第一章 魔国の変革
異世界でも運の良い者、悪い者がいる。何もしないのに出世したり、勝手に押し上げて呉れたり、性格が悪くても、いつの間にか英雄になったりする者がいる。努力は必要だが、努力だけで出世は出来ないのが世の中だ。
(1)運命の架け橋
「御免ください。こちらはアルブレヒト商会でしょうか」
「売る物は何もないよ。とっとと帰っとくれ」答えたのはこの商会の主人のフェリックス・アルブレヒトである。
彼は朝から酒を飲んでいた。
「いいえ、買いたいのではなく、売りたいのですが」よく見ても持っているのは小さな背負い袋だけであった。何となく胡散臭い身なりで、後ろに頭巾をかぶった大男が二人、黙ってついている。
「それで何を売りたいのでしょうか」まあ聞くだけは聞こうと言った。
「小麦と干し肉と魚の干物に、果物なのですが」男は笑みを浮かべて行った。
「今は飢饉で食料品なら幾らでも買いますが、見せて貰って宜しいか」
台の上に小麦の大きな袋と、干し肉に、丸く赤い果物が袋から出されて並べられた。小さな袋からはどんどん物が出て来る。高価なマジックバックだろう。
「こんな風な物なのですが、どうでしょう」
「これを何所から」国中飢饉で食料など、どこにも無いはずだ。
「そりゃあもちろん、うちの畑からですよ」若者は笑って言った。
「小麦が一袋で、10レア、干し肉は20レア、魚は10レアですね、果物は珍しく美味しそうなので、30レアでどうでしょう」
「それでどの位引き取ってもらえますか」
「どれ位と言いますと」マジックバックの中にはどれだけ入っているのかと思いながら聞いた。
「量がどれ位、引き取って貰えるのかと思って、あちこちの店を回るのも大変なので、それに、これからも引き続き取引をお願いしたいのですが」
「どれ位あるのですか、場合によっては内の店で一手に引き取ってもいいですよ」小麦が10袋位でもあれば商会としては助かるのだが。兎に角、今の状況では多ければ多い方が助かる。
「ここに出してもいいですか」
「良いですよ。後で店の者に運ばせますから」
「では、この辺に並べましょう」といって、小麦100袋、魚、肉の干物が100束ずつ、果物が赤いのと黄色いのが100箱ずつ、合計一万レアになる。お金を用意しながら、荷物は店の若い者に倉庫に始末している。
「これはお代の一万レアです。これからのお付き合いをお願いしたいので、二千レアおまけです。まあ、お茶でもお上がりください。後ろの方もどうぞ」現金なものだ、すっかり機嫌が良くなっている。
「いやこの二人はちょっと」
「じゃあ、奥の部屋に行きましょうか。私は、魔の方でも気にしません。お得意様と取引先かどうかが大事ですので」
「では、店先では不味いので、奥でお願いします」奥の、応接間であろう部屋に案内された。
「さあ、被り物もお取りになって、ゆっくりしてください。それではお茶を飲むのもご不便でしょうから」
「これも勉強だ。二人もご馳走になりなさい」二人は頷いて、頭巾を脱いだ。予想通り二人は魔族だ。頭には太く曲がった角があった。
「私はロベール・ヴィンセント・ベッカーといいます。スタインフーバー国、商業経済大臣をしています。これからは両国の繁栄のため、商品の取引交換を行い、友好国としてやっていきたいのです。」
「これはこれはご丁寧に、私はアルブレヒト商会、代表のフェリックス・アルブレヒトと申します。今後も商会共々、今後末永く、宜しくお願いいたします」
「それで、今後、こちらと取引をするにあたって、会員になるとか、組合に入るとか、何かありますか」
「我がアルブレヒト商会にお得意様会員登録をして頂きますと、入国審査、商品関税が無料になります」
「それは有り難い。それと、税とか審査とか、法や会計に詳しい奴隷がいると聞いたのですが」
「奴隷が必要なのですか」
「我が国は農地解放と農業改革を行って、諸外国に販路を広げていきたいが、そういう方面に我が国は無知なもので、今から外交に力を入れたいと思いますが、なにぶん教育がいたらないもので、詳しい者がいないのです。代わりにやってくれて、秘密を守ってくれる者が必要なのです」
「分かりました。知り合いの奴隷商会に連絡を入れておきましょう。今から行かれますか」
言われた通りに店に行く。シェーファー奴隷商会、店の上に大きな看板がかかっていた。中に入るとすぐに店主がやって来た。
「ロベール様でしょうか」
「ああ、ロベール・ヴィンセント・ベッカーという。宜しく頼む」
「良いのを見つくろっておきました。こちらは元男爵夫人。会計や法律にも詳しく、必ず役に立つと思います」
「男爵夫人なら、家族がいるだろう」
「領地が日照りで税が入らず、借金の上、没落していった、よくある話でさ」
「では天涯孤独という訳か」
「いえ、娘が居ります。女だけなら二千、娘と一緒なら、三千でどうでしょう」
「他には何か出物は無いか」
「こっちは元建築の役人だったが、建築材料をピンハネしたとか、見た目は悪い事をするようには見えないんですがねえ」
「独り者か」
「嫁と子が一人。男だけなら二千、家族も一緒ならこちらも三千でどうでしょう」
「他は」
「どんなんが欲しいのか分かりませんが。武人が一人、少し年ですが、腕は確かです。独り者ですし、年食っているので、千五百でどうでしょう」
「じゃあ、まとめて五千でどうだ」
「それは惨い。余りにひどいじゃありませんか」
「少し負けてくれというのだ。ひどくはあるまい」
「じゃあ七千でどうです」 「四千五百」
「六千五百」 「四千」
「下がっているじゃありませんか」
「お前が早く手を打たないからだ。奴隷は生ものだ。時間が立てば下がるのは当たり前だろうが」
「五千にしますから、それで堪忍してください」
「分かった。また次もお前の所から買ってやるから、それで良かろう」
「へい、お願いします。では準備をさせますので。焼き印はサービスでやっておきますから」
「なぜ焼き印をする」
「逃げた時の用心です。所有者の証拠になります。皆さんやりますよ」
「大丈夫だ。逃げたら魔物に食われる場所だ」
「そうですよね、魔物の国ですものね」
「ではこれで手続きは良いか」
「はい、有難う御座います。またどうぞ」
「では皆さん、馬車にどうぞ」
左右の列に分かれて座った。一番ロベールに近い席に座った男が、話しかけてきた。
「あんた、若いのに国代表とは大したもんだ。王子か身内かなんかか」
「いや、元々は余所者だ」
「それにしても大したものだ」
「いや私はこいつらがいなければ外にも出れない弱虫だ」大男二人に目をやった。
「しかし、もうちょっと値切っても良かったんじゃないか。俺はこの通り年寄りだし、このおばさんは愛人にするには年食ってるし、このおやじなんか、何の役に立つのか分からんし、一番はこのお嬢さんかな。年頃になればいい娘になるだろう。ただ、まだ七、八年はかかるだろうが」
