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冬の狼  作者: CANDY
欺瞞の章
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Act73 祈る男

 ACT73


 男が一人、祈っている。





 美しい磨り硝子の窓から、月の光が射し込む。


 男は膝を付き、一心に祈っている。



 私は、男の背後に立った。



 違う、男の背後に立っているのは、青白い顔の男だ。


 少し、悲しそうに、祈る男を見ている。

 その表情は、彼によく似ていた。




 背後の男は、私を見た。


 ゆったりとした外套に、身分が想像できる衣装を身につけていた。




 気に病むことはない


 と、伝えて欲しい


 罪は、為した者にある


 故に、お前は自由である


 悪は為した者に宿り

 お前を、さも罪人の如く裁こうとする


 だが、お前は、自由だ。


 お前が、痛みを覚える必要はない


 お前が、悔いる必要はない


 なぜなら、非道な行いは為した者にかえるのだから




 男の首は中程まで断ち切れていた。

 首の骨で辛うじて受けた刃が止まったのだろう。


 私の視線に気がついた男は、そっと左手で傷を押さえた。





 気をつけるのだ、供物の女よ


 腐った魂は、見た目ではわからぬ


 迷う心と腐れた心は似通っている


 だが、真実は、全く似てはおらぬ


 美しい包みには真心が入っているとは限らない





 我は、それが見抜けなかった


 せめて...








 二週間ほどかけて、私達は、城と城下町を歩いた。

 何れも、金属の物が赤かった。

 そして、気がついた事がある。

 何れも、裕福な家庭に、それはあった。

 今のところ、新しい病人は出ていない。

 侯爵の病状も、安定し始めた。

 医師は、余命を取り消した。


 そして私は、毎晩、夢を見る。

 首を切られた男と祈る男の夢。

 カーンなら、夢は夢と笑うだろう。

 だが、私は…気になるのだ。

 祈る男は誰だ?

 男こそが、原因ではないのか?


 何故か、祈る男は顔を臥せていて、誰だかわからなかった。





 気をつけるのだ


 アレがそろそろ目を覚ます





 祈る男が振り返る

 いつも、そこで目が覚めるのだ。

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