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40話「天才少女フェイズ4」

SCARLET40:天才少女フェイズ4


・カルビ大会も2回戦が終わってあと2戦。

「お待たせー。」

死神さんから言われてたのかちょうどお腹が空いた辺りで

キーちゃんが来た。

「みんな、調子はどう?」

「今のところみんな勝っているよ。」

死神さんってばやっぱキーちゃんの前だと

言葉遣いとか雰囲気とか違うよね。

もう、ラブラブな夫婦なんだから。

「ほら、赤羽ちゃんも食べて。」

「あ、はい。キーさん。」

美咲ちゃんはあれからすぐ帰ってきたけど何だか浮かない様子。

何があったのかな?

「3回戦は30分後に行われる。

シードであるマスターホワイトはそのままで31回戦行われる。

ここからはもっと勝つのが難しくなるだろうから

それぞれ油断しないように。」

「はい。」

「久遠ちゃんに任せなさい!」

トーナメント表を見る。

ライ君とは別ブロックになったから当たるとすれば2回戦後くらいかな。

でも、死神さんとは同じブロックだ。

そして何の変更もなくトーナメント通り行くなら

4回戦で当たる組み合わせだと思う。

美咲ちゃんより先に当たるしもちろん負けるつもりはないんだけど

かませになっちゃうかそれとも横取りになっちゃうか。

勝敗よりももっと違うようなところでちょっと不安かも。

「久遠ちゃん、どうかな?僕の作ったおにぎり。」

「うん、最高だよキーちゃん。グーだね。

いやあいつもこんな愛妻弁当を学校で食べられる死神さんが羨ましいよ。」

「・・・まあ美味さに関しては文句の付け所はないんだけど

ちょっとデザインが可愛すぎるというか・・・。

他の男子達や女子達に変な目で見られることがたまにあるからな。」

「恋人が居るって言ってないの?」

「普通そんな言いふらすようなものじゃない。

もちろん斎藤は長い付き合いだからキーちゃんの事知ってるから

そこから噂になることはあるがキーちゃんが学校に通ってないから、

一部じゃ彼女がいるふりをして俺が毎日可愛らしい弁当を自分で作って

振舞って食べているとかって大層ムカつく噂まであるらしい。」

「何でキーちゃんの事話さないの?死神さん学校じゃぼっち?」

「・・・そういう事を言うんじゃない。」

「あははは。廉君はね。僕の名前を出したらひょっとしたら

僕のことを知ってる人が居るんじゃないかって心配してるんだよ。」

「???へ?」

え?それ、どういうこと?

キーちゃんを知ってる人が居るんじゃないかって。

まるで他の誰にもキーちゃんのことを知られたくないような言い方・・・。

「・・・えっとひょっとしてどっかから

キーちゃん拉致ってきちゃったとか・・・?」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ?」

え、何この衝撃的展開。

今までの二人の話とか会話とかからかなり長い付き合いだってのは

分かるんだけど死神さんまだ子供の時に攫ってきちゃったとかなの・・・?

「そんな後暗い話じゃないから安心しろ。」

「いやいやいやいや今の間とか展開とかから安心とか無理だから!

え!?おしどり夫婦じゃなくてストックホルム的なアレなの!?」

「久遠、そこまでにしなさい。お二人が困っています。」

「で、でも美咲ちゃんは気にならないの!?」

「久遠こそ私達が今までどれだけこの二人と一緒で

お世話になってきたと思ってるんですか?