「そんな事は無い。先ずあんただが、うちは戦士が欲しんじゃなく、戦術とか戦略を指導できる者が欲しかったんだ。この淑女にしても、愛人が欲しかったんじゃなく、どちらかと言えば、秘書に当たる人とか、使用人の教育係とかが必要だった。建築土木に関してはプロがいない。だから必要な人を手に入れたと思っている」
「なんだかんだ言われても奴隷だからね。何されても、殺されても文句は言えない」
「そんな事はしませんよ。あなたは新しい刀を手に入れたら、石を切ったり、地面を打ったりしますか」
「そりゃあ大事な刀だ。乱暴なことはしない。手入れをして大事にするだろう」
「貴方たちも一緒ですよ。折角金出して手に入れた物をどぶに捨てるようなことはしない。十分役に立ってもらいますよ。役に立ち方で、奴隷の身分も開放しますし、報酬、賃金も払いますよ」
「あんたが約束しても、あちらに言ったら、偉い人や怖い人がぞろぞろ出て来るんじゃないの」
「お屋敷とは言えないが、普通の勤め人や、役人程度の生活は保障しますよ」
「ロベール様、日が暮れてまいりましたので、ここで野営しましょう」マックスが御者席から声を掛けた。
「そうしよう。焚火の用意をしてくれ。ティムは晩飯の支度を頼む。用意が出来るまで、私たちはお茶でも飲んでいよう。僕とお嬢さんは果汁で良いかな」
「あまーい。ママ、これおいしい」
「それは良かった。もうすぐ食事の用意が出来るからね」
トレイには皿にパンと干し肉を軟らかく煮たものと、豆のスープとリンゴのような果物が皮をむいて、一口大に切ったものがのっている。
「さあさあ、順に取って食べてください。暖かいうちにどうぞ」食事が終わると馬車にベットが用意された。座席を前に出して下段ベットに、上部の段を倒して閂を掛けると上部ベットが出来た。上部にウォルター家族と、ヴェルナー家族の場所となり、下段に、ロベールとオスカー、マックスとティムと場所が決まった。
(2)買われた奴隷の不安な旅路
空が白み始めた頃、オスカーは目が覚めた。剣は無いからゆっくり体を慣らしてから、体術の型を始めた。その後木の棒を剣の代わりに振ったが、久し振りなのと、剣とは重心が違うのでスムーズにとはいかないが、十、二十と振っていく。少ししてマックスが近寄ってきた。剣を二本持って来て、小さい方を渡してきた。
「いいのか」オスカーは問うた。マックスはニターと歯を見せて、頭を縦に振った。
「貴方逃げると、後に残された人、子供心配。だから逃げない」
オスカーが剣を振ると見様見真似でマックスも剣を振る。パワーもスピードも速い。楽々とオスカーの真似をしてくる。意地になってオスカーはスピードを速めるが、振り切れない。その内全身汗が流れる。鍛錬を止め、横の大きな石の上に腰を下ろした。
「年は取りたくないものだ。これきしの事で息が切れる」と言って剣を返した。
「次はもっといい剣を持ってくる」そう言って馬車の方に帰って行った。皆もそろそろと起きだしてきた。考えてみれば、見張りもいない。逃げようと思えば逃げられた気がするが、朝飯は食いたいし、他の者に迷惑はかけたくない。ロベールが後ろから声を掛けてきた。
「貴方は逃げられたのに、その気はないようですね」
「折角あんたの奴隷になったのだから、楽して飯を食わしてもらいたい」
「楽して飯ですか。まあ、浪人生活よりは楽でしょうから、飯もついているし、要望は満たしているようですが。だが、こんな身分のお方には見えないのですが」
「尽くした上司に裏切られ、無実の罪を着せられて、挙句の果てに咎人から奴隷へと、まあ、良くある話だ」
「良くある話ですか。ニコラスさんも似たような話をしていましたよ。上司に使い込みの罪を着せられて落ちるとこまで落ちたと」
「人間の世界は騙し騙され、挙句の果てが地獄行きときたもんだ」と言って大声で笑った。
「その点は我らの方が生き易いかもしれませんね。逆らわなければ殺される事は無い。その代わり、歯向かう者は生きるか死ぬかだ。強い者は弱いものを助ける。これが当たり前で、助けることが強いことの証明だから」
「皆さん早く食事を済ませてください。片づけますよ」ティムが大声で言っている。
「さあ、食事を済ませましょう。今日も一日、馬車に揺られますから」
「何事もないが良かろう」
「私は山賊でも出て来たら良いのにと思っていますよ。貴方の腕前が見れますから」
「その時は剣を持たせてもらえるのかね」
「いるならマックスに言ってください。渡してくれますよ」何んと暢気な責任者だ。そう言えば久し振りに腹の虫が満足してぐっすり寝られた。今までの人生で一番平和だ。マックスが食事を持って待っていた。野菜のスープと干し魚を軽く炙ったものにパンだ。ここ何年、朝飯を食べていない。これが幸せの味かもしれない。子供たちの方を見ると、ミルクと卵を焼いたものを貰って、美味しそうに食べている。それを見るだけで、世界一幸せな奴隷だと思った。だが奴隷は奴隷だ。まあ何とかなるだろう。魔族と言えば、見つかれば殺される、怖い存在だと思っていたが、この人たちは違うようだ。
食事を終わらせ準備が出来たら出発だ。今日も天気が良い。気持ちの良い旅だ。
昼前に川の側に止まった。マックスが子供たちに、釣り道具を持ってきた。全く遊びだ。釣り方を子供たちに教えている。ニコラスとオスカーにも釣りを勧めている。アリスとエマには昼食の準備を手伝わせている。何かしている方が気もまぎれる。
ソフィアが何か釣り上げてみんなで大騒ぎをしている。
間もなくオスカーも釣り上げた。ソフィアはみんなの数だけ釣ると言って頑張っている。それだと九匹が必要だ。ソフィアが三匹、オスカーが二匹、ニコラスが一匹、だが最後まで頑張ったオリバーが大物を釣り上げた。人数分には足りないが、大きいからと母と半分こすると言って食べた。
「これでどのくらい来たんだろうか」
「約三分の一という所かな」
「まだまだ遠いな」
「おおい」ティムが呼んでいる。子供たち二人は駆けて行った。すっかり懐いている。
「ママ、見て。こんなに採れちゃった」黄色くて子供の握りこぶし大の物を十程取って来た。
「オリバーがいっぱい取ってるの」
「これはビーワと言ってすっぱくて甘くて美味しいぞ」オスカーが言った。
「私が食べてみる」と言って、一つ取って皮ごとかじった。
「んーん。すっぱいけどおいしい。ママも食べてみて」ソフィアに言われてアリスもかじってみた。
「ええ、美味しいわ」
「お嬢さん方、これはこうやって皮をむいて食べるのじゃあ」オスカーが笑いながら言った。
「本当、皮をむくともっとおいしいわ。早く教えて欲しかったわ」プイっと横を向いた。
「これは悪いことをした。許しておくれ」
「おじさんは優しいから許してあげる」ソフィアがニコッとした。
「有難う。ソフィアは優しい子じゃあ」みんなが笑った。
「ここからはスタインフーバー国になりますので、四季折々の果物が道の側に植えてあります。旅の途中に腹が減った時食べられるようにです」ティムが言う。
