31話「死神再び」
SCARLET31:死神、再び
・9月19日。
月曜日。俺は2か月ぶりの覚醒を果たした。
「・・・お、おお!!!」
右足がかつてと同じように自由自在に動くぞ!
予想通りとはいえ半年以上も不自由していたからな。
「久しぶり、廉君。」
キーちゃんが出迎えてくれる。
「一人にさせてごめん、キーちゃん。でも、もう大丈夫。」
俺は元気になった右足を見せる。
「・・・お前もありがとうな。」
傍らに置いてあった杖に感謝を述べる。
「赤羽ちゃんと久遠ちゃんには今日廉君が起きるって伝えてあるから
夕方にいつもの道場で待ってるって。」
「わかった。」
現在時刻は昼の2時。稽古の時間までは3時間ある。
なので久々にキーちゃんの手料理を食べ、体を慣らす。
ずっと右足に負担がかからないよう左に
体を傾けていたからまずはそこから治そう。
そして夕方。4時になったので甲斐機関を出て
道場へ向かった。杖なしで外を歩くのなんて本当に久しぶりだな。
「・・・・ここか。」
もはや懐かしくもなるこの道場。
いつもは左手で開けるこの扉を右手で開ける。と、
「え?」
「あ・・・・」
飛び込んできた景色は畳の上で
胴衣を着るために全裸になっていた赤羽の姿だった。
「あ、赤羽・・・・・」
「か、甲斐さん・・・・!!」
一瞬笑顔になる赤羽。だが、
「・・・とりあえず出てください。」
すぐ冷たい顔でそう言われてしまった。
ひ、久しぶりに赤羽の裸見たな。
「・・・・・もう、平気ですよ。入っても。」
扉越しに言われ、中に入る。
そこには真紅の胴衣をまとった赤羽が立っていた。
「久しぶりだな、赤羽。」
「はい、甲斐さん。」
「・・・背、伸びたか?」
「はい。成長も再開したようですから。」
「なるほど、通りでまだほとんどないとはいえ下の毛も・・・・」
「言わないでください!!」
赤面して返す赤羽。そんな彼女の頭を右手で撫でてやる。
「・・・・足、治ったようですね。」
「ああ。これで君に100%の稽古をしてあげられる。」
そういって畳部屋のサンドバックに近づく。そして、
「白虎一蹴!!」
高速の飛び後ろ回し蹴りをサンドバックに叩き込む。
まるで爆弾でも当たったかのような轟音を発し、
鎖が切れてサンドバックが吹っ飛ぶ。
「・・・・すごい破壊力・・・・」
「ま、ざっとこんなもんだ。ところで久遠は?」
「はい。もうそろそろ来ると思いますよ。」
「あーっ!!死神さんだぁっ!」
そして久遠が来た。
「よ、久遠。」
「本当に死神さんが杖を使わないで立ってる!完全に治ったんだね!」
「ああ。これで、お前ともまともな組手ができるってもんだ。」
「わくわくするね、死神さんと組み手ができるなんて。」
思えばこいつとあの日であってまともに組み手をしたのは一度もなかった。
「よし、今日の稽古はスパーリングだ。
お前たちが2か月でどこまで強くなったのか。
俺にぶつけてこい。俺もどこまで力が戻ったのか確かめたいからな。」
「はい。全力で応えます。」
「ま、久遠ちゃんは死神さん相手でも負けないけどね。」
2か月ぶりに見る二人。二人とも背が伸びている気がする。
そういえば二人は8月に清武会に出たんだよな。
後で結果を聞いてみるか。
ともあれ
「・・・楽しみだ。」
胴衣に着替え、再び3人で畳部屋に集合する。
赤羽の胸くらいの身長しかなかった久遠が今ではほとんど赤羽と変わっていない。
赤羽も俺の肩くらいまでだったが今では俺の顎くらいまでは伸びている。
「ところで二人は清武会に参加したんだよな。結果を知りたい。」
「まず久遠ちゃんは優勝したよ。まあ、久遠ちゃん負けないし。」
「私は準優勝でした。決勝では久遠に負けました。」
「決勝で二人が当たったのか。」
