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冬の狼  作者: CANDY
薄明の章
278/355

ACT243 始まりのウタ

 ACT243


 最初に浮かんだ感覚は腕の重み。

 後に、頭痛から始まり、次々と体中からの不快な感覚が溢れる。

 わき腹と背中がジクジクと痛痒い。

 側頭部がガンガンと痛みを発し、珍しく重傷だ。

 等と意識の片隅が判断する。

 動けるし痛むぐらいだから、死にはしないだろう。

 更に意識が鮮明になると、煩かった。

 鳴き声は大きく、神経に障る。

 苛立ちが頂点になる頃、やっと瞼が動いた。

 血で固まっていたのか、眼もざらついて痛む。

 無性に腹立たしい。

 光りと白い色。

 とても美しい色が見える。

 やっと見開いた眼には、乳白色の輝きが見えて..やはり苛ついた。

 何もかもが、腹立たしい。

 片足に乗っていた瓦礫を蹴り飛ばす。

 折れ曲がっている手に意識をやると、断ち切れていた肉を寄り合わせる。

 うねる肉と砕けた骨の修復に、蛆が這い回るような感覚。

 あぁ腹立たしい。

 肋が何本かズレている。

 折れて離れてしまっているようだ。

 腸に達していた傷は、抉れた部分の周りから肉を戻し始めた。

 獣の姿の方が、治癒が捗るだろうが、今戻すと見境が無くなりそうだ。

 腹立たしくて、無闇に誰かを殺してしまうかもしれない。

 それも楽しい事だろうが、それは、イケナイ事だ。

 だから、煩くて不愉快で、どうしようもなく腹立たしいが、先ずは一番大切な事がある。


 卵は割れなかったか?

 大切な卵は地面に落ちて割れなかったか?


 血塗れの体を傾けて、腕の中の姿を確認する。

 頭、首、胸、腹、四肢に指先、怪我や傷は無かろうか?

 息はあるか?

 魂の抜けた心臓は、脈を打っているだろうか?


 確かめて、起きぬ姿に安堵と怒りを持つ。

 無事であり、無事でない。


 白い世界に寝ころぶと、再び、眼を閉じた。

 さて、次は何を?


 何をすべきか?


 己の中にあるモノが、確かに身を喰い脈打つ。

 智を与え、奪うモノ。

 漲る力は、己を喰らい、傷を修復していく。

 飢餓感はある。

 だが、死肉を求めるような飢えではない。

 胸を満たすのは怒りだ。

 この怒りを抑えねばならない。

 グリモアは、いつでも、己を喰らい尽くそうとするだろう。

 魔が大気に満ちれば、更に変容は続く。

 何れ、人である事よりも、魔である事が普通になるだろう。

 だが、踏み留まらねばならぬ。

 怒りは力。

 憎しみは、活力。

 だが、忘れてはならない。


 何をすべきか?


 慈悲を忘れてはならない。

 例え、目的の為に、獣となり果てようとも。


 再び眼を見開くと、二人の男がいた。

 淀んだ眼をしたナリスと、愉快そうに笑う小賢しい少年。

 薄ぼんやりとした白い霧が漂う場所で、ディーダーは瓦礫に腰掛けている。


(僕は、このオジサンより上位の力を持つ。

 何しろ、宮の主に魂を錬成してもらったからね。

 この亡霊が、元々、グリモアを管理する側だとしても、神の使いには叶わない。

 だから、今から、僕が表に出るよ。)


「表とは?」


(君にとりつく悪霊の一番表の人格だよ。

 グリモアに口は無いからね。

 吸われた血肉の中でも一番力のある魂の断片が喋るのさ。

 オジサンは、血肉というよりも、余計な塵さ。

 まぁ、知識深く汚れているから、グリモアに寄り添えるんだけどね)


 ナリスは、少年の言い種に鼻を鳴らした。


(オジサンは、森の人の味方。

 だから、オジサンの言葉には毒がある。

 それでも、耳を傾ける意義はあるんだよ。

 成仏させるのは、もう少しまってほしいんだ。)


「俺に何ができる。」


 少年は興味深そうな表情のまま、言葉を切った。

 暫し、考え込むようなそぶりの後、再び、口を開いた。


(何ができるか?


 何でもできるという答えが返るだろうねぇ。

 本当に、君は愚かだ。

 その甘えた言葉を聞くと虫唾がはしるよ。

 問いかける相手が違うね。


 君は自分に問わねばならない。


 こんな簡単な事も分からない、否、考えないのか?


 このオジサンも僕も、君はあまり好きじゃない。

 一生懸命な女の子なら、僕たちも助言をするだろう。

 けれど、頼る前に己に問わねば、君が望まれるのは努力だ。

 それも誰かに強要される事じゃぁ無い。

 君が望み手を出す事が必要だ。

 義務でも責務でもない。

 君が望む事、君が望む行いだ。


 馬鹿で考えない男に、誰が教える?

