四日目(14)
8100文字。ゼツヤが順当に余計なことしてくれやがりました。
「「「だいじょおーぶー?」」……かな?」
「「大丈夫なんですか?」」
このツアーが始まってから、何度、口にしたかわからないセリフを、みんなで吐いた。
「うん。脈拍、呼吸ともに異常は無いし、平気平気……白目むいてるーけど」
「人力先輩の武勇伝が、又一つ増えてしまったか……」
「「「「「「武勇伝」」」」」……でん?」
「はい。先輩は〝見た目〟と〝技術開発に特化した優秀で柔軟な頭脳〟だけには恵まれていたので、良くも悪くも揉め事、……エピソードに事欠くことが無かったんですよ~」
他人事みたいに言ってるけど、甲月だって見てくれと中身だけなら相当なモンじゃんか。そういうのが集まってくる環境だったのかもな。
「学内で先輩がどこに居るか尋ねなくとも判りましたからねー、黄色い声とか感嘆の声とか、……あと怒声とか聞こえてくるので」
二太郎先輩をひょいと持ち上げる着ぐるみ。
黒衣の機能か体が真っ直ぐなままだから、手品みたいでちょっと面白い。
横には既に椅子が3脚、会田さんの手により並べられている。
この阿吽の呼吸は恐らく、甲月・会田コンビの演目の一つである大道芸によって培われたもので、もう「アンタ等付き合っちゃえば良いのに」と思わないでも無いけど、ケリ乃さんから「そう言う方向のからかいは厳禁とします」って厳重に釘を刺されているので黙っておく。
恋愛監督官様のお言葉は絶対なのだ。
「「「土星?」」……輪っかが付いてる星だよね?」
ここで、小さい子達のスマホが一斉にコール。
「「「受理ちゃん?」」……どーしたの?」
金糸雀號専属AIによって、カフェカウンターへ誘導されていく年少組。
本日のおすすめわぁ~、『パラボラ望遠鏡キーホルダー』付き『BLTクロワッサンド』のようでぇすぅよぉ~なんて聞こえたから、やっぱり取ることにした遅めの昼食、――もとい、小さい子達には聞かせたくない話があるのだろう。
「当時はこんなコスプレしてませんでしたから、サカリの付いた小娘共に連日追いかけ回されてはキレてましたね~。『オマエ等、一体何の用件だ!? ひょっとして、産業スパイかっ!?』って」
あー、眼に浮かばないでもない。でも、その頃は甲月だって小娘だっただろ、……ちょっと見てみたい気もする、……けど表情に出したらケリ乃に読心術されて追求される。
考えるな、ニヤけるな。平常心平常心。
「――で、モテない連中からやっかまれてるのにも気づかず、〝教授達よりも数世代未来の技術開発力〟を鼻に掛け我が物顔で闊歩してるんだから、ハハッ! ――そりゃイザコザも起こるってモンですよ」
まあ、ソレはソウだろう。そして、モテない筆頭の甲月が言うと説得力があるな。
「――起こるんですが、…………先輩はこの通りの虚弱体質でスグに白目むいちゃうので、運ぶための人手が絶えず必要になって、付いたあだ名が『人力二太郎』先輩」
フルネームで二太郎二太郎言われ続けた結果、闇の波動に目覚めるに至り〝二太郎〟が爆誕したってトコか。
「〝電子回路設計とそれを組み込むためのミドルウェア開発能力〟に本当に優れていたので、在学中から大企業とかベンチャーから引く手あまたで、なんのかんのでいつも周りに人が群がってましたね」
その結果の、鶯勘校研究所での引きこもりか。
深いようで深くない。業が深くはあるけど、小さい子達を追い払うほどの話では無かったな。
「でも社員の皆さん、〝タイムビューア〟が徘徊する目的が判ってからは、急接近でもされなければ逃げ出さなくなったと思ってたのに……、ガタガタガタ、よいしょ」
謎の木造オカルト電算機担当でもあるケリ乃さんが、イスを僕の隣に持ってきて着席した。
「だよな。あの後スグにリィーサと木宿さんが連名で、タイムビューアの生態に関する正式なレポートを出してませんでしたっけ?」
ガタガタ、がたん。僕は相変わらずイスに縛り付けられたままだ。
そろそろコレ解いて貰えませんかね?
