剣の交わり。最強との戦い
「あ! あれ! もうすぐ地上じゃない?」
陽のような光が見え、ユナは騒いでいた。
「どうなんだろうな。シノリ?」
「調べろって? しょうがないなあ。『白猫』。…あれ? なんだろ。陽じゃない気がする」
「じゃあなんだ?」
「聖武器、かも? なんか神々しいし」
「聖武器!?」
聖武器は、それ一つでそれなりの戦力になる。
「待って! 門番? みたいのなのがいる」
そう言ったのは、シノリではなくユナだった。
「私が見てこようか?」
そう名乗り出たのはエン先輩だった。
「あ、エン先輩なら聖武器でなんとかなりますかね」
「多分ね。でも、もしもの時は助けてよ?」
「分かってます。ただ、確実な助けは期待しないでくださいよ」
「あれ? クロマそういうこという人だっけ?」
「何が起こるかわからないんで」
「…まあ、そっか。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
そういった次の瞬間には先輩は見えなくなっていた。
「じゃあ、残った俺らで見張りか」
と、俺が提案すると
「クロマ、私、向こう見てるよ」
なんて、すぐにユナが言ってくれた。
そして、それに呼応するように
「じゃ、反対側私が」
と、シノリが言った。
「じゃあ、決まりで。先輩が帰ってきたら呼びに行く」
「オッケー」
「わかった」
それから、二人はそれぞれの方へ行った。
「なら、俺が残り二人を守りながら、先輩のフォロー係か」
なら、ここが一番きつい場所だろうな。…あの二人、見張りなんていう簡単なところに逃げたな。
「クロマ」
そう話しかけてきたのは、カホだっ…
「動かないで。喋らないで…お願い」
背後からひんやりと喉元に冷たいものを当てられる。たぶん、ナイフだろう。
「…カホ、なんで…?」
「…ほんとは、もうちょっと先だったんだけど、エンが居なくなったから。好機じゃない?」
「…どういうつもりなんだ?」
「…言えない」
「…アタルもグルなのか?」
「…そうじゃなかったら、私を振りほどいて戦う? それじゃあ、しないほうがいいよ」
「くそっ」
カホは敵。アタルも敵。エン先輩や、シノリやユナもすぐには帰ってこない。万事休すか? …ちっ。アタルもこっちに歩いてきている。
「…え? カホ姉? なにやって」
しかし、アタルの反応は、俺の予想外だった。驚き戸惑っている。アタルはグルじゃなかったのか!?
「来ないで! 来ると、アタルも殺す」
「っ! な、なんでだよカホ姉!」
そう必死にアタルは叫んだ。
「煩い。黙らないと…分かるよね?」
そんなアタルにカホは無表情で、冷たく言い放った。
「あ、嬉しい。やっぱり、裏切ってくれたんだ」
その声とともに、闇が辺りを包んだ。…この声どこかで?
「お待たせ、カホちゃん。それと、さっきぶりだねクロマ」
闇が一点に集まって、それはやがて人になった。
「誰だ…?」
「忘れちゃったの? まあ、私が忘れさせたんだけどね」
…忘れさせた? いや、でも本当にこの女の人は見覚えがない。
「…クロマ、離すけど、暴れないでね」
カホはそのまま、俺を離し、前に押した。俺はそのままバランスを崩して前のめりに倒れた。
「カホちゃん、クロマにひどいね。まあ、いいんだけど」
「…ミユウさんそろそろ」
「うん。行こうか」
闇が集まって、ゲートのようなものができた。あれをくぐられると、もう!
「くそがぁぁぁ!」
俺は全身全霊で、切り掛かった。
「ミユウさん!」
「いいよ、カホちゃん。私でやるよ」
ガキンッ! 金属音が響く。キリキリと『表裏』が唸る。
「強い、って自分のこと錯覚してる? 弱い弱い。私にも勝てないのに吸血鬼を殲滅だなんて笑いも取れないよ」
「うぉぉぉ!」
「全く、目障りだ」
その一言とともに、あっけなく俺は遠くへふっ飛ばされた。
「クロマさん!」
アタルが近くに寄って、介抱してくれた。
「まだだ…まだ!」
立とうとした。しかし、立てなかった。足は震え、手に力は入らなかった。
そんな俺を見てミユウと呼ばれた女は言った。
「だから、クロマには誰も救えない。親友を幼馴染を恋人を肉親を。この世界で弱さは罪だ。強くなれ。そうじゃないと、カホちゃんは君のところには二度と帰らなくなるよ。愛し合ってるんだよね? なら、クロマ、君が強くならないといけない…おや? 何の真似かな? カホちゃん。ナイフを握る手の力が強くなってるよ。もしかして怒ってる? なら謝るよ。ごめんね」
「…いえ。別に」
「クロマと会えないのが悲しいなら、カホちゃんは私を裏切っても構わないからね。…逃げきれたらの話だけど。まあいいや。そろそろ行くから。お別れの言葉言いたければどうぞ」
「…クロマ、アタル。バイバイ」
それだけ言うと、闇が二人を飲み込んだ。
そのまま、俺らはなにも言えなかった。




