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冬の狼  作者: CANDY
哀歌の章
207/355

ACT188 モルソバーンにて その八

 ACT188


 彼らは似ていた。


 だが、異形には長い爬虫類めいた尾があった。

 そして、その体は全て、甲冑めいた外皮も含めて黒く光っていた。

 頭部を覆うツルリとした兜と下顎の部分が、どうみても癒着しており、喉元や皮膚らしき灰色の部分と甲冑も同じく継ぎ目が無い。

 似ているが、それは外皮と思える。

 亀の甲羅のように、それが体の一部を構成しているのが見て取れた。


 カーン達が武器を抜くと、異形も武器を構えた。


 鏡の中のように、それらは同じ動きをして対峙する。

 違うのは、尾がうねり、醜い歯を噛みしめては鳴らす音だ。


 私は後ろに下がりながら、目をこらした。

 この異形を構成する文字が見えない。

 汚れた気配はする。

 もしかしたら、完全な異界の生き物なのかもしれない。

 構成する文字も紋様も濁り淀み、滲んでいる。

 その形は何もかもが曖昧で、それでいて濃い。

 人の貌をとっているが、根本の材料は全く別なのかもしれない。

 なのに、不愉快なほど人に見えた。


 カーンが剣をくるりと回す。

 すると、彼と対峙した異形も武器を回した。

 その武器は金属と言うより、やはり、何かの骨のように見えた。

 三者は異形と対峙し、少しづつ位置を動く。

 私は、その戦いになんら助力はできそうもないと、早々に、その後ろにある角錐へと目を移した。

 私の位置からは、黒い影しか見えない。

 威嚇しあうカーン達を回り込むように、壁にそってジリジリと近寄る。

 幸いにも、彼らの位置どりにより、カーンの背後を動く。

 少し近づくと、その角錐が不規則に動いている事がわかった。


 動いている。


 厭な予感に、私は歩みを止めた。





 太さは大木程度。

 暗闇の中で、黒い影が蠢く。


 覚悟を決めてグリモアを通して見る。




 これは今までの取り込まれた人々とは違い、生きていた。

 歪な人の言葉が見える。

 断絶し、混在し、少なく見ても十人以上の人を構成する紋様が見える。


 男、女、子供、大人、老いている者、病んでいる者、たくさんの人が見えた。


 私は口を両手で押さえると、目を見開いた。


 しっかりと、その姿を目に映す。



 領域が混じる場を作るのが、この人の角錐なのだ。

 人の肉と魂の構造を、生きたまま組み替える。

 この構造その物が入り口になるのだ。

 だから、死んだ生き物では駄目だ。

 生きて変容し、構造を異界に合わせるのだ。

 こちらの領域の生物を使い、無理矢理橋を架けるのだ。



 これと同じ話を知っている?



 異界より橋をかけたモノ。



 異界より、女と交わり、神は滅びに沈んだ。



 宮の主は言った。



 過去、人は選んだ、と。



 そして宮の怪人達は言った。



 目覚めの齋である、と。



 理は崩れ、新たな理を得るには、いわいをせねばならない。



 汚れを落とし、神につかえねばならない。



 神に、否、神という理を選び、命を捧げねばならない。



 そして、どのような存在になろうとも、私は必ず、選ぶだろう。



 そして、愚かにも、このような存在を呼んだ人間を許しはしない。

 己が何をしようとしていたのか、その罪深さを刻みつけ、相応しい罰を与える。

 それが私の驕りであろうと、これだけは許さない。

 欲をかくのも人であるだろう。

 人を憎むのもそうだ。

 だが、この世界を浸食する悪意は、まったく別の話だ。



 どんな人間なんだろう?


 公爵を殺そうとした事よりも、アーベラインを拷問した事よりも、この領域への冒涜が許し難い。


 吹き上げるような憤怒の元は、一つだ。


 もし、滅びの神を呼ぶならば、全てを捧げて呼ぶがいいのだ。

 だが、どうだ?

