赤い髪の鬼と世界事情
「…お前ら、人間か?」
「そうだが…お前は?」
「俺は、クロウ。吸血鬼だ」
吸血鬼、それを聞いただけで、俺たちは戦闘態勢に入る。
「まてまて、話し合おうぜ? どう見ても聖武器所持者が四人はいるだろ。こちとら吸血鬼一人だぞ? 勝てないって」
「…よし。四人で狩ろう。シノリは援護を頼む」
「了解」
「じゃあ、行くぞ!」
「だから、止めてって言ってるじゃない」
吸血鬼の声がそう聞こえたかと思うと、もう目の前にいた。
「ひょ、ひょう」
「おっと、そいつもやめてほしいな」
「グッ!?」
『表裏』の名を呼ぶ前に手を蹴られ、『表裏』も蹴飛ばされた。
ああ、死ぬな。俺はそう思った。
「はい。貸し一つ目ね」
そう言って、吸血鬼は俺から数十メートル離れた場所へ移動した。
「え?」
「命貰わなかったから、話に乗ろうぜ? ほら、俺の後ろの透明の、ばれてるって。元の位置に戻れ」
そう言うと吸血鬼の背後から先輩が現れた。
「鬼を不意打ちするときは、殺気は殺さないと、そう言うのに俺は敏感だからね」
「…クロマ、交渉に乗ろう」
こいつには勝てない。皆、そう思った。
「クロウ、だっけか? 何が目的なんだ?」
「俺の目的? 人類の勝利。いや、あいつの勝利が目的」
「あいつ?」
「おい、今現在、ここ日本と、共同を張って戦っている国は?」
「…イギリス、フランス、アメリカか」
「アメリカはもう落ちる。支援を頑張らないと負けるが、どこからも無理だろうな。日本でさえこれなんだから、イギリスは自分のことしか考えてないし、フランスは、なあ?」
なあ? なんて聞かれても。
「フランスで何があったか知ってるか?」
フランス、勝利王とも言われた王妃シャルルを筆頭にうまく立ち回りながら、吸血鬼と戦い続けていると聞いたことはあるが、何かあったのだろうか?
「知らなそうな顔だな。じゃあ、教えてやろう。フランスは、既に壊滅状態だ。王妃シャルルは生死不明だが、王を守る兵団、神兵たちは全滅。その指揮を執っていたやつも含めてだ。その後、フランスを襲った奴らはイギリスへ。今交戦中だ。それが終わるとアメリカを終わらせて、日本、ここを潰して終わりって算段だ」
「…なんだと? それは本当なのか」
本当だとすると、かの三国より弱い日本は、潰されるのは確かだ。負けるのか?
「ちょっと待って。なんで、そんなことを私たちに言うの? バレても勝てるから?」
「いや、勝ってほしいからだ。お前らに。そうしないとあいつが身寄りする国がなくなるだろう?」
「だからあいつって」
「妹だ。俺の妹。フランスで生まれたんだがな。どこかに逃げてるはずなんだが」
「なるほど。家族が大切なんだな」
「…まあ、な」
「俺も家族が大切だ。戦友も大切だ。親友も…恋人も大切だ。だから、分かるぜ」
そう言うと、クロウは微笑んで頭を掻いた。
「そうだな。お前に賭けよう」
「は?」
「お前についていこうって言ってるんだ。この世界を終わらせてくれるような、そんなお前についていこう」
真正面から堂々と、目の前の鬼はそう言いやがった。




