木魔法、血魔法との戦闘
一方その頃――。
真実の扉へ続く地下通路。
薄暗い石造りの道を、レオたちは駆け抜けていた。
空気は重い。
地下へ進めば進むほど、禍々しい魔力が濃くなっていく。
アクアは胸元の十字架のネックレスを握りしめながら、不安そうに周囲を見渡した。
「……嫌な感じ、どんどん強くなってる」
ルカも静かに頷く。
「この先にいる」
その時だった。
通路の奥。
暗闇の中に、一人の黒いフード姿が現れる。
まるで最初から待っていたかのように。
男は静かに立っていた。
レオが足を止める。
「……来たか」
フードの男はゆっくり杖を持ち上げた。
それだけで空気が張り詰める。
エディが前へ出る。
「レオさん!先行ってください」
オーランドもニヤリと笑いながら肩を鳴らした。
「ここは俺らで遊んどく」
「……いいのか」
レオが低く問う。
エディは振り返らず答えた。
「相手が時間稼ぎなら、こっちも付き合ってやるだけだ」
オーランドも赤い瞳を細めた。
「すぐ追いつくっすよ」
レオは数秒だけ二人を見つめ――そして頷く。
「……任せた」
次の瞬間。
レオはルカとアクアを連れ、さらに地下奥へ駆け出した。
その背中を見送りながら、エディが笑う。
「さて」
彼は杖を振り上げた。
ゴォォォォッ!!
巨大な緑色の魔法陣が通路全体へ展開される。
次の瞬間。
ズズズズズズッ!!!
床を突き破り、巨大な樹木が一気に成長した。
太い幹。
無数の枝。
地下通路を埋め尽くすほどの巨大樹。
木魔法。
それも極めて高位の術式。
フードの男も僅かに目を細めた。
「……巨大樹か」
エディはニヤリと笑う。
「逃がさねぇよ」
同時に。
オーランドが耳元のピアスへ触れた。
赤黒い魔力が溢れ出す。
ドクン――。
まるで心臓の鼓動のような音。
血魔法。
彼の周囲に赤黒い液体が浮かび上がる。
「久々だなぁ。本気出すの」
血が刃へ変化する。
槍。
剣。
無数の武器となって宙へ浮かんだ。
フードの男は静かに杖を構える。
「なるほど。学園の主力か」
その瞬間。
戦闘が始まった。
「行くぜェ!!」
エディが巨大樹を操る。
ドゴォォン!!
極太の根が地面を突き破り、男へ襲いかかった。
しかし。
フードの男は軽く跳躍し回避。
同時に杖を振るう。
黒い炎が放たれた。
「ッ!」
エディが目を見開く。
黒炎が巨大樹へ直撃した瞬間。
ボォォォォッ!!
一気に燃え広がる。
「普通の炎じゃねぇな……!」
魔力を侵食する特殊炎。
だが。
「なら燃え尽きる前に潰すだけだ!」
エディが両手を叩き合わせた。
ズズズズズズ!!
さらに巨大な樹木が何本も生え、通路を埋め尽くしていく。
完全に逃げ道を塞ぐつもりだ。
その隙に。
「血刃・連撃」
オーランドが静かに呟いた。
次の瞬間。
赤黒い刃が一斉に射出される。
ヒュンッ!!
凄まじい速度。
フードの男は杖で防御結界を展開する。
だが。
ガガガガガッ!!
血刃が結界を削り始めた。
「なに……?」
男が初めて驚く。
オーランドはニヤリと笑った。
「俺の血魔法、普通の防御じゃ止まんねぇんだよ」
血液に自身の魔力を混ぜ込み、侵食する。
防御特化の相手ほど相性が悪い魔法。
結界に亀裂が入った。
その瞬間。
エディが叫ぶ。
「今だァ!!」
巨大樹の根が一斉に男へ絡みつく。
ズガァァン!!