「スタインフーバーの都まではまだ遠いですが、頑張ってまいりましょう」
馬車が止まった。
「どうしました」オスカーがロベールに聞いた。
「どうもオオカミの群れに出くわしたようです」
「どーれ、マックス、剣の実地訓練じゃぞ。気を入れてまいれ」と言って馬車を降りた。マックスがその後に続いた。剣を受け取ると狼をじっと待ち受けた。
「しっかりと見ておれよ。生身を切る時の極意じゃあ」剣を抜いて飛び掛かって来る狼の首と心臓を一突きする。一瞬の間に三匹を倒した。
「見たか」
「はい、確かに」
「ではやってみよ。こちらに来たやつはわしが引き受けるで、安心して立ち会え」
「分かりました」あっという間に六匹を倒した。
「見事」飛び越えてきたボスらしき狼はオスカーが一刀両断であった。
「流石ですね。狼将軍」ロベールが言うと
「何ですかそれは」
「ドラゴンを倒すとドラゴンスレイヤーと言うでしょう」
「いやですよ、さすがに照れ臭い」苦笑いをしている。
「マックス、どう思う」
「似合っていると思います」二コリともしないで言った。これは決まりだ。
狼の毛皮は良い毛皮になるので、マジックバックに入れた。
「明日には王都に到着します。スタインフーバー国はまだまだ階級とか、名誉とかが幅を利かす場所ですので、オスカーさんは王都中央機甲師団付き強攻班名誉顧問部長、ニコラスさんは宮廷建築設計施工企画庁室最高責任者、アリスさんは、経済改革執務室長及び国外折衝実務秘書官とします。これが資格証、任命辞令、制服、表彰証になります。宜しいでしょうか。それと各自に、秘書官と付き人を付けます。これ位はしないと見くびられますから」
「宮殿に着いたら報告と皆さんの謁見があります。何んと言っても王様は熊の化け物ですから、驚かれないように、恐れないようにしてください。まあ煮たり焼いたりはされませんから。横に各大臣が並んでいますが、何か言われても無視してください。どうしても答えないといけなくなったら、具体的なことは言わないで、実績で判断してくださいの一手で強行突破してください。弱みは絶対見せない。言葉は丁寧だけど上から目線。お前らが出来ないから私が代わりにやっているんだろうがと。困るのはお前らだろうと。困った時には機嫌を悪くして見せて、機嫌を損ねたお前が、責任を取ってくださいと。絶対へりくだらない。お世辞は言わない。笑顔を見せない。これだけ長い役職名だと、奴らは多分理解できない。聞いて来ても絶対教えない。それも分からない人とは話できませんと突き放す。私はこれでやってきました。ですから皆さんもくれぐれもお願いします」
「そんな難しい事は出来ないぜ」ニコラスが言った。
「大丈夫ですよ。この間も聞かれて分からないものだから大文句を言って、その間に私に調べて来いというんですよ。こちらがおお迷惑ですよ。ここだけの話、あのマジックバックを公金で買ったんだけど、自分の物にしちゃったから、帳簿に乗せられないから、外国との折衝には思いがけない金がかかることもあるから予備費にしていると。これの金だと言うと他に使えないから、項目ごとにすべて用意したらいくらあっても足りない。それともお前が行って代わりに交渉してくるかと押し切った。すごいでしょう。天才的詐欺師ですよ、まったく」マックスが笑いながら言った。
「私なんか何したらいいのか」アリスが心配そうに言った。
「多分ですが、偉いさんと一緒に食事をして、パーティーに出て食事やお付きの欠点を見つけるのが一番の仕事なんじゃないかな」
「まあ」アリスは口元を抑えた。
「でも、周りの者は助かっているんですよ。うちも親父が酒飲んで川に落ちて大けがしたんですけど、私の仕事を手伝っていて怪我したんだから公務執行中の災害だと、病院代が只になって助かっています」
「それは大変」
「誰も文句が言えない、役人の半分は彼が首に出来るんですから。まあ、困った時はご主人様に相談したら、大抵のことは解決します」
「良いんでしょうか」
「大船の豪華船に乗ったつもりで大丈夫ですよ」
(3)スタインフーバー国の変革
「王様、ただ今戻りました」
「おお、ご苦労であった。で、どうであったか」王が問う。
「情報通り、飢饉続きで食べる物もろくにありません。従って領内の食料は売り放題でございます。これで王国の外貨が稼ぎ放題です。外貨を貯めて置けばいざという時、武器でも人の心でも何でも買えます。やがて世界は我が王の物になるでしょう。その道筋となる大手の商会と契約を結んでまいりました。これで、国境は関税なしの無審査で無制限の権利を獲得してまいりました」
「流石そちであるな。褒美を取らせずばなるまい。何が良かろう。欲しい物は無いか」
「国の為であれば何を力を惜しむ道理はありませぬ。それよりこの者たちを紹介させてください。この者たちはシュヴァルツ王国の役人成れど、両国の橋渡しと、両国の繁栄のために働きたいと申すので、その心意気や、あっぱれと連れてまいりました。まず中央の者がオスカー・ブラント、強攻班名誉顧問、右がニコラス・ヴェルナー、建築設計責任者、左に控えるが、アリス・ウォルター、折衝実務秘書官でございます。王様、ご承認を宜しくお願いいたします」ロベールは皆を紹介して、役職を承認させた。
「本格的交易物資を手配し、輸送の準備をいたします」
「おお、宜しく頼むぞ。下がって良いぞ」
「ははー、有難き幸せ」平伏をして下がった。
「マックス」「はい」
「お主はオスカー殿について、剣の修練と、副官として働け」
「分かりました」
「頼むぞ。それからティムはニコラス殿について、副官兼、用心棒をやってくれ。頼むぞ。良し行け。それからアリスさんは執務室の世話係達の教育から頼む。立ち振る舞いから一般教養や読み書き計算の教育の教本作りから始めてくれ。王国宮殿の執事、給仕、世話係に至るまで教育していく材料を作ることから始めましょう」王との謁見が無事終了したのでホッとしながら皆で帰ることとした。先ずはマックスとティムに住処に案内させた。ウォルター家、ヴェルナー家、ブラントに各一軒ずつ家を手配した。仕事は明日からという事で後は必要品の買い物に時間を当てた。
ロベールの所には客があった。
「シュヴァルツ王国はどうだったかね。良く帰って来たな、ロベール」振り返ると宰相のミヒャエル・デヴィッド・ウィンクラーが笑顔を見せながらやって来た。
「これはミヒャエル様、いつもお元気そうで喜ばしいことと存じます」
「そう改まるな、ここには其方と二人だ。それでかの国とは道が付いたか」
「はい、大手商会の会員になりました」
「それは上々。それと聞いた話では飢饉で多くの民が無くなっていると聞いたが」
「それは惨い有様でした。ですがお陰で指導者、教育者、技術者を得ました」
「それは良かった。皇太子のステファンなどは未来が全く見えておらん」
「シーッ、不敬罪で捕まりますぞ
「阿奴はここにはおらん。どこかで遊び惚けているんだろう」
