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冬の狼  作者: CANDY
薄明の章
277/355

登場人物一部紹介と補足説明 3

注意)オロフからコンスタンツェへの報告書のような手紙。

前話まで読了推奨ですが、閑話的なものですので読まなくてもOKです。

 拝啓、コンスタンツェ・ハンネ・ローレ殿下へ


 報告書の書き方がわかりません。

 と、審判官事務のお姉さんに聞いたら、適当で良いと言われたので、お手紙にしてみました。

 あの事務のお姉さんは、人族の女性にしては迫力がありすぎだと思います。

 書き方を聞く前に、確認することがあるだろう?

 って言った顔つきは、この忙しい時に何を聞いてくるんだって書いてありました。

 そんな感じで、お姉さんの適当って答えは本当だったんですよ。

 公用語で審判所の公式の紙を使って、指示を出した方の想定する書式で記入する。何故ならば、公式書類として残すかどうかにより、書式自体の指定が必要になる。からだそうで。

 それ以前に、指示が曖昧な場合は、下書きとして適当に書いて提出後に清書すればいい。

 そんな事も分からないのでしょうか、この無能がっ!

 と、ちょうど月末の金銭の処理をしていたからでしょうか、お姉さんの心の声が聞こえました。

 いつもの庶務のオジサンじゃないのが、ちょっと寂しいです。

 お姉さんは超美人なんですが、オジサンと違ってお菓子をくれないし優しくないのも、ちょっと。

 モグモグされたオジサンは、ちゃんと成仏できたんでしょうかねぇ?

 そうそうオジサンの事を聞いたら、古い事務方のオバチャンが干した果物をくれました。

 後でお裾分けしますね。

 たぶん、コンスタンツェ様も好きな無花果も入っていたと思います。

 あれ?何だか報告書に書くことじゃぁないですね。

 本題に戻ります。

 自分、お手紙を書いたのは、幼年学級の時のお誕生会以来です。

 文字は共通語にしてみましたが、難しい言い回しはよくわからないので、所々見苦しい箇所もあるでしょうが、そこはお許しください。


 さて、地下の半分泥になっていた人物について。

 その関係者だろうと思う人物をちょっと書き出してみました。

 一応、商会印の情報網を使いました。

 裏付け等を書面にて請求の場合は、別料金になりますんで。



 ☆貴族名鑑にあるシェルバン公爵の血族☆


 ミダキ・メロゥ・シェルバン公爵(宗主)

 パロミナ・クフェナ(ミダキの異母弟)

 ハルクス・マートス(長子)

 マーセス・ベイラム(次男)

 フォルケン・イストナム(三男)


 メロゥ(宗主名)

 シェルバン(領地)

