夢中のようだ・・・・・逃げ出そうとした時といい、あの屍竜は僕らが離れようとしたら大技を使って来た。ならば、下手に逃げようとするよりもヤツの思惑通り、この吹き付ける風を受け続けて、妙な行動に移行させないようにする方がいい。
「火なんて出されたらたまったもんじゃない」
さっきの感じから、この屍竜が使えると思われる属性は3つ。闇、風、そして火だ。あの屍竜は、元は飛竜のようだから土属性や水属性は使ってこないだろうが、竜種に共通する炎のブレス、火属性を使えるはずだ。こんなところで治療不可能な傷を負ったら即、死に繋がる。
「デュオ様!! もうすぐです!!」
「ああ!!」
見れば、もう西の岩壁は目の前だった。この辺りは足元もしっかりしていて、避けるのに不自由はない。よし、どうにかここまで誘導できたぞ。
「さぁ!! ここだ!!」
僕は岩壁を背にして、屍竜と向かい合った。
「ォォォォオオオオオオオオオ!!!」
ナニカは苛立っていた。それが苛立ちだということをナニカは理解していないが、とにかく、ナニカは不快だと思うモノを感じていた。
「アァァァアアアアアアアアアア!!!」
さっきから、あと一歩というところでカケラを仕留めきれない。この爪が、尾が、牙がかすればそれだけで殺せるはずなのに、あいつらはハエのようにこちらの攻撃を避け続ける。
「ガァァァアアアアアアアアアアアア!!!」
「っと!!」
翼を広げて風を起こしてみるが、周りの岩は吹き飛んでいくのにあいつらは少し動きが止まるだけだ。そこを狙って突っ込んでもやはりギリギリで避けられる。だが、あいつらは何故か分からないが自分の周りから離れようとしない。少し前から自分の攻撃がすぐに出せるところにとどまり続けている。あと少し、あと少しで当たるのだ!!
「ほら、ここだ!!」
目の前でうるさいカケラがやかましく何事かを叫んでいる。意味が分からないが、止まっているのならば攻撃は当たるはず。
「オォォォォォオオオオオオオ!!!」
「ハズレ!!」
突き出した爪はあのカケラの後ろの壁に突き刺さった。とてつもない力で振り払われた爪は綿をちぎるように岩を削る。
「ほらほら!! 今度はこっちですよ!!」
「ガァアアア!?」
さらにもう一回爪を振り上げようとすると、頭に火の玉が当たった
振り向くと、すぐ後ろからもう一つのカケラが近づいてきていた。少し前から時々ぼやけているカケラだ。
「オァァァアアアアアアアアアアア!!!」
「ほっ!!・・・・・フレイム・ショット!!」
尻尾を叩きつけようとしたがあっさり躱された。しかもアイツはさらに近づいてから火の玉まで撃って来た。
「ギィィィィィアアアアアアアアアアアア!!!」
「ウィンド・ステップ!!」
「ショット!!」
体ごとぶつかっていくが、これも避けられた。地面を深く削ったが、骨の身体には傷一つない。
「ほらほらほら!! こっちだよ、こっち!!」
「ほら!!ガンバレ♪ ガンバレ♪」
いつの間にか、カケラ二つが自分の背後にいた。うるさいカケラは右の翼に、ぼやけて見えるカケラは左の翼の方に。二つとも止まって動く様子がない。今が最高のチャンスだ!!
「ガァァァァアアアアアアアアアアア!!!!」
ナニカは四つん這いになって翼を限界まで広げると、闇を纏って走り出した。屍竜の体内でマグマのように煮えたぎる闇・・・全力であいつらを潰そうとすると、体の奥底から自然と湧き出て来たエネルギーだ。しかも、その闇でさっきから纏わりついている風がどんどん強くなっていくのも感じる。これなら、両方のカケラを粉々にできるはず!!