「遊び惚けているとは、誰の事ですかな、宰相殿」皇太子のステファン・アルノルト・フーバーだ。
「これは御珍しい、宮殿におられるとは」
「私はいつも宮殿にいますよ。何事かという時は一番に乗り込めるようにな。それより人間の国から人を浚ってきたという話だが、そこにいる女子の事か。少し年を食っておるようだが、どうせ浚うのなら、十七、八の女子にすれば良かったのに。よりによって年増を浚ってくるとは」面白そうに、からかうように言った。
「皇太子、分かっていて揶揄うのは悪い癖ですぞ。大体、ロベールがそんなものに興味が無いと知っているでしょうが」ミヒャエルが笑いながら言う。
「その女は何者だ。何が出来る」
「この宮殿に革命を起こすものにございます。よって、彼女の言う事はステファン様といえど従ってもらいます」
「それ程の強権を与えると言うのか」
「上がやらねば下は言う事を聞きませぬ」
「まあ良い。お手並み拝見と行こうか」高笑いをしながら去っていく。
「ロベール殿、いったい何を始めようと言うのか」
「何、当たり前のことを当たり前にする。それだけでございます。今のままでは他所の王族を呼べません。兵もメイドも全て教育が必要です。それと王宮や塀や門もそうでございます。山の砦で威張っている山賊にしか見えません。王都らしく文化的で、それでいて強固にしなければなりません」
「金がいくらあっても足りぬな」
「財政を改革し、必要なものは作るか、よそで手に入れる。その基礎を作ります。五年で着手し、十年で完成させます。その為には宮殿の方、各名門の方に変わって頂かなければなりません」
「お前の言う事だ。正しいのだろうが、正しいからと言って人は変われるものではない。痛みが伴う者ならばなおのことだ」
「正しい、正しくないではなく、今のこの国に必要だからです。いずれ飢饉が収まれば、ここは豊かな土地だと思って、攻めてきます」
「攻めてくるかのう」
「必ず攻めてきます。豊かな土地を作るために長年苦労するより、出来上がったものを奪った方が楽ですし、なりより他人が自分よりいい物を持っているのは許せません」
「そうか、人間は平和主義だと思っていたが、そんなものか」
「ほんとに平和主義なら、人間同士が戦争などやっていません」
「まあ、わしも出来るだけの協力をしよう。あまり無理はするなよ」
「分かっております」
「では私も王様にご挨拶をしてこよう」
(4)新生活の始まり
連れて来られた三家族は新居に案内された。三軒並びの質素だが頑丈そうな家だ。それぞれあてがわれた家に向かった。小さな門があり、門には明かりがついている。中に入ろうとすると、メイドがいた。
「お帰りなさい。私はメイドのヘレナです。宜しくお願いします」
「あら、内にメイドはいらないのに」アリスが言った。そこにオスカーが彼付きのメイドを連れてやってきた。
「何だ、まだ中に入っていないのか。どうした、揉め事か」
「いいえ、うちは私がいるからメイドはいらないと」メイドのヘレナは泣きそうだ。
「こちらの者がいる方が便利だろう」
「でも、二人だし、必要ないと思うのだけど」
そこへマックスがヴェルナー一家を連れてやってきた。
「どうしたんですか、こんな入り口に集まって、何か問題でも」
「いやあ、アリスがメイドはいらないと言っているのだが」オスカーが説明をした。
「これは私からのお願いですが、彼女たちは獣人奴隷です。ここを首になったら、しくじり奴隷として、奴隷商人の元に戻され、再教育という名の折檻を受けて、さらにその教育費が借金に加算され、今度は額に焼き印をされます」
「なんてひどい」エマが悲鳴のような声で言った。
「こちらだけではないですよ。皆さんも奴隷館で売買された時、額に焼き印をされそうになったでしょう。奴隷はたいていどこでもそうですよ」マックスは静かに言った。
「私たちも奴隷ですものね。すっかり忘れていたわ」エマが言った。
「貴方は彼女にそんな扱いをしたいですか」マックスはアリスに迫るように言った。ヘレナは半泣きだ。
「そういうつもりじゃないの。私たちにはお金もないし、なるべく出費を抑えたいと思って」アリスが困ったように言った。
「それに仕事を始めたら、毎日早く帰れないと思いますよ。何んと言ってロベール様は忙しい方ですから、私がしていた仕事もあなたに回ると思いますよ。ソフィアが一人で待ってることになりますよ。知らない所で、真っ暗な夜を一人で家で待ってるなんて、出来ないでしょう」
「ママ、ヘレナにいて欲しい」ソフィアがアリスの手を取っていった。
「分かったわ。何も知らないで勝手なことを言ってごめんなさい」ヘレナに向かって謝るように言った。
「こちらこそ宜しくお願いします」ヘレナは涙を拭きながら言った。
「ではご近所さんという訳で、自己紹介と行こう。私はオスカー・ブラント、まあ兵隊だ。こっちがマックス、俺の世話係、そしてこっちの可愛いのが、モニカ、うちのメイドだ」
「次は内だな。私はニコラス・ヴェルナー、建築家だ。こっちが妻のエマ、こっちが息子のオリバー、最後にうちのメイドのリリーだ。宜しく頼む」
「最後は内ね。私はアリス・ウォルター。こっちが娘のソフィア、そしてこっちがヘレナ。皆さん宜しくお願いします」
「じゃあ、親睦を兼ねてみんなで食事にしよう。食事の準備は三人に頼もうかな。その前に飲み物を頼めるかな」オスカーがメイドの三人に言った。
「明日から仕事だけど、大丈夫かな」ニコラスが心配そうに言った。
「ロベール殿もおっしゃったように、わしは強気で押し切る事にしている」オスカーが笑いながら言う。
「そうですとも、何事も強引に押し切ることが肝要ですよ」マックスが言った。
「マックスさん、そうは言っても」
「そこが駄目です。私やティムを呼ぶ時は呼び捨てにしてください」
「そんなこと言っても」
「私がお三方を呼ぶ時は様をつけて呼びますから。そこを間違うと付け込まれます」
「それはそうだ。これからは周りの者は敵ばかりだ。負けぬためには強気で行かないと」
「それとメイドを呼ぶ時も呼び捨てで、威張って命令してください。但し暴力は駄目です。本気で喧嘩になったら魔人には勝てないでしょう。そうなると威厳が保てませんから」
「私は大丈夫です。元々喧嘩なんかしたことないですから」
「相手が何かで相手が機嫌を悪くして、暴力沙汰になりそうになったら私たちを呼んでください。我々が対処します」
「ママ、食事始めていい。お腹空いたよ」
「御免ね。皆さんも食べながらにしましょう」
「私はお水を頂きましょう。一緒の席に着く訳にはいかないですから」
「どうして、一緒に食べればいいのに」
「身分が違いますから、余程の時でないと無理です」笑いながら言った。
「じゃあ、冷めないうちに食べましょう」
「そうだな、明日からは忙しくなりそうだ」不安と希望の混じった明日からが楽しみでもあり、以前の奴隷に帰りたくない強い意志がにじみ出ていた。
ソフィアが眠そうにしていたので、