 君もそうだろう?

 努力もしない、考えもしない兵士に、教えるか?

 赤ん坊の母親じゃないんだ。)


 少年は瓦礫の一つを拾い上げると、手のひらで転がした。

 それから貴重な宝石を見るように指でつまみ上げる。

 ただの石くれが白い霧を吸い込むと、その破片は形を変えた。

 透明な水晶に変わると光りを放つ。

 そして中には、雪をかぶる樅の木が見えた。

 手を動かすごとに粉雪が舞い散り、樅の木に粉雪が吹きかかる。

 やがて樅の木の側には小さな木の家が置かれた。

 雪の兎に細々とした小物が入り込み、手のひらの小さな世界ができあがる。

 よくある文鎮の飾りだ。

 だが、その中身は玩具ではなく本物に見えた。


(でも、まぁ、君は深く考える男じゃない。

 勘と本能が先の野蛮人だ。


 馬鹿に何を説いたところで、規則書を守る訳が無い。

 では、その馬鹿に何を吹き込むのか?

 オジサンなら毒を仕込むだろうけれど、僕は違う。

 僕は明日の朝日が見たい。

 この世の終わりなど見たくない。

 僕は、死ぬ時に見た群青色の空が、朝焼けに染まるのを見たいんだ。


 君は、碌でない男だ。

 周りの人間が考える以上に、馬鹿だ。

 けれど、同じ馬鹿でも卑怯な男ではない。

 彼女は、そんな君が好きだ。


 うらやましいねぇ。


 君は、幸せだ。


 腹立たしいけど、それが彼女の望みなら、同じく救われた身として叶えなければならない。


 面白くないけど、教えてあげるよ。


 主の考え方だ。

 グリモアの主の思考、遊び方の規則だ。

 遊び方を知れば、必要な力をもちだす事ができるだろう。

 森の人は、産まれた時からできる。

 だから、彼女は歌えた。

 グリモアの力は、歌のように聞こえる。

 だから耳を澄ませば、死者の声も、狂気の闇も、すべてが詩篇の一つのよう

 に奏でられている。


 では森の人である彼女は、歌をどう捉えていたか?


 答えは、使用者の意志と理想を具現化する物。


 血塗れの汚れたグリモアをそう考えた。

 ならば、そこに秩序と繁栄、希望に満ちた世界を望んでもいいのではないかとね。


 彼女がそう考えた理由は、グリモアが理を描く道具であるという事による。


 では、理とはなんだ?


 彼女は、自然だと考えた。

 究極の美しさ、秩序と繁栄をもたらすのは、人間も含まれる自然だと考えた。

 虫、鳥、四つ足の動物、木々、花、水、荒れる嵐でさえもだ。


 それは間違いではない。

 グリモアとは究極の美を求めるからだ。

 究極の美とは、自然も含まれている。

 もちろん、そんな尊い美しさは、ほんの一部だ。

 グリモアとは僕を見ればわかるように、本質は邪悪だからね。


 でも、彼女が考えたように、使用する者の理想を具現化するのだから、高い理想を思い描いたとしても間違いではない..甘い幻想だとしてもね。


 そして君だ。


 中継ぎとはいえ、君はその万能な力を手に入れた。

 もちろん万能とはいえ、力とは代償と犠牲を伴う。

 何も対価を必要としない力など無い。

 火を燃やすのにも燃料は必要なように。

 君も気がついているだろう、グリモアは邪悪なうえに毒の固まりだ。

 正しい使い方をしなければ、主は力に呑まれてしまう。

 だが、今、君が手にしている力は、彼女が差しだし神より下げ渡されたものだ。

 だから、君は代償を求められていない。

 求められるのは行いだ。

 君自身の生き方だ。


 優しいねぇ、本当に、森の人は優しすぎる。


 彼女は己を差しだし、理想と救いを求めた。

 その救いとは、君だ。


 否定できまい?


 君は彼女の魂の救いだ。

 命を救ってくれと願ったわけではない。

 彼女の理想、願い、そして、儚い夢を君に見たのだ。


 力強い魂と命を持つ、獣人の男に理想を見たのだ。


 そして君は、グリモアの主となった。


 じゃぁ質問しようかな。

 オジサンも僕も知りたいんだよね。


 君は何ができるんだい?

 理想を具現化する道具を手にした、人殺しの君は、何をする気なの?)