 メロゥ・シェルバンは、公爵を継いだ場合のみ名乗る。

 ミダキ以前はラドヴェラムと宗主を呼んでいたが、メロゥと変更していた。

 どうもラドヴェラムとは卑怯者に同じという認識が彼らにあったようだ。これはコルテスでも過去、名を変更してた理由に同じようである。


 上記にあるミダキ以外の者も、時としてシェルバンを名乗っていた所を見ると。ミダキが甘言をもって彼らを後継者だと、それぞれに吹き込んでいた節がある。


 ◎ミダキについて◎


 彼の認知した実子とされる子供達は、すべて異母兄弟である。

 また、彼は複数の妾を持っていたとされているが、奥方と呼ばれる人物は確認できなかった。

 外見等の情報は少なく、肖像画も残っていない。

 赤毛である事、長命種らしく色が白い等。

 また、一番最後の妾であるトスラトの情報は皆無である。

 これは生き残りが直接シェルバン公と接する事のない民ばかりであった事。

 そして、トスラトらしき人物は、常に長衣に頭巾を着用しており、身長以外の特徴を見て取る事ができなかった為である。

 注意)元老院の諜報部は、トスラトの人物像をつかんでいる可能性大です。


 ◎パロミナについて◎


 アッシュガルトにてシェルバンの交易をとりしきる人物。

 過去数度の海難事故に会うも生還。

 その後、一時、姿を見ることがなくなる。

 そしてコルテス公が不幸に見回れた頃に、再び姿を見せる。

 しかし、その頃から奇行が目立つように。

 この人物については、アッシュガルドで記憶している人物が多数存在。

 シェルバン人にしては、朗らかで人当たりの良い人物という話。

 ただし、コルテス公が不幸に見舞われた際に、湖沼での狩りの自由を保障したから事故が起きた。故に落ち度はコルテス公にあるという発言を繰り返した。

 また、噂の範囲をでないが、街の猫を捕まえては喰っていた等という話がある。


 ◎ハルクスについて◎


 母親は、実質シェルバンの行政を取り仕切る家系の出である。

 氏族としても血筋としても、公爵の奥方に相応しかったが、中央政府の記録上は婚姻の事実は無い。

 これに関しては様々な憶測があるが、ハルクス自身は常に長子としての義務を意識し、為政者として専横的なミダキと対立する事も止むなしと考えていたようだ。

 領土内の評判は、人物としては優れているが、ミダキのような強さは無く、彼が宗主につくことは無いだろうと思われていた。

 今現在、ハルクスに該当するモノに関しては、軍部による箝口令が敷かれている。

 商会による風聞によれば、ハルクスは根をはり花を咲かせている?

 幕僚幹部と異端審問官がシェルバンに入ったため、外部からの情報収集は限定されており、この情報に関しては不確定です。

 花ですもんねぇ~抽象表現?