「今夜はこの辺にしておこう。何かあった時はここのみんなで話し合って解決していくんだ」皆は頷いて、自分の家に帰って行った。マックスはオスカーと同居となった。
(5)軍務省の改革
朝早くオスカーが目覚めた時はマックスもメイドのモニカも起きていて、モニカは朝食を作り終えていた。面倒だからとこの家にいる時は時間の無駄を省くために一緒に食事をとるように、これは命令だと言った。二人は朝食を済ませ軍事練習所に出かけた。
執務室に行くと参謀総長のマルティンと騎士団長のポールがきていた。
「貴様が機甲師団顧問か、そしてお前が犬の糞か」笑いながらポールが言った。
「これはこれは、初めてお目に掛かる。手前がオスカー・ブラント、王都中央機甲師団付き強攻班顧問部長、長いので顧問で良い。そしてお手前はいずれであろう」
「私は参謀総長のマルティン・ハインリヒ・ローレンツ、宮廷騎士団の副将軍である。覚えておいて欲しい」威張った口調で言った。そして横の男が自己紹介を始める。
「私は軍騎士団長のポール・ジュリアン・モローである。軍は官位が一番、実力が二番。上官の言う事は絶対である。よく覚えておくように」大男が言った。
「私たちは王直属で、王命以外は無視できると言われている」
「何、喧嘩売っているのか」ポールは機嫌を損ねたようだ。
「が、軍の中に対立があっては困るので、なるべく仲良くやっていきたい」オスカーが静かに言った。
「新前の癖に言う事聞けぬとは何様か」
「これは王命ですよ。宰相殿も賛同されている。王命に従えぬ者が、何が宮廷騎士団か。それならやめてしまえ」
「何だと、何も知らない奴が大口を叩く。俺達がいなくなったら誰が戦うのだ」
「どういう事だ」オスカーはマックスに聞いた。
「この国で一番強いのが将軍で、その次がこのお二方です」
「どうだ分かったか」
「じゃあ、兵隊は何をするんだ」
「このお三人の世話をします」
「戦わないのか」
「魔国では強い者が戦い、弱い者はその世話や、荷物の運搬やらの雑役だ。弱い奴は戦いには役に立たぬ」
「そいつの言う通りだ。戦いの場にあいつらはいらない。邪魔になるだけだ。ほんとに邪魔したら、味方でも切って捨てるがな」ポールが嬉しそうに言った。
「あんた、本気でそう思っているのか」オスカーは驚いたように言ったが、ポールは本気みたいだ。
「戦いの時はどうするんだ」
「大将が暴れまくり、私とポールがその後を追い、残兵を片付けていく。生きている奴をうちの兵が息の根を止めていく。こんなものかな」
「そんなやり方で良くやってこられたな」
「それで負けた事は無いからな。敵が降参してきたら交渉の始まりだ。宰相の部下が後始末をして終わりだ」参謀総長のマルティンが愉快そうに笑った。
その時大きな男が入ってきた。
「こんな所でみんなで集まって何をしている」将軍のアドリアン・フィリップ・ハルトマンである。
「おはようございます、将軍」
「おお、おはよう。それでそちらが、新人さんか」
「私は、機甲師団顧問のオスカー・ブラントです。これから宜しくお願いいたします」
「こいつは我々に命令するから、言う事を聞けと言うんですよ」
「ほうん、それは面白い。だがお主、強そうには見えんが」
「私は強くはないですよ。兵に隊列を組ませ、戦術に従って戦わせるのが仕事ですから」
「なる程、自分は弱いから兵に戦わせて、自分は高みの見物か」
「見物ではありません、兵を指揮して勝ちに行くわけです」
「あの小者ばかりの兵では皆殺されるだろうぞ」
「貴方がいかに強かろうと、敵が分散してあなた方を引き留めている内に本部を攻め落とされたらどうします」
「俺が本部にいればよかろう」
「その時は周りから削り取ります」
「最後に取り返せばよかろう」
「何万もの兵で来られたら勝てませんよ」
「今まで負けた事は無い」
「今までは大きな戦いが無かったからでは」
「ああ言えばこう言う。埒が開かん。実戦でやって、我らを負かしてみよ。それなら信じてやろう」
「では今から兵を訓練して戦う事にしましょう。兵は幾ら貸してくださいます。」
「好きなだけやる。場所は訓練場で良かろう。日にちは」
「今から訓練しますので十日程頂きます」
「よし、良いぞ。勝った方の命令を聞くで良いか」
「宜しゅうございます。では十日後に」オスカーは兵に会うために兵舎に向かった。
「大丈夫ですか、大将一人に全員で行っても勝てませんよ」
「そんなに強いか」
「強いなんてもんじゃないですよ、この国で太刀打ちできるのは王様位ですよ」
「それは頼もしいな」と言いながら笑った。
「笑い事じゃないですよ。コテンパンですよ」
「コテンパンか。それは増々楽しみだ」
「笑い事じゃあないですよ。どう戦うつもりなんですか」
「そうだなあ、二回戦に分けて団長は選抜隊にやらせる。これは絶対勝っておかないとまずい。総長はお前が相手してやってくれ」
「冗談じゃないですよ。死んでしまいますよ」
「死んでもらっては困る。勝てないまでも善戦してもらわないと、理想は引き分けかな」
「そんなの絶対無理ですよ。死ねというのですか」
「だから勝てる方法を考えるんだよ」
「はっきり言って無理です。ドラゴン並みですよ」
「ドラゴンもいいが、今回は間に合いそうにない」
「貴方は良いですよ、戦わないのですから。死ぬのは私ですよ」
「死ぬ死ぬって、お前そんなに死にたいのか」
「そんな事ある訳ないじゃないですか」
「それより兵隊を整列させろ」
「各隊集合、整列。これから新任の軍事教練の顧問、オスカー・ブラント様からお話が有る。心して聞くように」
「軍事顧問と軍事教練担当のオスカー・ブラントだ。軍隊の事は王より任されている。話を聞くと君たちは兵隊や騎士扱いではなく、荷物運びや、雑兵の扱いを受けてきたらしい。それでは故郷の村や親戚の期待を受けてやって来たかいが無い。そこで、新しい戦い方を学び、厳しい軍事訓練を受けてもらう。一人前の兵や騎士となれば故郷に錦を飾り、凱旋することもことも、嫁や子を持つことも夢ではない。だが、その前に総長、団長との決戦がある。先ずはそれに勝ってもらいたい。二十人程の選抜隊を募るので名乗り出てもらいたい。前もって言っておくが、その者たちは幹部候補生であり、隊長、副隊長とする。これは確約だ」オスカーは選抜隊が決まるまでマックスと食堂でお茶を飲んで時間を潰した。暫くして兵の一人が報告に来た。
「選抜隊二十名、決まりました」
「では行くとするか」
広場の右側に選抜隊左側に一般兵が集まっていた。
「選抜組はしばらく待っていてくれ。一般兵は二十名ずつ縦に、それが五列で一組、それを五組作る。二十名の団体を小隊、それが五組で中隊、またそれを五つで大隊とする。つまりここには一個中隊一番隊から五番隊までの百人の集まりが五個で大隊となる。ではそのように整列しろ、明日には隊旗、隊の旗だな、それを用意するから列の先頭は覚えておくように。一番突撃班、二番次鋒班、三番中堅班、四番副奉班、五番後方班、が右翼中隊、遊撃中隊、中央中隊、軌道中隊、左翼中隊になることになる。隊列が決まったら、整列、歩行、進め、止まれ、右向け右とかいうやつだ。隊列訓練が終わったら、戦器とか、武器を作ってもらう。まあ気長にやっていこう。選抜隊は別メニューをやってもらう。これは俺が指導するから安心せよ」オスカーがざっと説明した。一般兵はマックスの指導の下行進訓練だ。