「リーゼ!! 準備を!!」
「はい!!」
「ゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
黒い突風を吹かせながら猛スピードで加速する体をぶち当てる一撃。あいつらに当たれば間違いなくミンチになって原型も残らないくらいの威力である。
「「ステップ!!!!」」
しかし、アイツらはどこまでも鬱陶しいハエのようだった。
岩壁を背にしていたカケラはそろって左右に大きく跳ねて逃げていき、ナニカの渾身の一撃は空振りとなった。そして・・・・・・
「ゴルァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!???」
ナニカの巨躯が壁にぶち当たった。
ナニカの持っていた凄まじい運動エネルギーはすべて岩壁に注ぎ込まれ、その身に纏う滅びの風が硬いはずの魔鉱石を劣化させ、ビスケットのようにボロボロと崩れていった。さらに、ぶつかっただけではその勢いは止まらず、脆くなった岩の中にさらにその体をねじ込ませていき・・・・・・・・
「・・・・・・・!!!!???」
ついには、ナニカの巨体の半分が壁の中にめり込んだ。
さきほどまで暴れまわり、咆哮を上げていたナニカも、頭から突っ込み、翼までめり込んでしまえばそよ風の一つも起こすことはできない。
「・・・・・・・・・・・!!!!」
だが、そのようになっても流石は屍竜の体というべきか、その恐るべきパワーで体を動かし、抜け出そうとしていた。未だその身から吹き出る闇が脆くなった岩を崩し、ナニカが動くたびに砂が滝のように流れていった。今にも大きな翼が壁から解き放たれようとした、その時だった。
「リーゼ!!!」
「ギャォォォォ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
砂漠となった谷底に、さきほどまでのおぞましい屍竜の叫びとは全く違う、活力にあふれた竜の咆哮が響いた。しかし、その声は不自然に小さく消えていく。いや、その咆哮だけではなく、谷底のすべての音が消えていった。周囲を不気味な静寂が包み込む。
「ドラゴン・ハウル!!」
ギィィィィィィィィィィィィィィァアアアアアアアアアアアアアアォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!
そして、突如として、その静寂を破るようにビリビリと辺りを震わす大咆哮が放たれた。ここに誰かがいたのなら、とても耳を塞がずにはいられなかっただろう。いや、その程度で済めば幸運であると言える。
大咆哮の範囲、威力は上級魔法に迫り、それによって谷底にあるすべてが震えた。地が震え、岩が砕け、砂が舞い飛ぶ。もちろんそれは、ナニカがめり込んだ壁も例外ではない。屍竜の滅びの風を受け、爪で抉られ、突進を喰らい、闇のエネルギーを浴びせられても耐えた岩壁も、周りの岩のように震え始め・・・・
「・・・・・・!?」
とうとう限界に達し、崩壊を始めた。
これまでの戦いで壁全体に走った細かなヒビが振動と共にどんどん広がっていき、やがて、パラパラと砂が落ちて来たかと思えば、今度は石ころが落ちていく。そして、どこかからガラガラと大きな岩が崩れ始めると、壁全体が雪崩のように地面に向かって降り注いだ。
「・・・・・・!!!??」
ナニカの体に、足と言わず翼と言わず、めちゃくちゃな勢いで岩がぶつかっていく。もちろん、それでこの頑丈な体に傷がつくことはないが、あれよあれよという間に岩が、石が、砂が流れていき・・・・
「・・・・・・・・・・・!!!!!!!!????」
やがて、岩の川が止まると、文字通り瓦礫の山が出来上がっていたのであった。
「プ、プランC・・・・成功、かな?」
「ま、魔力が、もう限界です・・・・・」