「でも美咲ちゃんかなり強くなってたよ。死神さんも驚くと思うよ?」
「楽しみだ。よし、さっそくスパーリングと行くか。」
まずは赤羽とからだ。
久遠とやるにはたとえスパーリングでもそれなりに余力がないといけない。
「1ラウンド2分を3ラウンドだ。久遠、時間を頼むぞ。」
「りょーかい。」
「行くぞ!赤羽!」
「はい!甲斐さん!」
「かいし~っ!!」
久遠の合図で赤羽が猛スピードで接近する。
一瞬で間合いを詰められてしまう。
が、赤羽の攻撃を制空圏で回避し
その腹に膝蹴りを打ち込む。拳は・・・まだつかわない。
「くっ!」赤羽の足技を制空圏で回避していく。
こうして対戦してみると彼女のスピードがよくわかる。
スピードだけなら普通に実戦クラスだろう。
だから攻撃が回避し辛い。おかげで何発か防げずにくらってしまう。
けど被弾以上の数の攻撃を赤羽に当てているのも事実だ。
右足の調子もいい。
だから、
「重ね刃!」
「!」
彼女の蹴りに重ねるように俺も蹴りを行ない、足と足を激突させる。
こうなったら勝つのはパワーのある方。
つまり、破壊力は俺の方が上。
「ううっ!」
ひるむ彼女。そんな彼女を持ち上げて空高く投げ飛ばす。
「・・・・この技は確か・・・・なら!」
彼女も天井を蹴って構える。
「直上正拳突きぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
「朱雀堕天!!」
空中で激突する互いの技。
以前は無防備に食らうことしかできなかった赤羽も
この技の威力を相殺するまで成長したか・・・!が、
「・・・・うっ!」彼女は着地に失敗して倒れた。
いや、技が相殺された瞬間に拳を彼女の腹に打ち込んでいた。
「さあ、赤羽。お前の炎を見せてみろ。」
「・・・了解です。朱雀!!」
赤羽が変調を始める。
やはりスピードが速いだけあって朱雀の変調もきわどい。
技を教えた俺でさえその変調に引っかかって隙を見せてしまう。
「はあっ!」
そこへ彼女が飛蹴りを打ち込む。
「くっ!」
さすがにひるみはしなかったが大したダメージだ。だがやはり。
「はあ、はあ、う、」
彼女が攻撃した瞬間に連打を打ち込んでいた。
動きのスピードなら勝てないが、パンチのスピードなら負けない。
まだ俺のパンチは彼女には見えていないようだ。
「はい、時間終了。次は久遠とやろうよ、死神さん。」
「ああ。楽しみだ。」
赤羽とのスパーリングを終えて久遠が前に出る。
「死神さん、すごくうれしそうだね。
そんなに小学生とやるのがうれしい?」
「馬鹿言え。」
いつもの冗談に対して返す。だが現に俺はわくわくしていた。
そして久遠とのスパーリングを始める。
相変わらず恐ろしいほどに硬い制空圏だ。
「しゅっ!」
「っと!!!」
可能な限りスピードを上げたパンチを繰り出すも
あと一歩のところで防がれてしまう。
「ひゃ~、見えなかったよ今の。・・・やっぱり楽しいね!」
久遠が前に出る。
俺が練り上げた制空圏のわずかな隙間を的確についてくる。
こいつの恐ろしいところは鉄壁の防御力ではなく
このどんな防御もすり抜けて狙い穿つ
狙撃力だろう。朱雀を繰り出すも攻撃はすべて防がれた挙句
隙も作れずにカウンターを受けてしまった。
「どう?死神さん。」
「まいったな。攻撃が全然当てられないし、防げもしない。
・・・だけど、この一撃はどうしようもないだろう、久遠。」
俺は拳を握り、久遠に繰り出す。
久遠はそれを当然のように制空圏で防ぐ。
が、
「!?」
直後久遠はバランスを崩して俺の胸に倒れこんできた。
「あ、れ?どうなってるの・・・?」
「秘密だな。」
この技までは見切られないようだ。しかし二人とも確かに強い。
これなら12月は期待できそうだな。




