ACT149 遡上
ACT149
早朝、と言っても未だ星灯りの中、野営地を出発する。
騒がしい夜だった。
そして、今も騒がしい。
夜間訓練は続行中である。
ちらほらと灯りも見えるし、派手な炎と何やら爆音もした。
死人は出ないというが、怪我人はでるだろう。
そんな事を寝ぼけて考える。
着込んだ外套の頭巾を目深に下ろす。
今日は小雨が降っている。
風は凪いでいるのと、湿地の温度で寒くはない。
私はカーンに寄りかかったまま、暗い世界を眺め見た。
近頃では、特に意識せずとも暗闇に目が利いた。
湿った空気、遠い地平。
海は既に遠く、その地平には朧な霞が降りている。
暗い空に群青色の地平にかかる灰色の霞。
点々と平らかな大地に黒い木々が突き立っている。
何やら不思議な気配が満ちていた。
小糠雨が降るというのに、時々、暗い空に星が見えた。
静かで、風の音さえも何かの歌のように思えた。
荒涼としているのに美しい。
ふと、そんな感慨が浮かぶ。
美しい夜だ。
美しい。
何故か、私の心よりも、深く誰かが感じ入っている。
そんな感じがした。
やがて泥の湿地よりも乾いた大地が多くなり、下生えの草も枯れ草から、棘を含んだ低木に変わる。
大気も徐々に温度が下がりつつあり、体が知らずに震えた。
寒いと思う前に、カーンが自分の外套の下に抱え直す。
包まれて視界が塞ぐ。
慌てて隙間を見つけて目の部分だけ覗かせた。
隊列は二つ。
私達を前後に挟む形だ。
殿は、ザム。
ロードザムと呼ばれる入れ墨の男の分隊。
先頭がトリッシュ。
パトリッシュエイクの分隊が道を開いている。
道は、殆ど消えかけた獣道のような有様だ。
ミアーハバザムは、私達の側で指示を出している。
人の息づかい、草を折る音。
やがて風と雨の音以外に、水の流れる音が混じる。
その頃には空は少し明るくなり、白い線をはしらせていた。
音は溢れ風に景色は揺れていたが、静かと感じた。
空に鳥は無く、川面は黒々と光り、その先の景色は霞んで見えない。
川が見えた辺りから、背の高い木々に変わり、踏む草も苔が見える。
野草は瑞々しく、それでいて冬の為か花も実も無い。
相変わらず道とはいえぬ場所だが、それでも何とか進むことができた。
移動の苦行は兵士達が担い、私は何もしていない。
抱えられて体が少し強ばるとか痛いとか、本当に何の役にもたっていなかった。
雲が切れ、雨が止むと朝陽が顔を出した。
雲間から光の帯が川や林に射している。
私達は川縁の見通しの良い場所で休憩をすることにした。
河原の石で炉を組み、火を興すと手際よく調理を始める。
何事も彼らは手際が良く、躊躇いがない。
私がする事といえば、邪魔にならぬように、そして警戒にあたっている者から離れないようにする。つまり、やらなくてもいい火の番をしているぐらいだ。
カーンは、ミア達と少し離れて話をしている。
私は小枝と枯れ草を時々炎にくべ、暇を潰した。
側にはザムが警戒して立っている。
彼の剣は、中型であるが両刃の物を腰に差し、背中に片手斧が背負われている。肩当て型の半円の盾は、そのまま肩口から突撃すると、大盾でもヒビを入れられるそうだ。
何で知っているかと言えば、勿論、暇な私が官給品以外の装備について質問したからだ。
移動組の殆どが、官給品と自分の持ち物を組み合わせている。
見ているだけで、色々な種類があるので暇つぶしにはいい。
今日は、もう、降らないね
不意に、言葉が聞こえた。
私は当然のように聞こえた(子供の声)に飛び上がった。
「どうした?」
すかさずカーンに気付かれたが、私は何でもないと返した。
辺りを見回すが、それらしい何かは見えない。
そして、側で警戒にあたるザムにも、何も見えない。
私に見えないのだから、多分、幻聴である。
幻聴で私の頭がとうとう緩んだと考える方が、気が楽だ。
雨は、嫌いなんだ。
ひゅっと息が詰まった。
幻聴では無い。
滑るような感触がした。
川縁に生える草の間を、目だけ動かして見る。
水面と草の間に、眼があった。
赤い、眼だ。
ひさしぶりの人だね。
朝のご挨拶に来たよ。
お花が咲くんだ。
もうすぐね。
約束したからね。
ひさしぶりの人だ。
お花が咲くの。
もうすぐ、目が覚めるんだ。
いっぱい花が咲くからね。
たくさん、たくさん咲くんだ。
この世には無い花だよ。
お花が咲いたら..