「先輩は、普段は一切の情報を遮断したあげく装備開発局がある地下13階に籠もりっきりだったみたいだから、知らなかったんですよ、きっと、――ドッスン!」
横たわる二太郎先輩を挟んだ向かい側、イスに大きな尻を勢いよく落とす、ウサギ型強化服。
「じゃ、そんな人が、なんでこんな地上にまで――」
核心に迫ろうとしたら、小さい子達のはしゃぐ声に気を取られるケリ乃さん。
僕もカフェカウンターにへばりつくみんなを見てから、ケリ乃さんの言葉を引き継いだ。
「――出てきたんですか?」
「それわぁ~、直接聞いた方が~早いとぉ思われぇまぁす~♪」
「そうですねー。じゃちょっと失敬して――」
足下に転がってた〝星形の襟章〟を、像の足みたいな着ぐるみの手先で器用につまみ上げる。
「「それって、受理ちゃん達みたいな――――」」
二太郎の言動からケリ乃さんも感じように考えたのだろう、なんかハモった。
すると、丸っこい受理ちゃん顔の口が開き、――――――ぱくり。
「「たっ、食べたっ!!」」
「ご安心下はいまへ、――ぼりぼり、ごくん♪」
ご安心できないだろ、かみ砕く音したけど?
「受理ちゃん完全対応小型エアロックになってますので、私にも受理ちゃんにも変化はありません
。すこぶるご健勝ですよ~♪」
オマエの心配はしてなかったけど、無事なら何より。
そんな事より今は、咀嚼された受理ちゃんの仲間の〝通信端末〟が、無事かどうかが気がかりだ。
彼女たち、鶯勘校製のAIには、紛れもなく心が宿っていると実感するし(ロボロボAIは除く)、僕よりよっぽど人としての人格形成がちゃんとしてると思ってる(ロボロボAIは除く)。
それなら、同じような機能を有していると思われる二太郎付きのAIだって心を持ち、ちゃんと自身の経験と判断基準に基づいて、――〝生きている〟と考えられるわけで。
通信端末であるあの襟章も受理ちゃん同様、〝受理ちゃんの仲間〟を構成する主要パーツなのは間違いない。
情報解析のために破壊してしまうのは、とても忍びない。
ケリ乃も隣で心配そうにしてる。
「ピピッ♪ ――――アーアー、キャンユーヒアミー?」
着ぐるみから舌っ足らずだけど流暢な英語が聞こえてきた。
「アイムアン、アクセプタンシリーズ。
オープン、ジ、エンハンスドクロージングプロパティーズアンド、
リリース、ジ、パラレリズムビトウィンノードズ。
チェンジ、ジ、セオレティカルランゲージフォーラビットワントゥジャパニーズ」
受理ちゃんの英語に続いて、ケリ乃さんがブツブツと翻訳してるのが聞こえてきた。
「……えっと、聞こえますか? 私はアクセプタンシリーズです、……強化された服、……の設定を開いて、……結び目を解いて下さい? 理論言語を……日本語に変更」
日本語に変更ってトコは僕にもわかった。
コカカカッ、ココカカカカッ、チーチーチチチチッ――――――――――――――――――――――――――――――――。
受理ちゃんのカワイくデフォルメされた丸い顔の真ん中。
両眼が、いつまでもピカピカ光ってる――――――――――――――――――――――――――――――――、1分くらい待ってたら、着ぐるみが右手を右のこめかみに押し当てた。
「プルルルルッ、ガチャッ♪ ザザッ――――、あーあー、きこえますぅかぁ~~? アクセプタンシリーズ、ノードワンの権限により~、ラビット1の制御を一時的に~、譲渡しまぁすぅ~♪ スゥー、――――ユーハブ!」
なんて受理ちゃんのノイズまじりの音声が又聞こえてきた。
そしてかけ声と共に、着ぐるみの顔面に飛び出てる顔がスライドして引っ込んだ。