 差し出された水晶の玉は、小さな世界を閉じこめていた。

 静かで美しく、調和のとれた営み。

 自然と人と生き物が満ち、夢のように儚く、美しい。

 じっと見つめていると、小さな姿が見えた。

 防寒着を着込み、矢筒を背負った狩人だ。

 狩人は拵えも立派な弓を手に歩いている。

 追うは大型の鹿だ。

 粉雪の舞う静寂の世界に、狩人はそっと歩く。

 群は耳を峙て、その静かな世界に気を配る。

 彼女の歩む常緑の下生えには、冬にしか実をつけない赤い小さな果樹が凍り付いていた。

 雪の匂い、松や木々の香り。

 凍り付き眠りについているというのに、森は生きていた。


「エイジャ・バルディスは助けられるか?」


(慈悲を与える事はできるだろうね)


「では、これに肉親を会わせる事は無理か?」


(思考せよ、と言っただろう?)


 景色は森から樹氷へと変化する。

 凍り付いた景色に、生き物の匂いはしない。

 息をするのも痛むような氷の世界だ。


 そこに氷の塔のような物が見える。

 真っ黒い雲が流れ渦を巻くように風が吹き付けていた。

 氷の中に男がいる。

 凍り付いた男は、手に長い杖を持っていた。

 水に浮かんだような感じで凍り付いている。

 衣服が波に揺れていたまま固まったようだ。

 指輪、様々な腕輪、少し長めの髪にも玉飾りが見えた。

 呪具だ。

 杖もただの木のように見えたが、よくよく目を凝らせば、精緻な彫刻が施されていた。

 杖に置かれた青白い手には、みっしりと文字が彫り込まれている。

 入れ墨は、様々な祖霊へと繋げられるように描かれていた。


「妙だ」


(そうだね)


「何故、バルディスは、戦わなかったのだ?」


(彼は力をふるわなかった。

 不意打ちだとしても、彼の体も魂も、すべてがグリモアを介在し世界に繋げられていた。

 どのような呪詛であろうと、力であろうと、彼には届かないはずだった。

 グリモアの、本来の主である古の人であるエイジャ・バルディスにとって、死ほど遠い物はなかった。

 だが、死んだ。)


 氷柱の男の全身は、この世界を動かす力と繋がっている。

 人、というにはあまりにも違う者であった。

 意識、魂は人間であろうと、その器は、すでに人ではない。

 全身が、グリモアという道具を使う為に変化していた。

 心臓を抉ったところで、この男は死ななかったろう。

 否、頭部を粉砕しても、グリモアが再生したのではないか?


「グリモアを盗まれたから、という訳ではないのだな」


(彼自身が動力であり、グリモアは従う道具だった。

 だから道具を失おうとも、彼が望めば、敵対者を滅ぼす事は簡単だった。)


「だが、しなかった。

 この男は死んだ。

 グリモアの主は死んだ。

 否、グリモアの正当な主だからこそ死んだのか?」


 ディーダーは少年の姿であったが、老成した仕草で手元の水晶を粉々にした。

 砕かれ煌めく破片が渦を巻く。

 それを眺める顔は死霊術師のボルネフェルト。

 支配を逃れ自らを滅ぼすことを望んだ者は、慈悲と祝福を得てグリモアに宿ったのだ。

 そして、次の愚かな獲物は久方ぶりの娯楽だ。

 眷属の言う娯楽の意味を知った悪霊は、無邪気に笑うと獲物に言った。


(一応、考えているようだから答えるよ。

 半分正解だ。

 エイジャの死因は、自殺みたいなものだね。)


 それにカーンは、傷が塞がった手を頭に当てた。

 固まった血がじゃりじゃりとする。

 それでも髪をかき混ぜていると、厭な事実に気がついた。


「代償か?

 つまり、グリモアの主として、払ったのだな?

 この世を保たせる為に、自分を殺す奴の罪科を減らそうとした。だから敢えて選んだのだな」


(難しく考えても、君は理解できないだろう。

 つまり、つりあいをとったんだよ。)


 それから少年は、カーンの表情を見て吹き出した。


(あぁ、わかるよ。

 これは真似できないねぇ。

 親子共々、殉教者だ。

 これは無理だと、僕でもわかる。

 この思考は、君じゃなくても無理だ。

 エイジャ・バルディスだからこそだ。

 彼は幾たびも生きては死に、そして新しく産まれ続けてきた。

 もはや、神だと言ってもいい。

 人間に同じ事を望むのは無理だし、一番扱いの難しい血肉の書物を制御するには、人間である必要はむしろ無い。

 つまり、人間では無理なのだ。

 例外は、君のような存在か、血族だけだ。

 それも魂の構造が特殊な者でなければ、呪われる。


 さて本題に戻るが、エイジャ・バルディスは死んだ。

 けれど蘇らせる事は可能だ。

 今の君なら、どうする?)