それは眼を光らせて、葦の間で私を見ていた。
口には死んだ鳥がくわえられており、今まさに血を啜り肉を食らおうとしていた。
みんな、もどってくるんだよ。
この世に咲かないお花が咲けば。
この世に咲いてるお花が消える。
はやく、お花、咲かないかな。
無邪気で可愛らしい声が途絶える。
凝視しているのに気が付いたザムが動いた。
助走無しの軽い一歩で私の傍らを通り抜ける。そのまま飛び上がり、無造作に剣を振りかぶった。
跳躍からの間合いは一瞬で、振り抜かれた剣を避ける暇は無い。
そんな電光石火の早業であった。
飛び散る草木。
だが、振り抜いた本人が一番分かっている。
それは剣先を避けると姿を消した。
振り抜かれた剣は葦を切り払い、追撃を繰り出す前に、何もそこには無いことを証明した。
「何がいた?」
それぞれに得物を抜いての問いに、ザムが答えた。
「山猫です。それも大型。模様から見て幼体ですね。親がいたら厄介だ。あいつ等は鼻がいい。」
「山猫?この辺りは生息地では無いぞ」
ユベルの否定に、ザムが頷いた。
「そう思うが、俺の振り抜きを避けるような生き物も早々いない」
「そりゃどうも。まぁ、確かに何かいたとしても、避けられねぇよな普通は」
そんな会話を余所に、両脇に手を通された。
子供の様に、目の前に持ち上げられる。
「止めてくださいよ、旦那」
「何で、最初に言わない。あぶねぇだろうが」
「最初は何だかわからなかったんです」
「気配がしたから、飛び上がったんだろ」
私は仕方なしに、足をブラブラさせている間抜けな姿のまま、相手の耳を引き寄せた。
「妙な声が聞こえたんです」
ブラブラの代わりに抱えられると、内緒話を続けた。
「最初、子供の声でした。挨拶にきたと言うので驚いた訳です」
「何と言っていた?」
私は、先ほどの幻聴のような言葉を繰り返した。
「それを山猫が?」
「わかりません。山猫がいた事と声を結びつけるのは、何となく嫌です。」
「そもそも山猫がいるというのが解せん」
「でも、山猫って湿地帯も棲息地域なんでは?」
「東公領は、その大型肉食動物が死滅している」
「どういう意味です?」
二人一組で計三組を付近の探索に向かわせる。
その間に残りは、警戒しつつも食事と休憩を終わらせた。
三組が戻ると、今度は彼らに休憩と食事をとらせた。
「どうだった?」
ミアの問いに、彼らは否定を返した。
大型肉食動物の痕跡は無い。
足跡、糞、爪痕、等。狩人でも無いのだから、そうそう簡単に見つかるものでもない。
それに山猫ともなると、木の上も移動できる。
再び歩き出した私達は、慎重に進む。
本来は、静かにすべきなのだが、貴人の警護の演習である。
喋り続ける事を逆に求められた。
だが、話題といっても先ほどの事になってしまう。
「お前が生水を飲めないように、大型の、それも山猫の系統は、この東公領の環境に適応できずに死んだ。元々は、鉱山の開発を続けた結果とも言える。一度の土壌汚染で、殆どの肉食哺乳類は一度絶滅している」
「死滅?穏やかではないですね。つまり、昔はいたんですね」
「そうだ。過去、一度この東は絶滅領域になり損なった事がある。それを技術によって人が暮らせるまでの改変を行ったのが、東八貴族の先祖だ。その所為で、未だ大型肉食動物は繁殖しない。
土と水に含まれる微量の鉱物が毒になるのだ。
これが小型の肉食動物だと、寿命と蓄積率の均衡から繁殖に影響がでる事はなかった。代わりに、これを補食する大型の物が濃縮された毒に耐えられなかった。ただし、鳥類と主にこの地域で家畜とされている草食動物も消化器官の違いから、これを免れている」
「人にはどうなんです?」