「あいつら何してんですかね。右向け右とか」ポールが二階の将校室からのぞきながら言った。
「今更行進の練習でもあるまいに。あれで強くなれりゃあ、世話ないぜ」マルティンが毒付いた。
「何か考えがあるのだろう。まあ、黙ってみていろ」アドリアンが言った。
将軍が軍長官室で酒をちびちびやりながらオスカーを待っていた。
「オスカー、俺は誰と戦えばいいのかな。あんたか、木偶の坊か」
「ほう、あなたも戦いたいのですか」
「当たり前だ。頭を決める戦いに、出なくてどうする」
「国の騎士の大会にはあなたは出るでしょう」
「出なくてどうする」
「その大会に王が出ると言ったらあなたはどうしますか」
「そりゃあ止めるだろうな」
「そういう事です。マルティンとマックス、ポールと選抜隊とでやってもらいます。そしてその表彰をあなたがするのです。私とあなたは対立しません。貴方の下にすべてがあるのですから」
「お前の言う事を聞くのではないのか」
「私の言う事を追認して頂きますが、追認できないことは取りやめです」
「つまり俺はお前のデコ人形か」
「貴方が人形におさまる玉ですか」
「それはそうか、あははは」
「勝者にお褒めのお言葉を。多少不満があってもです。それと貴方の顔を彫ったメダルを授与して頂きます」
「俺が俺のメダルを渡すのか」
「貴方だって王から王を彫ったメダルを直接貰ったらうれしいでしょう」
「それはそうだが、俺は嫌われているだろう」
「何でですか。貴方は騎士や兵の羨望の的ですから、その期待を破るまねはしないでくださいよ。初代将軍として伝説にならねばなりません」
「そうか、伝説か」だんだんオスカーの手の平で泳がされている気もするが、気持ちは悪くない。まあ、しばらくは操られてみるかと笑った。
「それと早速ですが、お願いがあります」
「何だ、面倒なことは駄目だぞ」
「いえ、私の部屋も欲しいので、ここの増改築をしたいと思いますので、許可をお願いします」
「わしの部屋が狭くなるのは困るぞ」
「いえ、応接間と合わせて倍の広さにします」
「広くなるなら文句はない」
「応接間を作りますので、もっと装飾品を置きたいのですが」
「俺は興味が無いから、全て任せる」
「では先戦の将軍の活躍の絵を描かせて応接間に飾りたいのですが」
「わしの絵を描いてもいい絵にはならないだろう」
「将軍の迫力が出ればいいと思います」
「まあ、それも任せよう」
「では近じかにも絵描きを来させますので、宜しくお願いします。ではあれこれ決めねばならないことがありますので、失礼します」
(6)宮廷官吏の躾と教育
アリスがメイドや料理人、執事を集めて説明をしている。
「宮廷につかえる者は、動きはあでやかで、美しくそれでいて清潔でなければなりません。」
「恐れながら、スタインフーバー国には昔より伝統ある格式がございます。他所から来たものに口出しして頂きたくありません」
「貴方はどなたかしら」
「宰相執事長ラファエル・ジュール・ベルトランの娘、宮廷メイド長のカミーユ・エマ・ベルトランでございます」
「これは宰相ミヒャエル・デヴィッド・ウィンクラー様から仰せつかったことです。貴方ごときが口出ししてよいものではありません。それともあなた、行儀見習いからやり直しますか」アリスはカミーユに笑顔を見せながらも、強く言った。
「ではまず、今朝の朝食の残りを一口ずつさらに入れて並べて頂戴」
ガチャ、ガチャと焼いた肉、サラダ、スープ、ソーセージ、果物果汁が並べられた。
「カミーユ、料理長ガブリエル、料理係ロマーヌ、盛り付け係ローズ、給仕係リナ、座って、貴方の言う格式高い食べ方を見せて頂戴。その上、料理の種類と味の批評をして頂戴」アリスは強い口調でみんなに言った。みんなはカミーユの顔を窺いながら、ぐずぐずしている。
「そう、皆はお暇が欲しいのかしら」アリスは冷たく言った。
皆は顔を見合わせた後、急いで席に着いた。
「そう、それでいいのよ。さあ、食べて頂戴、王様の朝食を」皆は恐る恐る食べた。
「さあカミーユから感想を聞かせて頂戴」
「美味しいと思います」
「そう、じゃあ、次の方」「旨いと思うがのう」
「その次」「とてもおいしいと思います」
「後の方も同じかしら。王様の性格、体格、嗜好、今日のお仕事を考えての朝食メニューよね」
「そんなこと言ったって、見たことないし、どんなお仕事してるかなんて知らないわ」
「メニューを決めるのは誰」
「メイド長と料理長で相談して決めている」
「そうなの。でもあなた達も王様の今日の執務の種類を知らないと」
「当たり前でしょう。王様の事は極秘なのよ」
「分かったわ。それでは私の料理の批評を聞いてちょうだい。先ず量的にはいいと思うけど、王様は朝からお肉は重いわね、それに塩辛い」
「王様は辛いの、濃いのが好きなんだ」
「こんなの毎日食べてたら内臓がやられるわ。まさかそれが目的とかじゃないわよね」
「滅相もない」
「いいわ、知らなかったことにしてあげる。皇后さまはパンとか麺類や豆類は少なめに、肥満を気にしているから、お子様は育ち盛りだから、肉や魚を多めに、それと知恵のつくころだから、小麦や糖分の補給になるおやつが必要ね」
「そんな事何所で教わったのだ」
「元の私の屋敷では料理長やメイド長のお仕事でしたもの。美味しいだけの料理なんて、豚の餌よねえ」アリスは勝ち誇ったように言った。そして紅茶と果汁、プリンを作らせた。
それを持って、料理長とメイド長を連れて、王様の居室に行った。
「王様、お願いがあってまかり越しました」
「何だ。何事だ」
「料理の事ですが、王様の料理は今日から少しずつ薄味にしていきます。お酒もワインではなく、蒸留酒を割ったものや炭酸を加えたものに変えたいと思います。奥様には糖分を少し減らすものにします。お子様には頭が良くなるよう、逆に糖分を肥満にならない程度に増やします。宜しいでしょうか」
「わしは味がしない物は好かん」
「分からないようにいたします。それと彼ら、料理長とメイド長でございます。彼らの顔をはっきりと覚えておいてください。今日からは、顔も名前も知らない者が作った物は食べない、飲まないようにして頂くよう、必ず彼らを通してください。今から世は乱れてまいります。その時一番考えられるのは暗殺、それも毒殺です。剣で来るものは騎士団が止めるでしょう。ですが毒は騎士団では止められません。ですから我々にお任せを。執事かメイドか料理長以外から飲み物、食べ物を受け取らない、その代わり、他所では食できない物を提供できるよう教育します。ですから彼らの名と顔を覚えてください」