このお二人が信用できないとでも言うのですか?」

「そ、そうじゃないけど・・・。」

「・・・いいよ。二人共ちょっと来てくれるかな?」

「キーちゃん・・・」

「大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから。」

死神さんを置いて女の子3人で休憩室を離れて

女子更衣室にやってきた。この時間は流石に他に誰もいない。

「で、キーちゃんどうなの?」

「結論から言うとね、攫われたよ。僕は。」

「や、やっぱり・・・」

「でもあの時は仕方なかったんだよ。

今から10年以上前にね、まだ小学校にも入ったばかりの頃の廉君は

たったひとりで生きてきたの。お父さんと別れてずっと一人で。

きっとすごい寂しかったりひどい生活を送ってたんだと思う。

僕の家の前で倒れていたのを僕が発見して

最初はうちで引き取ったんだけど直ぐに僕を連れて家を離れたの。

まあ、まだあの年齢の頃だからそんな遠くまでは行けなくて

近くにあった無人発電所に行ってずっとそこで二人で引きこもってたの。」

「キーちゃんは逃げなかったの?」

「・・・うん、何だかこの子から離れちゃいけない、

離れたらきっともう誰とも触れ合うことなく

そのまま死んじゃいそうだったから・・・。

だからこの子の気が済むまで一緒にいようって思ったんだ。

でも、そんな生活は長く続かなくてすぐに親に見つかって・・・。

僕にはお姉ちゃんがいてお姉ちゃんが庇ってくれていたんだけど

お姉ちゃんが学校に行っている間に僕達は親に引き離されて・・・。

でも、その時その発電所で事故が起きたの。

電気の暴発事故で発電所どころか街全体で火事が起きて・・・。

気付いたら僕と廉君は発電所も街も全部炎の中だった。

多分お母さんとお父さんもその時に死んじゃったんだと思う。

お姉ちゃんが何とか無事でしばらくの間お世話をしてくれていたんだけど

相当無理していたみたいで小学校を卒業する頃に

倒れちゃってそのまま・・・。

廉君はその事で僕に深い負い目があるみたいで、今みたいに・・・。

もちろん僕も廉君の事好きだから全然嫌じゃないんだけどね。」

「・・・・・」

なんか急に重い話をされた気がする。

というかだから死神さんはお父さんが来た時にすごい怒っていたんだ。

そんな状態になっても助けてくれなかった上に

キーちゃんと別れさせて自分勝手に

甲斐機関を継がせようとしたから・・・。

「だからそんな誘拐とかじゃないよ。

それでも僕のいた街じゃ結構騒ぎになってたから

僕の顔とか名前とか知ってる人がいるかもしれない。

だから廉君はなるべく僕を他の人に紹介したがらないんだよ。」

「・・・・・・そんなことがあったんですね。」

「・・・あ!ひょっとして死神って呼ばれるのが嫌なのって・・・」

「・・・もしかしたらそれと関係してるのかもしれないね。」

「・・・・・・」

どうしよう、私そんなことも知らないでずっと死神さんのことを・・・。

「大丈夫だよ。廉君は久遠ちゃんのこと信頼してるから。

あの子が女の子を下の名前で呼ぶのは久遠ちゃんくらいだよ?

あ、でも赤羽ちゃんを信頼していないわけじゃないんだよ?

ただ、その・・・別に同じ名前の子がいるからってだけで・・・」

「・・・キーさん。やはりあなたの下の名前はみさきなんですね?」

「・・・うん、そうだよ。

ある意味甲斐三咲って言うのは偽名じゃないの。

僕はあの子の家族なんだから。」


3人が部屋を出てから20分。

俺一人で可愛らしい弁当が4つもあるような状況で

空手の大会の休憩室で取り残されている。

恐らくキーちゃんはあの話をしているのだろうが・・・。

「死神、」

声。振り向けば馬場雷龍寺と龍雲寺がいた。

「そんなところで何をしている?もうそろそろ第三回戦が始まるぞ。」

「分かっている。だが連れが戻ってこないのでな。

お前達こそ準備はいいのか?」

「恥ずかしながらその質問には1つ誤りが有る。

準備をする必要が有りそして出来ているのは俺だけだ。」

「どういうことだ?」

「・・・弟は一回戦で負けた。」

「ど、ども・・・。」

「・・・・・それは残念だったな。」

何だか龍雲寺がひどく申し訳なさそうな表情をしている。

そこまで深い仲でもないから他に何を言ったら良いのか分からない。

けど何か言わなくてはと言いあぐねていた時だった。

「うきゅ~~~~~~~!!!」

「わっ!?」

急に久遠が突っ走ってきて俺の胸に飛び込んできた。

「く、久遠!?な、何してるんだお前!?」

お前の兄貴が二人目の前にいるんだぞ!?

「ごめんね・・・私全然あなたの事情知らなくてずっと死神さんなんて

迷惑な名前で呼んじゃってて・・・。」

「・・・・久遠。」

「えっと・・・えっと・・・か、か、甲斐さん・・・」

俺に抱きつきながら涙目で超至近距離で久遠が俺を見つめる。

腰と腰とかこれ以上ないほど密着してる。

・・・白状します。ちょっとドキッとしました。

「・・・久遠。別にいつものままで構わない。」

「・・・でも、」

「俺が一度でもお前にそう呼ばれて嫌な顔をしたことがあるか?」

「・・・2,3回くらいあったよ?」

「・・・・・・知らなかった。が、まあいい。

俺も完璧超人ではない。

そりゃ嫌な顔を無意識でしてしまうことはあるだろう。

だがそれ以上にお前の存在には救われている。

お前のいつもの小学生らしからぬ態度と小学生らしい明るい態度は

まるで妹みたいで不安になった自分が馬鹿みたいに思えてくるんだ。

しおらしいお前も可愛いとは思うが俺はいつものお前の方が好きだ。

だからいつもみたいに笑え、久遠。」

「・・・死神さん・・・

やっぱり小学生の久遠ちゃんにメロメロなんだね・・・。」

久遠はいつものような減らず口を放って

涙を拭ってから一度全力で抱きついてきた。

「・・・で、兄の目の前で人の妹を攻略して何か一言はないか?」

「お嫁さんの前で小学生の子を攻略して何か一言ないかな?」

「・・・・・・」

気付いていなかったわけではないし

決してそのつもりがあったわけでもない。

ただ正面には馬場雷龍寺と龍雲寺、

背後にはキーちゃんと赤羽。

そして今俺は久遠とちょうど対面座位のような形で抱き合っている。

「・・・そろそろ3回戦が始まる。急いでメシを食おう。」

言うやいなや前後から拳が飛んできた。


・それから大急ぎで食事を済ませて3回戦に臨む。

妙に体力を使ってしまった。と言うか馬場の野郎本気で殴りやがって。

仕方ないとは言え大人げないんじゃないのかあいつは。

その鬱憤を貯めておきながら3回戦では、

「せっ!!」

フェイントで出来た間隙に全力のブローをぶち込み

再び隣のコートまで吹っ飛ばして開始6秒で一撃KOを果たした。

・・・我ながら記録更新だな。

そしてヘッドギアを外して息を整えると

同時にすぐ隣でやっていた試合も終わったようだ。

「勝者・馬場久遠寺!」

やはり勝ったか、久遠。

そして、俺の次の対戦相手・馬場久遠寺。

本日最後の対戦相手として不足なし。

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