「無毒化する手段はある。元々、鉱山で使われていた公害対策の一つに、寄生虫を体内に取り込むと、重金属汚染物質をその死骸と一緒に体外排出するという効果を認めていた。土壌の汚染の浄化もその寄生虫の研究から始まり成功したという話だ」
「もしかして水のですか」
「虫を駆逐しないのは、それが大地の薬だからだ。だから、水に対して積極的な浄化を行わない。浄化するとしても水源地は除く市街地の井戸だけだ。それに土地の人間は生水を飲むように推奨している」
「感染症の原因と、毒素の排出。抗体ができれば、逆に有害な物を濾過できるということですか?ですが、風土病になってしまっては、本末転倒です」
「現地民は、過去、寄生虫に適応する肉体の加工を施された。これは一代限りではなく、その子孫にも形質が受け継がれるような施術だ。これにより、マレイラの住民には、基本的に生水を飲むことができると同時に、重金属等の毒素を排出可能になった。」
獣人と長命種は除く話である。
生き物が死滅するような重度の環境変化に対しての、苦肉の策か?
どこか、しっくりしない話である。北の山のような孤絶した場所ではない。だが、マレイラ限定での環境の汚染があったとして、どうして、この土地だけで留まれたのだろうか?
「では、山猫の存在は、良いことではないのですか?土壌が回復したという」
「違うな。自然発生する土台がないのに、存在する。それは持ち込んだ者がいる場合だ」
「確かに、肉食の野生生物を持ち込む理由がわかりませんね。居ないと思えば近在の者も警戒しませんし。家畜を飼う者も困るでしょう」
「前提は、勿論、普通の山猫だったならばだが」
「嫌な言い回しですね」
「ロードザムは、山猫の首ぐらいは普通に狩れる。あれが狩れないのなら、それは野生の山猫ではない。若しくは、腕が鈍ったかだ。帰ったら暫し再訓練しなければならない」
再びの道行きの会話に、話題になった男は嫌そうに何か呟いている。
「再教育再加工、よかったなザム。新品になって、益々、頭の中身がパーだ」
「冗談こけや。ザムは元々パーだろ」
トリッシュとユベルの冷やかしに、当人はブツブツ何か言い返しているが、聞こえなかった。
「勿論、同期は連座で再教育だが」
カーンの言葉に、周りの兵士が凍り付いた。
「アンタ等、馬鹿言ってないで仕事しな。暇なら速度を上げるよ。」
ミアの怒鳴り声で、道をかき分ける速度が上がった。
徐々に空けていく景色。
未だ鳥の声は無い。
「それじゃぁ現地民以外の、旅で訪れる者や移動する者は、毒の危険に無防備だ。土壌の汚染は、生水を飲まずとも食物から取り込んでしまいませんか?」
「汚染が酷かったのは昔の話だ。今は、東マレイラの農作物も、家畜も、そしてお前の好きな金柑も、普通に食べても死なないだろう。輸出製品に関しても、厳しい検査がかけられている。勿論、完全に重金属の汚染が無くなった訳ではない。もし、このマレイラに恒久的に移住するなら、お前の場合は、体を適合させる加工が必要になる」
「加工ってよく聞きますが、それって何をされるんですか?」
「簡単に言えば、人体改造だ。」
「改造?」
ぎょっとして、思わず大きな声が出た。
何を想像したのか分かったのだろう、カーンが声を出して笑った。
「ここに暮らすのなら、人工的な濾過臓器を体に入れる。小さな物で、丁度胡桃程の物だ。よほどの特異体質でなければ、拒絶反応も無いだろう。加工というが、千差万別。その目的によって行われる外科手術の事だ。人体改造といっても、鋸で切り刻むような事はしない。」
「初めて聞きました」
「そりゃそうだ。国や軍でしか、高度な外科手術が行われる事は無い。民が受ける医療は、そこまで進んでいないし、進まなくてもいいからな」
「どういう意味です?」
「本来あるべき姿から(加工)するんだ。改造というのは、冗談では無いって事だ。」
旦那も体を変えたのですか?