 再び、カーンの表情を見て、少年は満足そうに頷いた。


(さて、君はできるが、しない。

 そう、これがグリモアの主の考え方だ。

 君はできる事がたくさんあるが、してはならない事だらけだ。

 素直に欲望に従えば、死だ。

 君は真っ逆様に地獄行き。

 僕もオジサンも、それを楽しく見ているだろう。

 けれど、可愛い女の子が嫌がるからね。

 よく、考えろと言うしかない。

 よくよく、考えるんだ。

 ウルリヒ・カーン。

 それともウルリッヒと呼ぶかい?

 君の名前をつけたのは、優しい優しい乳母やだ。

 本当の名前を知っていたのさ。

 女癖の悪い君の本当の父親は、相手が孕むと名前を与える。

 君の母親は、その名前を使って金を引き出して遊んでいた。

 義理の父親も、それがあって君の事を殺すも売るもできなかった。 

 優しい乳母やだったね。

 君の命が長らえたのも、彼女のおかげだ。

 君の名を、ほんの少しだけ違う響きにした。

 母親と義理の父親も、何度も名前を繰り返せば、殺してはならないと理解する。

 そして同時に、こっそりと君に本当の事を伝えようとした。

 いつからだい?

 子供の頃から知っていたんだろう?

 少なくとも、育ての親を斧で殺す頃には分かっていたんだろう?

 名前だけ与えた本当の父親を。

 もし、その血をたどり義務を果たすなら、権利を与えようといわれたのだろう?

 泥の中から救い出してやろうと。

 だが君は苦しい生活の中でも、その選択をしなかった。

 何故だい?

 君は、貧乏貴族の息子であるウルリヒでいたかった。

 父親殺しのウルリヒでね。)


 男の表情は変わらない。

 それにディーダーは、頷いた。


(なんら変わらないだろう?

 君はグリモアという力を得た。

 確かに強大な力だ。

 だが、君は無闇に使う事ができない。

 腕の中にある彼女の命は、君の選択次第で決まるからだ。

 それは、少年だった頃と変わらない。

 本当の父親に縋れば、金に困る事はなかったろう。

 当時の状況を考えれば、君の父親や血族は、君だけを救ったはずだ。

 君は才覚のある子供だった。

 だが、君は出て行く事は出来たが、しなかった。


 当時、こう言われたんだろう?


 お前を子として認める場合、お前の育った場所の掃除をせねばならない。

 借財分の弁済に一族すべてを奴隷として売却。

 売り払われた所領は、すべて、お前の財産として戻す。

 代わりに、財にもならぬ者は、お前自身がすべて処分しろ。

 それが出来ぬのであれば、子としては認められない。


 まぁ結果としては、クズが家族をすべて借金返済に充ててしまったけれどね。

 おまけに君は結局、そのクズを処分した。


 巡り巡って、君はたくさんの人々を処分した。

 そして君は広大な土地の所有者になった。


 でも、君は嬉しくなかった。

 怒りと悔しさだけを得た。


 君は大きな力を手に入れた。

 だから何だ?

 君は君のままだ。


 忘れてはならない。

 今度こそ、忘れちゃ駄目だ。


 足し引きの考え方に、少しばかり、君の正しいと思う味付けをするんだ。

 己の払う犠牲と、他者が被る被害。

 加えて何を得れば、何を失うのかを常に心に留め置くんだ。


 そして、過去にそうしたように、その判断を己の心に問うんだ。


 これは己の信義に叶う行いか?とね。


 この考え方を癖にするぐらい覚えておくんだ。

 それが正しい答えを返す事に繋がる。


 犠牲ではない。

 正しい答えは、必ず己の中にあるのだ。

 ウルリヒ・カーン。


 善人になれと言っているんじゃない。

 正しい答えとは、正義とは違う。


 それで、君は何ができる?)



 悪霊からの問いに、無言で立ち上がる。

 手放してしまった剣を探すが無駄のようだ。

 薄い霧の中で、悪霊も立ち上がる。


(一番のアタリは神殿かなぁ、オジサン)


 それにナリスが不愉快そうに唇をゆがめた。


(神殿の宝物殿にあるよ。

 オジサンは今、力を使い果たして喋れないようだから代わりに言うけれど。)


 それにカーンも厭そうに唇をひきつらせた。


(しょうがないじゃぁないか。

 君は僕だ、悪霊憑きの君の頭の中身など、皆、筒抜けだよ。

 厭ならグリモアを掌握するんだ。

 それまでは、こうして騒々しいままさ。

 悪霊なんてそんなものだろう?)


