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34話「魂~Reincarnation~」

SCARLET34:魂~Reincarnation~


・ある日曜日のことだった。

甲斐機関に1つの依頼が入った。

「珍しいね、外注の依頼なんて。」

「うん。まあでも甲斐機関も一応1つの企業だから

完全に僕達だけでやっていくことなんて出来ないよ。

営業的にもさ。・・・ダメだったかな?」

「いや、まだキーちゃんが社長なんだから僕は口を挟まないよ。

それに反対じゃないし。けどこれって・・・。」

机の上にあった依頼書を読む。

2か月前に精神崩壊してしまった患者の治癒作業。

「・・・甲斐機関の進歩しすぎた医術でも魔法じゃない。

こんなこと出来るものなの?」

「・・・多分無理だと思う。

でもお願いされた以上は会社としてはやらないといけないから。

それにどんなに低い可能性でも諦めちゃダメだよ。

その先でうまくいったらすごく嬉しいじゃない。」

「・・・そうだね。」

それから一時間ほどで肝心の患者が運ばれてきた。

名前は三箇牧巻太郎。13歳。まだ中学1年生か。

事故で胃袋を貫通、そして脊椎を損傷したために

電気信号が途絶えてしまい体が動かせない全身不随患者。

空手をやっているようだが試合中の事故というわけでもないようだな。

そう言えばこの前墓場で会ったあの少女も

明らかに何らかの武術をやっているようだった。

詳しくは分からないがムエタイかテコンドーだろうか。

足しか動かしていなかったからまだそんなに

長くはやっていないのだろうがそれにしては異常な程技のキレが鋭かった。

きっと無防備な場所を穿たれたら骨も肉も内臓もまとめて潰れていたな。

・・・あるいは何らかの怪我で両腕が使えないだけで

実はそれなりの経験者という可能性もあるな。

乳房が片方切断されるというほどの大怪我だ。

不自然で異常な少女という他ないが・・・。

「・・・骨も肉も内臓もまとめて、か。」

患者の患部データを見直す。

・・・まさかな。


「あぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!」

「どうしました久遠?」

ホテル。美咲ちゃんの部屋で遊んでいた私は

あの夏休みに入る少し前の事を思い出した。

「あのお墓にいた子、どっかで見覚えあると思ったら

美咲ちゃんと同じ顔の子を連れてきた子じゃない!?」

「・・・ああ、そう言えば確かに似ていますね。」

「どうしてあの子があんなところで

あんな傷でうろついていたのかな・・・?」

「・・・分かりません。」

「美咲ちゃん、あの同じ顔をした子と連絡取れる?」

「黒羽さんですね?一応連絡先を頂いていますから。」

「ならさ、行ってみようよ。」

それから美咲ちゃんの案内でホテルを出て隣町まで歩くことにした。

そう言えばあの時もこうやって二人で歩いていた時に

あの3人にあったんだっけ。

あの時は死神さんが入院中してすぐだったから

言いそびれちゃってたんだっけ。ってか結局まだ報告してないし。

「でも会ってどうするのですか?」

「え?う~ん、そう言われると・・・。

でもとりあえずお見舞いも兼ねて会ってみようよ。」

それからバスで移動して美咲ちゃんが持っていた住所に向かう。

バスから降りて数分歩いたところにその一軒家があった。

「あれ?表札が英語だよ?」

「Croce・・・クローチェ。あのシフルと言う子のラストネームですね。」

「じゃあ、合ってるのかな?」

「恐らく・・・。」

美咲ちゃんがインターホンを鳴らす。

少しして美咲ちゃんそっくりな声と顔が出てきた。

「・・・赤羽美咲・・・」

「お久しぶりです。黒羽律さん。」

それから律ちゃんに案内されて家の中に。

「・・・シフルさんは?」

「気付いたらいなくなっていた。

・・・どこにいるのかは分からない。」

「そうですか。」

「・・・何の用?同じ顔で不具合でもあった?」

「いえ。それよりお聞きしたいことがあるんです。

以前あなたやシフルさんと一緒にいたあの方はどこにいますか?」

「・・・あの妖怪か。」

「え?」

「いや、なんでも。

彼女も2学期になってから行方をくらませています。

・・・彼女がどうかしたの?」

「あの方と思われる人物とこの前会いました。

墓地で会ったのですが警察官を襲って殺害していました。」

「・・・あの妖怪のやりそうなことですね。

と言うかまだこの街にいたんだ。」

「いえ、私の街でした。あの甲斐機関があった町です。」

「・・・墓地って言ったけど何であの人が・・・。

まあいいわ、私も行ってみる。・・・何だか嫌な予感しかしないけど。」


夜になった。

患者の治療は無事終えた。

脊椎の損傷も治して電気信号も復活した。

記憶障害は残るかもしれないが少なくとも

今よりはずっと自由になれるだろう。

「廉君、お買い物行ってくれる?」

「ああ、いいよ。」

患者を見送った後キーちゃんに頼まれて夕食の買出しに向かう。

「・・・ん?」

街を歩いていたら赤羽と久遠・・・と赤羽によく似た顔の少女を見かけた。

あれは白羽睦月・・・?いや、ちょっと違う。

まさか三船のパーフェクトサイボーグか・・・!?