 この無様さは?

 こそこそと画策し、誰かの命を奪い捧げる。

 それも自らは隠れて。




 では、呪術師たる先達は、これをどうするか?


 グリモアの知識が教える。


 どうするか?では無い。


 どうしたいか?だ。



 善良な者ならば、この呻く肉の塔を燃やすだろう。


 愚かな者ならば、カーン達が守護者を倒すのを待つだろう。


 賢い者ならば、両断して終わらせる。


 では、邪悪な者ならば、どうする?



 邪悪なるグリモアを内包する、私は?




 軽く剣を打ち合うと、カーンは少し後ろに下がった。

 同じ動きを正確に返してくるようだ。

 それを見て取ると、今一度カーンは手首をくるりと回した。


 構える。


 そして、ふわりと一歩踏み出すと、ゆっくりと剣を水平に振った。


 ゆっくりと見えたが、その踏み込みと振りは神速の域であった。

 異形も同じ動作をするが及ばず、その頭部は勢いよく跳ね飛んだ。

 切り口から黒い血液が吹き上がる。

 倒れ伏す体を避けると、再び後ろに下がった。


 その傍らでイグナシオが異形の腹を抉った。

 堅い手応えなのか、剣は深々と突き刺さって動かなくなった。

 舌打ちをすると、イグナシオは相手を力一杯蹴り飛ばした。

 ぐしゃり、と、嫌な音をたてて異形は壁で潰れた。

 潰れて殻が割れたのか、死骸からは黒い血があふれた。


 ザムは剣の握りを持ち替えた。

 逆手に握ると、奇妙な構えをとった。

 敵も同じく構える。


 皆が見守る中で、ザムは逆手にもった剣を引き回した。

 胸の高さで振り抜く。

 相手も同じく切りつけてくる。

 それを角度を変えてかわすと体を入れ替える。

 そしてそのまま剣を振り抜き回転をするとすり抜けた。


 異形はそのまま倒れた。


 顎下から短刀が頭蓋に向けて突き刺さっていた。


 体を入れ替えた時に、反対の手に短刀を持ち、死角から刺し抜いたようだ。逆手の剣は囮だ。


「手応えがないですね」


 異形から短刀を引き抜きながら、ザムが言った。


 すると、それに答えるように倒れた異形の体が蠢いた。

 蠢き体表が波打つ。

 打ち倒された他の二体も同様に、その肉が蠢く。

 体液を滴らせながら、それは寄り集まる。


「虚仮威しか」


 寄り集まった肉は変異し、長虫のようになると足を突き出して這い逃げていった。


(本物ならば、私達は即座に死んでいるのではないでしょうか)


「偽物って事か?」


(構造は近いのでしょうが、作り出した者が稚拙なのです。真に魔導師であるのかは、疑わしい。呪術師としても三流以下。人としては只の臆病者でしょう)


「それがお前の意見か?」


(魔導師とは、理を壊すもの。そして、その欲望は人の望みとは隔絶している。それを考えれば、公爵に敵対する者に組みするのが魔導師であるとは思えない。彼らなら、もっとおぞましい事を淡々と、そして堂々と行うでしょう。隠れる事無く、人を生きたまま異形とするでしょう。)


「まるで賞賛しているようだな」


(賞賛ではないですよ。単に、中途半端な事をする愚か者に、怒りがわくのです。高い志を持たぬ者の我欲が、ひどく憎く感じるのです)


