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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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束の間の休息

その日の夜――。


訓練を終えたルカとアクアは、ブラック寮の談話室でぐったりとソファへ沈み込んでいた。


「……疲れた」


ルカが天井を見上げながら呟く。


夜魔法の訓練は想像以上に魔力消費が激しく、身体の奥にまで疲労が残っていた。


隣ではアクアがソファに深く腰掛け、片手でペットボトルを揺らしている。


「今日は流石にやり過ぎたな」


「ブラックホール連発すると頭痛ぇ……」


普段余裕そうなアクアも、今日は珍しく疲れた表情をしていた。


そんな二人の前に、ひょこっと顔を出した人物がいる。


「おつかれー!」


明るい声とともに現れたのは、ブラック寮のムードメーカー――マリアとエディだった。


「二人とも死にそうな顔してるじゃん」


「ちゃんと生きてるー?」


マリアがくすくす笑う。


アクアはソファに沈みながら手だけ振った。


「ギリ生きてますよー」


「それよりなんか用か?」


するとエディはニヤリと笑う。


「明日、休講日っしょ?」


「二人ともどっか行ったりしねぇの?」


その言葉に、ルカとアクアは顔を見合わせた。


「……特に予定ないな」


「俺も」


訓練続きだったせいで、休みの予定など何も考えていなかった。


するとエディは待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。


「いやいやいや!」


「休講日ってのは遊ぶためにあるんだよ!」


「俺はもちろん――デート!」


ビシッと決めポーズ。


「可愛い女の子と街行ってきまーす!」


「聞いてねぇよ」


アクアが即座に突っ込む。


ルカも少し呆れたように笑った。


「元気ですね……」


「当然!」


エディは胸を張る。


「青春は待ってくれないからな!」


その横でマリアも楽しそうに口を開く。


「だったら二人もさぁー街に行ってみたら?」


「おすすめの魔道具ショップあるよー!」


そう言うと、彼女は机の上にあった紙へさらさらと文字を書き始めた。


「ここね、珍しい魔導具とか売ってるし、掘り出し物も多いの!」


「あと店主がめちゃくちゃ変人!」


「最後いらない情報だろ」


アクアが苦笑する。


マリアは気にせず、書き終えたメモをルカへ渡した。


そこには街の簡単な地図と、いくつか店の名前が記されている。


ルカはそれを見ながら呟いた。


「……確かに、買いたい物も少しあるな」


夜魔法関連の文献。


魔力補助触媒。


必要なものはいくつか思い浮かぶ。


アクアも頷いた。


「俺も新しい魔力制御具ちょっと気になってたんだよな」


「じゃあ決まりだね!変人店主にあったら私の名前出せばおまけしてくれるかもよー!よろしく言っておいて!」


マリアが嬉しそうに笑う。


エディは自室へ向かいながら振り返った。


「お前らもちゃんと青春しろよー!」


「その調子じゃ振られるかもっすよー」


アクアの返しに、談話室に笑いが広がる。


訓練や不穏な出来事が続いていた中――。


久しぶりに少しだけ穏やかな時間だった。


そして翌日。


ルカとアクアは、学園都市の街へ向かうことを決めるのだった。




翌朝――。


久しぶりの休講日ということもあり、学園内はどこか穏やかな空気に包まれていた。


いつもなら朝から訓練場へ向かう生徒たちの声が響いている時間だが、今日は寮の廊下も静かだ。


ルカとアクアは軽く朝食を済ませると、そのまま学園の正門へ向かった。


空は快晴。

柔らかな風が制服の裾を揺らしていく。


「こうして普通に出かけるの、なんか久々だな」


ルカが呟く。


アクアは両手を後ろで組みながら歩いていた。


「最近ずっと訓練と授業ばっかだったからな」


「たまにはこういう日も悪くねぇ」


巨大な門を抜け、石畳の道を少し歩く。


すると――。


視界が一気に開けた。


「……おぉ」


アクアが思わず声を漏らす。


学園都市の街並みが、目の前いっぱいに広がっていた。


大通りには沢山の人々が行き交い、露店からは香ばしい匂いが漂ってくる。


空中には小型の浮遊魔導具が飛び回り、荷物を運んでいる。


建物の壁面には魔法灯の看板が浮かび、色鮮やかな光が昼間でも輝いていた。


魔法と文明が融合した巨大都市――。


それが、この学園都市だった。


「すごい…」


ルカは周囲を見回す。


今まで授業や寮の往復ばかりで、まともに街を見る余裕はなかった。


だがこうして歩いてみると、まるで別世界だ。


「流石、国内最大級の魔法都市って感じだな」


アクアも珍しく感心したように周囲を見ていた。


近くでは魔導アクセサリーを売る店員が声を張り上げている。


「魔力効率向上リングだよー!」


「本日限定割引ー!」


さらに奥では大道芸人が炎魔法を使ったパフォーマンスを披露しており、子供たちが歓声を上げていた。


その光景に、ルカは自然と笑みを浮かべる。


「……なんか、ちゃんと都会の街って感じするな」


「今さらかよ」


アクアが笑う。


その時、ふとルカがポケットからメモを取り出した。


マリアから貰った魔道具ショップの地図だ。


「とりあえず、この店行ってみるか?」


「お、例の変人店主のとこ?」


「そこ強調するなよ……」


二人は顔を見合わせ、小さく笑う。


そして賑やかな街の中へ足を踏み入れていく。


知らない店。


知らない景色。


そして、まだ見ぬ出会い。


休講日の小さな冒険が、今始まろうとしていた。


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