 ◎マーセスについて◎


 この人物が一番ミダキに似ていたという証言がある。

 本人は、過食をし肥満と脂肪の瘤を体中にもっていたが、痩せていた子供の頃は、絵画に描かれるほど美しい容姿をしていたという話である。

 しかし、性格は尊大にして非常に怠惰であり、弱者を虐待する性癖があるとの事。

 コルテス公が姿を表さなくなった頃、頻繁にコルテス領内を行き来する姿が見られた。

 外遊という名目であったが、アッシュガルトにてキリアン(コルテス公の廃嫡子)が誘拐される事件と同じ頃、その姿はおおやけの場から消える。


 ◎フォルケンについて◎


 三男のフォルケンについての話は、コルテス領にて多くあった。

 彼は鉱山の管理を任されており、コルテス公爵の姿が見えない近年は、労働者をコルテスから集めていたようである。

 彼の証言から、その労働者を集めるとともに、コルテス領の女子供をトスラトに引き渡していたようである。

 また、コルテス領にて起きた犯罪。

 騎士デフロットの毒殺や、公爵の誘拐幽閉等にも関わりがあった模様。

 現在、コルテス公爵領内で、フォルケンに荷担した人間を炙り出す作業が続いている。


 彼の近年の人物像はわからないが、青年の頃は他領地への遊学をしたことがあり、その際には、非常に寡黙で穏やかな性質だったとある。

 絵画を嗜み、それ故、コルテス公爵自身との面識もあった模様。

 芸術家肌の夢想家とも思われていたが、後年の彼の行動は、どうみても悪辣極まるものであった。



 ☆公式記録に無いシェルバン公の血族について☆


 正式な子供の数は不明。

 第三子までは、公の子供であるという公的書類はあるが、正妻をおかずに正式な嫡子という者も曖昧であった。


 シェルバン公自身の兄弟についても、その数は曖昧である。

 血族婚を繰り返していた為に、全ての氏族が家族であり兄弟であり親子であったともいえる。

 つまり、正式な家系図を引けない程入り組んだ血族の結びつきをもっているようだ。

 逆に言えば、その閉鎖的な環境で生まれた一族は、誰が次の宗主であってもおかしくない。


 ☆アーシュラという女性について☆


 コルテス公の妾妃としての記録のみ確認できました。

 線の細い美人だったそうです。

 シェルバンの血縁と分からなかったのは、彼女の髪と目の色、そして容姿が彼らとは違っていたからだそうです。

 シェルバンの血族は、赤毛や金髪が多く、目の色に関しては薄い青かそれに準ずる薄い碧が大半を占めている。

 このアーシュラという女性は、褐色の髪に薄い茶色の瞳をしており、色彩においては皮肉にもニコル姫と同じ色を持っていたそうです。



 ◎ニコル姫の調査のおり浮上した公王家についての疑問点◎


 コンスタンツェ様の御産まれになる前の、公王家の構成には改竄の可能性があります。

 この改竄の可能性がわかったのは、コルテス家に嫁いだニコル姫の事を調べる過程でわかりました。


 現公王であるランドール陛下のご両親は、ご存じだと思いますが、公式記録にある存命の御家族ではありません。

 先代公王だった男と同じであります。

 当時、技術的に促成しうる幼体で生き残ったのがランドール殿であり、皮肉にも狂気に落ちた先代と同じ男女からの提供でした。


 まず、獣人大公家の場合ですと、今の大公であるバルドルバ卿の祖母に当たる方が母胎となりました。

 人族の女性が獣人族の男の子供を妊娠した場合の危険を避ける意味合いで、多くの婚姻はこの組み合わせをとるそうです。

 この危険とは、獣人の子供の血が勝ると妊娠期間や成長度合い、体内での内臓器官の違いによる死の確率でしょうか。

 その点、獣人大公家の女性は強靱です。

 特にバルドルバ卿の祖母にあたられる方は、竜の血が入っていると言われるほどの頑健な御方でした。

 そして、人族大公家からは、当時の末子であられたレンドル殿下が選ばれました。

 レンドル殿下は、コンスタンツェ様の母上の従兄弟にあたられますが、その血筋は当時の宗主の妹君、直流の姫の子供であります。

 血の濃さは折り紙付きで、後の五番目の母君の父親でもあります。

 と、分かりづらいですよね。


 コンスタンツェ様の御祖母さんとレンドル殿下の母君が姉妹です。

 なんで、レンドル殿下はコンスタンツェ様の母君からすると従兄になります。

 んで、レンドル殿下は、公式記録では人族大公家の五番目の公王継承権を持つ首チョンパされた坊ちゃんのお爺ちゃんってわけですね。


 ますます訳が分かりませんね。

 さて、例の事件の所為で、公王家系図は改竄が行われたようです。


 まず、公王の代替わりは、人族長命種の中でもモーデンと縁の深い血から、混合体を作り出して王とする。というのが、基本にあります。

 公王の実子が次代では無い。

 大公家の直流で血の濃い者を選び出して、子供を作る。

 そして、その子供の中で適正のある健康体を選抜し、継承させる。

 継承からはずれた混合体は、大公家、それも人族大公家の方で引き取る、又は、婚姻をする。

 代替わり以外で、婚姻年齢可能な大公家の子供がいる場合、優先的に大公家同士で婚姻を結び、そして、混合体を作り出す事。

 つまり、予備を沢山作っておくというのが、上級貴族の常識であり民草の知らない公王一族の実体ですよね。

 公王の実子が、混合体ではない。

 という事も、この制度が産まれた理由でしょう。

 そして、ランドール陛下においては、妹君が三人いました。

 コンスタンツェ様も知っておられるように、この三人の姫君とランドール陛下の関係は、確かに血族ではあります。


 コンスタンツェ様は、たぶん、改竄はあの人物の事だろうと思っているでしょう?

 ランドール公王陛下の妹三人。


 長女で異母妹とされるロドメニィ殿下。

 次女で早世されたユージン殿下。

 そしてコルテス公に嫁されたニコル殿下。

 勿論、早世された姫であり前公王と精霊種の姫とは、コンスタンツェ様の幼なじみで歳をとるとオジサンになる人です。

 一応、記録上は女児として誕生し、早世した事になってます。


 そして本題です。

 改竄は、末はオジサンになる人物の事ではありません。

 今更で、知ってる人は知ってますしね。


 コンスタンツェ様は覚えていますか?

