少女の恋愛事情-1
「クロマ?」
「あ、先輩」
歩いていると先輩たちと合流した。
「もう二人は?」
「ミナがシノリを診てから来るそうなんで」
「なんで二人を置いてきたの?」
「え? いや、二人に言われたからで」
「そう。心配ね」
「すいません。二人を」
「いや、いいわよ。二人とも聖武器所持者だし吸血鬼に襲われても大丈夫でしょ。私が心配しているのはそんなところじゃないの」
「じゃあ、なにを?」
「アイノセミナよ」
「え?」
「私たちで逃げてる時は…ユナちゃんだった。あの子は本物よ。アイノセ家独特の剣技だもの。けど、アイノセミナは、なにか、剣技と言うより、聖武器が戦ってた。私たちは聖武器のその能力を借りて戦う。けど、あの子は聖武器に戦わせてた」
「勘違いですよ」
「だと、良いんだけど」
「それに、ミナはそんな子じゃないです。だって」
人を愛していますから–––––––。
「ミナは、誰なの?」
カチャリ––––。
シノリはアイノセミナに愛銃の黒猫を向けていた。
「アイノセミナだよ。シノリの友達」
「…じゃあ、質問を変える。ユナとどういう関係なの?」
「姉妹。ユナが大好きな姉かな」
「嘘。正直に答えて」
「正直って、多重人格障害とでも言えばいいの?」
「え?」
「いや。それも違うか。私たちは記憶の共有をしてるし」
まあ、共有する多重人格障害だってあるか。と言った。
「ミナは、貴女は、なにが目的なの?」
「目的、ねえ。そうだなあ。人が吸血鬼に勝つ手助けをすること、かな。ユナには死んでほしくないからね」
「貴女のことを信用していたけど、どうやら無理ね。目障りだユナに代われ」
「ふふっ。シノリの方が王に適任かもね。もしかしたら、そういう話かも。うん。わかった。ユナに代わるよ」
ミナが目を閉じて、そして開けた。
「シノリ。ごめんね。ミナが何か言ったみたいで」
声が若干変わった。雰囲気も。ユナ、だろう。分かりづらいが。
「いや。いいよ別に。ユナが謝ることじゃないし」
「シノリ、誤解しないで。ミナは悪い子じゃないんだよ」
「いくらユナの言葉でも信用できない。アイノセの人なら分かるはずなのに…。なんでミナを信用できるの?」
「はあ…。シノリには、まだ正式に自己紹介してなかったね」
「正式に?」
「五大氏族当主愛ノ瀬家第百九代目当主愛ノ瀬結奈。シノリもそうだろうけどあの事件を私だって幼い時に体験してる。ある程度なら背負って生きていける自信がある。ミナだってその一つ。シノリもそう。クロマくんだって。私はもう、何一つ自分から手放したくないの。だから、シノリには宣戦布告しとく。クロマくんは私のものだから」
「なっ!? べ、別にクロマを狙ってるわけじゃ…」
「そうなの? ふーん。でも、嘘吐いて欲しくないな」
「もしかしたら、クロマが聞いてるかもしれないじゃない」
「じゃあ、逆に良いじゃん。普段なら言えないよ? クロマくんに好きですとか」
「確かに、それは…そうだけど」
「あ、やっぱり好きなんだ」
「〜っ!!?」
口をパクパクして、顔を真っ赤にしながら、シノリはユナをポコポコ殴っていた。
「シノリ、痛いって」
「あ、ご、ごめん。で、でも…今のはユナが悪いって!」
「シノリが一人で言ったんだよ」
「むう…。そうだけど」
「ほら、行こう? みんな待ってるよ」
「あ、うん。そうだね」
手を引っ張るユナのその姿は、なんだか、クロマとは違う意味で頼れる存在だった。