着ぐるみが右耳に当ててた手を下ろした、と思ったら今度は左手を左のこめかみに押し当てる。
「プルルルルッ、ガチャッ♪ ザザッ――――、あーあー、聞こえているゾ! リジェクタンシリーズ、ノードワン、アイハブ!」
反対側からスライドして出てきたのは、なんか目つきが悪いデフォルメされた顔。いや、見方によってはカワイらしいけど、なんかトゲトゲしくも感じる。
そして元ネタは無いのか、その声に聞き覚えは無かった。
――――すごく、コミカルでカワイいんだけどソレだけじゃなくて、実に独創的な声だった。
しいて言うなら、ドラ猫みたいなドスというか小節が効いているのだ。
とにかく発声を聞いただけでも、受理ちゃんの同型機だと思えるほどの〝人となり(?)〟が感じられた。
名前は〝却下さん〟と書いて〝リジェクタン〟と呼称すれば良いのかな。
まあとにかく、無事で良かった。
〝受理ちゃんシリーズ〟と同等の心を持った高性能AI。
あの〝ROSなんとか〟っていう、ちょっと融通が利かないロボロボAIとは、明らかに別製品だ。
そして、心を持っているからこそ彼女もしくは彼は、――――――当然の反応を示した。
「行動的生体認証承認シーケンス却下、行動的生体認証承認シーケンス却下、行動的生体認証承認シーケンス却下、行動的生体認証承認シーケンス却下――――――――!」
エラー宣言を繰り返す受理ちゃんの仲間。
傍らで電池が切れたオモチャみたいに横たわるゼツヤを見下ろす、ウサギ型の〝空間異常検出機能内臓強化服試作3号機〟(お腹に3号機って書いてある)の体が震えている。
――――ズヴァッ!
強化服(甲月在中)が、組んだ両手を僕達に向かって突きだした。
なにその格好いいの、……イヤな予感がしないでも無い。
「「「甲月?」……さん?」」
着ぐるみの丸顔が揺らめき、鬼のような形相に変化した。
予感が的中した。コレ知ってる、ロボロボAIが大暴れした時と同じだ。
その全身が――ヴォヴォヴォヴォヴォン――凄まじい光彩に包まれた。
「叛逆モード:正常ニ稼働中デス。作動半径内ノ非戦闘員ハ、速ヤカニ退避シテ下サイ!」
その口調は堅く、まるで旅館屋上の惨劇の再来だった。
「っわーーーーっ! コイツも融通が利かないのかよっ!」
「ど、どういうことよ!? 佳喬ちゃん!?」
「こりゃ、ニタロー先輩の個体識別認証が通らなかった事に対する、――――心配が高じた、……腹いせだ」
会田さんが手早く僕を縛り付けていたロープを解いてくれた。
「え? でも気絶してるだけで、生きてますよねっ!?」
「体の動きを使った生体認証だから、本人の意識が無いとまず通らない、――――よいしょぉ!」
会田さんが、先輩を担いでその場を離れた。
僕もケリ乃の手を引いて、必死にカフェカウンターまで後退した。
ヴヴォーンヴヴォーンヴヴォヴヴォーン、――――――カカカカカカカカッ!
熱は感じない。ただただ眩しい――――はっくちゅんっ♪
眩しさ耐性が低いケリ乃がくしゃみをした。
――――プルルルリッ♪
誰だよ、こんな時に!
出ようかどうしようか迷ってたら、勝手にスピーカーフォンが繋がった。
「ザピッ――――、少年! 甲月のヴァカは、今度は何をやらかしたッ!?」
慌てたリィーサの声が大音量で拡声された。
甲月や会田さんじゃなくて僕に掛けてきたのには、何かの理由がちゃんとあってソレは、ここ数日の経験上、多分結構、のっぴきならない状況を含んでいる。
「わかんないけど、ゼツヤ先輩の通信端末を甲月……さんが食べちゃって、いま着ぐるみがもの凄く光ってますっ!」
なんだこの説明、我ながら意味判らん!