 ロドメニィ殿下もニコル殿下も、両方ともお体が弱かった事を。


 ニコル殿下は公王の父君と人族大公家の女性との間にできた子供です。生まれつき心臓に病を持ち、成人を危ぶまれていました。

 そして、ロドメニィ殿下は、下肢が不自由な方でした。

 現在、ロドメニィ殿下は首都から北北東に位置する、公王所有の古城にて養生生活をしています。


 そしてここからが、ちょっと怖い話になります。


 ユージン殿下の事は、あのクズ野郎のおかげで必要な嘘でした。

 ですが、ユージン殿下という姫の記録が、新たに出ました。


 ユージン殿下は、ロドメニィ殿下という姉君と一緒に、古城へと入られた。


 という記録です。

 時期は、現在の公式録によるユージン殿下が死亡した四十年前以降。

 確かな記述、それも役所の公式録に残るロドメニィ殿下の記述に、時折思い出したように付け加えられている。

 例えば、何々の行事にロドメニィ殿下が参加、妹君もご一緒に近隣の街に滞在す。なんて感じです。

 死人の公式録ですよ。

 税金などのユージン殿下への拠出は勿論確認されていません。

 ですが、存在は確認できないし物理的証拠はないのに、名前だけがちらほら誤記入のように付け加えられる。

 それも幾度も、様々な記録にです。

 記入者は特定できないのに、色々な公式録に名前が残るという何とも不可解な状況。

 公王陛下に確認すれば良い話なんですが。

 この辺りから、何か、胡散臭い感じなんです。


 ユージン姫という少女が本当にいたような、記録がある。

 これはコンスタンツェ様の幼なじみの存在の隠蔽を隠れ蓑にした、さらに何かの情報を操作した痕跡に思えるのです。


 商会としては、これは重要案件として独自に調査する事にしました。

 追加情報は、今暫くお待ちください。


 ◎東の寺院について◎


 オリヴィア姫さんが、東マレイラで預けられる予定だった寺院について。

 以前、コンスタンツェ様が家出しようとした時に向かおうとした場所を調べました。

 当初はコルテスの寺院というお話だったようですが、目的地である拝火教の寺院は廃墟だそうです。

 家出しなくて良かったですね。

 コルテス公が失踪中に荒らされたそうです。

 ですが、今現在はボフダン公の所領に迎え入れられて、僧侶さん方は無事だそうです。

 それで姫さんの状態をお知りになった僧侶さん方が、こちらに向かっているそうで。

 ボフダン特使として数名のボフダンの人間と一緒だそうです。



 ◎お姫さんの出身地◎


 以前から依頼を受けていたオリヴィア姫さんの育った場所の探索について。


 北方辺境伯の土地は広大ですが、南西の辺境伯のような諸侯を従えた大貴族と同じ地位とは思えない暮らしぶりです。

 ですが、蛮族侵攻が容易かった過去は、栄華を誇るような暮らしぶりだったようです。多分、コンスタンツェ様の曾曾御爺様あたりの時代でしょうか?


 因みに現在、南西の西方辺境伯を継承しているのは、人族大公家出身で前宰相のグリワルド閣下です。

 神殿の女子棟を壊したのがバレたらお仕置きされると思います。今度の王都事変でバレると思うんで、その時の言い訳は考えておいてください。

 話は戻りますが、北方辺境伯の死亡は確認できていません。

 というか、最近やっと北への道の氷と雪が柔らかくなった所ですんで、獣人でも奥地到達は無理です。

 姫さんの育った場所は、絶滅領域の縁にあるんで、野営なんぞしたら馬も人も死にます。

 ということで、こちらが夏の季節になった頃、現地へ向かいます。

 審判所からの探索は当分無いと思われます。

 が、軍よりかは先に向かうつもりです。

 先に手をつけられるかどうかは、軍が何を優先するかにもよりますがね。

 復興と例の化け物どもの要求に応える事が優先される。

 とは思いますが、公王陛下ならば、同時進行はありえます。



 ◎そういえば...◎

 コンスタンツェ様はお詳しくは無いでしょう事について。


 獣人大公家は、元獣人王家の一族。

 そんな風に認識されているかと思います。

 否、実際そうなんですけどね。

 人族大公家がモーデン縁の使徒の家系を従える長命種一族。

 それで獣人族はモルデン縁の獣人王家の一族。

 こんな感じでしょうか?

