34.ちやほやされたいコラボ配信3
「それではやらせていただきます。」
緊張して言葉遣いが変になったが気にしないで欲しい。
〈なんだその言葉遣い〉
〈緊張しとるんか?〉
〈ミィちゃんが可愛く見えてきた〉
〈ここのリスナーちょろいな嬢の配信見に来てみ〉
ほんと思ったことと逆のことしかないなこいつら。
魔力炉に指輪を入れ魔力を込める。
「指輪サイズだから前回のより小さいドリルを作って……。」
指先に感覚を集中させ指輪に貼り付けられた精霊紋をなぞる。
「指を跳ねさせないようにして……深さを均一に……。」
〈めっちゃ集中しとるやん〉
〈こうしてみるとちょっとカッコいいな〉
〈授業参観に来てる親の気持ちってこんな感じなのかな〉
「ミィちゃんセンスあるね♪もしかして練習してたのかな♪」
さくらさんがなんか言ってるけど集中集中。
ミミズのようにうねってる精霊紋は指輪サイズになることによりその難易度を凄まじく上げていた。
「これなぞるだけ済んでるからなんとかできてるけど見ながらなんて絶対無理だよ……このサイズで書き直せたさくらさんどんだけすごいんだ。」
改めて本職の技術の高さに感心する。
〈汗かいてる……ほんとこのゲームすごいな〉
〈汗舐めたい〉
〈ヤベーのいて草〉
〈姫様より泥臭いけどそれもいいな〉
「できた……かな?」
さくらさんのアシストのおかげでなんとか彫り終えたそれは細かいながらも文字の羅列のような模様が刻まれていた。
そして指輪の裏には攻撃の錬金紋が刻まれていた。スキルのおかげでこちらはこのサイズでも難なく彫ることができた。
〈できてそうやな〉
〈老眼にはつらそう〉
〈姫のおかげってのもあるけどあの子もすごいね〉
〈やるやんけ〉
「君らってなんやかんな褒めるべきところは褒めてくれるよね。そこだけは好きだわ。」
〈急にデレるな〉
〈きっつ〉
〈調子に乗るな〉
だからいつものノリをここで持ち込むなと言ってるだろうが。
「さくらさん。できたんで仕上げお願いしていいですか?」
仕上げの魔力を込めないといけないのでさくらさんにお願いする。
「あーうん♪大丈夫だよ♪でも申し訳ないんだけどまたお薬貰ってもいいかな?」
先程のMPが0になった事態を考えれば当然だ、もちろん断る理由なんてない。
「大丈夫ですよ。何本でも飲んでいいんでお願いします。」
インベントリから10本ほど促進剤を取り出す。
「ありがと〜♪じゃあ仕上げは任せてね♪」
そう言うとさくらさんは指輪に手をかざした。
指輪が光り輝き先程と同じように変色していった。
「あれ?さっきと違わない?」
光が収まった指輪は先程と違い緑の中に赤いラインが入っていた。
錬精の指輪 魔力が混じり合った指輪。人の魔力と精霊の魔力は混ざり合い親愛なる友のためにその力を奮うだろう。
【STR】+10【AGI】+10
【混成魔力】魔法攻撃力+10% 物理攻撃に魔法攻撃の特性を付与 MP25/3m
「いやなにこれ?」
さくらさんが作ったブレスレットも破格の性能だったがこれは別格だ。
〈またなんかやったよこの子〉
〈よりによって人様の枠でやりやがったよ〉
〈物理に魔法付与ってなんだ?〉
「ミィちゃん!これ何したの?」
さくらさんが詰め寄ってくる。
「いや……あの錬金紋を指輪の裏に入れたんですけど……それが不味かったんですかね?」
単体で別の効果が付いたらいいなって思っただけでまさか混ざるとは思わなかったんです!
「錬金紋?なにそれ?」
「えっと錬金紋っていうのは……錬金術の装備作成の技術で刻んだ模様で色々効果が変わるってやつなんです。」
説明したけどなんで言えばいいのかわからない。
〈新情報を今出すな〉
〈変な隠し球いきなり投げんな〉
〈お前コラボでそれやったらあかんやろ〉
〈ぶっつけで変なの試すんじゃないよ〉
コメントが総スカンだよ。やばい炎上する!