「それはお前の感情なのか?」


 カーンの言いたいことはわかっている。

 それに答える事ができないことも。


「これを焼けばいいのか?」


 イグナシオが角錐に近寄る。

 側に寄り、その人の塔を眺める。

 塔は、人の体を黒い物で固めて繋げていた。

 人の白い皮膚と黒い蝋で固めた奇怪な彫像。

 老若男女が様々な姿で塔を作る。

 目を閉じる者、口を開く者、笑う者、泣く者。

 人を大きな手で握り潰して作った塔。

 そして彼らは半死のままだ。


「生きているが」


(生きているのが重要なのです。今、彼らの体は、私達の世界と、異形の世界の接点になっているのです。意識は私達の場所に、体の構造はほぼ、異界にあります。彼らを焼けば、おそらく魂はこちらに戻り、理の循環に戻れるでしょう)


「では」


(ですが)


 私は、塔にそっと手を置いた。

 それは冷たく、息をする人々とは逆に、酷く冷たかった。


(ですが..送り出す前に、私は因果律による対価を要求したいと思うのです。)


「どういう意味だ?」


 私の中の、否、私は哄笑する。

 悲しみと苦しみの象徴を前にして、気が狂ったように笑う。


「オリヴィア!しっかりしろ、オリヴィア!」


 私を揺する手に、笑いを納める。


(彼らの命を償うのは、私達ではありません。彼らの苦しみと絶望と、そして失われた時間に対する償いを、支払いをさせねばなりません。)


「何をする気だ?」



 お花が咲くよ。

 繰り返しテトが言う言葉、異形が言う言葉。


 花が咲く。



(この事を為した者を、誰も知りません。名無しの卑怯者です。ですが、この塔に集まる命は少なくとも因果律により、その卑怯者と繋がるでしょう。一人と一人ならば望みは薄くとも、まやかしとはいえ、ここまでの楔を作ったのです。彼らを陥れた相手との間に、どんなに隠そうとも、因果の道は通じている)


 困惑する三人に、私は宣言した。


(償いは、彼らを供物とした者が負う。

 その者は、罪人の印を魂に刻む。

 印は、何処にあっても、花が咲くように見える。

 人の世でも、死した後でも、そして、どのような時の中でも。

 花が咲き、印となる。

 人の世にあれば、罪人として憎悪を向けられ。

 死した後なれば、獄卒の目を引く。

 眠りの中なれば、己が罪に追われ、安らぐことは無い。

 花が咲く。

 皆の恨みを苦しみを、その者の業として負わせるのだ。

 私は見届けよう。

 その者の末路を。

 死ではない。

 苦しむことを願おう。

 これは、巡る世界の理である)


 私は楔を撫で、そこに絡まる異界の領域を解く。


(逝かれた方から焼いてください)


