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冬の狼  作者: CANDY
欺瞞の章
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Act81 青い男

 ACT81


 私は小刀を抜くと、エリの前に立った。



 それは小さな蝋燭を手にフラフラと蠢いている。

 肉と骨と腐った何かが、人の形をしていた。


 蛆の涌いた半眼に、腐った面相。

 青い頭髪が頭から突き出ていた。

 内臓もあらかた失われ、肋骨と腰骨に少しだけ筋肉が残っている。

 一言で言うなら、埋葬された遺体が這いだしてきたという感じだ。


 不思議と恐怖は無い。

 ただ、嫌悪感だけがある。

 匂いと、蛆の蠢きが醜怪だ。



「近寄るな」



 おーや?

 呼んだのは、おーまえらじゃぁないか

 俺は腹あがぁいたいんだよぅ

 ようがないのかーい

 なら、かじってもへいきだよなあぁ



 白い歯をむき出しにして、それはガチガチと歯を鳴らした。

 それにエリが手を叩いた。

 青い男は、私の後ろにいるエリを見た。



 おーや、これは、これは

 俺もうーんがむいてきた

 これで腹のいたーみもとれる

 いたいーんだよぉ

 ずーとずーと



 骨の隙間に指を入れながら、青い男は部屋の中に戻った。



 じゃぁ、婆さまんとーころへ

 ごあんないだぁ

 それまで、俺がぁはなしてやるよぉ

 地獄へいーくまでのあいだになぁ



 どうやら、青い男は、角灯に火を入れて持ち出したようだ。

 黄緑色の灯りに照らされて、通路はぼんやりと明るくなった。



 腐った体の男は、私達が来た道を引き返し、あの風の吹き付けてくる通路に向かう。

 どうやら、何処かへ道案内をするようだ。

 ふらり、ふらりと歩きながら、時折調子外れの歌をうたい。そして、話し始めた。


 黄緑色の灯りの中で男が話すのは、そう、シュランゲ村での事だった。



 私は小刀を戻すと、腐れた男の後を追った。



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