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32話「立ちはだかる強敵」

SCARLET32:立ちはだかる強敵


・稽古の後、俺達3人は大倉道場へとやってきた。

「おお、甲斐君。治ったのかね?」

「はい。これでもう現役として戦えます。」

「そうか。それで、決めたかね?赤羽君のことは。」

「はい。しばらくは私が面倒を見るつもりです。

そこで、会長。一つ提案があるのですがいいでしょうか?」

「なにかね?」

「12月にあるカルビ大会。私も参加してよろしいでしょうか?」

「君がカルビ大会に!?」

「ええ。病み上がりなのでちょうどいいと思ったのと

この二人と一度公式試合で戦ってみたいと思うのです。」

「・・・なるほど。

確かに君は全国大会レベルだが全国大会で

優勝はしていないから参加資格はある。

分かった。承認しよう。」

「ありがとうございます。」

「甲斐さんと公式試合で戦える・・・・」

「その時は負けないからね、死神さん。」

「上等だ。」

「そうそう、久遠寺君。」

「え、私?」

「今度のカルビ大会には君のお兄さんである

馬場雷龍寺君も参加するそうだ。」

「え!ライ君が!?」

馬場雷龍寺・・・・。確か俺より二つ年上だったな。

奴も全国大会レベルだと聞くが・・・・・。

「久遠、聞いていないのか?」

「うん。馬場家は兄弟同士でも滅多に会話とかしないし。

う~ん、私ライ君あまり好きじゃないんだけどなぁ。

あの人すごくこわいし。」

馬場家。空手の名家。

11歳の久遠がここまで強いのだから普通ではないのだろう。

事実俺の右足を砕いた二男の馬場早龍寺の実力もかなり高かった。

長男の馬場雷龍寺はその上を行くのか・・・・。楽しみだ。

「それと、こんな手紙も届いている。」

「手紙って、直接言えばいいのに。」

久遠が渋々渡された手紙を読む。

「・・・・・・・・はぁ。」

「どうした?ため息なんかついて。」

「読んでいいよ。」

「?」

久遠から渡された手紙を読む。中身はこうだ。

{久遠、お前のうわさは聞いている。

馬場家は結果がすべてだからとやかく言うつもりはないが

一言言わせてくれ。兄はお前が女に走ったと聞いて不幸だ。考え直せ。}

と。

「・・・・・女に走ったって何事だ?」

「私と美咲ちゃんの仲のこと言ってるんでしょ。」

「?お前たち二人は友人同士じゃないのか?」

「・・・・。」

何故かそこで恥ずかしそうにうつむく赤羽。

「いや、その・・・・ね?」

久遠もなぜかこんな態度だ。

・・・・二人に何かあったのだろうか?