 椿の花のように、人が落ちてくる。


 私は解けて落ちる人を一人ずつ送り呪う。


 一人送る毎に、私達のいる場所が音をたてて軋んだ。

 軋み闇に光りが漂う。

 するとせめぎ合う境界が広がり、重なるように背後の景色が浮かぶ。


 暗い灰色の石壁だ。


 焼く毎に風が吹き、気温が下がる。


 温度は下がるが、息を吸うとそれが地上の夜気であり、私達の知る甘い空気である事がわかる。


 解かれた人は、不思議そうに辺りを見回すと、あっさりと事切れる。

 それから四肢に纏わりつく黒い物が溶けて行き、むき出しの傷が、断たれた手足が露わになる。

 それは異界に連れてこられた時には、既に命を奪うほどの傷を負っていた証拠だった。


 カーン達は、ぼろぼろと崩れ転がり落ちる人を受け取ると、火を放った。

 油薬は青白い炎を風の中で立ち上げ、あっという間に骨にする。

 哀れな骨は、焼かれたはずなのに、白く、その山を高くする。


 焼いて焼いて、立ち上る煙は風に流されていく。


 私は、ひたすら呪う。


 単純な昔ながらの呪いだ。


 人殺しと企む者に報いをと、一人一人重ねていく。

 その誰かは、隠れて企む者は、その守りを失うだろう。

 名無しの卑怯者が、考える逃げ道は、無駄だ。


 卑怯者が魔導の者ならば無理だが、只の人ならば、この理の中にある愚か者ならば、証拠などなくとも、呪われ惨めな末路となるだろう。


 楽しみだ。


 花が咲いた姿は、さぞや滑稽だろう。


 私は、最後の人が手の内に転がり落ちてくるのを待った。

 最後の人は、目を閉じた少年だ。

 活発そうな日に焼けた額、賢い顔つき。

 少年は目を少し開くと、私を見た。

 不思議そうに、何か口を動かすと、直ぐにその瞳は白く濁った。

 少年の胸から下は、既に失われていた。


 私は呪いを施すと、カーンに渡した。

 少年は、あっという間に炎に消える。


 地下道は風が強く吹き抜けていた。


 暗い地下道と骨の山。


 異形の姿も、せめぎ合う領域の境界も無い。


 風の音以外、静かだ。


 静かで、酷く虚しい気持ちが募った。









 理解した事がある。

 低俗な模倣である人の楔を見て理解した事だ。



 呪術と魔導、そもそも、グリモアとは魔導の書物だ。

 オラクルは理の中から、グリモアを作り出した。

 正確には、材料は自分の領域の物を利用し、構造理論は異界の物であるのだ。

 嘗ての人が選んだ、滅びに沈んだ神の知識がグリモアだ。

 つまり、使う者の意志と、そのあり方が、呼び名を変えているに過ぎないのだ。



 私は、魔導という禁忌の力を得ているが、それを理にそって使うのならば、呪術なのだ。

 呪術師であり死霊術師であるのだ。

 それはこの世界を素晴らしいと感じており、人を誰かを好み生きていて欲しいと願う限り変わりはしない。


 つまり、魔導師とは、この世界に絶望し、人を憎み、死滅してしまえばいいと願う者なのだ。



 ボルネフェルトは、絶望していた。

 だから、彼は腐土を生み出した。

 逸脱したのだ。

 理の中で作られていても、構造は魔導の物だったグリモア。

 だから、彼は変質したのだ。

 そして、今は還元された。

 勿論、魔導師までは至らなかったからだ。

 これが世の正しい人々が呪術師を忌避する理由の一つだ。

 呪術師は、魔導師となる要素があるのだ。



 だからこそ、名無しの卑怯者は、魔導師でもなければ呪術師でもない。


 欲に狂った醜い者だ。


 正に、我らの敵だ。


 美に対する敵だ。


 我らの、敵。


 私の抱える狂気の輩は、純粋なのだ。


 純粋に、一身に希求する者なのだ。


 善悪ではない。


 邪悪であれども、全てを捧げるのが本道なのだ。


 理に有る無しではなく。


 そういう意味では危ういともいえるだろう。


 邪悪でおぞましい異界であっても、それが純粋な恐怖や至高の技術で構築されているならば、私達は賞賛するのだ。



 だから、私達は確信する。


 名無しの卑怯者は、虚栄と自尊心ばかりの愚かな人間だ。


 自分以外は馬鹿者に見える。


 呪術と魔導、どちらかの知識を何か偶然で手に入れたのだ。


 その絵図面は、愚かで、正しい結果を知らない。


 そうだ。


 この鎮護の道行きが、魔導の輪になれば、このマレイラがどうなるか、知らないのだ。


 たぶん、名無しは、自分が全てを手に入れて、王にでもなると思っているだろう。