気配を殺して3人の後を追ってみる。

と、この前の墓地にたどり着いた。

どうしてもあの時の少女の姿が脳裏に蘇る。

「・・・そこにいましたか。」

声。赤羽・・・?いや、何処か違う。

「・・・りっちゃん。久しぶり。」

また別の声。これは確かあの少女の・・・。

「どうして私の前から姿を消したのですか?

・・・矢尻達真を殺したからですか?」

「殺したといえば殺したよ。言い訳をするつもりはない。

・・・でもね、何かまだ足りないんだよね。

心残りというか何というか。

・・・うん、私ね。多分あいつのことが好きだったんだと思う。

最初はただ殺したくて殺したくて仕方なかった。

でもりっちゃんがいない間に色々あってね。

好きになっちゃったんだ。」

「それならどうして殺したんですか?」

「・・・だってあいつはもう死んでいたから。

自分がもう誰なのかも分からないほど頭の中が壊れて、

自分が誰を愛していたのかさえも忘れてしまって・・・。

・・・そんなあいつを見ていられなかった。

前にあいつの友達から聞いたの。

あいつはかつて最愛の人をその手に掛けてしまったって。

でも、その子ももう壊れてて・・・見ていられなかった。

だから自分の手でそんな彼女に止めをさせてよかったって言ってた。

・・・私がこんなこと言うのもおかしいと思うけど

私もあいつをこの手に掛けられて嬉しいかもしれない。

そう思ってたんだ。でも、実際はやっぱり嬉しさなんてなくて・・・。

その答えが知りたくてこうやってずっとあいつの前に立ってるんだけど。

・・・やっぱりダメだね。私も壊れちゃってるからかな?」

「・・・あの男の経緯は知りませんし

あなたの過去についてもさほど詳しくはありません。

けど、そうやって悲しい顔をしている以上

あなたは壊れてなどいませんよ。

・・・とりあえず病院へ行きましょう。

その体じゃあなたまで死んでしまいますよ。」

「・・・私が死ぬ?・・・あはっ、

そう言えばそういうこともあるんだ・・・。」

「・・・・・・・」

会話を聞いていても詳しいことは分からない。

ただ、やはり深い事情はあるようだな。

「・・・あの子、死んでたのか。」

思い出した。2年前の全国大会で戦った少年・矢尻達真。

あの少年の最愛の人と言うのは

あの時キーちゃんと一緒にいたあの子だろう。

あの子が死に、そして自分の手で殺めてしまった。

そんなことがあれからの2年間であったとはな。

・・・さて、と。

「ならウチに来いよ。」

「甲斐さん!?」

「死神・・・!」

4人の前に出る。赤い髪の二人に身構えられる。

「うちは一応病院なんだ。少なくとも君は手当が必要だろう?」

「・・・・・」

「先輩、あの人の言っていることは事実ですよ。

それにあの人は矢尻達真の先輩でもあります。」

「おいおい、どうしてそこまで知ってるんだ。」

「矢尻達真のデータは事前に調べています。

2年前にあなたに敗れていることも。

それに後ろの二人の師匠であることも。

夏休みの間に私を直してくれた甲斐機関のオーナーであるながy・・・」

「キーちゃんだ。それ以上は言うな。」

「・・・失礼。キーちゃんさんの夫でもあります。

その胸だけでなくもしかしたら両手も・・・」

「大丈夫だよ、りっちゃん。」

「あ、おい!」

あの少女はまた地面を爆発させてどこかに去っていってしまった。

「・・・相変わらずの妖怪っぷりですね。」

「・・・いいんでしょうか?」

「あの様子ではまだもう少しかかるかもしれませんが

その内立ち直りますよ。・・・更生はしないかもしれませんが。

あの人は絶望の淵にいた時間があまりに長すぎるので・・・。」

「・・・・・・」

何だかよく分からないが俺達は帰ることにした。

・・・買い物を忘れたから俺はもう一度出ることになったが。

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