床ごと拘束された。
「くっ……!」
男が魔力を爆発させる。
黒炎が広がり、根を焼き払っていく。
だがその隙を、オーランドは見逃さない。
「終わりだ」
赤黒い巨大槍が空中へ形成される。
濃密すぎる血魔法。
通路全体が震えた。
フードの男も危険を察知したのか、初めて大きく後退する。
しかし。
その背後には巨大樹。
逃げ場はない。
オーランドが口元を吊り上げた。
「ブラッド・ジャベリン」
ドゴォォォォンッ!!!
赤黒い血の槍が一直線に放たれた。
轟音。
衝撃。
地下通路そのものが揺れる。
そして――。
ドゴォォォォンッ!!!
赤黒い血の槍が地下通路を一直線に貫いた。
轟音。
衝撃。
壁が砕け、石片が吹き飛ぶ。
だが――。
「外したァ!?」
オーランドが目を見開く。
爆煙の中。
フードの男は紙一重で回避していた。
男のローブの裾が裂け、肩から血が流れている。
しかし致命傷ではない。
オーランドが舌打ちした。
「チッ……避けんのかよ」
フードの男は着地と同時に杖を地面へ叩きつけた。
ゴォォォッ!!
黒い魔法陣が展開される。
次の瞬間。
無数の黒炎弾が空中へ浮かび上がった。
「散れ」
ヒュガァァッ!!
大量の黒炎弾が二人へ襲いかかる。
「ッ!」
エディは巨大樹を操作。
何本もの太い枝を前へ突き出した。
ドゴドゴドゴッ!!
枝へ炎弾が激突し、爆発する。
しかし。
黒炎は普通ではない。
枝へ燃え移ると、一気に侵食を始めた。
「クソッ……!」
巨大樹が次々と黒く焼け崩れていく。
その隙に。
フードの男が一瞬で距離を詰めた。
「速っ――!?」
オーランドが反応した時には、既に男の杖が目の前へ迫っていた。
ガギィン!!
咄嗟に血の刃で防御。
衝撃でオーランドが後方へ吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
壁へ叩きつけられる。
だが。
「ハハッ……いいじゃねぇか!」
オーランドは逆に笑った。
口元から血が流れる。
その血が宙へ浮かび、巨大な鎌へ変化した。
「もっと楽しませろよ!!」
ドンッ!!
床を蹴り、一気に突撃する。
血の鎌が横薙ぎに振り抜かれた。
フードの男は後退しながら杖を振るう。
黒炎の盾。
しかし。
ザシュッ!!
血の鎌が黒炎ごと切り裂いた。
「なっ……!?」
男が初めて大きく動揺する。
その瞬間。
「捕まえたぜ」
エディがニヤリと笑った。
ズズズズズズッ!!
男の足元から巨大な根が飛び出す。
今度は一本ではない。
無数。
まるで生き物のように男へ絡みついていく。
「くっ……!」
男は黒炎で焼き払おうとする。
だが。
「遅ぇよ」
エディが両手を握り込んだ。
ドゴォォォン!!
巨大樹そのものが動き出した。
天井を突き破る勢いで成長し、通路を圧迫していく。
逃げ場が消える。
オーランドも追撃へ入った。
「ブラッド・チェイン」
赤黒い血が鎖となって射出される。
ガシャン!!
男の片腕へ絡みついた。
「ッ!?」
「そのまま引き裂いてやる!!」
オーランドが魔力を爆発させる。
血の鎖が男を締め上げる。
だが次の瞬間。
ゾワッ――。
男の身体から異様な黒い魔力が溢れ出した。
エディの表情が変わる。
「なんだこの魔力……!?」
黒炎が爆発的に膨れ上がる。
ドガァァァン!!
巨大樹が吹き飛ばされた。
血の鎖も強引に引き千切られる。
オーランドが後方へ飛び退いた。
「チッ!」
煙の奥。
フードの男は静かに立っていた。
しかし。
呼吸が荒い。
肩から血が流れ続けている。
無傷ではない。
男は低く呟いた。
「……なるほど。お前たち、予想以上だ」
エディが杖を構え直す。
「そりゃどうも」
オーランドも血の刃を再形成した。
「まだまだこれからだぜ?」
地下通路の空気がさらに張り詰める。
そして次の瞬間。
三人の魔力が再び激突した。