 白い霧を見回す。

 舞台の底というには、明るい。

 霧は晴れず、舞台の外へと向かうにも方向さえもわからない。

 オリヴィアを片腕で抱えると、目の前にある邪魔な瓦礫を蹴り飛ばす。

 瓦礫は面白いように吹っ飛ぶと、何かを押しつぶした。

 その何かは、しぶとく瓦礫を押し返す。

 這いだした姿は、いつもの姿ではない。

 小山のような山猫は、忌々しそうに男に牙を剥いた。


「おう、悪いな。ちょっと煩かったんでな」


 決して間違えたとは言わない。

 のそりと這いだした山猫は、少女の器を見て鳴いた。

 邪悪な姿とは裏腹に、鳴き声は子供だ。

 小さな子猫のような鳴き声をあげる。

 実に、間の抜けた悲しい鳴き声だ。


「だから、うるせぇって言ってんだろう」


 ひとしきり鳴いていると、霧の向こうで答えるモノがある。

 姿は見えないが、肉食獣のいらえだ。

 喉奥で唸り軋むような咆哮である。


「何呼び出してんだよ、アホ猫」


 それにテトは鳴くのを止めた。

 そして首を傾げている。


「..お前」


 助けを呼ぼうという意図は、カーンにもわかった。

 血塗れでふらつく自分では、彼女は助からない。

 なら、呼ぼう。

 助けて


(助けて、ママって感じだね)


 悪霊の呟きに、カーンは天を仰ぐ。


「ママって感じじゃねぇよ。どう聞いても、肉食の大型の奴だな」


 馬鹿野郎が!


 男と猫は白い霧の中を走り出した。


(肉弾戦はしないの?)


「俺は無手で、こいつを抱えてて、ついでに妙な場所にいるんだぞ。」


(理解はしてるんだねぇ論理的と言うより本能で。

 まぁ、よかったよ。ここは彼女の維持している結界内だ。

 暴力行為は禁止だよ。逃げて逃げて)


「畜生、楽しそうだなっ」


 障害物を蹴散らして走る。

 なのに霧は晴れず、何処にもたどり着かない。

 傍らの山猫は、いつもの姿に戻っているし、背後の気配は変わらない。

 足音から考える姿は、相当の大物だ。

 そして持久力が高い。

 あきらめる様子もなく、妙に軽やかな足音がする。

 足音だけなら、猫の忍び足ぐらいの軽さだ。

 だが代わりに迫る獣の息づかいは、肉食のそれだ。

 うなり声は相変わらずである。


「お前、呼んだんだから、帰ってもらえ」


 それに猫は、ちょっと呆然とした顔をした。

 猫のくせに、やけに人間くさい表情を浮かべて見せた。


(たぶん無理みたいだね。この子、ちょっと)


 悪霊も言いよどむ、ちょっとしたうっかり者らしい。


「言葉は通じねぇのか」


 倒れた柱らしき残骸を飛び越える。

 貧血気味の頭がくらくらとして、いつもより動きが鈍い。

 当たり前だ、化け物との連戦に魔神の眷属との対

 話。

 それに、ここの所はずっと人柱の解体につき合っていたのだ。

 精神的にも追いつめられている。

 後少しで発狂しそうだ。

 と、奇妙な笑いと怒りに支配され、気分は大きく乱高下してる。

 発狂してしまえば楽しめるだろうが、今の所は無様に走り回っているだけだ。


(うわぁ、面白い猫だね。この子、半分、魔になってるから、ママもちょっと異界から呼んじゃったみたいだねぇ。

 向こうも子供が呼んでると思って必死かもね。)


「んじゃ、お前、ママと帰れ」


(猫の絶望の表情って始めてみたよ。ふふふ)


