第1話 世界滅亡!
X月O日…。この日は世界が滅亡する予言の日。
私は予言なんて信じてなかった。他の皆だってそう。
だって、予言なんて当たった試しが無い。
信じてる人なんてほとんどいない。いても小学生とか。
今回もどうせ何も起こらないって皆思ってた。もちろん私も。
でも…予言は当たった。
突然、人が消えた。
爆発も災害も起こらず、静かに。
世界は滅亡した…。
X月O日………。
の、前日に。
* * *
相原菜々美。高校一年生。
今日は、世界が滅亡すると予言されている日だった。
ピピピピ――。
目覚まし時計の音が、部屋に鳴り響く。
毎朝聞いているはずなのに、どうしても慣れない音だ。
「ふあぁ~、もう~、うるさいなあ」
菜々美は目を閉じたまま、手探りで目覚まし時計に手を伸ばした。まぶたが塞がっていても、目覚ましを止めることくらいはできる。
ピピ、ガシャ。
ようやく静かになった部屋で、菜々美は眠そうに身じろぎした。
「う~ん、あれ? 私、制服のまま寝ちゃってた?」
自分の服装を見下ろして、首をかしげる。
普段ならパジャマを着て眠るはずなのに、今は学校の制服を着たままだった。
「そうか、昨日は部活の練習で疲れて、そのまま寝ちゃったんだ」
納得したようにつぶやくと、口を大きく開けてあくびをする。
「はぁ~、今日も学校か…。昨日はお風呂も入ってないし、早いとこご飯食べて、ちゃちゃっとシャワー浴びちゃお」
菜々美はベッドから下り、自分の部屋を出た。
まだ眠気の抜けない足取りで、のそのそとリビングへ向かう。
部屋からリビングまでは、少し長めの廊下が続いている。
その廊下を歩き、ちょうどリビングのテーブルが見え始めたところで、菜々美はふと足を止めた。
「ん? 誰かリビングにいる…?」
人の気配がする。
(お母さんもお父さんも仕事でもういないはず…もしかして泥棒!?)
菜々美は息をひそめ、相手に気づかれないよう、そ~っとリビングをのぞき込んだ。
そこには、見知らぬ人物がいた。
ムシャムシャ。
「…」
その人物は、何食わぬ顔でコーンフレークを食べていた。
(誰!?)
ムシャムシャ。
「…」
(何あのクッキ〇グパパみたいな顎の凄い人…コーンフレーク食べてるし…怖い…)
菜々美が物陰から見つめていると、不意にその人物が顔を上げた。
ムシャムシャ。
「…! お! 起きたか! おはよう!」
突然声をかけられ、菜々美の体がびくりと跳ね上がる。
(見つかった…怖い…)
「あ~、怖がらないで。怪しい人じゃないから!」
(怖い…)
男はそんな菜々美の様子を気にすることもなく、話を続けた。
「君が菜々美ちゃんだね? 私は合点 承知之助」
「君に用があって来たんだが、まずは今の状況について説明しよう」
怯えている菜々美を前に、承知之助は何事もないかのように説明を始めた。
「実は昨日の夜…君が寝ている間に、この世界にいる人々は皆いなくなってしまった」
「え?…どういうこと…?」
「世界が滅亡したんだよ」
「!!? 嘘…で…でもどうして…。私は今生きてるし、外はいつもと変わらない。それに予言の日は今日のはず…」
菜々美には、目の前の男が何を言っているのか理解できなかった。
しかし、承知之助は落ち着いた様子で説明を続ける。
「全て説明しよう…。まず予言の日についてなんだが…う~んと、なんて言えば良いかな…。予言は決して間違っていなかったんだ。でも、その予言が記されている土器を解析した研究者が、一日間違えてしまったのだ…。だから、予言の日は今日ではなく昨日だったんだ」
「え…何それ…」
「まあ、失敗は誰にでもある…。まあ、それは良しとして次の説明をしよう」
あまりにもあっさりと話を進める承知之助に、菜々美は戸惑うばかりだった。
「まず何故、世界が滅亡したのか」
「それは、世界の歯車がずれたことによって起こった」
「まあ、何を言ってるのかさっぱりだと思うが、この世界の裏側には数々の歯車がある」
「その歯車が回り続けて、この世界は成り立っているんだ」
「だが、その歯車がずれてしまった時、世界は何らかの影響が起こる」
「そして昨日、世界の歯車の一つがずれてしまった」
「そして人々だけがいなくなった。歯車のずれによる影響で」
世界の裏側に存在する歯車。
その歯車がずれたことで、人々が消えてしまった。
到底信じられない話だった。
それでも菜々美の頭には、ある疑問が浮かんでいた。
「じゃあ…お母さんも…お父さんも…みんな…」
「ああ、残念だが」
承知之助の返答に、菜々美は言葉を失った。
だが、まだ分からないことがある。
「…でも、なんで私は影響されてないの?」
「それは、君にこの世界を救ってもらう為、私が助けたからだ」
「私が…世界を…?」
「ああ、私は普通の人間ではない。簡単に言えば神様だが、神様みたいになんでも出来る訳じゃない」
「私はさっき言った世界の歯車を管理している」
「今回の件は古くから起こる事は分かっていたのだが…止める事は出来なかった」
「土器を使ってこの世界の人達の力も借りようとしたのだが…結果は残念…」
「歯車がずれるのは運命だったのだ。その運命を変える事は出来ない…。だから私は世界を元に戻す方法を考えた」
「そして、この世界には特別な力を持った人間が一人いる事を知った」
「それが君だった」
「…え?…え?…え!?」
菜々美は思わず何度も聞き返した。
世界を救う特別な人間が、自分だというのだ。
「君には実は隠された力がある。歯車がずれた影響で、その力が今、解放されているはずだ」
「その力を使えば、世界を元に戻すことが出来る」
「私の…隠された力…」
「だが、その力は君だけではどうにも出来ない。その力を使うには条件が必要なのだ」
「条件?」
「そう、その条件が『しりとり』だ」
「えっと、ふざけないで貰ってもいいですか?」
「私は真面目だぞ! 良いか!? 君はこれから色々な世界を巡って仲間を見つけるんだ!」
「その仲間の名前でしりとりをしていって、最後に見事『ん』で名前が終わる仲間を見つける!」
「え~っと…もっと分かりやすくお願いします」
「だから!! 君の名前は菜々美だろ!? 今から別の世界に行って『み』から始まる名前の人を見つけるんだ!! 『み』から始まるならなんでもいい!! 『ミノモンタウロス』とかでも『ミワ=ヒロアキ』とかでも『ミツゴロウ』とかでもいい!!!」
(何その名前…)
「ん~、聞きたい事が山程あるんだけど」
「私だって上手く説明したいが、説明のしようが無いんだ。とりあえず君には別世界に行ってもらう」
「別世界って…何それ? どうやって行くの?」
「簡単だ。物を押すような感覚で手を前に出して」
「こう?」
菜々美は言われたとおりに、手を前へ突き出した。
グゥゥン――。
すると、目の前に黒く丸いものが現れた。
「え!? 何何何!? 何か黒くて丸いのが…って吸い込まれる!?」
菜々美の体が、その黒い空間へと引き寄せられていく。
慌てる菜々美を前に、承知之助はあっさりと言った。
「じゃあ頑張って来てね」
「嘘でしょ…うわあああ!!」
菜々美の悲鳴とともに、その体は黒い空間へと吸い込まれていった。
ツヅク