ガラガラと瓦礫を押しのけて、僕らは地上に顔を出した。そのまま重い体に鞭打ってなんとか穴から這い出し、二人で地面に寝っ転がった。まさかこの短時間の間に2回も地面の下に埋まる羽目になるとは。まあ、1回目は自分から埋まったんだけど。
「これで死んだ・・・・っていうのはないよね?」
屍竜の姿はもう見えない。完全に瓦礫の下に埋もれたようだ。
「流石にそれは無理でしょう。これだって、少しの間動きを封じるのが関の山だと思います・・・・ところでデュオ様、魔力ポーションとってもらっていいですか・・・・・」
「ああ、うん。少し待って・・・・僕も結構キツイ・・・・」
体中に鉛を詰めたように体が重くて、腕が中々動かせない。魔力を限界まで使ったときに起こる魔力欠乏だ。放っておくと死ぬこともあるらしいが、大丈夫だろうか。
「本当に、魔力を使い過ぎたよ・・・・・・もう少し早くからやっておけばよかった」
プランCはプランA、Bが上手くいかなかったときのための作戦だが、博打要素が強く、魔力がかなり残っている状態でなければできなかった。あの滅びの風さえなければ今ごろ空の上まで逃げれていたのだろうが、それでもこうして二人とも生きているのだから良しとしよう。
「ドラゴン・ハウル・・・・・もうちょっと練習しとかなきゃですね・・・・」
「練習するって、どこでやるのさ。 シークラントでもかなり奥の方に行かないと街のみんなから苦情が来るよ・・・・・」
ドラゴン・ハウル、僕とリーゼの二人で編み出した上級魔法を超えるんじゃないかといえるくらいの必殺技だ。リーゼが全力で放つ咆哮を、僕が「ミド・ピック」で吸収し、可能な限り範囲を絞ってから「ミド・アンプ」を重ね掛けして何倍にも増幅して放つという技だ。仕掛けは単純だが、暴走しないようにコントロールするのが難しく、編み出してはみたものの、使う機会なんてないと思っていた技でもある。まず吸収と増幅だけでもかなり魔力を使う上に、事前に僕とリーゼの二人、特にリーゼにかなり念入りに振動耐性のエンチャントをかけておかねばならない。そして、この技の準備から終わりまで、僕は全くの無防備であり、隙が多く、今回のように岩場で使えば必ず二次災害が起きる。現に、あの屍竜を埋めるのに利用させてもらったが、危うく僕らまで生き埋めになるところだった。リーゼが魔力切れになっているのも、流れてくる瓦礫から僕らを守り、地上まで上がるのに土属性魔法を全力で使ったからだ。咆哮を上げ、土砂から身を守るときは地竜形態だったが、地上に出るためにスペースの問題で人の姿になった。竜のままだったら魔力の関係で僕を下にしたままつっかえていたかもしれない。このままここに生き埋めとか、考えただけでもぞっとする。
「・・・・・・っと、無事だったか。リーゼ、コレ!!」
「あ、ありがとうございます」
そんなことを考えながら僕はポーチを漁り、この土砂崩れの中で無事だった魔力ポーションを取り出すと、リーゼに向かってポーンと放り投げた。リーゼは震える手で瓶を受け取ると、蓋を四苦八苦して開けてから口を付けて飲み始めた。さて、僕も・・・・・あ。
「んぐんぐ・・・・・ぷはぁっ!! まだ少しふらつきますけど、なんとか・・・・って、デュオ様、どうしました?」
「いや、魔力ポーション、それで最後みたい。 レッグホルダーとかに入れてたやつ、全部割れてた・・・・悪いんだけど、咥えて運んでもらっていい?」
あの激戦の後で一本でも残っていただけ上等だろう。魔力ポーションはそこそこ高級品で数も揃えにくかった。すぐ使えるようにしようと僕が持つことに固執したのが間違いだった。これでも衝撃耐性のエンチャントはかけておいたのだが、まあ仕方ない。
「咥えてって・・・・・もう!! こんな明るいうちから卑猥なこと言わないでくださいよ。まあ、ご命令なら仕方ないですけどね、うん、仕方ない」
リーゼがニヤリと笑いながら舌なめずりして、手をワキワキさせていた・・・・どこのセクハラ親父だ、お前は。