まあ、久遠に女好きの気があるのはわかっていたがまさかな・・・・。

ともあれ俺たち三人は12月のカルビ大会への参加を済ませ、

道場を後にした。

「赤羽はカルビ大会参加でいいのか?」「はい。」

「というか美咲ちゃんの実力ならカルビでもおかしくないでしょ。

私も出たことないけどさ。」

「ところでどうしてカルビ大会という名前なのですか?」

「カルビってのは下腹って意味で、

本腹である全国大会の一歩手前の大会だから

カルビ大会って呼ばれてるんだ。」

まあ、それも俗説で正確な由来は俺もよくわかっていないんだがな。

カルビ大会は全国で優勝できない奴が出ることが多いから

下の奴らって意味でカルビかもしれないし。

そして翌日。見事に俺のカルビ大会出場の情報は

道場内のニュースとなって道場内の新聞の一面トップを飾ることとなり、

雷鳴をほとばしるきっかけを作ってしまった。

それにより本来は出る予定がなかった猛者たちも

俺を倒して名を得るためにカルビ大会への参加を決めてしまった。

・・・・今年の12月は無傷で終われそうになさそうだな。

・カルビ大会まであと3ヶ月。

俺自身もだが赤羽達も稽古を積まなければいけない。

「だから今日は大倉道場から何人かを連れてきた。」

ちょうど稽古をやる時間に担当者と掛け合って

ここで稽古をすることにした。

「えぇ~?せっかく3人に戻れたのに~?」

「久遠、あまり贅沢はいけませんよ。甲斐さんの言うことを聞かなければ・・・」

「美咲ちゃんは真面目だなぁ。

でもさ、正直久遠ちゃんと張り合えるのっているの?」

久遠が面倒そうに連れてきた8人を見る。

「甘く見るなよ、こいつらも全員清武会で優勝経験がある奴らばかりだ。

経歴だけならお前らと同じ、実力も互角以上と見える。」

「・・・構いません。私の相手に格下なといませんから。」

「ふぅん。ま、久遠ちゃんは相手が誰でも負ける気はないんだけどね。」

それから稽古を始めた。

本来は大倉道場式の稽古をしなければいけないのだが

会長より好きにやってくれて構わないとのことだ。

だから俺流の指導をしてやる。

「・・・・ほう、」

稽古を初めて30分。流石に大会の猛者というだけあって

俺の指導で息を切らさないとはさすがだ。

体力でも赤羽以上か。

「今からスパーリングを始める。1分半で1周するように。」

メンバーは俺を除いて10人。5つのスパを9回行うことになる。

しかし、赤羽も俺のいない間に大倉道場で稽古を受けていたからか

元々高水準だった基礎がさらに磨きがかかってるな。

やはり師としての腕前は佐久間さんと比べて俺は底辺もいいところだな。

「はあ・・・はあ・・・・」

「どうした、もうやれないか?」

「ま、まだです・・・!」

弟子の完成度が違いすぎる。

今赤羽とやってるのは大倉道場全体から見てもそこまで強いほうじゃない。

清武会優勝したって話だが2度目を飾れるのは数年後になりそうだ。

はっきり言ってカルビに出れるレベルじゃない。

しかしそれでも今の赤羽じゃ難しい相手だな。

応用力が違いすぎる。今まで赤羽が戦ってきた相手のほとんどが

特定の技を特化した相手ばかりだった。

が、そんなのは全体から見れば希。

本当に強い奴というのは何をしても強い奴だ。

総合的な完成度が空手における実力だと言っていい。

そういう面では遠山は確かに伏見で最強クラスと言ってもよかっただろう。

恐らく今の赤羽がもう一度戦っても遠山にはまだ勝てないだろう。

そしてそういう強敵が大半を占めるのがこの世界だ。

清武会ならともかくカルビに参加できるのは大体早くとも5,6年は

この世界で戦い続けた猛者ばかり。

どんな世界においても基礎を長年積み上げた奴が一番強い。

「よし、一周したな!ではこれより練習試合を開始する。

本番の試合と同じ形式で行う。ただし対戦相手は自分で選ぶこと。

全員1回は必ず行うこと。では、最初にやりたい者は手を上げろ。」

「はい!」

「久遠か。誰を選ぶ?」

「毒島さん!」

毒島、大倉道場から連れてきた中では一番強い奴だ。

俺もコンディション次第では危ないかも知れない。

今度のカルビにも参加をするらしいし、いい機会かも知れない。

「毒島、どうだ?」

「構いません。お願いします。」

「よし、3分だ。ただし延長戦はない。」

久遠と毒島が道場の中央に来て構える。

「始めっ!」

合図を出す。同時に毒島が繰り出した。

ただ距離を詰める。それだけのことだがそれを長年続けたものが

やればどうなるか。

「っ!」

「せっ!」

一瞬で距離を詰めて久遠に蹴りを放つ。

その蹴りは久遠には届かなかったが次々と鋭く速い攻撃が放たれていく。