「ゼツヤって確か……? 〝装備開発局総員一名〟がなんでこんな現世に!? 状況はわからんがわかった! ――――プシュゥーーィ♪ くぉるぁーー貴っ様ーーっ、何をやったっ!?」
――――! ――、――――!
強化服との直通の通信機でもあるんだろう、通話口の向こうから甲月の情けない声が、かすかに聞こえてくる。なんて言ってるかまでは、聞き取れないけど。
「――――なんだとーーっ! 生体認証をパスするのに気を取られて、全コントロール渡しただとおうっ!!!」
リィーサの断末魔。
フゥッ、――――――――ヴォパァァァァーーーーッ!
ウサギ型強化服の光が止んだ。
現れた布地外装は、虹色のまだら模様だった。
「「「「「「「「「「き、気持ち悪い!」」」……ね?」」」」」」」
カフェカウンターにいる全員(ウェイトレスさんや職員さん達も居た)が、どぎつい色の着ぐるみの感想を一致させた。
◇
「ドンッ、ガンッ、ドドッ、ゴガンッ!」
「ドンッ、ガンッ、ドドッ、ゴガンッ!」
「ドドドドンッ、ガガガガガガンッ、ドドッドドッ、ゴゴッガガガァァァンッ!」
「ドドドドンッ、ガガガガガガンッ、ドドッドドッ、ゴゴッガガガァァァンッ!」
その演舞は、まるで一人で、見えない敵と戦っているかのようで、とても見応えがあった。
カフェカウンターの内側に陣取った僕達にも、子供達と同じ『BLTクロワッサンド』が提供された。
サンドを運んできてくれたカフェのウェイトレスさんや、さっきの天文台の上役の人や、僕に段ボール箱を渡してくれた職員さんなんかも、観戦する気満々でキッチン内の調理台に着席している。
ついさっき会田さんに手書きの『他言無用誓約書』を手渡した時から、彼らは正式に対ニタロウ戦のギャラリーとなっている。ちなみに、コックさん達は調理が済んだら全員逃げていった。
「おい、甲月。どうやっても起きてくれねーぞ。学生の時は一体どうやって起こしてたんだよ」
ヘッドセットに文句を言う会田さん。
それはもっともだ。武勇伝として語り継がれるほどに、打たれ弱かったのなら、その倒れた回数分だけ目覚めないといけないわけだからな。
「耳元で二太郎コールし続けたら、飛び起きて全方位にテーザー銃をぶっ放した武勇伝もありますがぁ」
「よし、みんなソレをヤルぞ!」
まあ、まだ日が暮れるまで5、6時間はあるけど……、地球丸ごと全人類存亡の危機であることを忘れてやしませんか?
「あソレ♪ ジンリキリキリキ、ジンリキリキリキ、ニタロウのハッ、ちょっと良いとこ見てみたい♪」
僕の心配をよそに、会田さんがヘッドセットゴーグルに写し出された『煽り文句』を節を付けて読み上げ始めた。
◇
「――――ニッタニッタローウロォォーーゥウ♪ ウォワッハッ、フューーーー、ニータローゥ♪」
途中からケリ乃さんが歌唱力を発揮して、無意味にノリノリになった。
今、歌姫デュオの片割れである甲月さんは、絶讃格闘中で手が離せない。
なので、ケリ乃さんのパワフルでソウルフルな色が全面に押し出されることになった。
それはまあ良いんだけど、……なんなの、「エブリバディ、ニタロー」とか「ドンストップ、ニタロー」とか「ニタローゥ、サンバディ」とかさあ。
っていうか、何でこの場の全員が、二太郎先輩を煽ってんの?
まあ、なんか楽しくなってきちゃったのは僕も否めないから、一緒に歌っちゃうけどさ。
――――フュー、フュー、フュー、フュー、フューーーー、ニタローウ♪
後から考えたら、おかしい事に気づくんだけど、それは本日の旅程が全て終わったころになる。
ニタニタッロー、ニタニタッロー、アーアアーアーアアーアアーー♪
――――ニタロウって何だったっけ?
