カロンとランス
アリアを救出したあとの後日談というか、カロンとランスのちょっとした話し合いです。
ランスはこんな凶行に及んだ理由を、ポツポツと語り始めた。
「それで?これからどうするの?腰抜けさん」
私はずっと、何故ランスが強行に及んだのかがわからなかった。あの太陽のような朗らかな青年が……
ミナトに跨りながらずっと考えていた。
そう、ランスあなたは。
ただお兄様に勝ちたかっただけなの?
(ただそれだけのために、アリアを攫ったとでも言うの?)
だとしたら死んでも許さない!!
一つの答えが導かれた時、カロンの脳が冷え、目は剣のように冷たく細められた。一挙手一投足が鋭く重いものになっていく。
「……私の采配ではあなたの処遇はすぐには決められないわ。でもこの事はお兄様は何らかの形で報告するはずよ」
でもその前に、ランスがどうしてあんな凶行に走ったかを聞いてみようじゃないの。
カロンは目の前で完全に戦意を無くしている男に聞いてみた。
目の前の男は答えた。
「……最初にアリアを見た時、俺は初めは何とも思ってなかったんだ。でもあの子の初心な反応が可愛いくて……気がついたら本気で好きになっていた」
「ふむ」
「攫って、手を出して、無理矢理俺のものにしようとした。でもできなかった……あの子の寝顔を見て……つい」
「つい?」
「……願ってしまったんだ。あの子の幸せを」
カロンはそれを聞いて、ひどく驚いた様子だった。意外にも、カロンの考えているよりずっとランスは本気だったようだ。
「そして気付いてしまった。あの子を幸せにしてやれるのは、俺じゃないと……」
「…………」
カロンは黙って聞いていた。
「なんで、なんで俺じゃなくて……カリスなんだ」
あいつはいつもいつも、俺の上を行く。俺が苦労してやっと登れた山も、あいついつも涼しい顔をして頂上でくつろいでいる。
アリアでさえ!カリス様、カリス様と慕う!
「なぜなんだ、俺とあいつの何が違う……?」
ランス、なんて人間くさいやつなんだ!!
「願ってしまったんだ。アリアの幸せを」
この一言全てにランスが本当は悪いやつじゃないという事が詰まってると思います。
やった事は最低だけどね?!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