 実際は、違う。


 この土地は呪われ魔導の力が理の領域を押しのける。

 そして、異形と死人の蠢く異界になるのだ。



 もし、私がボルネフェルトのように、同族に絶望していたとしたら、この愚挙に対して、何ら手出しをせずに笑って結果を待つだろう。

 名無しの卑怯者は、愚挙の末にマレイラともども自滅するからだ。


 だが、私は同族、血族の縁が薄くとも、少なくとも己を育てた人々には恨みなど無い。どんな理由で私を育てたとしても、彼らを信じさせるだけの年月があったからだ。

 彼らの生きる世界を美しく感じるし、今、この時を、今知り得ている人々の誰をも憎んではいない。

 マレイラが愚挙の末に滅び、更に異界と繋がれば、それだけ私の知り得た人々の命が脅かされる。


 それは嫌だ。


 今でも十分、この世界は美しいのだ。


 ありのままの世界は、既に調和を得ているのだ。


 私は、嫌なのだ。


 そして、その選択肢は、どちらの結果をもグリモアは肯定している。

 私が嫌だとしても、グリモアの一部となれば、どうしてもそれに添う行動を選ばされてしまう。


 常に複数の意志が合意を求めるのだ。


 勿論、私が意識を強く持てば、グリモアを下す事はできる。


 だが、それもグリモアの嗜好の範囲の中での事だ。

 滅びを笑って見届けるのも、弱体させ理への流れを作り出すのも、どちらでもグリモアはいいのだ。

 そして、グリモアに喰われた人々は、同じく滅びを望んでいる。

 グリモア本来の、魔導の性質をおびるのかもしれない。

 だから、常に反対意見の中で、叫んで挙手し、人を生かしたいのだ、と、言い続けなければならない。








「オリヴィア」


 膝をつき、燃える炎を見ていた。

 嘘をつきたくないと思った。


 でも、最後は嘘をつくだろう。


 嘘をついたら、また、怒るだろうな。


 そう考えながら、差し出された手を握った。

 立ち上がり、辺りを見回す。

 薄暗い通路。

 そこは静かで、私達は風に吹かれていた。


「どっちに向かえばいい?」


(風上に向かいましょう。領域の混在は解消されたようです。モルソバーンの怪異は、実体を得た化け物以外は消えたはずです。)


「実体を得た奴は残ったのか?」


(それも見えるようになれば、野生の動物程度の驚異でしょう)


 唸る男に私は肩をすくめた。


(群で襲ってこなければ)


「あの外見を民が見たら、それだけで腰を抜かすと思うが」


(見えれば、怯えも半減するでしょう。モルソバーンの人々が恐怖したのは、見えない何かです。そして見えれば、それは只の害虫と同じです。叩き潰せばいいのです。)


 暫く、人の焚き火を見つめた。

 そうして、燃え尽きるまで見届ける。


「怒ってるのか?」


 その問いの意味が分からずに、相手を見上げる。


(私に失望したのでしょう?)


「違う。俺の器の小ささに、嫌気がさしたんだろ?」


 私達の会話は、まったくこの場にそぐわなかった。


「詰って悪かった。お前は嘘をついたんじゃない。言えなかっただけだ」


(違いますよ。私が浅はかでした。)


「お前に嘘をつかせるのも、言えずに沈黙させるのも、結局」


(違う)


 遮って、私は握った手を額にあてた。

 申し訳なさに頭が下がる。


(頼みます。どうか、いつも通り私を怒ってください。旦那は間違っていません。私は嘘つきです。)


 私の言葉に、カーンは沈黙した。


「もういいだろう。そろそろ火も消える。」


 呆れたイグナシオの声で沈黙は断たれた。


「反省したならそれでいいだろ。それからカーンは、いい歳をして何時までも拗ねるな。」


 それに握られた手を解くと、カーンは私を抱え上げた。

 私を見つめると、小さく息を吐いてから、笑った。


「..お前に真っ当な事を言われると、釈然としない」


「失敬だな、で、どっちに行けばいいんだ?」


 私は夜気のする風上を指した。


「腹が減りました。ともかく先に進みましょう」


 ザムの訴えが本気になっている。

 傷と獣化で体が活性化しているのだろう。

 ザムは抱えられた私にニコリと笑顔を向けた。


「肉が食べたいです。たぶん、今なら味付けしてなくてもいけます」


 獣化したまま言わないでほしい台詞だった。

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