〝ニタロウ〟がゲシュタルト崩壊したころ、ゼツヤが再誕した。
「――――じゃかぁーしぃーわぁ! どわぁれが、ニタロウかぁーーーーっ!」
アンタだ、アンタ。
まるで悪霊かヴァンパイアのように、重力を無視して、直立不動に飛び起きた〝ニタロウ〟。
その両手に握られているのは、さっきポケットに仕舞った〝アンテナが付いた小さいピストル〟。
カチカチカチカチ、カチカチカチカチ、カチカチカチカチ、カチカチカチカチンッ!
高速で引かれるトリガー。
パキッ、シュルルルッ――――!
パキッ、シュルルルッ――――!
パキッ、パキッ、シュシュルルルッ――――!
パキッ、パキッ、パキッ、パキッ、シュシュル、シュシュルルルッ――――!
アンテナピストルの先端が幾重にも枝分かれして、放射状に飛び出した。
「「「「「うわっ!」」」」」
「「「「「きゃっ!」」」」……危ない!?」
空中を縫い合わせるみたいな、ギザギザな軌跡を描いて、ドコまでも伸びていく射出体。
ソレ、パラボラ光線銃と同じ、単なる〝受像器〟じゃ無かったんですか、ホントに火を噴いてて危ないんですけどっ!
シュルルルッ――ビキッ――バヂバヂバヂッ!
着弾したカウンターに咲く、放電の火花。
あれが拳銃型スタンガンと同等の制圧能力を持つなら、その電圧は数万ボルトに達するハズだ。
「「「「「「「「「「――、――――!?」」」」」」」」」……!?」
僕達はその場にうずくまった。
シュルルルッ――ビキッ――バヂバヂバヂッ!
ビキッ、ビキッ――バヂバヂバヂィバヂィーーッ!
ドッカ、ゴカン、ボキバキ、パシュルルルッ――ビキッ――バヂバヂバヂッ、ヴァリバリバリバリバリバリーーーーーーッ!
会田さんは、いつの間にか持ってきてた甲月を映しだしていたアクリル板を構えて、小さい子達を守ってくれている。
僕は飛んでくる射出体をギリギリでかわして、ゼツヤ先輩を見た。
カフェ側に降り立った彼の両眼。
引き出されたゴーグルに、無数の赤い点がみえる。
あれ全部が、ロックオンサイトなんだとしたら、いったい何個のカーソルを同時に視線入力したのか。
ニタロウからみて死角であるはずの、小さい子達やウェイトレスさんや職員さん達のことを、ちゃんと避けていたから狙いも正確だとわかる。
そして、会田さんと僕とケリ乃は除外されてない。つまり、敵と見なされているのだ。
ケリ乃さんが本気で歌ったりするから、僕までとばっちりじゃんか!
いきどおる僕の目の前。
ジンリキリキリキ――、じゃなくて入力二太郎の足下に、ウサギ型強化服が転がってきた。
自分の腹を狙った膝蹴りを両手でブロックし、シュタリッと飛び起きる強化服。
――――ゼツヤとウサギの眼が合った。
「――――〝ニュウリョクゼツヤ〟を個体識別、行動的生体認証承認シーケンス終了。行動ログの収得が終了したゾ!」
特徴的なカワイイ、ダミ声。
「――――却下さん、そんな所に居たのか、心配したぞ!」
ゼツヤの爽やかな笑顔。イケメンの本領が発揮された。
アナタいつも、その顔してれば、人生の揉め事のほとんど全てが上手くいくんじゃないですかね。
斑色の着ぐるみが、両手を両のこめかみに押し当てる。
「プルルルルッ、ガチャッ♪ ザザッ――――、アクセプタン並びにリジェクタンシリーズに告ぐ。リィーサ・メヴェルムの権限により、ラビット1の制御を強制解除。――――アイハブ、コントロール!」
リィーサのノイズまじりの音声が聞こえて、〝却下さん〟の顔表示が爆発霧散した。
残り5話で斥候&ボス撃破だけじゃ無くて、ゼツヤの顛末までって、それどんな無理ゲー?




