従者の噂話
アリアはカロンの食事とカリスの世話のおかげで、だいぶ調子を取り戻していた。そんなある日のこと、アリアは温室に向かう途中で従者の噂話を聞いてしまう。
※アリア視点です
しばらくして、カロンの食事やカリスの助けのおかげでだいぶ回復したアリアは、ある天気のいい日。温室への道を一人で歩いていた。
廊下の角を曲がろうとした時だった。
「……本当らしいぞ。あのランスって男に連れ去られてーー」
「領主様が飛び込んだ時には抱えられて……」
従者の噂話?領主様……カリス様の事だわ。
ランス?
連れ去られた?……誰が?
胸がドキドキと不穏な音を立てる。
「でも不思議だよな。アリア様、あの時のこと……全部忘れてるって。普通、あんな目に遭ったらーー」
「しっ!声が大きい!」
誰……何……何と言ったの?私……?私が、何なの?
ふたりの従者のひそひそ声は、耳に突き刺さるほど鮮明に聞こえた。
(あの時……?あんな目……?誰がどんな目に遭ったの!?)
頭がガンガンする。
嫌な汗が手のひらにじんわりと吹き出す。
「領主様が抱きかかえて戻られたって話だが……」
その瞬間ドキンと心臓が跳ねる。
カリス様の腕の中ーー?
涙と震え。
冷たい雨と、雷鳴が轟いて……
断片的な感覚だけが、突然わたしの中でざわざわと蠢きだす。
ふたりの従者はまだ気づかない。
「それに……ランス様は国外追放同然で。そりゃそうだろう、あんなーー」
そこまで聞いたところで、私は堪えきれずに聞いた。
「あの……さっきからあなた方が噂しているのは、一体誰のことですか?」
従者たちはびくりと肩を揺らした。
「おっ……奥様!!」
「アリア様!」
従者たちは私を見て目を見開いた。その気まずそうな顔を見て、私は悟った。
(やはり私の事だったんだわ……ランス様に連れ去られた人は……)
どうしよう。何の事だか思い出せない。カリス様を領主会議に見送ったのだけは覚えているのに、そのあとの事がぽっかりと……
どこか遠くで風が吹く音が聞こえ、足元が急に冷たくなった。
【領主様が抱きかかえて戻られたって話だが……】
そうだ、カリス様なら何かを知っているはず……!
とても怖いけど、私に何が起こったのか聞かなくては。自分自身の事だもの……!
気付けば私は、カリス様の部屋へ向かっていた。
やはりずっと知らないってわけにはいかないよね。
果たしてカリスは話してくれるのでしょうか!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




