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冬の狼  作者: CANDY
欺瞞の章
71/355

Act61 中原の魔物 中

 ACT61


 お茶のお代わりをもらう頃、やっと陽が昇った。

 細かな塵がキラキラと光り、床の模様を切り取っている。


「さて、彼らがいなくなった後の話からね」




 領主は、いなくなった者を追わなかった。

 貧民を追い払ったぐらいにしか考えなかった。

 むしろこれで、青馬は丸ごと自分の物だと思ったんだね。

 そこで、最初は領内の馬を扱う者に、青馬を捕らえるように指示した。

 でも、元々、青馬を捕らえるのが難しいから手には入らなかったのに、おかしいよね。

 それでも領主の指示だ。

 領民は色々がんばった。

 ん?

 どんな風にかって、今までどうり、馬を追いかけ罠をはったのさ。

 でも、経験も何もかも逃げ出した者達より劣っている。

 まして、馬は家畜で、その賢さを認めていない。

 結局、怪我をしたり、怖い目にあって捕まえられなかった。

 領民は早々に音をあげた。

 だって、彼らは知っていたから。

 何をって、青馬の王が本気を出したら、恐ろしいことになるって。

 草原から消えた人々と同じく、青馬の王は馬の姿をした神様だって、心の底では信じていたんだ。


 エリはお菓子をかじりながら、頷いた。

 何に頷いたのかは分からないが、話に飽いている様子はないので続けた。


 では、そんな信仰を知らない新しい領主と兵隊はどうしたか?

 役に立たない領民を余所に、たくさんの兵隊を馬狩りに出した。

 少々傷つけてもいいだろうと、武器を持って。

 彼らは馬を追い回し、たくさんの兵隊によって馬を捕らえた。

 切りつけたり、殴ったり、痛い思いをさせて大きな囲いに追い込んだ。

 そうだね、ひどい話だ。

 それを見て、領民は恐れた。

 囲いには、子馬や雌馬までいたからだ。

 そして、やはり、王の馬は居ず、牡馬も少しだけだった。


 エリの眉を寄せて、続きを促す。

 私は、少し笑いながら茶を飲んだ。

 その時、男達が戻ってきた。

 窓際の私達を見つけると、カーンだけこちらに来た。

 大きな男達に、室内が急に狭くなった。


「おう、ちびっ子の知り合いがいそうだ」


 ちびっ子とは、エリのことだろうか?

 近所のオジサンのような口調にエリが首を傾げた。

 どういうことだろうか。二人して男を見上げると、カーンは茶を頼んで座った。


「あの村はシュランゲという名らしい。」


 エリを見ると首を捻っている。

 まぁ、自分の暮らす場所が村なら、子供なら村としか認識していなくてもおかしくはない。


「でだ、シュランゲの村から、中原の貴族に輿入れした女がいるそうだ。」


「どういう事でしょうか」


「その女は、同郷の村人を数人、自分の所で雇っているそうだ。」


 なるほど、知り合いがいてもおかしくはない。


「では、そのお方は何処にお住まいなのです?」


「トゥーラアモンだ」


 幸いなことに、その村は宿場から北東に直ぐの場所だ。

 ただ、その地名を聞いて、私はエリに話の続きをするのをやめた。


 なぜなら、青馬の報いを受けたのがトゥーラアモンの過去の領主と言われているからだ。



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