 人族大公家は複雑な婚姻と血族関係を持っていますが、大きく見てわかりやすい括りです。

 モーデンの子孫で、人族の、長命種とそれに連なる者である。

 つまり、人族の特別長命な方々って訳ですよね。

 で、多くの人族亜人の方々は、獣人大公家も同じと思っています。

 ですが、モルデンの純粋な直系なんて珍獣はいません。


 理由を説明するのに、獣人の種族は何をもって遺伝するのか?

 という問いかけをしますか。


 獣人の種類には、重さで分ける重量という考え方と。

 体変化して擬態を解いた状態を見ての分け方

 。

 そして、獣人の種類も多種族との混血と同じく割合によりその外見の発現する形状が変わるという特性による分け方があります。

 通常の血縁関係と獣体、獣面の形によって氏族を組む事が可能です。

 もちろん、これは全てに当てはまる公式ではありません。

 肉食獣の獣変化をし、先祖帰りの肉体を持っていたとしても、その子供が草食獣の外見をしている場合もあります。

 ただ、同じ氏族外見をしている方が、その生活様式や習慣、食生活が似ている為に暮らしやすいという利点もあります。


 まぁ普通の人族の親戚を考えれば理解できますよね。

 獣人だから特殊というより、逆に、どんな外見でも同族である可能性もあるって訳です。


 つまり、人族大公家のように、まったく異常なほど、同じ氏族と種類で外部の同種族の血を入れなかった純血統の繋がりは、獣人大公家にはないのです。

 支配者の家系ではあるんですが、人族の方々のように、

 貴族同士で結婚して血筋を保とうという考え方が無かった。

 ですんで、今の獣人大公家の人々は、いろんな氏族と種族の寄せ集めです。

 大きな氏族が集まり、そして、頂点に立つ者が他者を導く。

 要するに、婚姻、子供を残す事に対する禁忌は殆ど無いのです。

 ごく普通の近親婚を慎むぐらいでしょうか?

 故に今の宗主は、獣人としては三つの大きな派閥の血を受け継いでいます。


 大きな声では言えませんが、否、書いちゃってますけど、こんな感じですかねぇ。


 獣人大公家→獣人王家の氏族で重要な地位についていない者を集め、人族大公家と縁組みさせる人員を作る為の組織。

 内実は縁組みさせる為だけに集められる集団なんで、縁組み時以外は、元の氏族で暮らしてたりします。


 獣人王家→南領獣人社会を統率する一族の事。

 大公家とは、この王家の一部って事なんですよ。


 それで、中央の人族が考える認識→獣人大公家とは南領宗主の一族のこと。

 ↑あきらかに間違い...

 反逆罪になりそうな内容ですが、これは獣人の間では普通の認識です。


 ◎バルドルバ卿について◎


 カーンの旦那に関しての調書は、ゴート商会でもちょっと厳しいです。

 公然の秘密というか、なんて言うんでしょうか。

 商売としてゴート商会が手広く展開する為には、一応カーンの旦那とは敵対できないんで、詳細は流せません。

 ですが、一応、一般的な情報だけでも書いときますね。


 南領でも一番貧乏で荒れている南西地域出身。

 ここで破落戸どもを従えた子供がいるって話が最初です。

 誰も貴族の子供だとは考えませんでした。

 当時、その南西の地方貴族の男児という話でしたが、そりゃもう貧民の子供と同じような暮らしぶりだったそうです。

 ただし、荒い気性に文字さえも知らないような子供でしたが、非常に賢くそして、中々に人の扱いがうまいようでした。

 破落戸から搾取される浮浪児の面倒も見ていたようです。

 中等教育を受ける年齢までは、貧民街を根城にしていろいろと金を稼いでいたそうです。

 その金の殆どは家族、兄弟やらなんやらを養う為に消えたようです。

 で、ここまで書けばわかるように、この父親っていう貴族なんすが、クズです。

 そして母親ってのも、目も当てられないクズです。

 この辺りも割愛しますが、この母親は獣人大公家の流れを受けたクズでして。(血筋なんて、クズさかげんとは関係ないんですね。)

