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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
エピローグ

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152/153

永遠を刻む花の下で

アリアとカリスは、かつて散歩に訪れた事のある「黒い森」に来ていた。

「カリス様!こっちこっち!」


「アリア、あまり急ぐと転ぶぞ」


「だって一番に見てほしいんだもの!!」


 そこは黒い森。かつて二人が初めて散歩に訪れた、あの少し寂しい、しかし穏やかな場所。


 二人ともどこかよそよそしくて、初々しくて、手を繋ぐのもやっとという感じだった。


「見て!カリス様!」


 アリアが指し示す先ーー

 長く枯れたままだった黒い木の枝に……


「おお……これは、見事だな……」


 そこには黒い木一面に咲き誇る白い花があった。


「いつか約束していたでしょう?黒い木に花が咲いたら、カリス様に見せてあげたいって……」


【私、この木が花を咲かせた姿を見たいわ。カリス様にも見てほしいです。一緒に……】


「ミツキと一緒に、せっせとお水をやりに来てよかった」


「アリア……」


 アリアは黒い木の根本にカリスを手招いた。


「カリス様は覚えていらっしゃいますか?かつてこの木は願いの木だったと」


【俺の家に古くから伝わる書物にこう記してあったーーこの森の奥に、かつて『願いの木』があったと。滅多に花を咲かせないその木が花を咲かせた時、願いが叶うーーと。この木のことだったのか……】


「ああ、覚えている」


 それと、この黒い木にはもう一つ伝説があるのだと、カリスは黒い木の肌を撫でながら呟く。


「ーーこの木に花が一輪残らず咲き揃うその時、この木の前で立てた誓いは、大地に刻まれ、永遠の運命として結ばれる……という伝説があるんだ」


「そうなんですか?それもこの木の伝説……」


「俺は信じてはいなかったけどね。この木に花が咲くまでは……」


 まさか本当に咲くとは……何百年もこの木に花は咲かなかったのに……


「アリア、君は不思議な子だな……」


 森で交わした、他愛のない会話。ほんの小さな口約束のためにこんなに一生懸命になるなんて……


 アリアは黒い木一面に咲き誇る花を見ながら意を決したかのようにカリスを見つめる。

 その瞳は、あの日母と対峙したものとは違い、穏やかなものだった。

あの黒い木についに花が咲きました。

長いこと枯れたままだった一本の木に満開の花が咲く様子を感じていただけたら嬉しいです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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