この男もやはり長年基礎を磨き続けた本物だ。

久遠の制空圏を破れるかどうかは分からないがいい勝負にはなるだろう。

「っ~!たっ!」

久遠も攻撃を捌きながら自らも攻め入れる。

制空圏の隙を突いた強烈な一撃。

が、それと同時に毒島もまた強烈な一撃を放った。

「!?」

「せっ!」

中空を二人の足が交差した。

先に出したのは久遠の方だったが足が長い毒島の方が先に、

攻撃を放つために防御が薄れていた久遠の胸に命中した。

この目で久遠の制空圏が練習とは言え

試合で破られたのを見たのは2度目だ。

そして、制空圏に守られすぎていて印象は薄いが

久遠自体はまだ空手を初めて1年経っていない、

体が成長しきっていない小学生だ。

その久遠にがっちりと体を鍛えた男子高校生である毒島の攻撃が

急所にカウンター気味に叩き込まれれば・・・。

「・・・う、うううっ・・・・!」

「久遠・・・・」

久遠は蹴られた胸を押さえながらその場に沈んだ。

「久遠、やれるか?」

「と、当然だよ、死神さん・・・?」

壁に手を当てて立ち上がる久遠。

が、どう見ても今の一撃で体力のほとんどを奪われたのは明白だ。

立ち上がれるのが不思議なくらいだ。

「フーッ・・・」

久遠が構えて制空圏を練り直す。

「・・・・・。」

毒島が一度こちらに視線を送る。俺は黙って頷く。

と、毒島が再び距離を詰める。

久遠は防御に集中しているのか一歩も動かずに

毒島の攻撃を凌ぎ続けている。

そうして体力の回復を待つという手段か。

しかし毒島もそれを察したのか下段への攻撃を集中させた。

制空圏と言う型はあらゆる攻撃を手で防ぐのだが

手の届かない下段は足で防ぐしかない。

しかし足で蹴りを捌くのは難しい。少なくとも今の久遠にその技術はない。

だから毒島のキック力がそのまま久遠の足を刻んでいく。

「はあ・・・はあ・・・・」

20秒もすれば久遠の両足は痙攣していた。

脛を守るサポーターも道着の裾ごと引き裂かれて露出している。

あれではもはや普通に歩くことも難しいだろう。

相手の戦術に合わせて臨機応変に柔軟に自らの戦術を変えていく。

毒島のあの汎用性の高さを見ていると

一昨年の大会で戦ったあの少年を思い出す。

・・・俺も強くならなきゃな。

「きゅ~・・・」

それから時間目いっぱいまで足を蹴られ続けた久遠は

力なく畳にひれ伏した。

「久遠、制空圏だけに頼りすぎたな。」

「し、死神さん・・・・うう、」

「赤羽、久遠に手当を。」

「はい、甲斐さん。」

「甲斐・・・先輩、」

「ん?」

毒島が俺の方へとやってきた。

同い年だから先輩と呼ぶのに抵抗がありそうだが。

「俺はあなたとやってみたいのですが。」

「・・・いいだろう。」

「甲斐さんが・・・?」

「死神さんの試合か・・・。」

ギャラリーがざわつく。その中俺はサポーターを付ける。

「全力でお願いします。」

「当然だ。」

練習とは言え8ヶ月ぶりの試合か。

どうなるものか・・・。

毒島隼斗。俺と同じ高校3年生。

空手歴は12年。11歳で初めて清武会を制覇してから

7年間他のあらゆる大会でも優勝してきた本物の男。

「敷島、タイマーを頼む。」

「押忍!」

毒島の次に歴が長いと思われる敷島にタイマーを頼み、

俺は毒島の前に向かう。

「・・・・いよいよですね。」

「・・・そうだね。」

赤羽と久遠の声がする。が、今は目の前の男に集中だ。

「始めっ!!」

敷島の合図。同時に俺は拳を繰り出す。

「え、まだあんなに離れているのに!?」

「いや、見てください。あれを。」

俺の拳は確かに奴が動く前に放たれた。

だが、ほぼ同時に毒島は距離を詰めた。

結果距離を詰めた瞬間に俺の拳が奴の胸に叩き込まれた。

「ん、」「はああっ!!」

右拳で奴の両膝を1秒で撃ち抜き、バランスを崩した毒島を足払い。

「っ!」

毒島は何とか回避してすぐに体勢を立て直す。

が、奴が腕を構える寸前に、その腕で隠す前に脇腹を撃ち抜く。

「・・・攻撃どころか行動よりも速いなんて・・・・」

「くっ!」

毒島が仕掛けてきた。奴が一歩する毎に下腹・脇腹・膝を撃ち抜いていく。

距離を詰めた奴はすぐにローキックを狙ってきた。

しかも右足に。的確だな。だが無意味だ。

ローキックをパンチで相殺し、反し椿で鳩尾を撃つ。

そして同じ場所に、

「白虎一蹴!!」

飛び後ろ蹴りを叩き込む。

ガードの上から威力があいつを襲い、

1,2メートルほどその体を吹っ飛ばす。

「・・・・・・・・く、」

倒れはしなかったがどうやらガードした右腕が

激しく痙攣している所を見るに罅くらいは入ったようだな。

