表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/94

対人訓練のあとで

対人訓練が終わったあと――。


一年一組の教室には、重たい空気が漂っていた。


小さなざわめきが教室中に広がる。


「……さすがにやり過ぎじゃないか?」

「ミカイル、まだ戻ってきてないんだろ……?」


誰もが今日の対人訓練について話していた。


だが、その中心にいたエドワードの姿は教室にはない。


窓際の席に座るルカは、無言で机に肘をついていた。


胸の奥で怒りが静かに燃えている。


――ミカイルを見下すような言葉。


――一方的すぎる攻撃。


思い出すだけで、拳に力が入った。


そんな空気の中、教室の扉が勢いよく開く。


「ルカー戻ったよー!」


明るい声とともに入ってきたのはアクアとサラだった。


二人とも大きな怪我はなく、無事に訓練を終えたらしい。


「どうだった?」


ルカが声をかけると、サラは困ったように笑った。


「途中でまた魔力暴走しかけちゃって…まだ全然コントロールできないよ」


すると隣でアクアが肩をすくめる。


「でも大きな問題となかったでしょ!」


その瞬間、彼の周囲に黒い魔力がふわりと揺れた。


“ブラックホール”。


触れた魔力を無へと飲み込む、アクアだけの特殊魔法。


「正直、全然敵わなかったけど……すごく勉強にはなった」


サラは悔しそうに笑う。


だが次の瞬間、アクアはルカの表情に気づいた。


「……ルカ?どうした?なんかあった?」


ルカは少し黙ったあと、静かに今日の出来事を話し始めた。


エドワードの態度。


ミカイルへの執拗な攻撃。


そして、弱者を嘲笑うような言葉。


話を聞くにつれ、アクアの目つきも鋭くなっていく。


「……最低だな。あんまりだよ」


低い声だった。


「自分より弱い相手を痛めつけて楽しんでるみたいだった」


ルカも静かに話す。


その後、エドワードは何事もなかったかのように教室へ戻ってきた。


だがミカイルの姿はなかった。


誰もエドワードに話しかけようとしない。


本人も周囲の視線など気にする様子はなく、自席に腰掛けていた。


その態度が、余計に不気味だった。


◇ ◇ ◇


放課後。


サラはアルクとともに学園長室へ向かうらしく、ルカとアクアの二人で保健室へ向かった。


静かな廊下を歩き、保健室の扉を開く。


すると、ベッドの上にいたミカイルが驚いたように目を見開いた。


「……え?」


隣では雪梅が治癒魔法を施している。


淡い緑色の光がミカイルの身体を包んでいた。


「ブラックの二人が……お見舞いに来るなんて思ってなくて……」


ミカイルは戸惑ったように視線を泳がせる。


アクアは近くの椅子に腰掛けながら言った。


「どう体調は問題ない?」


ミカイルはそっと頷く。


ルカが続ける。


「エドワードとの訓練、何があった?」


ミカイルは少し俯き、ゆっくりと話し始める。


「あの時のエドワードは……特に機嫌が悪かったんだ」


「最初からイライラしながら技を連発してきて……僕は回避するだけで精一杯だった…」


震える声。


「あの時、ルカの夜魔法を見て……僕も影魔法で反撃しようとしたんだ」


「でも……あの場所に拘束具のトラップが仕掛けられてて……」


ルカとアクアの表情が険しくなる。


「捕まった瞬間、動けなくなって……そのまま拳で何発も殴られて……最後にファイアーボールを直接受けてぶっ飛ばされたんだ。」


あまりにも卑劣なやり方に静かな怒りが場を支配した。


つまりエドワードは最初から誘導していたのだ。


罠を仕掛けた、自分が確実に勝てる場所へ。


確かに作戦としては合理的だ。


だが――。


「……卑劣すぎるだろ」


アクアが低く吐き捨てる。


ルカも無言で拳を握っていた。


しかしミカイルは、逆に自分を責めるように首を振った。


「違うんだ……僕が弱いから」


「この学園もギリギリ合格だったし……

パープルクラスでも落ちこぼれで……一組でも成績は下の方。そんな僕だからきっと…」


その言葉には、自信の欠片もなかった。


「エドワードの気に障ったのも……多分、僕が悪いんだと思う」


その瞬間、アクアが眉をひそめる。


「それは違う」


珍しく強い口調だった。


「訓練で一方的に相手を潰していい理由にはならねぇよ」


ミカイルは驚いたように目を見開く。


ルカも静かに続けた。


「落ち着いたら戻ってくるんだよ。今度はちゃんと話そう。」


アクアも続ける。

「今日はゆっくり休みな」


ミカイルはしばらく呆然としていたが、やがて小さく笑った。


「……うん」


保健室を出たあと。


夕焼けに染まる廊下を歩きながら、アクアがぽつりと呟く。


「次は俺たち狙ってくるかもな」


「ああ」


ルカは短く答える。


窓の外では、赤く染まる空の下を鳥が横切っていった。


静かな学園。


だがその裏では、確実に不穏な火種が広がり始めていた。


そして二人は、それぞれの魔力訓練へ向かう。力をつけるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