閑話 教えて、神の人!(答え、爆破焼却)
エレッケンを爆破した時、手応えはあったのだ。
汚物を焼いて、忌々しい巣を瓦礫に変えてやった。
すっきりした。
ついでに、この殺人鬼も始末した。
..はずなのに、目の前でヘラヘラ笑っている。
こいつは何で生き残っているんだ?
城の中は腐れ落ちていた。
民の姿は無く、治める者とて残ってはいない。
翁、と呼ばれるモロクスは、人間の言葉が喋れない。
だが、蛇の威嚇の音のように、吐く息で仲間に何かを伝える。
人肉を食するまでに成り下がった姿とは交流する気はない。だが、このモロクスと従姉妹のイギニアは、まだ、人の知性は残っていた。
彼らは翁と孫のように見えるが、実はそれほど歳がかわらないらしい。
あれが干からびてから、天罰がくだり、それぞれに相応しい姿になったのだという。
それはそうだろう。
他人の腹から飛び出した生き物を食うなんぞ、頭がおかしい。
まぁおかしいからこそ、蚯蚓のような姿で人を溶かして食うわけだ。
彼らは口内の毒牙で獲物を溶かして食うのだ。
ここまでくると、人間として扱うのもばからしい。
これはこういった生き物であると思えば、害獣を排するのは当然。
ヤンがいそいそと殺してあるこうが、良心の呵責がなくていい。
「でさぁ、俺って実際、お姫様とも会ってないしぃ。娘からの又聞きでさぁ」
人だった何かの首を掻き切りながら、ヤンがヘラヘラと喋りだす。
人族長命種も霊素に毒されると、身が変わるのか、それらしい化け物になっていた。
肌は青黒く、その肌の表面にびっしりと金色の模様が浮き出ている。
そしてその頭部には見るからに硬そうな角だ。
捻れて巻かれた角がある。
一見すると獣人と同じに見えるが、その手の角を持つ獣人は少ない。
人形をとる時には、自分で落としているのもある。
生活に不自由もあるし、自分の獣の形を知られたくない者が多いのだ。
そしてこの手の実に雄々しい角を持つ男は、繁殖期以外は角を落としている。
つまり、やたらと角をひけらかすのは、繁殖期だ。
それを知らないで角を生やしている獣人はいない。
そしてこの馬鹿は、獣人ではない。
証明終わり。
「全部が謎なんだよねぇ」
スヴェンやオービス、それにモルダレオにエンリケ、彼らの姿が島に見えた。
サーレルは東に向かって大分経つ。
後は、三度目が来るまでに運び出す。
こいつはここで始末できるはずだったのだが。
「あっ、そろそろ来そうだね」
空の赤味が濃くなっている。
これの感覚の鋭さは侮れない。
「裏に回って運び出す。殿下と祭司長、おつきはシュナイだ。殺すんじゃないぞ」
「ふぇい〜」
このエレッケン城からは、実はあの橋だけが小島に続いているわけではない。
モロクス曰く、あの橋の下、海の下に通路があり、それこそが本当の儀式用の道だった。
だが、セネス・イオレア・モーデンの軸となる男が死んで、誰も通れなくなった。
純粋な、イオレア以外は、通れない。
と、いうのは建前である。
神罰の下った者が通れないだけだ。
つまり、イオレアは誰も通れない。
通れるのは、イオレア以外だ。
あの薄気味悪い地下の水辺。
あの水辺と島は繋がっていた。だが、今はあの水辺は水の花に覆われて、通り抜ける事はできない。
ただし、この地下の水辺の側にある小さな祭壇から、もう一つ穴が開いており、そこが小島への通路になっている。
では、イオレアの血を僅かばかり引いているヤンは、この花が始末してくれるのではないか?