「それを卑猥だと思うお前が一番卑猥だよ・・・・・冗談なら後で聞くから、早く・・・・」
「もちろん、分かってますって。それじゃあ・・・・・・・デュオ様っ!!!」
「え?」
突然、リーゼに突き飛ばされた。なんだと思う暇もなく・・・・
「キャァァァアアアアアアアアア!!?」
「リーゼ!?」
僕らが這い出て来た穴から、黒い炎が噴き上がった。炎はリーゼを直撃し、リーゼが悲鳴を上げる。それに遅れて、地面が少しづつ熱を帯びていった。
「リーゼ!! 大丈夫!?」
「痛ぅ・・・・・・火はあたしの一番得意な属性です!! 闇の呪いもこの姿なら・・・・」
リーゼが顔を引きつらせつつ、強がるように笑みを浮かべようとしたが、その声を轟音がかき消した。
「ギィィィィィアアアアアアアアアアアア!!!!!」
地面が座っていられないほど熱くなったかと思うと、突然瓦礫の山が火山のように爆発した。そして、黒い炎を巻き上げながら、全く無傷の屍竜が這い出て咆哮を上げる。その視線は、はっきりと僕らを捉えていた。
「クソっ!! 早すぎだろ!! それに、火属性まで・・・・・」
思うように体を動かせず、僕は愚痴を言うことしかできない。その間にも、屍竜はゆっくりと体を動かし、僕らに向かってその口を開ける。
「ガァァアアアアアア!!!」
「くっ!?」
僕はなんとか盾だけでも構えようと・・・・
「これ以上やらせるかぁぁぁああああああああ!!!!」
「リーゼ!?」
屍竜の口からどす黒い火球が飛び出す直前、リーゼが僕の前に出て、腕を伸ばして体を大きく広げた。
「くぅぅぅぅぅううううううう!!!?」
「リーゼ!! 無茶だ!!」
火球はリーゼに直撃したが、リーゼは苦悶の声を漏らしつつも一歩も下がらない。いくらリーゼが火やら変化魔法に耐性があるからって、あの化け物の攻撃を受け続けるのは自殺と変わらないぞ!!
「リーゼ!!」
「さっきまでは、デュオ様が動けないあたしをかばってくれました!! 今度はあたしの番です!! 護衛がいつまでも主にかばってもらってばかりじゃ、意味がないでしょうが!!」
「だからって・・・・・」
このままじゃ、二人ともいずれは消し炭だ。リーゼが死ぬのも、僕が死ぬのも時間的には大差ないだろう。もう、トラップも使いつくしてしまったし、魔力がほぼない僕は完全なお荷物だ。正直、できることなんて・・・・
「いや、あるか・・・・」
それでも往生際悪くポーチを漁っていたら、手に触れたのは、シルフィさんがくれた宝珠の最後の一個。回復魔法の宝珠だった・・・・そうだ、僕にもまだできることはある。へこたれるな、僕! リーゼが体張ってるんだぞ!
「ヒール!!」
「デュオ様・・・・」
僕はなけなしの魔力を振り絞ってリーゼに回復魔法をかけると、リーゼの火傷が塞がっていった。闇の炎は癒えない傷をつけるらしいが、治るのはリーゼが特別だからだろうか、それとも、シルフィさんの宝珠がスゴイのか。
「デュオ様、魔力は・・・・・」
リーゼが心配そうに言ってくるが、僕は思いついたことを止めるつもりはない。というか、今一番ヤバイのは僕の盾代わりになろうとしているお前だろうに。
「家族が諦めてないのに、僕が勝手に降りれるわけないだろ!! 僕の護衛だっていうのなら、絶対に死ぬな!! これは命令だ!!」
ポーチの中にはまだポーションがいくらか入っている。これを投げつけて、リーゼを回復させることぐらいはできる・・・・・・・・穴の中では、いざとなったらリーゼを見捨てることも考えなきゃいけないと思ってたのに、僕がこんな有様じゃあ笑えない。ともかく、手持ちのポーションが尽きるまで、いや、尽きても、護衛が、相棒が、家族が頑張っているのに、僕が諦めてたまるか!!
「ォォォォオオオオオオオ・・・・・」
屍竜が再び口の中に黒い炎を溜めていた。今後のヤツは、さっきよりも溜め時間が長い、つまりはさっきよりも威力が高い!!