「いや、えっとあのそんなつもりじゃなかったんですけど……ごめんなさい。」
「いや……驚いたけど別に悪いことしてるわけじゃないから謝らないで。」
さくらさんも完全に気を遣ってくれてるよねこれ。
〈悪気があったわけじゃないなら仕方ないな〉
〈姫様が許すなら俺らが何かを言うことはないな〉
〈これからは気をつけろよ〉
うちのリスナー偉そうにしすぎだろ。
「そうだね♪私も気にしないからミィちゃんも気にしないで♪それにしてもすごいね錬金術ってこんなこともできるんだ♪」
「そ、そうなんですよ。練習は必要で私もこの前覚えたばかりでよくわかってないんですけど色々効果があるみたいなんです。」
〈よくわかってないものを試したのか〉
〈失言を重ねるんじゃない〉
〈さくらさんに甘えるな〉
なにも言い返せない、正論を言うんじゃないよ。
「コメントのみんなもあんまりミィちゃんイジメちゃダメだよ♪凄いことなんだから♪」
〈懐の深い女やで〉
〈さす姫〉
〈ミィとは大違いやな〉
ついでに私をディスるんじゃない。
「そういえばミィちゃん何か告知があるんじゃなかったっけ?アクセサリー作りも終わったしいつでもいいよ♪」
ナイスさくらさん!話の流れを変えてくれた。
「あっそうですね。えっとそれじゃ皆さん聞いてください!私錬金術師のミィはこの度……お店を開くことになりました!」
〈店?〉
〈今まで作ったものが並ぶのか〉
〈錬金鋼ももしかして販売するのか?〉
〈マジもんの告知じゃん〉
「場所はバザーから離れたところになるんですけど服飾師のアリナと一緒なので錬金術の物だけじゃなくて服とかアクセサリーも販売するから女の子も是非来てください!」
そう言ってマップデータを開き皆に見せる。
「オープンは明日のお昼を予定してますのでよろしくお願いします!」
〈店の名前は何?〉
〈店の名前教えろ〉
〈名前は?〉
〈一番大事なもん忘れてて草〉
やばい!やっちゃった!
「あっそうだ、えっと店の名前は《Secret Garden》って言います。改めてよろしくお願いします!」
一気に言い切った。噛まなかったのが奇跡だ。
「すっご〜い♪お店開くんだ♪知ってると思うけどさくらもお店開いてるから何か困ったら相談してね♪」
さくらさんもいい反応をしてくれた。騙し打ちみたいな形だったけど気にしてないみたい。本当にいい人だ。
「あ、ありがとうございます。その時は頼らせてもらいます。」
「みんな〜ミィちゃんのショップ《Secret Garden》をよろしくね♪」
〈姫の店と商品は被らないだろうからギスギスはしなさそうだね〉
〈アクセサリー売り出したら被るでしょ〉
〈流石にあの性能は値段つけられんよ〉
アクセサリーに言及するコメントが見えたけど売るレベルの物を量産できる気はしないので正直売るつもりはない。
それにさくらさんの店と客を取り合うつもりもないし。
「アクセサリー関連は売らないのでそれ目的の人は悪いけどさくらさんのお店に行ってください。」
一応釘を刺しておこう。
「ミィちゃん嬉しいこと言ってくれるね♪リスナーのみんなもこれからもさくらの《Blossom》をよろしくね♪」
さくらさんのお店《Blossom》って言うんだ。打ち合わせの時緊張しすぎて見てなかったわ。
「というわけでそろそろお別れの時間だね♪ミィちゃん今日のコラボはどうだったかな?」
「あぇ……えっととても楽しかったです。さくらさんには迷惑かけちゃったけど全部フォローしてくれて頼れる大人の女性って感じで頼もしかったしほんとありがとうございました。」
〈見た目はそんなに変わらんやろ〉
〈対応力ダンチだったもんな〉
〈感謝しろよミィ〉
なんでお前らが偉そうなんだよ。
「気にしないで♪後輩配信者を支えるのも先輩の仕事だしね♪」
「じゃあミィちゃんの感想も聞けたところで今日の配信はここまで♪じゃあみんなおつさくー♪」
「あっ……えっとばいミィ!」
――配信を終了しました。
――――――
「あの子良い子だったけどヤバいわね。」
放送を終えた私はログアウトして自室で寛いでいた。
「天然でやらかしてる事のレベルが高すぎるしこのままやらかし続けたら私の店とか人気にも影響でそうよね。」
本人はアクセサリーに進出する気は無いと言っていたが簡易錬成の事を考えると時間の問題だろう。
「私の方が優秀で良いものが作れるって証明して一回上下をはっきりさせたほうがいいわよね。」
黒い感情が渦巻く。
「さて……次はどんなコラボに誘おうかしら。」
コラボ編完結です。
次回更新は木曜日を予定してます。
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