「続けるか?」「当然。」

まだ時間は20秒しか経っていない。

あと160秒でいくらでも逆転されるかもしれない。

ならば利き腕一本程度の犠牲目を瞑ると言ったところか。

面白い、ならば今度はこちらから攻めさせてもらう。

左足を前にして体を大きく屈めて一気に前に跳ぶ。

「あれは、綺龍最破・・・!」

0,01秒で距離を縮めて奴の右肩口に突進するように右拳を叩き込む。

この一撃は弾丸より速い。そのはずだ。

が、奴はこれを回避して俺の右脇腹に膝蹴りを叩き込んだ。

「ぐっ・・・」

着地して構え直す。まさか一発で対処されるとは。

俺の最破を初見で破った奴は初めてだ。

こりゃ赤羽も久遠も歯が立たないに決まってるな。

「・・・行くぞ!」怯む暇はない。

素早く距離を詰めつつパンチ連打。

2秒で10発。その内3つは防がれた。

10発目を終えると同時に奴の前蹴りが迫った。

それを左手で払うと同時に右手でその足の脛を殴る。

「くっ・・・・」

「はあっ!!」

足を戻すと同時に痛み出した毒島の胸に足を止めてパンチ連打。

さっきと違って足を止めている分速度は速く、

5秒で30発を打ち込みその全てが命中。

後ずさり始めた毒島だが距離を詰め続け、離れさせない。

そしてその間も連打は続ける。

それどころかどんどん加速させていく。

「ぐうううううううううう・・・・・」

「コォォォォォォォォォォォォッ!!!」

15秒で100発以上のパンチを打ち込み腕全体から煙が出る。

摩擦熱で袖が破けていた。

毒島の方は全身に拳の跡が焼きついていて同じように煙が出ていた。

「・・・かはっ!!」

その口から黒い煙を大きく吐いた。

「まさか今の攻撃全てに送熱を!?」

「・・・まだやれるか?」

「・・・・とうぜ・・・・・ん・・・・ぐふっ!」

しかし膝から崩れ落ちた。すぐに道着の上を剥がすと、

全身が鉄板で熱せられたステーキのように焼けていた。

「こ、拳の死神・・・・」

誰かがつぶやく。

「仕方ないだろ、送熱込でラッシュをすれば人体なんて

トースターみたいに焦げるに決まってる。

どうやらそこまで腕はなまっていないようだな。」

黒く発熱した両腕のサポーターを剥いで蛇口に放り投げる。

「さあ、次に誰が指名する。まだ練習試合は続けるぞ。」

それから恙無く稽古が続いていき

すべての練習試合が終わって稽古も終わる。

「甲斐さんはすごいですね、さすがは拳の死神です。」

「そのあだ名、あまり好きじゃないんだがな。」

「え、そうだったの?ずっと私にそう呼ばれてたじゃん。」

稽古が終わり大倉道場の生徒を帰した後3人で甲斐機関に向かっていた。

「ただいまー。」

「おかえりー。」

そこではキーちゃんがいて夕食を作ってくれていた。

「・・・相変わらずですね。あなたは。」

「だって僕はここの社長で廉君のお嫁さんだもの。」

「だってさ、死神さん。いやぁ、聴いてる私達も照れちゃうよね。」

「・・・うるさい。」

「ほら、みんな手を洗ってきてね。」

それから4人で夕食を取った。

きっとこれからこういう日々が続いていくのだろう。

少なくともあと3ヶ月は。

「でも死神さんってホントに強いよね。

この久遠ちゃんがちょっと苦戦した相手を

全く簡単に倒せちゃうんだもん。」

「苦戦どころか圧倒されてただろう。」

「こ、虎徹使ってれば勝ったもん!」

「久遠、あれは練習試合で使っていいものでは・・・」

「死神さんのトースターラッシュに比べれば可愛いものだと思うよ?」

「・・・否定はできないが・・・」

「甲斐さん、実際今の私達はどうですか?」

「そうだな。お前達こそ今日の練習試合を通じてどうだったんだ?

大倉道場のエース達と交えた感想は。」

「流石にどの方も強かったです。正直私なんかでは・・・」

「確かに。私の制空圏があんなあっさりと破られるとは思わなかったよ。」

「あの連中でも大倉道場では30位内に入るほどの猛者だろうが

全国で見れば数百位が妥当だ。カルビ大会でもあの中で

ベスト8にまで勝ち残れるのは一人か二人だけだろう。

赤羽、お前はもっともっと強くなる。

もう数年すればカルビ大会でも優勝できるくらいにはなるだろう。

久遠だってそうだ。もっと成長すればいずれ俺を超える大物になるはずだ。

二人共、今度の大会が全てじゃない。

まだまだ未来があるんだ。そのつもりで大事にしろよ。」

「はい。」「任せといて。」

「よし、キーちゃん。おかわりだ。」

「はーい。」

やはり、こういう日々はいいものだな。

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