「よしそち達の顔と名前を」
「宰相執事長のラファエル・ジュール・ベルトランの娘、宮廷メイド長のカミーユ・エマ・ベルトランでございます。宜しくお願い申します」
「おお、そちがベルトランの娘か、宮廷に来ておるとは聞いていたが」
「料理長、ガブリエルでございます。先代から修業を受け、三十年食事に関わらせていただいております。なお一層料理に精進いたしますので、宜しくお願いいたします」
「おお、宜しくな。それでこのプリプリした食べ物は何じゃ」
「これはプリンと申しまして、人間界の食べ物でございますが、人の王様が、他の者は食べてはならん、これは王だけのプリンスのプリンじゃと申して、独り占めしていると噂の物です。如何でしょうか」
「プリンスプリンというだけあってうまい」
「有難うございます」
「これからも精進せよ」と言って、王は笑った。
「そうだ、二人にはこれをやろう」ハンカチを各自に与えた。王の紋章が入っている。
「何かあった時はこれを見せよ。大抵の所は通れるだろう。これからたのんだぞ」
「では我々はこれで。只の顔見せですから」と言って二人を連れて下がった。
「これで、王族の体型、性格など、知らないとは言わせないわよ」
だが二人は動悸が続いていて、冷静になれないでいた。普通メイドごときが王族と顔を合わす事は無い、直接声を交わすなぞあり得ない。この人はそれをいとも容易くしてしまった。それを何事もなく受け止めている王様もどうかしている。
次にメイド、世話係を集合させた。
「あなた達には、作業員、詰まり、宮殿の庭の花、植木の世話、洗濯、掃除など。世話係、王族のの入浴の世話、服の着せ替え、ベットメイキング、洋服、装飾品の買い物、ゲストの世話係。王族、ゲストの世話はその権限を持った者だけが出来る、特別職とします」
その次に宮殿執務室に秘書官を全員集めた。二十人程いる。
「この中で書類に精通している方前に」五人だ。
「では料理、ワイン、花に詳しい者は」三人だ。
「予算、財務、帳簿付けができる者」二人いた。
「テーブルマナー、ベットメイキング、立ち振る舞いは」二人だ。
「歴史、伝記、戦記、地理の知識がある者」一人だ。
一流の秘書官はこれ全てに精通していなくてはならない。それで、これ全てを十科目とし、一つ一つを受験してもらい、一つでも合格したものを初級秘書官と呼びます。無い者は予備秘書官と呼びます。三科目までを下級秘書官、五科目までを中級秘書官、八科目までを上級秘書官、十科目完全制覇したものは特級秘書官とします。各階層の者はそれを表す腕章を制服に付けまして、区別しますので、頑張ってください」
次にアリスは衣装部に行って、メイド達の制服を注文させた。だが、軍部軍服の注文があり、すぐには無理だと言うので街に出かけて、衣料品店に制服を細かい指示をして注文した。王家制服等にはハンカチに至るまで王家の簡略した紋章を刺しゅうさせた。
制服は各係と等級で色や腕章のデザインを変えた。メイドには髪留め、秘書官にはネクタイと白手袋、メイドの下級官には茶の編み上げ靴、上級者は黒のハイヒール、秘書官は短靴の黒革靴を用意させた。
次に紋章屋に行って、責任者の徽章と、名前の入った身分証を注文した。
(7)華麗で優雅で艶やかな調和
ニコラスは宰相執事長のラファエル・ジュール・ベルトランと宮廷門の前にいた。
「どうです、この頑丈さは。幾万の敵が現れようとこの宮殿の門は破れはしない。この厚さ、この硬さは国の安泰の象徴だ。この宮殿が岩の山の様で、心に安心をもたらす。人の宮殿のような、薄ぺらで壊れやすい物とは違う」得意そうにラファエルは言う。だが、ニコラスには山の要塞に住んでる山賊の館に思える。一国の宮殿はその国の美術と文化の象徴でなければならないと思っている。それなのにこの宮殿は武骨な、荒くれものだ。全く、不衛生の上、不便で効率が悪い。ゴミと汚物でもう一年もすればスラムだ。
「ラファエルさん、この街を衛生的で便利な街にしたい。道路も広くして、整備された東西の大きな街道を作り、それに付随した馬車が離合できる程度の広さの道路で整備します。道路の中央を下水、両端は水路を作り、周囲には水車小屋を作るのはどうでしょうか」
「安全の問題で真っ直ぐな道路は作れません。それに、汚物や汚水を触るのは皆嫌がりますから、使えなくなったら放置して、新しく作り変えます」
「不衛生な都市はネズミやゴキブリが繁殖して、伝染病の元になります」
やることはいっぱいあるのに、軍務省から急ぎの仕事を頼まれた。軍務省執務館の設計をする前に、要望を聞きに行く。担当はオスカーなので気が楽だ。
兵舎の前でオスカーが待っていてくれた。案内されて将軍の部屋に行った。散々将軍は怖い方だと聞いて来たので、実はビビっていた。
「入り口をこのくらいの大きさにして、横に兵舎の食堂、反対側に客室、二階の一番奥が将軍室、そこに応接間、その手前が、参謀長と団長室、階段の反対側の、こっちに私の顧問室と作戦室。二階の三分の一が将軍室と応接間を、残りを参謀、団長、私と作戦室、あと幹部用トイレ、ふろを割り振ってくれればよい。ここにゲストが来た時は応接間を使いますから、玄関と応接間と、将軍室は豪華に作ってくれ」
「ここの倍くらいの広さになりますよ」
「大丈夫だ。練兵場を潰す」
「練兵場を潰すのか」
「場所が無いからな」
「練兵場はどうするんだ」
「裏山を潰して作り変える」
「今から作るのか」
「ゲストが来た時、何を見せるんですか。歩行練習とか、見ても面白くないでしょう。それより将軍の手柄話とか、活躍を話しした方が面白いでしょう。だから絵が必要なんですよ。ではそれで、設計が出来たら見せてくれ。ここを優先してくれよ。いつまでも待たせたら将軍の機嫌が悪くなるからな。宜しく頼むぞ」ニコラスを玄関まで見送った。
建築技術庁では建築技術庁長官のクレマン・エミール・デュランと技術者総監督のノア・リリアン・ベルナールが腕組みをして待っていた。
「何でも機甲師団顧問のオスカー殿と結託して軍務省執務館を建てるそうじゃないですか」ノアが青筋を立ててまくしたてた。
「そういう注文が入っていますが、早いお聞きで」
「暢気なことを。だいたいその予算はどこから降りるのですか。私は聞いていませんよ」
「軍備費から出るんじゃないですか。軍備費は一般会計ではないですから」
「軍備費だって何でも勝手に使えるというものじゃないんですよ」
「まあ、計画書を出して認可が下りて着手という段取りかと」
「そうですよ。認可が下りているのですか」
「それをもらうための計画書と予算見積もりかと」
「だから、認可が下りる可能性があるんですか」
「商業経済大臣のロベール・ヴィンセント・ベッカー殿からの依頼なんですが」
「またロベールですか。この国の予算は彼のものじゃあないんですよ。先だっても、メイドや執事の制服を作り直すって」
「それだけじゃあないですよ。軍服もですよ。それだけで幾らかかるか」
