地下の終わり、約束を心に秘めて
「俺に?」
賭ける、ついていく?
「ああ。お前なら、女王を殺して、元の世界に戻してくれそうだからな」
「元に…」
「…でも、クロウ、って言ったっけ? あなたは吸血鬼だ。信用できない」
先輩が、そう言った。
「してもらわなくて結構。勝手についていく。秘密の会議に入れろなんて言わないし、なにも情報なんていらない…いや、あいつの情報以外はいらない。だから、それを条件に行こう。クロマ、お前に危機が迫った時、俺が助けよう。だから、妹の情報をくれ」
「…わかった」
「クロマ!?」
「先輩、大丈夫です。こいつは良いやつです」
「すまないな。そいつは、お前らにくれてやる。役立ててくれ。そいつは元々俺の武器なんだ。可愛いやつだぞ」
クロウは先輩の持っている剣を指差して言った。
「そうなのか。名前はあるのか?」
「名前…日本語では"王"ってところか」
「"王"…。わかった」
「お前たち、地上への出方は分かっているのか?」
「いや、俺は分からない。みんなは…」
クロマがみんなを見たが、誰も目を合わせようとしない。
「分かんないらしい。クロウ、分かるのか?」
「まあ、な。案内してやるよ」
そういうわけで、クロウを先頭に、俺たちは地上へと再出発した。
「クロマ、お前は今の女王がどんな奴かを知っているか?」
「いや、知らないな」
「今の女王は、すでに狂っている。そうだな、強い人を求めている。吸血鬼に適性のある、な」
なんとなく俺は後ろを振り返った。
…この中から吸血鬼が出たら、俺は殺せるのだろうか…?
「どうかしたの? クロマ」
不思議に思われたらしく、ユナから言葉が飛んできた。
「あ、いや。なんでもない」
「私の話してたの?」
「してない」
「ちぇ。つまんないの」
んなこと言われても…。
「…勝つとしたら、殺すとしたら今の女王だ。それも真っ向じゃなく、強襲のような形で…ちょっと無理があるか?」
「そうだな。女王がどこにいるか全く分からないから…やっぱり、情報が欲しいな」
「吸血鬼側の本部には女王は居ない。俺自身、吸血鬼の新参者だから女王に実際会ったことは無い」
「へえ。結構長く吸血鬼なのかと思ってたんだが」
「言っただろ? フランスに妹が居るんだよ」
「ああ、そういえば」
「ここを、右だ」
そうして、右に曲がるとそこには
「クロマ!」
「父さん!」
父さんである、ミヤノリシドウが居た。
「鬼…!?」
父さんは、クロウを見つけるとすぐに臨戦態勢に入る。
「わわ、ちょっ! 父さん待って! クロウは味方だ!」
俺がクロウと父さんの間に入ると、父さんは顔をしかめた。
「…味方、だと?」
「うん。味方」
「…信用ならんな」
「信用なんて結構。勝手に協力するだけだ」
父さんの言葉にクロウが応戦し始めて、ああ、めんどくさくなっていく。
「なるほど。まあ、いいだろう。何かしたら、斬るからな。まあ、帰るぞクロマ。上は片付けた」
そう言って踵を返して、父さんは、歩いていく。
「行こうぜみんな」
それぞれは、みな、一同に頷き、歩き始めた。
地上か…懐かしくも感じる。一時はどうなるかと思ったが、帰ってこれた。
……なあ、カホ、俺は…俺は、お前との約束をどうすればいいんだ?




