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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
最終章・対決と決別

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残された想い

リディアはバルコニーで不敵な笑みを浮かべながら嵐の中で消えていった。残された二人は……


※最初は三人称。*印以降はカリス視点です。

「リディア様ーーーー!!」


 アリアが慌ててリディアが落ちたバルコニーへ急ぐ。カリスがそれを止める!


「アリア、君まで落ちるよ」


「でもリディア様が!」


「頼むアリア……これ以上は……」


 カリスの苦痛に満ちた顔が見えた。苦しみを押し殺したような……


(カリス様も、同じなのだわ。リディア様を救えなかった私と……)


「……ッ!カリス様……カリス様がせっかくチャンスをくれたのに……私はリディア様を救えなかった!」


 わっと泣いてカリスの胸に飛び込む。


 カリスは何も言わずアリアの背をさすり続けた。


「雨がーー……」


 やがて雨が降り始めた。


 その雨はまるで、アリアと共に泣いてくれているかのように、静かにーー優しく、落ちていた。


 * * *


 翌朝。


 リディアが落ちたであろう場所には、リディアはいなかった。


「リディア様……」


 アリアはリディアを助ける事ができなかったと悔いていたが、嫉妬に狂った人間を救うのは難しい。それが当人であればなおさら逆撫でするだけだ。


「これは……カリス様。見て」


 アリアの視線の先にはリディアがいつも身に着けていたエメラルドの髪飾りがあった。


「これはリディア様の髪飾りだわ……どうしてこんな大切なものを……」


(……髪飾りに傷ひとつついていない。という事は、リディアはわざとここに置いていったのか……)


「なぜこんな場所に……」


 アリアはしばらく考えていたが、やがて思いついたように瞳を輝かせた。


「そうだ!リディア様はまだ生きているという意思表示だわ!傷ひとつついてないのがその証拠よ!」


 ほら!とアリアは髪飾りを俺に見せてくる。

この子はどうしてこんなに瞳を輝かせる事ができるんだ。殺されていたかもしれない相手に……


「……うん、そうだなアリア」


 俺はアリアの小さな手を握り、その頬にキスを落とした。


(だがそれだけではない気がする……リディアの髪飾り、まだリディアは生きている。それはつまり……)


「ねぇアリア。俺の言う質問に答えて」


「えっ……どうしたんですかいきなり」


「いきなりじゃない。答えて」


 あ……カリス様のこの感じ……久しぶりだ。答えたら褒めてくれるかな//


「もしリディアがまた現れたらどうするの」


「えっ?」


 俺はアリアの赤い髪飾りを弄りながら耳元で囁く。


「そ、それは……」


 アリアの答えはおそらく俺の考えと一致するだろう。


 だからこそ憎い。可愛い。だからこそ哀れだ。ほっとけない。


 だからこそ……愛おしい。


「私は……今度こそ、リディア様を救いたいと思います」


「……そうか……」


 俺はアリアの髪飾りに触れていた手を離し、短く息を吐く。やはり、俺の思った通りだ。


「おそらく私しか、あの方の闇を理解する事はできない。でも私はカリス様に……」


 カリス様に出会えて救われたわ!自分の意思ではっきりと言える。もうあの頃の小さなアリアじゃないのだから!


「……きっと何度でも、君はリディアを救おうとするのだろうな」


「呆れていませんか?」


「……ふっ、いいや。アリアらしくていいよ。それにその時はいつも俺がそばにいるから」


 二人の間に風が吹く。それは昨夜の嵐が嘘だったかのような、穏やかで優しいものだった。


リディアは唐突に現れ、唐突に消えていきましたね。

まさに嵐のような女性でした。リディアは徹底した悪ではなくて悲しくて不器用な面もあり好きなキャラクターです。


いよいよ最終章も大詰めです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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