「費用はシュヴァルツ王国との取引で、たらふくあると」
「私は許しませんよ。許可しません」
「そうですよ。これを許可すると、皆が勝手なことを始めますよ」
「皇后さまがこんなに頑丈でなくていいから、柔らかくてひらひらが付いてる、可愛いのが好くなんて言うから、王女様まで贅沢を言い出して、羽根布団にしてなんて言うんですよ。そんなお金がどこにあるんですか」
「王族がそんな贅沢を言うから、領民や、商人までもが贅沢を言うようになる。そうなるといつかは、食料もなくなり、飢え死にするんだ。贅沢は敵だ」
二人が帰った後、建具屋と寝具屋を呼んだ。内緒で皇后と王女のベットに天蓋とレースのカーテンを付け、敷布団に羊毛製、掛け布団と枕はは羽毛製、枕元に物が置けるように台を作り、水瓶とガラスのコップを彩らえた。皇后のベットには造花の花を、王女のベットには羊と犬のぬいぐるみを置いた。ロベールの異国土産という事にしよう。
職人を連れて王室に行くと、宰相執事長のラファエル・ジュール・ベルトランと宮廷メイド長のカミーユ・エマ・ベルトランに止められた。先ずは必要な手続きをして、王様の許可貰って来いと言われた。
「どうしたの」アリスが現れた。
「この方が許可もなく王室の工事をすると」カミーユが言った。
「ニコラス、あなたなの。しかたないわねえ。彼らは特別だから通してやってちょうだい。全責任は私が持つわ」と言って、ニコラスに片目をつぶって見せた。
「私が連れだすからその間に済ませてね」
「恩に来ます」
「良いんですか。連絡も許可もないんですよ」
「大丈夫。ロベールの仕業だから」
「ロベール様の」カミーユが聞く。
「ロベールが王様を喜ばせるための事だから」
アリスは皇后と王女を連れだして、新しいケーキのふわふわのロール生地とクリームの苺ケーキと、冷えた炭酸果汁とジュースを頂く。
「何とおいしいケーキなの。まるで苺の乗った雲を頂いているようだわ」
「本当、私こんなケーキ、初めて」王女も喜んでいる。
「実はこのケーキは人間の国の王女様の誕生日の特別ケーキで、世界でお三人様しか食した方がいないという、スペシャルケーキなのです」
「そうよねえ、こんな美味しいもの初めて食べたわ」王女が大はしゃぎだ。
「もう一つ驚くことが御座います。それがもうすぐ出来上がりますので、お楽しみにしてください」
「ええ、何なの。ねえ、お母様何なの。教えて頂戴」
「今作っているのは、人の皇后様しか使ったことが無いものです。おっと、ヒントが分りやすすぎたかしら。まあ、お楽しみという事で」
その時ニコラスがやって来た。
「出来上がりましたので、こちらへどうぞ」案内されて先ずは王女の部屋へ。
天蓋のあるベットだ。
「このレースのカーテンを閉めると虫が入ってきません。枕元の水は夜や朝の喉が渇いた時、すぐに飲めます。では王女様ベットに乗ってみてください」
王女は靴を脱いでベットに横になった。
「何これ、柔らかい。気持ちいい。最高」王女はベットの上で大騒ぎだ。
「そのぬいぐるみを抱いてみてください」
「何、可愛い、今日から一緒に眠りましょうね」
「敷布団は羊毛で、掛布団と枕は羽で作ってあります。王女様はピンク色を基調に、皇后さまは赤を基調に作ってあります」一応の説明が終わったようで、隅で控えている。
お二人が落ち着いた所で、皇后の部屋との間にある化粧室に案内された。
「ここはいつでも栓をひねると水とお湯が出ます。赤い方がお湯で、何かあったら大変ですので、あまり暑くないよう調節してあります。青い方が水です。お風呂も同じで下がお風呂で、上がシャワーです。最後にトイレですが、終わった後このボタンで水を流してください。それとこのボタンでお尻を洗います。後は使って慣れて頂くようにお願いいたします。何かあったらお知らせください。ではいつまでも女の花園にいる訳に行かないので、我々は失礼します。後はアリス殿にお任せいたそう。御免」
「お母様、宝石やドレスよりも素敵なプレゼントね。アリスの苺ケーキもおいしかったけど、これは特別なスペシャルだわ」
「すっかり気に入ったようね。お父様にお礼を言わなくちゃあ」
「もうすぐご飯の時刻だわ」メイドが食事の知らせに来た。王様、皇太子さまも着座していた。
「お父様、スペシャルなプレゼントを有難う」王女のマティルダが言った。
「何かな」宮廷メイド長のカミーユに聞いた。
「ベットルーム、レストルームの事でございます。今日、建築技術庁の方が来られて改築して行かれました」カミーユは答えた。
「ロベールに頼んでおいたものだな。早速やってくれたとはな。良かったな」
「今夜はいい夢を見られるわ。有難う、お父様」
「そんなに喜んでくれてよかった」王は嬉しそうに言った。
宮廷メイド長が
「この後デザートの新作をお持ちしますので、お食事は宜しいでしょうか」
「そうか、頼む」
「新作のアイスクリームでございます。冷たいのでスプーンでゆっくりとお召しください」
ガラス容器に白いものが乗っている。不思議そうに眺めながら、スプーンですくって口に運ぶ。
「昼にお出しした苺ケーキのクリームを混ぜながらゆっくり凍らせたものでございます。凍らせただけで、まったく別つのものに感じられます。ではごゆっくりお召しください」
「これおいしい」マティルダが言った。
「ほんと、私これ好きだわ」皇后のイザベルか嬉しそうに言った。
「僕も好きだよ」皇太子のステファンも言った。
「おおそうか、良かったな。カミーユ、料理長に礼を言っておいてくれ」
「はい、有難う御座います」
「今までは古いレシピだけでございましたが、これからは最近の物や、はやりの物も取り入れていこうとアリス様の考えにございます」
「それは良い事だ。古いものや、伝統も大事だが、新しいものにも価値がある物もある。そこを見極めていくのが大事だ」王は機嫌が良かった。
「王様、そろそろ例の物を」執事長が王様に耳打ちをした。
「そうだ、大事なことを忘れておった。ロベールが隣国に行ったお土産だと言って預かっておるものがある。ラファエル、皆に配ってくれ」
「心得ました」と言って、箱に入ったものを配った、皇后にはネックレス、王女にはティアラ、皇太子には金のブレスレットである。
「まあ綺麗」王女が嬉しそうに言った。
「これは良いものね。高かったのじゃない」皇后がいたが、もう首に付けている。皇太子は手首に付けランプの光に照らしてみている。
「まあ、祝い品だと思って、貰っておけ。次に会った時は礼を言っておけよ」
「何か今日は取ってもいい日だわ」王女が言った。
「何が一番かな」王様が笑いながら聞いた。
「それはもう、ベットとバスルーム」王女が即座に行った。
「何だ、ティアラかと思ったが」
「ベットもお風呂もすごいの。女にしか分からないわね」得意顔で言った。
「遅くなるからこれまでにしよう。ステファン、この後話が有るから残ってくれ」
「分かりました、父上」
「他の者はお休み」
「お休みなさい」