 子供を産んでは放置、行きずりの男を連れ込んではくわえ込むっていうドクズです。

 当然その最後は、旦那が赤ん坊の頃に、連れ込んだ男に絞め殺されて終わっています。

 俺、こんな女は流石に許容範囲外です。


 父親の方ですが、こっちは地方貴族と最初に書きましたが、あのロッドベインと同じ氏族で、遠いですがこちらも大公家氏族の末端の血が少しだけ入っています。

 借金するだけして踏み倒す、詐欺師みたいな野郎で、更に女癖も悪かったんですよ。


 最後は、まぁ、これも知っている人は知ってるんですが。

 美人で有名な自領地の未亡人に襲いかかったところを、カーンの旦那に手斧で始末されました。

 俺、カーンの旦那の噂で一番尊敬するのがこれです。

 クズ野郎を始末して、ついでに一族の後始末をするのに、この後、旦那は有名な傭兵団に身売りしたんです。

 こん時の年齢は、ちょうどコンスタンツェ様とジェレマイア様が神殿の宝物殿から盗み出した品々を売り払ったのがバレた頃と同じです。あぁ、旦那とコンスタンツェ様って歳が近いんすね。当時のお仕置きの話は、神殿長のオジサンに聞きました。


 ロッドベインの反乱と南領浄化は、人族圏で把握する程度の知識以外を流すのも一応無理なんで、これは別で商会に交渉してください。

 で、今更ですが、ロッドベインと旦那は、表向き従兄弟となりますが、実際の血のつながりはありません。


 そして、ここからは一応、俺、個人の情報って事で特別に。


 ◎旦那の血族について◎


 コンスタンツェ様もご存じのように、バルドルバ卿の名前は畏怖と共に浄化後に広まりました。

 元から武名もありましたしね。

 で、浄化後の南領でも荒れ果てた南西地域、元々の出身地域の殆どを旦那は拝領しました。(人族領の西の辺境伯であるグリワルド閣下とはお隣さんですね。)

 南領大領主の一人になったってわけです。

 これに異議を唱える者はいませんでした。

 実は、バルドルバ卿の容姿を浄化時に初めて見た人々は、旦那が何者かってのに気がついたんですね。

 これも公然の秘密ですが、今の宗主と双子のようにそっくりなんです。

 あっちはもっと痩せ形の、旦那を更に鬼畜仕様にした感じです。

 想像するとちょっと悪夢です。

 旦那がもう一人、それも年上でさらに極悪。

 それってどんな虐めでしょうか。

 で、更に恐ろしいことに、宗主の息子どもは、似てるんです。

 悪夢です。

 実は俺的に、旦那が一番つき合いやすかったりします。

 旦那は一番普通です。

 よく考えてください。

 あの旦那が普通です。


 さて、錯乱している場合じゃないですね。

 ここからは、旦那の家族構成ですね。


 ☆モルデン王家の構成について☆


 現在の宗主は八代目になります。

 公王代がわりよりも速いのは、やはり寿命で亡くなる方が少ないからですね。


 バルナバス・フォメス・モルデン(八代目宗主)

 それで兄弟を順に上から並べますと、

 クラウス

 オイゲン

 リーヌス

 ハルガー

 ネーポムク

 ロホス

 ジーモン

 ウルリッヒ

 以上の脳筋八人兄弟です。


 詳しく知りたいですか?

 多分興味ないですよね、脳筋獣人兄弟。

 俺も興味ないですけど、八人とも南領大領主の座に座っている訳ではありません。

 中央軍に在籍し実績を残しているのは、三番目までです。

 なのでクラウス、オイゲン、リーヌスが次期宗主候補と考えられています。

 で、旦那はその中でも抜群の実績がある新たな末の息子なんで、これから楽しい事に。

 内乱にはならないです。

 そういう複雑な人達ではありません。

 むしろ、オカシイので問題ありません。

 こう書くと意味が通じないでしょうけど、獣人同士ならわかります。


 今現在、宗主継承が確実と考えられているのが、リーヌス閣下です。南領東部地域の大領主についており、国政を担っておられます。

 そして兄弟唯一の先祖返りでもあります。

 今のところ兄弟間で一番宗主を打倒する可能性が高いのです。


 あっ気がついちゃいますよね。

 そうなんですよぅ、野蛮ですよねぇ~代替わりっていっても腕力で継承するんですよぅ。

 もちろん、殺人はダメですよぅ。ハハハハハ...

