表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/49

33話「秋の夜の亡霊」

SCARLET33:秋の夜の亡霊


・ところで、ただ一般の空手選手であれば

ただ道場に通って稽古をしていればそれでいいかも知れない。

しかし、一定以上の階級で且つ本格的に連盟に所属しているのであれば

それ以外にも職務というものがある。

「しかし、いいのか?お前達まで連れ出してしまって。」

「いい経験だと思いますから。」

「そんなに遅くまでじゃないならいいって言われたし。」

足を壊して以来やっていなかったがもう十分だろうということで

俺は夜の見回りを警察官と一緒に行っている。

成人した大人のスタッフならば深夜にやるのだがまだ未成年だからか

夜の7~9時程度までが限界だ。

今日は早めに稽古を終えて二人の警察官と一緒に巡回をする。

飽くまでも巡回だ。今まで相手してきたのは専ら酔いどれか

不良少年程度。それも遭遇しない方が多い。

まだこの時間だし前者も後者もほとんどいないだろうから

実質警察官と一緒に夜を散歩するだけのようなものだ。

「でも・・・わざわざ走るかな?」

「久遠、普段あまり走るようなことはしないのですから

いい運動になると思います。」

そう。自転車に乗る警察官に並んで移動できるように

俺達は練習も兼ねてジョギングで巡回をしている。

この時間だとまだ早いがもう少しすると他にもジョギングのために

夜、外を出回る人が多くなる。

もしそういう人が事故にあった時に素早く対応出来るようにするのも

夜間巡回の仕事らしいが流石に本職ではない俺達に

そこまでは求められていない。

当然実際にそのようなことが起きてしまえば対応せざるを得ないのだが

そんな例はここ数年本職警官以外は経験していないそうだ。

だからか併走している警察官もどこかのんきにしている。

「いやあ、たまに高校生が一緒に巡回してくれることはあるけど

まさか中学生や小学生まで一緒になるなんてね。」

「おじさん達ももう長いけど初めてだよ。」

「まあ、今回が異例すぎるだけだと思いますけどね。」

「ね、ねぇ・・・、もうちょっとペース落としてくれない・・・?

中学生や高校生男子と同じスピードで走られたら

女子小学生としては流石にきついと思うんだけど・・・」

「甲斐さん、久遠がバテてます。」

「・・・それもそうだな。」

「っと悪かったねおじさん達だけ自転車で。」

警察官の二人が自転車から降りてくれたおかげで

俺達もジョギングをやめて徒歩での巡回になった。

「はあ・・・はあ・・・死神さんもちょっと前まで

まともに歩くのがやっとだったっていうのにもう回復してるんだね。」

「まあ、普通に学校では体育も受けてるしな。」

「甲斐さんは大倉道場での稽古は受けないのですか?」

「会長から指示の変更がない限りは今のままだ。

ちょっと足りないからお前達の稽古がない日は

家でトレーニングしてるよ。」

「へえ、キーちゃんと夜な夜なトレーニングを。」

「おいそこまでにしておけよ小学生。」

「あ、あははは・・・。おじさん達警察官なんだけどなぁ。」

「高校生同士でのそういうことはちょっと・・・。

せめて卒業してから・・・」

「あ、いや、その、」

「片方は高校生じゃなくて社長さんだから大丈夫だよね?

あ、それとも小学生な久遠ちゃんを・・・」

「久遠は黙ってろ。」

「あははは、青春だなぁ・・・」

「君も羨ましいよ。」

何故か肩を叩かれてしまう。

・・・まあ、間違いなく俺の境遇は恵まれている方だと思う。

弟子二人に嫁に元婚約者に。周りは美少女ばかりだからな。

周りから見れば矢岸さんが勘違いしたように

付き合っている関係か兄妹か何かに間違われるかもしれないな。

キーちゃん的には兄妹というのならばアリだそうだが。

そう言えば赤羽も久遠も妹だったな。

赤羽剛人に馬場雷龍寺、早龍寺。

いずれも空手の実力では俺に匹敵するかそれ以上の実力者。

そりゃそれだけの才能を持った人物の妹ならば

ほぼ今年だけの活動であれだけの成果を挙げられるというものだな。

「う、」

「ん?どうかしたか久遠?」

「い、いやここってお墓だよね?」

「そうだな。ひょっとして怖いのか?」

「あのねえ死神さん?久遠ちゃんはこれでも小学生の女の子!