「デュオ様・・・・・ご命令、承りました。ですが、まずはデュオ様を守り抜くことが、あたしにとっての最優先事項です!! 高速変身!!」
リーゼの姿が、地竜の姿に変わった。その鱗が見る見るうちに黒く硬化していくが、どうして変化魔法に耐性のある人の姿から変わったんだ? いや・・・・
「僕を、守るためか・・・・・」
地竜の姿は、大きい。リーゼの後ろにいる僕には、向こう側にいる屍竜の姿が見えないくらいだ。これなら、さっきよりも大きな火球が飛んできても僕をかばうことができるだろう。
「キュルルルルルル・・・・・」
「リーゼ・・・・」
だが、ちらりとこちらを振り返ったリーゼの瞳は、覚悟に満ちていた。その覚悟とは、命を捨てて僕を守るための覚悟じゃない。
「僕の命令も、命も両方守る、か。 欲張りなヤツだよ、本当に」
「キュルルルルルル!!」
「いやあ、それほどでも!!」というように、リーゼは鳴いた。まったく、そっちがそのつもりなら、僕も増々諦めるわけには行かなくなった。
「ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「キュルァァァアアアアアアアアアアアア!!?」
「くっ!? リーゼ!!」
そんな僕らをあざ笑うように屍竜の攻撃は行われる。光をすべて奪い取るような闇の炎が解き放たれ、リーゼが悲鳴を上げる。僕もポーションを投げつけるが・・・・・・焼石に水だ。ポーションは患部に塗るか飲むかしないと効果が薄い。この位置からではどちらも不可能だ。加えて、ただの中級ポーションでは効果もたかが知れている。けど・・・・
「キュルォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「リーゼ!! 負けるなぁぁあああああ!!!」
リーゼはまだ諦めていない!! 体中に赤黒い火傷を負いつつも、その場を一歩も動いていない。ならば、僕だって悪あがきを止めるものか!!
「ォォォォオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・」
三度目の攻撃。今度のはどれくらいの威力だろうか? さっきよりも強そうだが、もしかしたら落穴を使った時のブレス並みの威力があるかもしれない。あれと同じくらいならば、リーゼが庇おうがまとめて消し飛んでしまうだろう。だが、僕はポーションの瓶を握りしめて離さない・・・・・・これは、リーゼに使うものだ。僕自身が吹っ飛ばされようが、離すつもりはない!!
「キュルルァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「リーゼェェェェ!!」
「ゴォォォオオオオオオァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
叫ぶ僕らに向かって、屍竜の咢が開かれ、黒い閃光が飛び出そうと・・・・・・
「オラァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
突然、僕らの後ろから誰かが突っ込んでくると、そのまま屍竜の顎にアッパーカットを喰らわせた。屍竜がのけぞって、首が上を向いたのが僕の位置からも見える。そして・・・・
「ゴァァアアアアアア!?」
「キュルァアアアアアアアアアアア!?」
「うわぁぁあああああああああああ!?」
屍竜の口に溜まっていた炎は行き場をなくしてそのまま爆発したようで、爆風がリーゼごと僕を吹き飛ばし、僕らはゴロゴロと地面を転がった。
「・・・・・・え? 何?」
「・・・・・キュ? キュル?」
僕もリーゼも、思わず全く同じセリフを喋っていた・・・・・リーゼは竜の言葉だったが。
「悪い!! 遅れた!!」
命知らずにも、とんでもないエネルギーを溜めていたあの怪物にアッパーカットを喰らわせ、さらにはあの爆発を受けてもなんの痛痒も感じていなさそうなのは・・・・・・
「レ、レオルさん!!?」
「キュ、キュルル!!?」
「おう!! レオルだぜ!!」
我が二人の師匠の内の片割れ、レオル・バーンライトさんであった。つい昨日ぶりの再会である。だが、今は昨日と違い、体の要所を覆うように赤銅色の鎧を身に着けていた。その手はいつかシークラントで見たようにグローブ状の魔武器が装着されている。いや、あれは・・・・
「いや~、なんかヤバイ魔力が出たのはすぐにわかったんだけどよ。周りの連中が「隊長が行く必要はないでしょう」とかほざきやがってさ。おまけにかなり目立たねぇ場所でよくわからねぇし、道が崩れてるしで中々進めなかったし。さっき、いきなり壁が崩れて、やっとたどり着けたってわけよ・・・・・まさかお前らが襲われてるとは思わなかったが、いや、ホントマジにスマン!!」
「は、はあ」
レオルさんがまくしたてるように遅れた理由を喋っているが、よくわからない。いや、現実味がない。もしかしてこれは今わの際に僕が見ている幻覚なのではなかろうか。
「ガァァァアアアアアアアアアアア!!!」
そんな馬鹿げた思考を吹き飛ばすように、恨みと憎しみに満ちた叫びが木霊する。目を向けてみれば、さっき盛大に口内爆発を起こした屍竜が叫びながら口に炎を溜めていた・・・・・・気のせいか、さっきまでと雰囲気が違うような・・・・・いや、それどころじゃない!!
