42余韻
オープンの翌朝
道の駅はまだ開店前
駐車場には
昨夜の雨でできた小さな水たまり
空気は澄み 山はいつも通りそこにある
昨日の賑わいが まるで夢のようだ
私は少し早く来て
館内をひと回りする
床は綺麗に拭かれている
棚には 補充された商品
冷蔵ケースのモーター音だけが
静かに響く ちゃんと動いてる
建物は もう特別な存在ではない
使われる場所 になった
菫もやって来る
売場の中央で立ち止まる
昨日 ここは人で埋まっていた
今日は静か スマホを取り出す
朝の光が差し込む店内 投稿は短い
「昨日はありがとうございました
今日は いつも通り開けます」
特別な言葉はない
でも それがこの村らしい
さくらは
出発の準備をしている
スーツケースの中に
内定通知をそっとしまいながら
百貨店の商品開発部へ
昨日オープンした道の駅の写真も一枚
戻る場所 あるな
小さく頷く
人の気配はない
昨日の賑わいが嘘のようだった
葵は診療所へ向かう坂道を歩いていた
白衣はまだ少し硬い
風が冷たい
道の駅の建物を振り返る
「出来たね」
誰に言うでもなく つぶやく
それから ゆっくりと前を向く
「私は ここで働く」
声は小さい
けれど 迷いはない 都会も考えた
外の病院も調べた
それでも
この村には診療所が一つしかない
ここで支える人が必要なら
私はその一人になる 残るんじゃない
選ぶのだ
朝の光が 診療所の窓に当たる
村に 灯りがある
開店時間
シャッターが上がる 今日は行列はない
地元の年寄が一人 ゆっくり入ってくる
「昨日は来れんかった」
「今日でええんですよ」
菫が笑う
私は入り口の外側を眺める
遠くでバスが止まる
日常が戻って来ている
大きな成功でもない 派手な事件も無い
でも確かに 村は一歩 前に進んだ
道の駅は完成した
若者はそれぞれの道を選んだ
それでも 山も川も 診療所も 役場も
変わらずそこにある
その中に 新しい拠点が加わっただけだ
この話は 一旦ここまでです
毎日読んでいただいた 皆さんありがとうございます
皆さんの応援がありましたから 最後まで完走できました
また応援よろしくお願いします ありがとうございました
感想ありましたら宜しくお願いします