期待は外れるものらしい、ヤンに限って。
ヤンの頭に生息している謎の生き物2つが、楽しそうに何か動いていた。
それがおかげか、門に阻むように生えていた花の蔦が、そっと静かに退いた。
誠に残念である。
「でも、なんでさぁ」
「黙れ」
「だってよぉ、争う前に殿下や皆を島に置いておかなきゃいいじゃん」
もっともな話だ。
「なんかさぁ」
「黙れ」
「最初から変なんだよぉ。全部、無駄におもえてさぁ」
確かに。
細い通路は湿っており、海の下だと思うと気分が良いものではない。
岩をくり抜いて作られた通路をしばらく進むと、小さな鉄の扉があった。
手を置くと、それもひんやりと湿っている。
閂を横に引くと、そっと扉を開けた。
その先には明るい炎がみえる。
暖炉だ。
壁に腰掛けている祭司長は、疲れたのか頭を揺らして眠っていた。
さすが、神の寵愛を受けた者だ。
その外見には、ヤンのような変化はなく、いつもどおりの麗しい姿のままだ。
そっと中に入り込む。
中は本当に物音一つしない。
あたりを見回す。
始まる前に確認した室内と同じだ。
ヤンも入り込むと、眠るロドメニィ殿下をしげしげと見る。
それを睨むと、ヤンは手を上げて離れた。
この部屋の天井はには、開いたままの窓、開放部分がある。
そこからは何故か青空が見えた。
なるほど、と納得する。
ここは聖域だ。
外の醜い事柄は入ってこないのだ。
室内を横切り、正面扉に向かう。
分厚い両開きの扉からは、室外の様子はわからない。
取っ手を掴み回す。
微かな音が鳴り、開くと覗くのは闇だ。
本来の闇である。
それを見ていると、闇から青い肌が浮かぶ。
こちらの角は控えめで、前に小さく突き出ていた。
シュナイの肌色も青く変わり、その瞳からは白目が消えていた。
正気かどうかを疑っていると、彼は小さくため息をついた。
「時間ですか?」
言葉はきちんと発音されて、いつもの何となく自信の無い口調である。
中に招き入れると、ヤンを見て身を強張らせた。
たぶん、自分も姿が変わっている事に気がついていないのだろう。
まぁ、体が変わっていなくとも、この男には誰も会いたくはないが。
そこからは手早く運んだ。
殿下をとらえる、否、守っていた蔦は、案外、簡単に離れた。
祭司長は、去り難く残りたいとごねたが、最初から決めていた。
残すつもりなど欠片も無いのだ。
そしてシュナイに守らせ、先導をする。
ところだが、この男をどうするかで迷った。
「俺、ここに残るよん」
思いもかけない言葉だった。
始末するか下に放逐するかと考えていた。
実際、エレッケンの人間を始末しただけで、これの役目は終わっている。
この男が、殺したのだという事実があれば、それでいいのだ。
「しってるかい?
大将はねぇ、ここをギリギリまで空っぽにするなってさぁ。だから、俺がのこるよん。でもさぁどうしてだろう」
確かに。
「うん、だから聞いてたんだよぉ。だって、俺で、殿下のぉ代わりにはならないじゃぁん」
その意味は?
