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天界で育った少女の物語  作者: 斗瑚
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精霊の国

初めて精霊の国へ行った日。絵本の中でしか知らなかった世界にとても興奮した。6つの属性の区域がある精霊の国は、不思議な作りになっている。街の外に近いほど建物が小さく、中央へ行くほど、建物が大きい。これは、大精霊、上級精霊、中級精霊、下級精霊で体の大きさが違うからだそうだ。そして、精霊の国の中央、一番大きな建物はエル様の神殿だ。つまり、中央へ行くほど上級の精霊が、外に行くほど下級の精霊が住んでいるということになる。夢の世界にも厳しい上下関係が成立していた。ただし、精霊の国に住むか、地上に住むかは精霊たちの自由らしいが、上位の精霊のお付きの子以外の下級精霊は、ほとんどが地上で暮らしているそうだ。


「うーぁ、にーしゃい!」

(うわぁ、小さい!)


初めて入ったのは、精霊区“土”と呼ばれる緑溢れる区域。外に近い小さな建物は、私の背丈ぐらいの花木に建てられていて、見たことのない花木は一本の太い木がいくつも枝分かれしており、枝の先端は平べったく、固い葉がついている。その固い葉の上に小屋のような物が建てられているのだ。一本の木に十数軒の小屋が建っている。大人の手の平にのるぐらいの本当に小さな建物だ。私が小屋をじっと見つめていると、小屋のドアが開いた。


「急がなくちゃ、急がなくちゃ!」


小屋から出てきたのは、緑の帽子に緑の服を着た小さな男の子。男の子は小屋から出た瞬間に大きな2つの目と視線があって、固まってしまった。


ピシッ──。


私は瞬きをする。


「ひゃー!魔物だ!魔物だ!逃げろぉー!」


男の子はあたふたしている。


「ちゃーう。ちゃーう。まーない。めーんね。てーまーね。」

(違うわ!違う!魔物じゃないわ!ごめんなさい!驚かせてしまって。)


私の言葉を聞いた男の子は、今度は慌て出した。


「何か言ってる!魔獣だ!魔獣だ!逃げろぉー!」


「ちゃーう。まーゆちゃーう!」

(違う!魔獣でもないわ!)


どうしたものかと困っていると、男の子の頭に何か飛んで来た。


コツーン!!


「いてっ!」


「遅いと思って見に来たら、何やってんのよ!」


「痛いじゃないか!キキ!」


「あんたがバカなことやってるからよ!」


キキと呼ばれた女の子は私の方にクルッ向きを変え、ニコッと笑った。


「リディ様ですね。はじめまして、私はキキと言います。土属性、コヒの木の精霊で、土の大精霊ノムラスティ様のお世話をさせて頂いております。」


そう言って女の子は、スカートの端を軽く掴み、一礼した。


「あ…あーして、いぃーしゅ。」

(あっ、はじめまして、リディです。)


「リ、リディ様?!えっ?えっ!噂のリディ様っ?!」


男の子は、私がリディと分かると、またあたふたしだした。


「ご、ごめんなさい!リディ様って知らずに。お、俺、トキっていいます!!ん?…ひゃ!!エルフィート様がいる!!」


そして、エル様がいることが分かるとさらにあたふたしだした。


「おーて。」

(落ち着いて。)


「リディ、残念だが、これらにはお前の心の声は届かぬよ。」


エル様が私の肩に触れる。


「リディ様、申し訳ありません。私たち下級の精霊は、お心の声が聞こえないのです。」


女の子は申し訳無さそうにうつ向く。


「あーえ!」

(謝らないで!)


どうしたらいいか分からず、私もあたふたしてしまう。


「リディ、案ずるな。お前が成長すれば良いだけのこと。今はまだ伝わらぬが、すぐに解決することだ。」


「う~~~。」

(そうですけど…)


「まぁ、お前の魔力を渡せば早いのだがな。」


エル様がボソリと呟いた。


「まーう?」

(魔力?)


「魔力を渡せば、お前と意思疏通ができるようになる。」


「あ」

(じゃあ…)


「だめだ。今のお前は魔力のコントロールができておらぬ。ここで魔力を解放すれば大変な事になるぞ。」


「あーえん?」

(大変なこと?)


「世界が混乱に陥るぐらいにな。」


そう言ってエル様はニヤッと笑う。まるで悪い事を考える人のように…あなた本当に精霊の王様ですか??


「リディ様、慌てる必要はございません。すぐにお話出来るようになりますわ。お話出来るのを楽しみにしておりますね。」


そう言って、キキはにこりと微笑んでくれた。


「ん!あーと。」

(うん!ありがとう!)


私も微笑み返す。


「まぁ、何て可愛らしいんでしょう!リディ様の微笑みはとても心が安らぎますね。ねぇ、トキ。…トキ!何ボーッとしてるの!」


「あっ…うん。そうだな。」


トキは鼻の横をポリポリ掻いている。


「あら?!大変!遅れちゃうわ!!エルフィート様、リディ様、私たちはこれで失礼させて頂きますね。ほら、行くわよ。」


「あっ、うん!じゃ、じゃあ…あっ!失礼します!」


キキとトキは、私たちに一礼して、中央の方へ飛んで行った。


「リディ、俺たちも行くぞ。」


周りを見ると精霊たちが集まってきている。エル様は私を抱き上げると一気に神殿へと転移した。


「あ…」


“もっとゆっくり見たかった!”と心で叫んだら、エル様が「ククッ」と笑った。そうだった。エル様には筒抜けだった…と、叫んだことを後悔する私だった。

誤字報告ありがとうございます!訂正させて頂きました!これからもよろしくお願いします(^^)

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