 悪霊らしい笑い声を聞きながら走っていると、景色の変化に気がついた。

 ぼんやりとした霧が晴れていく。

 代わりに闇が頭上から降りてきた。

 香る夜の香りをかぎ取り、ひんやりとした風を感じる。

 男はそちらに向けて走り出す。

 両手でしっかりと少女の器を抱え込むと、全速力で走り出した。


 景色は飛ぶように流れ、溶け、霧も薄れていく。

 踏みしめる足下からは砂利が弾け飛んだ。

 何から逃げているのか分からなくなる頃、逃走は簡単に終わる。


 一歩踏み出した所には、倒れ伏した人々の姿。

 折り重なる人々、逃げ遅れた者、兵士などが全て集められていた。


 背後の事を思い出し振り返るも、追いかけてくる気配は無い。

 突然に、瓦礫の広場へとたどり着いたようだ。

 否、ただ今まで走っていた事こそが幻なの

 かもしれない。

 小さな猫は鳴きながら、少女達が固まって眠る場所に陣取る。

 そして、みょんみょん、と、子猫のような声で鳴いた。

 すると、倒壊した舞台の瓦礫のそこここから、答える猫の声がした。

 今度は普通の猫の声だ。


 実に騒がしい猫の声に、人々は意識を取り戻す。

 夜空と瓦礫、そして薄暗い世界は、瓦礫の外を不思議な闇で囲い込んでいた。

 瓦礫というが、その下は地面でもなんでもない。

 青白い霧が覆い尽くしている。

 カーンの目には、ここが特別な場所であり、地面に開いた大穴を呪力で塞いでいる事が見て取れた。

 なるほど、ここは彼女が守る手のひらの中だ。

 優しい心根が満ちている。

 ここはおとぎ話の優しい世界なのだ。


 やがて人々は気がついた。

 酷い有様の男に抱えられた少女の姿に。

 眠る姿は、普通の娘だ。

 人々はじっと見つめる。

 見つめる事しかできない。

 崇めるも感謝の言葉も、その犠牲に対しては無意味だ。

 娘は眠っている。

 魂は、連れて行かれてしまった。

 だから、抱える男を見つめる。

 それは期待か?

 恐れか?

 目覚めた人々は少女をじっと見つめ、抱える男に目を移し、そして二人の姿を目に焼き付ける。


 神様


 誰かの呟きが聞こえた時、空気が揺らぎ溶けた。

 篝火と人のざわめきが押し寄せた。











 結界を維持する為に、最後までカーンは残った。

 けが人や動けない者を先に運び出す。

 多くの者が朦朧としている。

 言葉を発しない者も多い。

 それら人々が運びされるのを見送る。

 自分の所へ来ようとする者を、カーンは近寄らせなかった。

 テトもだ。


 誰も近づいてはならない。


 男の恐れは一つ。

 無闇に誰かを傷つけてしまうことだ。

 不用意に近寄れば、手負いの自分は人を殺すと分かっていた。

 グリモアを内包している身だ。

 戦おうと思えば、消耗している今も可能だ。


 己の中には様々な感情と、どうでもいい考えが充満していた。


 空腹と痛み、苛立ちと悲しみ、不快感と奇妙な高ぶり、そして、残酷な感情だ。


 考えろ、考えろ。


 繰り返し己に問いかける。

 怒りを抑え、正直になるのだ。

 欲望を抑え、真摯に振る舞うのだ。


 ただし、善行や正義とやらではない。


 やがて全ての人が運び出された後に、カーンは瓦礫から踏み出した。

 ボロボロとその背後の舞台の残骸が壊れていく。

 崩落し穴に吸い込まれていく。

 いっそ何処へ入り込む余地があるのかと思うほど、何もかもが落ちていく。

 轟音と煙りが辺りをつつむ。

 大盾に庇われていた者が顔を出すと、そこには大きな穴とその縁にたつ男だけがあった。


 ジェレマイアは男の顔を見ると頷いた。


「被害は予想範囲内だ。

 渇水以外は対処可能だそうだ。」


 カーンの反応を見ながら、祭司長は続けた。


「人的被害は公王勅令で対処するだろうし、軍部は予想以上に無傷に近い。

 俺の所の人間は、相当数が地獄行きだ。

 神殿の掃除は手間が省けた。

 本当の溝掃除だけですみそうだ。

 問題は元老院と古参の奴らだ。

 たぶん、そうとう生き残ってるはずだ。

 そいつらも徐々に変容するらしい。

 今後の脅威となる可能性が残っちまったよ。

 殺すにも、面倒になりそうだ。

 お慈悲をかけられても、ありがたがるような奴らじゃないからな。」


「魔の浸食が始まれば、そいつらはどうなる?」


「人間の面をした化け物になるのさ。それが罰でもあるんだろうが、普通の奴らにはいい迷惑だ。

 そして最大の問題は。

 彼女の魂が持ち出されてしまった事だ。」


「何故だ」


「何故?

 俺は、最初からしくじっていた。

 彼女はグリモアと結びついていた。

 それにばかり気をとられていた。

 最初に言ったよな、お前と仲間、それに穴に潜った者は呪われたと。

 グリモアと神、どちらが人には害になる?