「レオルさん!!後ろ!!」
「んあ?」
「ゴォォオオオオオオオオ!!!!」
今回は速度重視をしたのか、溜めは短く、人の姿のリーゼに撃ったのと同じくらいの火球がレオルさんに飛んでいった。それはちょうどレオルさんが振り向いたタイミングと一致して、直撃は避けられないとしか思えなかった。
「いや、オレに炎で来るとか舐めてんのか?」
迫りくる火球に対してレオルさんがやったのは、ペシンと、うるさい羽虫を払うように腕を振ることだけだった。それだけで、黒い炎の塊は明後日の咆哮に飛んで行って爆発した。結果、僕らは勿論、レオルさんもほぼ無傷である。
「ガァァアア!!?」
「え?」
ただの人間にあっさりと自分の炎があしらわれて驚いたのか、屍竜が若干上ずった声を上げる。そして、僕も驚いていた。一体どうやって・・・・・・いや、違う。レオルさんが身に着けている装備がアレならば・・・・そう、魔装騎士の象徴たる「魔装」であれば・・・・
「何か、アイツいきなり態度が変わってねぇか?・・・・・・・まあいいや、アド・アースウォール、アド・ヒート・エンチャント・・・・ついでだ、アド・ラ・クレスト」
レオルさんは不思議そうにつぶやくと、レオルさんの着けている鎧が光だし、いくつもの上級魔法が展開された。分厚く巨大な岩の壁が僕とリーゼを覆い、壁ごと内部にいる僕らに炎熱耐性と防御力強化が付与される。
「レ、レオルさん?」
「まあ、いろいろと言いたいことはあるんだけどよ。とりあえず、まずはあのデカブツを何とかしてからにするわ・・・・・死にたくなきゃこの中から出るなよ? 後・・・・・・」
「え?」
そこで、レオルさんが言葉を切った。どこか、嬉しそうな顔で僕を見る。
「あのデカブツ相手によく頑張ったな・・・・・・もう大丈夫だ」
「レオルさん・・・・・」
その言葉が耳に入ると、強張っていた僕の全身から力が抜けた。同時に、心の底から安堵と喜びの気持ちが湧いてくる。自分たちは助かったのが分かったことと、師匠からのお褒めの言葉の相乗効果だ。
「レオルさん・・・リーゼのこと、よろしくお願いします」
レオルさんが来てから静かなリーゼの方を見ると、僕よりも早く緊張の糸が切れていたのか、もう目を閉じていた。体中に火傷があるが、規則正しく息はしているようだし、なんとかなるだろう。だが、早くに処置をした方がいいのは言うまでもない。
「おう、任せとけって。お前のことも込みでな。んで、お前はそこで休んでろよ? すぐに終わらせて医者んところに連れてってやるからよ」
そう言うと、レオルさんはその場で飛び跳ねて壁を越えていった。そして、そのすぐ後に壁がドーム状に変形して僕らを覆い隠していく。
「レオルさん・・・・」
リーゼと同じように、僕もそろそろ限界だった。これまでの寿命をすり減らすような時間稼ぎや最後のドラゴン・ハウルでの魔力欠乏で力の抜けた体に、眠気が襲ってくる。ここは戦場で、屍竜はまだ倒されていないけど、本能的にレオルさんなら大丈夫だというのが理解できていたのだ。
ちょうど、グラン殿に助けられたあのときのように。
「ありがとう・・・・ございます・・・」
もう休んでもいいと思うと、その眠気に抵抗する気は起きず、僕も目を閉じて睡魔に身をゆだねる。
岩だらけの地面の感触は少し気になったが、僕の意識はすぐに闇に消えていった。
「ギィィィィィアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ソレは怒っていた。突然よくわからないモノが自分の体を乗っ取ったかと思えば、自分を無視して勝手に暴れ始めたのだ。百歩譲ってそれで殺戮の限りを尽くせるのならばよかったが、結局はあの忌々しい生者どもに散々おちょくられて、挙句の果てに再び瓦礫の中に埋められてしまったのである。屈辱の極みと言ってもいい。目覚めた時よりは幾分かクリアな思考でソレは憎しみをたぎらせる。
「ォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
だが、それだけではない。
再び瓦礫をつき破って、ナニカは自分の炎を使い獲物を焼き始めたのが、そこに乱入者が現れたのだ。そして、ソイツはあろうことか何も恐れることなくこの身を殴りつけたのである!! ただの生者のくせに!! それでさらにこの身が己の炎で焼けることになったのだ!! ただの獲物のせいでだ!! それでナニカが動揺している間に体を奪い返したのはいいが、それだけでは到底今までの鬱憤はおさまらない。必ず!! 必ずあの獲物どもと自分を殴りつけたヤツを焼き殺してやる!!
「ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・」
今、ソレはそんな決意とともに炎を溜めていた。
あの獲物どもはいきなりでて来た岩の壁に隠れてしまったし、耳障りな「声」も聞こえなくなったが、この炎ならば関係ない。今までの怒りが混じったようなどす黒い炎ならば、あんな壁など丸ごと吹き飛ばせる!!
「よっと!!・・・・・よぉ、ガイコツ。お前、オレの可愛い弟子とその相棒を随分と可愛がってくれたな? おまけに面倒な仕事まで増やしやがって・・・・・・・たっぷりお礼してやるから遠慮すんなよ?」
そんなことを朧げに考えていると、気の抜けた声がして自分をぶん殴ったヤツが飛び出してきた。何か喋っているが、口の中に炎はもう十分溜まっている。ならば、アイツごと後ろの奴らも皆殺しにしてやる!!
「ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
そうして、ソレの口から黒い弾が放たれた。この技は先ほどのような少ししか溜めなかった火の粉とはわけが違う。これは自分の怨念がたっぷりと詰まった殺意の塊、己の力を幾重にも重ねた憎しみの炎弾なのだ。
炎弾は矢のような速さで怨敵に迫り、その身を塵も残さないほどに焼き尽くすとソレは確信したが・・・・
「だから効かねぇって言ってんだろ」
「ガァアアア!!?」
ソレは驚きの叫びをあげる。
なんと、ソイツは己の渾身の一撃をさっきのように軽く手で払って見せたのだ。
ソイツに矛先を変えられた炎弾は上に跳ね上げられ、天高く消えていった。
「あ、上に竜騎士とかいねぇよな・・・・・? マズったな、殴り飛ばして消しとくんだったか?」
ソイツは何やらぶつぶつ呟いているが、なんといってるかは分からない。だが、まるで自分がどうでもいいような存在だと言われているようで、元々燃え上がっていた怒りがさらに激しく爆発する!!
「ゴォォォォオアォアアアアアアア!!!」
「おお、そう来るか」
ソレは翼を広げて後ろ足で走り出すと、大きく爪を振り上げる。爪にどす黒い炎が灯り、翼の周りの黒い靄を伴う風が吸い込まれ、一瞬で膨張した。
「ガァァアアアアアアアアアア!!!」
「アド・フォルテ!! アド・クレスト!!」
闇、風、炎。 ソレの中にあるすべてを引き出し、さらには全力を注いでその爪を振るう!!
