第23話 チョロい
到着するなり慌てて着替え、3人揃って先輩達の楽屋を回って挨拶をした。女性の先輩には4曲目のシングルを手土産にし、男性にはシングルに加えて、手作りクッキーを添えて渡した。
あざとい気もするけど効果はテキメンで、おじさん達は僕達にメロメロになり、お兄さん達も可愛い妹だと好意的になった。
僕は妹タイプで手を出して来ないのに、美春は大人ボディだからなのか、お兄さん達も春美と2人きりになりたがるのだ。
「何だよ、結局は乳かよ。男なんて皆んなエロが目的だよ」
僕は別にお兄さん達と付き合いたい訳でも無いのに、チヤホヤされる春美を見て嫉妬していた。
「大丈夫、俺はMizukiちゃん派だから」
「ひゃあ!えへへ、有難う御座います…」
突然、背後から芸人さんに声を掛けられて驚いた。自分でも、何が有難う御座いますなのか分からなかった。
“さぁ、始まりました今週の『イツキて見よう!』先ずは、ゲストの紹介です”
MCの緑山樹さんの番組で、タイトルの「イツキて見よう!」のイツキは、名前から取られた冠番組だ。
ゲストは女優の森川杏奈さん(17)と、僕達SweetStarsだ。順番に紹介されて、1人1人自己紹介をした。
「本当は、CじゃないよAだよ!SweetStarsのセンターMizukiです!」
「えーっ!Mizukiちゃん。本当はAなんですね?えらい盛りましたね。僕、あの写真集買いましたよ。詐欺じゃないですか!?金返して下さい!」
「えー!?買ってくれたんですか?有難う御座いますって、違う。ごめんなさい。大人の事情で…小さくて、すみません」
MCの樹さんの名物ゲスト弄りが始まると、会場は笑いの渦が起こった。ADが「OKです!」とカンペを上げると、これで僕の役目は終わった。
暴露話もネットのトレンドになるだろうけど、樹さんが笑いに変えてくれたお陰で、炎上せずに済みそうだ。
最近ネットで、僕の胸を10歳の時の写真と比較され、絶対Cカップは無いだろう?とカキコミされて、騒動が持ち上がっていたのだ。
事務所としても早いうちに鎮火したくて、名物司会者のバラエティーに出演させたと言うのが本音だ。
番組の内容は、クイズをしたりゴルフのパター勝負をしたりする。途中でゲストの歌が入るので、番宣の様なものだ。アイドルや女優がバラエティー番組に出演するのは、ほとんどが番宣の為だ。僕達は、4曲目のシングルを売り込む為に出演した。
「うわぁ、上手い!」
森川杏奈さんは人気急上昇中の女優さんで、スタイルも良くてモデルでもあり今回の番宣は、発売される水着写真集の為だった。スポーツ番組にも良く出ていて、運動神経も良く、ゴルフの3mパターも1発で決めた。
「HALー!」
静まり返った会場で、集中した美春(HAL)も1発で決めた。
「凄い!」
僕と春美(RINKA)は、両手繋ぎでジャンプして喜びを表現した。
僕の番になったが、明後日の方向に勢いよくボールは転がり、会場内は爆笑だった。僕は恥ずかしがるリアクションをして後ろに下がった。
まあこんな感じで番組は終わり、ネットを見ると僕の嘘バストの話よりも、MCの樹さんが僕の胸の話をするのはセクハラじゃないのか?と炎上してしまっていた。直ぐに緑山さんの所に行って謝罪した。
「何だか僕の為に炎上してしまって、ごめんなさい。緑山さんの弄りのお陰で、助かりました」
「かまへん、かまへんで。Mizukiちゃんの為になったんなら、俺の炎上なんて大した事やない。プラスマイナスでチャラや」
緑山さんは、わざとヘタな関西弁を喋って、僕を笑わせてくれる優しさを見せた。その優しさにやられてしまい、緑山さんの事を好きになってしまった。
「本当、瑞稀ってチョロいよね」
「あんなオジサン何処が良いの?」
緑山さんは今年で46歳になり、今年で14歳になる僕とは32歳も年上で、もちろん僕のお父さんよりも年上だ。
「優しい人が好きなだけだよ。チョロいって何なのさ。さすがに妻子ある人と付き合いたいとは思わないよ」
「良かったわ、瑞稀が良識ある子で」
「もう、2人して僕が処女だからって馬鹿にしてるんでしょ!?」
「さぁ?そんな事は無いわよ~♪」
春美が、わざと小馬鹿にした言い方をしたので追い掛けると、美春は大笑いをした。
「仲良いのね、貴女達。確か同級生だったかしら?」
森川杏奈さんに声を掛けられて、気さくな感じの人でLIMEの交換した。
「気が向いたら連絡してね?」
「はい、絶対にします!」
杏奈さんは手を振って、次の現場へと向かった。
「杏奈さん、めっちゃ可愛いかった。人気女優は違うね」
「そう言う瑞稀だって、女優さんじゃないの」
「僕なんて杏奈さんの人気に比べたら、まだまだだよ」
さて番宣も終わり、4曲目を引っ提げて僕達はいよいよアメリカに乗り込むのだ。