 俺は馬鹿だった。

 神という言葉にすると、俺みたいな者は考えが偏るんだ。

 神との約束を見逃したのは俺だ。

 毒とはならぬと何処かで考えていたのかもしれない。

 いずれ解していけば、誓約は消えるだろうと。

 だが、その考えこそがおかしい。

 神との約束だぞ。

 反故にするには、それなりの代償が必要だ。

 特に、俺にはもっとやりようがあった。

 例えば、肉親である事を素直に認め、彼女の呪いを俺が引き受ければ良かったんだ。」


「それは無理だ」


「無理じゃないさ。俺は因縁と呪いに囚われた者だ。

 彼女にかかる約束を受け取り、死ねば良かったのだ。

 元々、産まれてはならない身だった。

 彼女を不運に落とした俺の血を、対価として差し出せばよかったのだ。

 そうすれば」


「無駄だ」


「あぁ、俺は生き残る事を目的としてきた。そして、彼女も救えると思っていた。

 奢り故に、一番簡単な方法をとらなかった。

 俺が、代わりに死ねば、彼女の供物としての定めは逃れられた。」


「違う。

 俺をこれ以上苛つかせるなよ、おい。

 そんなに死にたいなら、殺してやる」


 唸る男を見上げて、祭司長は少し笑った。


「あぁ分かっている。

 肩代わりしたとしても、彼女は、皆を救おうとしただろう。

 そして、俺は今更御託を並べる馬鹿だ。」


「分かっているなら、早く次の手をうつんだ」


 頼りない表情のまま、ジェレマイアは眠る少女に目をあてた。


「眷属の言葉を信じるならば、この後、我々には試練が与えられる。人間の位階を下げぬように、人は努力せねばならない。

 その試練が終わるまで、彼女を守らねばならない。

 多分、魔よりも人間からな」


「連れて行く。何処に向かうも一緒だ」


「無理だ」


 先ほどのカーンと同じ答えに、ジェレマイアは少しだけ笑った。


「お前の道は、試練と言うだけあって今宵起きたような争いごとだらけになるはずだ。

 私の姉には、傷一つつける事は許さない」


「それこそ冗談だろう?

 誰が信用できる。

 俺の仲間ならまだしも、見も知らぬ輩や、神を語る詐欺師どもにこれを預けるなど狂気の沙汰だ。」


 それにジェレマイアは、暫し考え込んだ。


「神殿も城も、まずいのは分かっている。

 だが、出せないのだ。この都から出せない。」


「どういう事だ?」


「よく見るんだ。

 お前も、今ではグリモアの主だ。

 そして、魔の浸食を受けつつある。

 変容した人間には、しかと見えるはずだ。」


 はっとした男に、ジェレマイアは物悲しい顔で続けた。


「儀式となった場所から、供物は動かせない。

 例外はあろうが、彼女は神が手を置かれた者だ。

 只の生け贄ではないのだ。

 神が、その身に、手を置かれた。

 即ち、この場所から盗み動かせば神罰が下る。

 神の糧を盗む者となる。

 故に、彼女は拒むだろうし、縛られてしまった。

 危害を加えようとする者からすれば、まるで身を守るすべもない。

 なぜなら、神はわざと、彼女を置かれたのだ。

 人を試す為にだ。

 隠すも良し、連れ去るのも良し、そして殺すも良しとして。

 だから私の姉は、魂が戻されぬ限り、このオルタスのミリュウより動かす事は、無理なのだ。」


(できるけれど、君はしない)