「フン!!」
「ガァァアアア!?」
しかし、この攻撃も易々と片手で受け止められた。
岩盤をたやすく削る爪を受け止めてもその手には傷一つなく、そこからさらに押し出そうとするも、ソイツの体は大地と同化したかのようにビクともしない。
「オオオオオオオオ!!!」
ならば、もう片方の爪で引き裂いてやろうと爪を振りかぶるが・・・・・
「レイド・バーン!!」
ソイツに掴まれていた爪が、爆発した。岩をも溶かす闇の炎を纏っていた爪が、その腕ごと木っ端みじんとなる。
「オァァァアアアアアアアアアア!!?」
巨体を誇るソレも、片腕を吹き飛ばされるほどの爆発で大きく体勢が崩れた。爪を振り上げようとした恰好のまま、地面に横倒しになる。
「デュオにはああ言ったけどよ、ここに来るまでに時間かかってよかったぜ・・・・お前みたいなの相手に一から魔力溜めてたんじゃあ、さすがにちっとヤベェ」」
「オオオオオオオオ・・・・・・」
ソレはどうにか片腕だけで体勢を直し、起き上がる。すぐにでも腕をダメにしてくれたツケを払わせてやると思ったが、ソイツを見た瞬間、ピタリと動きを止めた。
「オオオオォォ・・・・・」
まるで霊脈の出口が開いたかのようだった。ソイツから、途方もない量の魔力が噴き出していたのだ。
激流の中に放り込まれたような感覚がして、骨が軋むように耳障りな音を立てる・・・いや、それだけがすべてではない。
「魔装「師子王」、形態変化!!」
眼球のないソレには見えなかったが、目の前の生者の体を何かが覆っていくのは分かった。それまで要所を守っていただけの鎧が、赤い光とともに見る見るうちに全身に広がっていく。ソレには知る由もないが、これぞオーシュ王国精鋭たる魔装騎士の中の、さらに一握りのみが至れる境地だ。魔装を極めた者だけが手にできる、その者だけにしか振るうことを許さない究極の姿だ。
「燃やし尽くせ、「紅獅子」!!」
光が収まったとき、そこには獅子を模した紅色の全身鎧を身に着けた男が立っていた。それと同時に、周囲に満ちていた魔力が熱を持ったように沸き立つ。地が震え、溶けていき、男の後ろを除き、すべてが溶岩に変わっていく。
「オ、オオ、オオオオオオオオォォォォ・・・・・・・」
ソレは本能的に理解した。アレは自分を滅ぼすモノだ。ゴミを燃やすように己を消し炭にするモノだ。だが、ソレは動けなかった。足元の瓦礫が溶岩となって自分を焦がすが、それでも動くことができない。
「んじゃ、行くぜ・・・・」
ソイツはどこまでも軽い調子だった。だが、その態度と裏腹にソイツの両拳が赤く輝き、周りのマグマが集まっていく。そして、ソイツの腕を中心に渦潮が発生したように宙を溶岩が渦巻いていった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!?」
「フレア・ドライブ!!」
ソイツが足から火を噴きながら霞むほどの速さで突っ込んでくるが、やはりソレは動けなかった。原因は、ソレを動かす本能だった。怒りと憎悪しかないはずの自分の中に冷水をぶちまけるように、本能があるモノを流し込んだのだ。
「紅蓮双葬!!!」
「アァァァァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!???」
まず突き刺さったのはソイツの右の拳だった。恐るべき勢いで放たれたマグマを纏った一撃は、岩壁の崩落でも傷一つつかなかった骨の身体をバターでも溶かすように抉り、あっという間にあばら骨が消し飛ぶ。そして、間髪入れずに真上に放たれた左の拳が、首と頭を消滅させた。拳が当たらなかった部分も、すぐに高熱が伝わって燃えていく。
「アアアア・・・・アアア・・・アア・・・・」
自らの存在が消えていく中、ソレは初めてある「感情」を知った。
「アア・・・ア・・・ア・・・・・」
ソレをその場に縛り付けたある感情。その感情の名は、「恐怖」といった。
こうして、超級モンスターである屍竜はほとんど人的被害を出すことなく消え去ったのだった。