 戦争で先代が戦死した場合は、継承順位の高い男子が腕力決定戦を行います。

 南領あげてのお祭りですね。馬鹿ですね。

 先代が元気で退位の意志が無い場合は、親子対決もあります。

 老齢になり穏やかに譲位するという考えが無いのが、モルデン家の特徴とも言えます。


 ◎ハーディン・ブロウ氏と親衛隊、そして信徒について◎


 南領には神聖教の分派の宗派があります。

 これは神聖教に帰依した獣人の神官が新たに教義を付け加えたり省略したりした新しい宗教です。

 神聖教と冠していますが、神聖教総本山が認めているだけで、内容自体は大分変化しています。


 神聖教炎ほむらの使徒団というのが一番有名です。

 超過激派ですので、おさわり禁止の集団でもありますが、熱心な教徒であり奉仕労苦を厭わない人達なので、南領ではそれほど問題集団とは認められていません。

 問題は、彼らは不浄に対しての極端な拒否反応を持っており、武力により行動を起こすことが多いという事です。

 つまり、彼らに不浄と認められた場合は、焼かれます。

 超怖いです。

 ただし、今のところ南領の法律を遵守し、無闇な暴力や殺人を犯していないということで、お上からはお目こぼしを受けています。

 実は、上級貴族にも彼らを支援する者が多数いることが理由でしょうか。


 コンスタンツェ様の知る人物で、教団関係者とあからさまに分かるのが、イグナシオの兄ちゃんとハーディンの旦那でしょうか。

 見分け方は、見たままですからわかりますよね。


 そしてここが重要なんですが、コルセスカ上級指揮官もブロウ南部獣人領親衛隊長(仮称です)にしても、バルドルバ卿の部下にあたるからです。

 これ偶然だと思います?

 違うでしょう~と言う理由の一つに、南領浄化の指揮をカーンの旦那が受け持った事実があります。

 つまり、身をもって彼らの目指す神への奉仕を行った人物というわけですね。だから...


 怖いです。

 超、怖いです。


 カーンの旦那の考えは、別段過激派じゃないんでいいんですけど、支持層が怖すぎます。

 つまり、旦那がモルデンを名乗ると、この過激派がごっそり旦那の支持層になるんです。

 おぉコンスタンツェ様、本当にホントに、ハーディンの旦那に何したんですか?

 俺、死にたくないので、これを書いた後にカーンの旦那に告げ口しますんでヨロシク。


 と言うことで、今回の報告書というよりお手紙はここまでで。

 新たに仕入れた詳細情報は、次の報告書で書きます。

 後、他の依頼された情報は、カーンの旦那に告げ口して了解を得てからにします。 敬具


 追伸、姫さんの私物は回収してカーンの旦那に渡します。

 その他の必要ない物については、ゲルハルト侯爵立ち会いの元、焼却しました。

 侯爵が元気になったら、コンスタンツェ様はお仕置きだそうです。


 ゴート商会 ヨーンオロフ



 回収物


 衣服数点、身の回りの品々、鞄、弓と矢、針、小刀等の武器と装備品数点。金品に関しては立ち会いの元中身を確認して渡しました。

 携帯食料は食べられそうなのでそのままに。


 焼却物


 紙、塵、使われた消耗品、その他...(毛髪とか)←変態ですね、バカですね。俺、不敬だと言われても書きますけど、どん引きです!


 因みに、ゲルハルト様は、最後のその他が展示してあるのを見て、怒鳴り散らしました。

 いつも冷静な侯爵様の、初めて怒鳴る姿を見ました。

 侯爵様は娘さんがいますから、本気で激怒したんだと思いますよ。

 コンスタンツェ様、少し、反省しましょうね。

 怪我で顔色が悪かった侯爵様は、この後、顔色が真っ赤になって医者が呼ばれました。

 コンスタンツェ様、多分、お説教だけではすまないと思います。

その他を見せられた侯爵により、早急に彼の手綱を握れる女性を探す手配がなされました。危うしコンスタンツェ、許嫁は武闘派の可能性大だ...

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