25話「天才少女フェイズ3」
SCARLET25:天才少女フェイズ3
・ふう、びっくりしたなぁ。
けど死神さんがここまで怒るなんて。
「ううっ・・・・」
とりあえず美咲ちゃんと二人で死神さんを寝かせて
傷の手当てをしないと・・・・。
「うわっ・・・・」
あっちこっち骨が折られてるよ。
それになんといっても右足がひどい・・・・。
「すぐに医療スタッフの方を呼びます。」
「お願い、美咲ちゃん。」
美咲ちゃんがケータイで呼ぶ。
「・・・・で、こっちのみさきちゃんは何考えてるのかな?」
「え?僕?」
「そうだよ。さっきから何もしゃべってないし。
心配そうに彼氏を見つめるのはいいけどさ、
余計なこととか考えていないよね?」
「余計なこと?」
「そう。キーちゃんがこの人のもとを離れれば
すべて解決するとか思ってないでしょうね。」
「・・・・君は頭がいい小学生だね。
大丈夫だよ。そんなことしたら廉君が怒るから。」
「・・・やっぱり君たちいいカップルだよ。」
「けど、どうすれば解決するのかなって。
あの子たちの言い分も間違ってはいないし・・・。」
「でも、あの人たちのやり方は気に入らないね。
気持ちはわからないでもないけどさ。」
「うん・・・。だからどうにかしてあげたいなって。」
全くかなわないよこの人は。
あの死神さんが命がけで守ろうとするだけの女だよ。
「きました!」
美咲ちゃんが誘導し、スタッフの車が来た。
すぐに3人のスタッフが来て死神さんを運んでいく。
「あなた方も来ますか?」
「僕は行くよ。」
「そうだね。私も行こう。美咲ちゃんは?」
「行きます。」
お父様に怒られそうだけど放っては置けないし。
「鍵はキーちゃんに預けるね。」
「うん。任せて。」
道場の鍵を閉めてキーちゃんに渡す。
そのあとスタッフの車で特別病院に行って死神さんは手術室に。
その間にキーちゃんから詳しい事情を聴く。
「・・・なるほどね。」
どっちもどっちで自分の正義を貫いているってところかな。
大きなポイントとしてはキーちゃんの存在と死神さんの右足。
この二つは二者択一って感じかな。
キーちゃんを取れば右足は治らないし
右足を治すためにはキーちゃんを見捨てないといけない。
「・・・・・。」
「ん、どうしたの美咲ちゃん。」
「いえ、以前も甲斐さんは私のためにあの青龍一撃を放ちました。
その時でさえ怪我がひどくて入院したのに今回は・・・・。」
「あの人結構無茶するからね。」
ある意味羨ましいかも。私だけまだ一度もないし。
まあでも死神さんには救われたからいいかな。
「ねえ美咲ちゃん、今度は私たちであの人を助けてあげようよ。」
「そうしたいのはやまやまですがどうする気ですか?」
「死神さんを困らせているのはあの右足でしょ?
ならなんとか右足を治そうよ。」
「ですが空手連盟の医療技術では難しいのですよ?
日本でここ以上に医療がすぐれているのは甲斐機関だけです。」
「ならアメリカに行くのはどうかな?」
「無理だと思うよ、ここの空手連盟なら医療費は出るけど
それ以外だと医療費は出ない。難しい手術をするにはかなりお金がいる。
けどそれをあの人が出すとは思えない。」
「むう・・・・・。」
八方ふさがりだよねやっぱり。
・「・・・・・う、」
気付いたら知らない天井だった。
いや、見覚えはあるな。
「あ、気付いた?」
「キーちゃん・・・・?ああ、そうか。」
ライル・ヴァルニッセとの戦いの後気を失っちまったのか。
で、ここは空手連盟の特別病院か。
「よう、」
「牧島さん・・・・」
「相変わらずお前は無茶ばかりするわなぁ。
ついこないだ運ばれたばかりだっつうのに。」
「・・・・で、俺のけがはどうですか?」
「ああ。ろっ骨3本、左右の鎖骨が折れているな。
まあこれならまだいいんだが、問題は右足だ。」
「・・・・・どうなってます?」
「はっきり言う。これ以上は無理だ。」
「は?」
「まず1月にお前が運ばれたとき。
あの時の時点で治る確率は50%だった。
週2のペースで治療をすればまあ1年くらいで治っただろう。
だが2回目。2月にお前が運ばれたとき。
あれで率は20%にまで低下。治ったとしても2年はかかる。
んで、今回。ついに20%から0%になっちまった。
いくら時間をかけて手術しようが悪化を防ぐのが精一杯だ。
これ以上よくなることはない。」
「・・・・・。」
「そこの子から事情は聞いた。
そこでだ、甲斐機関の技術なら治るかもしれない。
あそこの医療技術はアメリカの5年先を行っている。」
「あんたいつから回し者になったんだ。」
「ただの情報だよ。ほら、杖。」
「・・・・。」
差し出されたのは以前の樽のようなタイプの杖ではなく
もはやバイオリンとかコントラバスみたいな大型楽器だった。
「もう足切って義足にしたほうがいいんじゃないのか?」
「生足並みにいい義足があったらな。」
「・・・廉君、ごめんね。僕のせいで・・・。」
「キーちゃん、そんなこと言わないでよ。
キーちゃんにはさ、謝ってもらうより
ずっと笑ってくれていた方がいいんだからさ。」
「・・・・うん。」
「あぁー・・・・・お二人さん。ここは病院なんでな。」
牧島さんが咳払いをする。
「赤羽ちゃんと久遠ちゃんは帰ったよ。もう遅いし。」
「ん、」
時計を見れば夜中の3時だった。
「まあ、こんな時間に帰すわけにもいかないから
今日は病院に泊まって行け。じゃ、俺は帰るから。」
「すみません、牧島さん。」
なんだかんだでこの人はいい人なんだがな。
「・・・ねえ、廉君。僕はどうすればいいのかな?」
「どうって?」
「さっき久遠ちゃんが言ってたけれど
廉君が甲斐機関を受け入れられない理由は
僕の存在とその右足だって言ってたんだ。
その右足がもうダメってことは僕は・・・。」
「キーちゃん、いなくなろうとなんてしないでくれよ。」
「わかってるよ。ただ、何かしてあげたいって。」
「大丈夫。キーちゃんが笑ってさえいてくれれば何でもできるさ。」
「・・・うん。あのね、
今度の土曜日にあの人たちが来たときに僕も会話に参加していいかな?」
「え?まあいいけど、どうする気だい?」
「ふふ。内緒。でもたまには奥さんを頼ってよ。」
「・・・・たまにどころか君にはいつも感謝して信頼しているけどね。」
少し、元気が出てきたな。けど問題なのはライル・ヴァルニッセだな。
奴には四神闘技をすべて見られてしまった。
もし奴が力ずくで来ようものなら・・・・・。
いや、それでも負けるわけにはいかない。




