じりじりと燃える炎
留置の身でありながらヴァレンティ家に堂々とやってきたリディアは、大胆にも気付いた従者を次々と気絶させ、広間に侵入していた。
嵐に紛れて、その女はヴァレンティ家にやって来た。
ある覚悟だけを胸に刻んで。
リディアは先日アリアに毒を盛った事で、お尋ね者に成り下がっていた。そのため自分よりも身分が下の者にもすっかり軽蔑されていた。
街中が警戒心を張り詰めさせている中、簡単にヴァレンティ家に入り込めたのは、誰あろうアリアのおかげだった。
リディアは本来ならヴァレンティ家を辱めたとして、重い罪に問われるところをアリアが哀れみをかけてどうか穏便にと頼んだのがその理由だった。
それが余計にリディアの癪に触った。
気に入らない気に入らない!!
何故アリアは余計な事をするの?
自分がどんな目に遭ったかわかっていないの!?
(やはりアリアはどこまでも甘っちょろなのよ)
「……あなた!リディア様っ……ここに入ってはいけないはず……ぐっ!」
リディアの従者が素早くヴァレンティ家の従者を黙らせる。
音もなく、従者は気絶して倒れる。
(殺しはしないわ。あくまで私の目的は……アリアと、私の二人だけだもの)
「アリア・ヴァレンティ!降りて来なさい」
声に気付いたアリアとカリスが部屋を出て、二人一緒 に大広間で待機しているリディアを見た。
(えっ……リディア様……?)
「これはこれは、お二人揃ってお出迎えなんて光栄ね」
リディアは揶揄うようにケラケラと笑う。
暖炉の炎がリディアの狂気を映すように赤く爆ぜた。
「リディア様!しばらくご自宅で幽窓されているはずでは……」
「はっ……おめでたい人ね!私がそんなに大人しくしていると思う?」
アリアの前に無言でカリスが立ちはだかる。
「……リディア、いくら留置の身とはいえ失礼だろう。それにこの家の従者たちはどうした?」
「ほほほ、こちらも例に漏れずのんきなお坊ちゃんです事。アリアと過ごすうちに甘っちょろが移ったのかしら?この家の従者たちにはしばらく眠ってもらったのよ!私のためにね」
そう言うとリディアはアリアに降りてくるようにと命じた。
我を忘れているリディアにはもう失うものはないのでしょうね。その瞳に映るのはただ一人、アリア・ヴァレンティ。
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