赤い悪魔、氷の侯爵
カリスはこのどこまでも自分中心の母親の話を我慢して聞いていたが、その母の矛先がアリアに向かった時ついに……
「無礼を承知で申し上げている」
カリスの赤い瞳は剣のように細められ、少しも揺るがなかった。
淡々とした声の底に、静かな怒りの炎が灯る。その赤い瞳はまっすぐに母を捕らえ、視線が刃のように突き刺さる。
母はついにカップを落とした。カリスの静かな怒りを、冷たい視線を、その凍てつくような殺気を一身に浴びて、耐えきれなかったのだ。
応接室の空気は張り詰めたままだったが、それは突然のアリアの母の高笑いによって破られた。
「……ほほほ、噂の通りね。赤い悪魔!氷の侯爵!大変結構。どうせその威圧感で、何もかもを手に入れてきたのでしょう!?よくやるわ、ありもしない不吉な噂を放置など……!」
ほほほ、とまた笑い、赤い悪魔を前にしても尚母は強気な態度を崩さなかった。
「アリアもお似合いよ。幽霊みたいな白い髪に、不気味な瞳!よかったじゃない。あなた方は不気味同士で大変お似合いですこと!ほほほ」
その瞬間、アリアの肩がびくりと跳ね、顔色がサッと変わった。
「あ、私、わたしは……」
一生懸命に声を出そうにも、喉がつっかえてうまく声が出せない。
アリアのその様子を見てカリスの中の何かがキレた……
赤い瞳が細められ、静かに剣を抜くと、その切先は素早くアリアの母の首のそばに添えられていた。
「ーー俺の事はいくらでも罵ってよい。だが二度とアリアを侮辱することは許さない。その事、ゆめゆめ忘れるでない!!エリナ・リリオーネ!」
赤い瞳が細められ、今度こそ誤魔化せないという殺気が母エリナの心臓を跳ねさせる。
「ヒィィーーーーッ!!だっ、誰か……誰か来なさい!!赤い悪魔が私を殺す気よ!!」
エリナは悲鳴を上げ、床に尻もちをついた。
アリアの母はエリナという名前だったんですね。
※カリスは侯爵で、リリオーネ家は伯爵で爵位としてはカリスの方が上です。
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