「ここに長命種がいるという形だ。
エレッケンを爆破し、多くの命を奪い、この土地が瓦解したという事実を全て、別の真実にするのと同じ工作だ。」
祭司長の言葉に、ヤンが首をひねる。
「それに意味があるのかなぁ」
「意味など無いな。体裁だけだ。だが、それを無くすことができないのが、人の世の中でもある。あれらは我らだ。
ヤン、この浅ましい姿を見ておいてくれ」
それにヤンはニヤッとした。
祭司長に言われずとも、人間は全てゴミクズだと思っている。
祭司長は頭を振ると、地下通路へと入った。
それに続いて振り返る。
ヤンは棺に腰掛けると上を向いていた。
きっと幻の青空を眺めているのだろう。
***
「何で戻ってきたのぉ、外にいかないのぉ」
三度目の霊素に吹き飛ばされて、イグナシオは体の一部が変化した。
実に忌々しい限りだが、熱を孕んだ左手が痛む。
そして外からは見えなくなった、この場所へともう一度下から侵入した。
面白い事に、空間は残っていた。
ただし、小島の外、あの天辺とは言い難い。
なにしろ、四方の壁が崩れて、見たことも無い夜の景色が見えていた。
暖炉の炎は燃え、床と腰掛ける物などはそのままだが。
その四方は暗く静かな森の中だ。
たぶん、イオレア達が殺到しても、ここには来れないのではないだろうか。
「でも、これって絵みたいなもんだよ。触れないしねぇ」
室内のゴミを外へと投げる。
それは元の壁があるかのように、跳ね返ってきた。
見上げる空には、月が一つしかない。
双子の星が無いなど、この世ではないか作りものであろう。
「で、何で戻ってきたのぉ?俺を始末しにぃ?」
そういったくせにヤンは落ち着いたものだ。
本気でやりあえば、どちらかが死ぬだろうし、ヤンが死ぬともイグナシオが死ぬともわからない。
これがカーンであれば、この男は即滅できると言える。
室内に入り込んで、暖炉の前に腰を下ろすと、イグナシオはため息をついた。
疲れぬはずなのに、疲れを感じる。
「で、どうしたのさぁ」
「せっかくだ、お前の質問に、俺なりに答えよう」
「どうした風のふきまわし?」
「お前がどうしようもない奴でも、お前は約束を果たしているからだ」
イグナシオの言葉に、ヤンの頭でふざけた仕草の花が踊る。
何もかも馬鹿らしいと彼は思った。
「んじゃぁ、何から聞くかなぁ。そもそもさぁどうして、お姫様がひどい目にあうの?何で、こんな場所でゴミ掃除すると、目が覚めるの?」
それを説明するとなると、どこから話せばいいのかと、途方に暮れる。
イグナシオは眉間を片手で揉み、傷んだ片手を床に置いた。
そのまま横になって寝たい気もする。
送り届けた先の待機組が殆ど死んでいたのもある。
サーレルが無事であるのを見届けてからとって返し、こうしてこの男の顔を見たら、力が抜けたのだ。
「親の不始末を子供が尻拭いしたんだ」
「親って誰?」
「エイジャ・バルディス」
「それって何者?」
「人間の守護をする半神だ」
「じゃぁ姫は神様?」
「精霊種だ」
「で、不始末って?」
「お前が始末してまわったイオレアを残した事」
「そもそもイオレアとかいうけど、何?」
「前の時代の人間」
「イオレアってさぁ色々名前がまじるんだけどぉ〜めんどくさっ」
「イオレア種は、三位一体、融合と分離を繰り返す。
主軸のイオレア、ニーカとリャドガにわかれる。
いま、お前が殺しているのは主軸のイオレアのはずだ。
ニナンからわいているのが、ニーカとリャドガだ。外見上は同じ化け物だな」
「んじゃぁミダスはどれ?」
「ミダスは、ヨルガン・エルベという守護者の一人に力を与えられたリクス・ツアガだ。
リクス・ツアガは主軸の血と外部の長命種の血が混じった混血だ。イオレアとは別で融合も分離もしない。本人は、イオレアと自分たちは同じだと思っているがな」
「ヨジョミルとかは?」
「あれも前の時代の人間だ。だが、イオレアではなく、属種で別だ。隠れた目が額にある。まぁ、あれもエルベの作ったなにかだろう」
「そのエルベって」
「守護者は東西南北、本来は四人、世界の要素を司っていたそうだ。
カーンが持っている力と、エルベの力以外は、死んで戻されている」
「そもそもさぁ、何で都であんな事がおきたのさ。いまさらじゃん、あの男さぁ前の死んだやつでしょ。本当は死んでなかったとか?」
「順番はこうだ。
ここでセネスが馬鹿をして、ヨジョミルなどの属種が死んだ。
しかし原因のイオレアは、たいしたお咎めがなかった。
世界が壊れるよりはと、守護者が庇った。
エイジャがかばい、セネスというゴミを分けて、この場所を守らせた。