夜のお墓の近くを通りかかって怖いと思うのは当たり前だと思うんだよ?」

「ならここで待つか?」

「もっと嫌だよ!?」

「甲斐さん、ちょっと意地悪です。

けど久遠、頑張りましょう。」

「美咲ちゃん・・・」

「そんじゃそこらの鬼や悪魔よりも強い死神が

すぐ近くにいるのですから。」

「おい赤羽お前もか。」

どうやらよっぽどこの前の練習試合の光景が残っているようだな。

本気ではないとは言え手加減をする余裕は

なかったから仕方ないと思いたいが。

「ひっ!!」

墓地の中を巡回する。

何かある度に久遠が面白いような声を出す。

しかし流石に俺も少し不気味ではある。

幽霊だとかを信じているわけでも全てを否定するわけでもないが

普通墓地にここまで殺気が蔓延しているものなのか?

それも生きた人間の新鮮な気配じゃなくまるで

長い間ここに居座りついていて腐りかけたような鈍い殺気だ。

前に墓地に来たのはまだ幼かった頃だからあまり気付かなかっただけで

本来墓地というのはこういうものなのだろうか。

だが・・・。

「・・・おまわりさん、この墓地。何時までの開園ですか?」

「は?いや、常時公開だから開園閉園とかはないな。」

「何かあったのかい?」

「・・・人の気配がします。こんな時間に一人だけの気配が・・・」

「・・・もしかしたら浮浪者かもしれないな。」

「一応探してみよう。」

二人の警察官が懐中電灯を持って二手に分かれて墓地内を巡回し始めた。

俺は赤羽と久遠に注意を呼びかけようとした。

その時だった。

「ぎゃああああああああああああ!!!」

「な、何だ・・・・があああああああああっ!!!」

二人の悲鳴・・・それも今のは断末魔ふつうじゃない・・・!

「甲斐さん・・・!」

「行くぞ!!」

本当ならここで待たせておくべきだったかもしれない。

だが、何となく俺の中で不安がそれを遮ってしまった。

だから不注意が頭を小突いても仕方なしに3人で走る。

・・・血の匂いがする。それに生きた殺気だ・・・!

「あれは・・・!」

前方。暗くてよく見えないが小さな人影がそこに立っていた。

そしてそれと視線が交錯した。

直後、墓地の柔らかい土が爆発した。

いや、それほどの強い力で人影が地面を蹴って距離を奪った。

「くっ!」

咄嗟の対処だった。

制空圏で練り上げた両手で鎗か銃弾のように鋭い何かを払う。

払った後で見えたがそれは膝だった。

とんでもなく速く鋭い膝蹴りだった。

また、その時に見えた。

この人影はまだ少女だった。赤羽と同じか少し年下程度の。

そして胸が片方だけなかった。

単純に育っていないというわけではない。

もう片方はたいそう立派なものがぶら下がっている。

何だこいつは・・・!?

「・・・っ!!」

「・・・ん、お前どこかで・・・!」

放たれたムチみたいな回し蹴りを殴打で相殺して

同時にそのない方の胸に拳を打ち込む。

「くっ・・・・あああああああああああああああああ!!!」

悲鳴だ。悲鳴を上げて少女はまた地面を爆発させて距離を取る。

拳を見る。血糊がついていた。

つまりあの胸は外傷でありまだ回復していない。

間違いなく何か事情がありそうだ。

それに痛覚があるということは生きた人間であるだろう。

・・・幽霊に痛覚がないとは断言できないが。

「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・くっ!!」

「おい!別にお前になにかしようってわけじゃない!

落ち着いて構えを下ろせ!」

「うるさい死神!人の髪の毛糞尿まみれにしてくれちゃって!!」

「は、はぁ!?」

「甲斐さん・・・?」

「死神さんそんなひどいことしたの・・・?」

「い、いや、待て。そんな覚えは・・・」

「・・・もういい。」

少女は地面を爆発させてあっという間に墓地から去っていった。

最後まで顔は見えなかったが・・・。

「俺のことを知っているのだろうか?」

「死神って言ってたしね。」

「・・・けど私もどこかで見覚えが有るような・・・」

「・・・とりあえず連絡しよう。」

二人に見せないようにして散らばった警察官二人の死体に近づき

無線機を手に取り警察を呼ぶ。

「・・・ん?」

先ほどの少女が立っていたとされる場所、墓石の前だった。

「・・・矢尻達真・・・?」

どこかで聞いたような名前だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