とは、聞けなかった。
軍人が加工されない訳がない。
治療ではない加工という表現が薄ら寒かった。
川幅が狭まってくると、足下が変化した。
草地から石畳が覗く。
上流に向かい右手に川。
朝陽は後ろからぼんやりと射している。
北東に向かっていたのが、徐々に北西へと向きを変えているようだ。
「姫の墓の場所にしては、随分と寂しい感じですね」
草、木、川、と暗い空に薄い光り。
冬だからなのか、それとも夏もこんなに人気が無いのか。
「簡単に公王の墓参が叶わないようにしたんでしょうか?」
「さあな、民の墓参を阻止したかったのかもな」
「どうしてです?」
「軍事優先の封建社会においも、文民の管理は難しいということだ」
「一民草にも分かるように言ってください」
「多分、姫は、貴族に疎まれたが、民には慕われたんだろう。だから、公王にも返せないかわりに、東の中枢近くに墓は作れなかった。想像だがな」
そんな私とカーンの暇を埋める会話が途切れた。
簡素な船着き場が川縁に見え、半ば崩れかかった木造の建物が見えた。
枯れ草の生えた川縁の建物は、資材を水揚げする時に利用したのだろうか?
ただ、その廃墟めいた建物の向こうに奇妙な景色が広がっていた。
一段高い土手があり案山子のような物が幾つも立っている。
案山子なのか何なのか、十字に縛られた木の棒が、地面に突き立っている。
そして、それにはまるで人のようにボロボロの布が巻かれていた。
「この辺りの風習ですか?」
「否、知らんな。誰か人がいるのかもしれない」
その案山子の土手を横に見ながら進むと、川を渡る鎖が見えた。
上に二本、下に一本と逆三角形に架かっている。
鎖は両岸の大きな杭に繋がれており、三本は等間隔にこれも鎖で離れないようにつなげられていた。
「あれを渡るんですか?」
「まぁ、落ちてもさほど流れは早くも深くもない」
私の足で渡れるだろうか?