一人はツアガ、一人はモーデンとして、死んだことになったもう一人は東に封印だ。
ツアガとモーデン、最初にモーデンが死んだ。
死んで、東の封印が弱まる。
モーデンはツアガと融合し、封印から出た一人が前公王を唆してエイジャを殺害。そしてツアガは死んで、指導者と守護者を失った。
幸いな事に、門を守る生贄のおかげてツアガは保っているが、それもジリ貧。
東の守りであった守護者は死んでいたし、子孫のシェルバンは封印を抑えられず滅びに向かっている。
このお手上げの状況で、神は斎いを執り行うことにした」
「何をするのさ?」
「死んだ守護者の娘。
何も知らない娘を踊らせて、どこまでたどり着くのか見ることにした。
娘が選ぶことで決めようと考えた。
どうせ、この世界はもう終わる。
神はきっとそう考えていた。
つまらない最後だと思ったのかもしれない。
本当は、娘を哀れんでいたのかもしれない。」
「それでお姫様は、踊った」
「文字通り踊った。神に人間へ慈悲をとな。その祈りのおかげで、生きながらえた。では、我々は何を彼女に返せるだろうか?」
ヤンは静まり返った夜を見上げた。
「なるほど」
「質問は以上か?」
「でさぁ、ここを守ると、景品でお姫様は目が覚めるの?これって重要じゃぁん」
「わからん」
「だめじゃん」
「確かに」
「何でここで戦ってんのさ」
「原因を掃除してしまえば、神のご機嫌もなおるかとな」
「それで燃やすと」
「間違いを正し、新しい約束をしろという。なら、最初に燃やす。当然だ」
「そして盛大に燃えるのかぁ〜」
「他にはあるか?」
「まぁ公王ってやっぱ嫌な奴だってわかったぁ」
確かに。
公王も神殿も、長生きしている奴らは、まったく知らないはずがない。
だが、わかっていて、最後に我々を犠牲にした。
娘に何も言わずに踊らせたように。
臆病で狡猾であるし、賢明でもある。
ヤンもそうだが、長命種はここに来てはならないのだ。
イオレアほどではないが、呪いを受けるのだ。
エルベの庇護にあってさえ、ここに送られた女もそうだが、皆、だめになった。
「そろそろ外に戻る。お前ももう、出てもよかろう」
「いや、俺、たぶん、ここにいたほうがいいみたい」
「どうしてだ?」
「奴らが来るのがわかるんだ。
上にあったはずの、重要な何かが場所をうつったのも感じた。
門って奴だろ?ちょうど南の方向かなぁ」
それに外の光景を思い出す。
天から柱が降った。
あれだ。
「けど、奴らは俺のいる方向に来てる。俺が生きてる限りはごまかせんじゃね。俺が門とやらに見えんだろうさ」
柄にもない言葉に、イグナシオはヤンを凝視した。
「まぁ、短いようで長い付き合いだ。旦那はさっさと大将と合流して焼かなきゃ、だろ」
イグナシオは、呆れたように頭を振った。
そうして地下へと入った。
入り口の閂は、外からかけなかった。
戻ってこれるかわからないし、あんな場所に閉じ込めても結局死にそうもないからだ。なら、妙な憐憫を覚えないようにしておくのがいい。
***
今回の依頼は、非常に捗った。
殺し放題で、何だかんだと言いながら、お人好しの獣人達から助けが入る。
おまけに報酬は娘の将来..だけでなく。
あのモルデンからの報酬だ。
人族どもの約束に意味は無いが、モルデンは馬鹿で成り立っている。
つまり、男気と約束は守るってわけだ。
まぁ報酬なんざ無くても、娘のお願いは一番だ。
誰にも言わないし、言ったところで信じられないだろうが。
娘が妹より可愛いのだ。
妹はもう、過去だ。
娘は、今だ。
焼け焦げた中身の自分に、唯一、料理の味をわからせる存在だ。
壊れきっている自分でも、彼女だけは特別だ。
だから、自分や妹には与えられなかった約束をしている。
勝手に、自分の中で。
俺は娘の絶対の味方。
娘の安全を公王が約束し、将来をモルデンが見届けるなら、何でもできる。
代わりに、もし、娘に何事かあったなら、たとえ死んだとしても、必ず、楽しい目に合わせると決めている。
もちろん、口にも出さないし、娘にも言わない。
なぜだろうね。
いつからだろうね。
そういうのってさ、理由は無いのさ。
あぁこれは俺の娘だなって、血が繋がってないのに思うのよ。
こいつの子供が生まれたら、いいなぁ。とかね。
おじいちゃん、なんて言われてみたいもんだ。
まぁ娘の旦那はぶっ殺すけどねん。
とか、思いながら寝転がる。
実に面白い事が続いている。
長命種は呪われた生き物である。
公王は知っていた。
神殿も知っていた。
でも、何故か放置した。
何故だ、何故なんだ?
