最終回・この道は二人で
毒母に別れを告げたあと、アリアは一度だけ屋敷を振り返る。その心境は……
カリスの胸でひとしきり泣いていたアリアは顔をあげた。
「……平気か?」
「はい、もう大丈夫です。ありがとうございます」
「いいんだよ」
そう言って笑い、二人は再び歩き出した。
敷地を出る途中でアリアはふと立ち止まる。
「……どうしたの?」
(やはりまだ未練があるのか?忌々しい思い出だらけでも、アリアにとっては生まれた家だものな……)
カリスが振り向く。その顔は、いつものように落ち着いているのに、わずかに不安も滲んでいる。
アリアは屋敷を振り返って、ぽつりと呟いた。
「この家を出る時……お嫁入りの日は、誰も見送ってくれませんでした」
「そうだったのか……」
(輿入れの時までも……アリアは本当に孤独だったのだな)
「家族にもきちんとお別れも言えなくて。従者も、一人もついてきてはくれませんでした。ひとりきりで、馬車に乗って……それがとても、とても心細かったのです」
アリアの胸に、あの日の締め付けるような孤独が蘇る。
……門の外に出た瞬間、世界から切り離されたようなあの感覚。
カリスは一歩近づき、アリアの手をそっと繋いだ。
「……でも今は違うよ、俺がいる。アリア……」
アリアは瞳を輝かせてカリスの顔を見る。
差し出された手は、昔と何も変わっていない。
ただひとつ違うのは、アリアがもう、自分でそれを掴めるようになったということ。
「……はい!」
アリアの顔に、ぱっと笑顔が咲いた。
心の底からの、今の自分を肯定する笑み。
カリスはその笑みに、表情を緩める。
「行こう、アリア・ヴァレンティ」
「はい、カリス様!」
二人は並んでリリオーネ家の門をくぐる。
午後の太陽が二人の背中を押すように降り注いでいた。
ーーアリアは一度だけ振り返った。しかし、もうそこに未練はなかった。
ただ、過去の自分に小さく微笑んで一一前だけを向いた。
もう、この道はひとりではない。
これから先も、何度でもーー
二人で選んで、二人で歩いていく道なのだ。
カリス様は徹底して「二人で一緒に」という結婚当初からの約束を守ってくれています。
二人で手を繋ぎながら過去と決別するシーンは書いててじーんときました。
あと少し続きます!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