「別段、このまま渡るから大丈夫だぞ?」
平然と宣う男に、こちらが不安になる。
どう見てもただの鎖だ。
太いが体重をかけて歩くとしても、両手を上の鎖にかける必要がある。カーンは、私を抱えて渡る気満々だが、不安だ。
トリッシュ達が最初に渡る。
安全を確かめる為か、鎖を態と揺らし負荷をかけている。
鎖は少しの余裕が保たれているが、加重を受けて沈み込むことはなかった。
吊り橋のような板を通すよりも、安定して見えた。
トリッシュ達は渡りきると、鎖の巻き付けられた杭を確認する。それから対岸の状況をざっと確認すると、手を挙げた。どうやら、渡っていいようだ。
自分でゆっくりと渡るという選択肢を選ぶ前に、ひょいと鎖を歩き出す男。
揺れない。
言葉をかけて落ちるのが怖いので沈黙を守る。
だが、普通に平地を歩くように、カーンはスタスタと鎖を歩いた。
何も言うまいと我慢して、対岸の土を踏んだところで、その顔を見る。
「意外か?」
振り返るとミアは両手を鎖にかけて、慎重に渡っているし、それに続く兵士も手放しの者はいない。
「意外な特技ですね」
「人間一つは良いところがあるってもんだ」
「なるほど、以前」
「なんだ?」
あぁ、あれは覚えていないのだ。
垂直の壁を登るのは苦戦したのに、この抜群の平衡感覚はどう言うことなんだ?とは、聞けない。
「どうやったら、手放しで渡れるんです?」
「腰から下の安定が、他の奴らよりあるんだ。元々、俺は足の活性強化が得意だ」
「活性強化って何です?」
私の問いに、カーンはやれやれと肩をすくめた。
「墓に着くまでの話題が尽きないな、オリヴィア。俺の方も色々聞きたいんだがな」
私がどうぞという仕草をすると、口をへの字に曲げた。
「何も喋らんくせに」
「そうでもないかも知れませんよ。聞き方の問題かも」
無駄口の合間に、皆が渡り終える。
川は浅く流れも緩やかだ。
もし、落ちたとしても足が着くだろう。
だが、水は黒々としており、好んで体を濡らす事は無い。
「旦那は、以前この辺りに来たことがあるんですか?」
「地形を把握するためにざっとだが、昔回ったな。砦の者はここまで頻繁には来ない。もっと東の街道沿いから巡回していく。実際の防衛地点は港以外はアッシュガルトより西側になる。川向こう、つまり今歩いているこの場所は、東公領と王国の緩衝地帯になる。はっきりとした防衛線をもうけていないのは、同じ中央大陸オルタスの同国という位置づけだからだ。」
長々とした解説を聞いた後、隣を歩くミアと眼が合った。
彼女は、どこか面白そうに、私を見ていた。
私が首を傾げると、彼女はカーンをちらりと見た。
「何だ?」
「失礼しました、団長」
今度は、私がカーンを見て問うた。
「何で団長なんです?」
それにカーンは面倒そうに、ミアを見た。
促されたと思ったのか、彼女が答えた。
「元々、第八と言えば、卿が団長ですから」
説明になっていない答えだ。
「昨日も言っただろう、俺は今のところ決まった役職が無い。こいつらは、元々俺が出向すると共に第八を抜けた出戻りだ。だからどうしても昔の呼び名がでる」
「私も卿とか団長と呼んだ方がいいんでしょうか?」
「今の団長はカーザだ。それにお前は俺の部下ではない。加えて言うなら、お前は俺の領民でも無い。」
「何と呼びましょうか?」
「前にもこんな会話をしたな」
対岸から見えた土手へと登る。
急な斜面を上がると、景色が変わった。
泥の湿地を抜け川沿いを歩いてきたが、目の前にあるのは、沼だ。
視界いっぱいの沼は、水が湧き出ており、木々の間に水草を揺らしている。歩道はその沼をうねりながら横切り、暗い木々の奥へと続いていた。
水面からの靄に林の奥は朧だ。
林の向こうはマレイラの鉱山であるのか青い峰が遙かに続く。
そして、その沼と木々の手前。
対岸から見た案山子は、全く別の物だった。
手前の土手には、無数の小さな墓があった。
それが墓であると分かるのは、小さな盛り土と建てられた木の墓標に、名前と享年が記されているからだ。
そして大きな案山子に見えた物は、墓を囲むように立つ杭のようだ。巻き付けられている布に何か書かれている。
いったい何であろうか?
「墓地ですね。どの里の物でしょうか?この辺りに人家が?」
私の問いに、傍らの男も誰も答えない。
暫しの沈黙の後、ミアが答えた。
「我々の把握外です。ここに墓があるという話は聞いたことがありません。」
墓を調べる為、私達は足を留めた。