まぁよくわからん。
だが、実は、この土地に入ると、おかしくなるとかね。
ありそうだ。
無事なのは、皆、獣人の血筋や混血だ。
長命種を送るのが不安だった?
急におかしくならずに徐々に変化する?
それとも何か特別な法則があるのか。
考えていると、部屋が揺れた。
外で何かがおきているようだ。
潰れるかな。
ギリギリまで耐えて、それから。
それからを考えてヤンは首をひねった。
考えてから、ヤンは静かに起き上がった。
ゆっくりとあたりを見回す。
森の景色。
そう、これは向こう側の景色だ。
化け物の世界と思ったが、違うようだ。
これも影響し合った結果だろうか。
手の届かない絵画のような世界だが、生きて動いている。
夜空に雲は流れ、下生えには生き物の影が見える。
水音もどこからか小さく聞こえてきた。
動いている。
ヤンの部屋のほうが、場所を動いているのだ。
それまでは変哲もない木々ばかりだったので気が付かなかったが、この部屋は何処かに動いていた。
もちろん、その場所を走っているのではない。接着地点が移動している。
向こう側はもしかしたら、こちらの景色は見えていないかもしれない。
やがて森の向こうに灯りが見えた。
奇妙な形の家だが、広場を囲むようにして建っている。
その中心では炎が燃えて、何かが楽しそうに語らっていた。
その広場の側には小さな川が流れており、それは体を水に浸している。
炎を囲む影は、おおよそ人の形をしていないが、どれもがこちらでいう楽しい雰囲気がみてとれた。
そして彼らが座る石の上、その端っこには藁が敷かれていた。
そこには一人、女が座っていた。
飴色の髪に、色白の美しい人型の女だ。
彼女は水辺の友に何か言い、器を差し出すと笑っている。
あぁ楽しそうなその景色。
異形の世界だというのに、そこは穏やかで楽しげな夜であった。
ふっとその女は、ヤンの方へと目を向けると、そっと唇に人差し指を置いた。
内緒ですよ、という仕草。
何処かで会った事があるのだろうか。
女は、又、水辺の友へと顔を戻した。
にゃぁと間抜けな猫の声。
女の足元で猫が鳴く。
耳元で鳴く声に、これは何だと意識を戻す。
何だ、この茶番は。
落ち着いた心に殺意が戻る。
それはいつもの自分であり、正常な反応。
あぁ、イオレアに見せたこれが幻想か。
門へと至れば与えられるという空約束。
そして黒煙と炎。
イグナシオの旦那がやりやがったな。
と、確認もせずに思う。
部屋が轟音をたてて崩れていく。
崩落に体を舐める炎。
確かに、くだらない過去は、焼き潰して吹き飛ばすのが一番だ。
面倒がなくて楽なもんだ。
そうしてヤンは塩水に叩き込まれると意識を手放した。
お花ちゃんズも一緒です