 悪霊の囁きに、カーンは目を閉じた。

 そっと腕の中の器を抱き寄せる。

 悲しみは直ぐに大きな怒りの波に呑まれていく。

 大波は次々を押し寄せて、男の顔を悪鬼のように変えていく。


「カーン、どうか、押さえてくれ。

 お前は、約束を果たしてくれ。

 身勝手な願いを叶えてくれ。

 姉を、取り戻してくれ。」


 オリヴィアの器には無数の蔦が巻き付いている。

 人の目には見えない蔓薔薇だ。

 それは彼女をしっかりと捉えていた。

 蔓の根本は広場の敷石に消えているが、蠢く様に目を凝らせばよくわかった。

 この広場から生えている。

 言い換えるなら、異形が現れた土地より生えていた。

 このまま器を持ち去っても、それは長く長く伸び、彼女に絡みついたままだろう。

 そして、いつでもこの魔物の蔦は彼女を媒介にして毒をまくのだ。

 呪いは人を更に魔物に近しくし、彼女が望まぬ変容を周りに人に与えるだろう。

 花を咲かせてしまう。

 そして、愚かな事が続くのだ。


「盗まれてはならない。

 傷つけられてもならない。

 軍の方で収容するというのはどうだ?」


「二つの派閥がある。

 それは軍も元老院も、そして神殿も同じだ。

 信頼できると言い切れる人員は少ない。

 俺が連れて行くというのが一番良いと考えていた。」


「確かに、だが、お前は試練を受ける者、同じく供物だ。

 ここに留まる事も、彼女を連れていく事もできない。

 できたとしても、周りは呪われて身動きが出来なくなるだろう」


「呪われればいい」


「確かに、だが、それで魂は戻されるのか?」


 焦げ臭い匂いと夜風が吹き抜ける。

 二人はにらみ合いながら、結論を出せずにいた。

 もっとも、ここにいるのは二人だけではない。

 ギルデンスターンにリラもいた。

 だが、彼らは口を出さなかった。

 リラは面白げに唇を歪めている。

 グリモアを手にした人間特有の、苦悩する姿に愉悦を得ていた。

 そして、ギルデンスターンは現実に対処できる事だけに意識を向けていた。

 人族を見捨てない選択をしたモルデン王家に従うだけである。

 そして公王が考える繁栄への道筋に賛同しているからこそ、神に逆らう愚かしい行いはできない。

 そんな無言の観客とは別に、酷く場違いな言葉が場に流れた。


「雨は降るとすればどのくらいであろうか。気にもしなかったが、考えるに年に数日か」


 暢気な声音に、深刻な表情のまま、ジェレマイアが振り返る。


「そうっすねぇ、年間の降雨量は砂漠並っす。

 首都は元々、おっそろしいほど雨が降らない場所っすから」


「育った場所ゆえに気にもしなかったが、不自然だな」


「そうですねぇ、中原と東の境で本当はもっと降ってもおかしくないんでしょうけど、建国記にもあるように、ここは雨が元々降らないんですよぉ」


「それなら、天井無しの天蓋布がいいだろう。美しい空を見れるように、巻き上げ式にするか」


「うわぁ」


「壁は少し低めで、大理石の外装もよいな」


「それより、こうもっと体に優しい感じがいいんじゃぁ」


「ウム、姫のお休みになられる場所だ。

 最新の加工材を取り寄せよう!」


「うわぁ」


 その場にいる者達の凝視を受けて、主従が不思議そうに首を傾げた。

 主従の周りの猫も一緒に首を傾げている。


「何だおまえ達?」


「何だじゃねぇ、気でも狂ったか?」



 ジェレマイアの怒鳴り声とカーンの凝視に、コンスタンツェは馬鹿にしたように笑った。


「狂っている?

 結構だ。狂っていようが、お前達よりは馬鹿ではない。

 皆、一番肝心な事を忘れているようだ」


「何だ?」


「私が一番の僕だ!姫をお守りするのは私だっ!」


 胸を張るコンスタンツェ。

 そして様々な猫、と、何故かテトがそこに混じっていた。


「そうじゃないでしょう..怒らないで聞いてくださいよ。

 つまり、姫さんの身柄はここになければやばいんですよね」


 無言の男達に、オロフの顔色がどんどん悪くなる。


「簡単な話じゃぁないですか。

 姫さんは動かせない。

 誰かの世話になるのもマズイ。

 けれど、隠したら危険だ。

 かといって守りがなければ、更に危険。

 つまり?」


 沈黙と凝視に、オロフはため息をついた。


「どうしちゃったんですかぁ、旦那方。

 簡単でしょうが。

 なら、ここに置いておけるようにすればいいですよ。

 カーンの旦那のところも、王様ん所も、そしてジェレマイア様んところも駄目。

 もちろん、コンスタンツェ様のお家はもっと駄目。

 なら、作ればいいんですよ。

 姫さんの居場所をね。

 人の目があって、絶対に誰も抜け駆けできないように、ここに作るんですよ。


 この公園を更地にして、ここに建てるんです。

 姫さんの眠る場所をね。

 誰も彼もが見ている場所に、隠さずに置くんですよ。

 毎日、コンスタンツェ様は姫さんの所にくるでしょう。

 町の人間も来るし、神殿の人間も、兵隊も、誰も彼もが来るでしょう。

 皆で見守るんですよ。

 信じる必要はなくても、これならいいんじゃないですか?

 王様だって誰だって来るかもしれない。

 でも、誰も盗めない。

 傷つける人間が来ないように、皆、お互いに見張るんですよ。

 皆、仲良くできなくたって、姫さんとは仲良くできるんじゃないですかねぇ」


 凝視に堪えられなくなったオロフは、コンスタンツェを恨めしく流し見て付け加えた。


「カーンの旦那が満願を迎えるには、時間がかかるんでしょう?

 今日明日、姫さんが目覚める訳じゃない。

 姫さんの姿が見えないと、誰も彼もが猜疑心を持て余す事になる。

 なら、誰も彼もにわからせるしかないんですよ。

 俺、間違ってますかねぇ?」


 暫く、誰も黙っていた。

 だが、ジェレマイアが不意に両手で自分の顔を覆った。


「間違いではない」


 ゴシゴシと頬を擦って、カーンを再び見つめると言った。


「間違いではない。皆で、見張りあうのがいい。どう思う?」


 その問いに、今度はカーンが考えこむのだった。




















「本当はコンスタンツェ様が言う事ですよぅ。

 なんで最初に僕の主張するんすかぁ。」


「決まっている。

 この第二の僕に、誰が一番かを知らしめる為だっ!」


「それ、姫さんの猫ですか..何、この猫、ドヤ顔がウザッ!

 つーか、すごい爪と牙だし、猫じゃねぇっすよぅ!」


「次席のしもべである!」


「次席とか、馬鹿でしょう!」


「オロフよ、最近、無礼が過ぎるぞ」


「..何で猫がそこで俺に爪を立てるんだよ、オィ。もしかして、俺よりエライとか!」


(にぁ!)

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