もう大丈夫だよ
ランスはカリスの殺気にすっかり怖気づいていた。
※カリス視点です。
「ダメよお兄様!今ランスを殺したらお兄様が捕まってしまうわ。それよりアリアをお願い!ここは私に任せて」
「……カロン……」
俺の背後からカロンの声が聞こえた。
カロンはミナトを走らせ、今やっとレオンハルト邸に到着したところらしい。
……そうだ。俺の目的はアリアの救出だ。俺は剣を鞘に戻して短く息を吐く。
ランスをチラッと見ると、腰を抜かして呆然としていた。
「…………」
は……俺はこんな腑抜けを殺そうとしていたのか。こいつなど、殺す価値もない。
ランスにはもうあの頃の輝きはなかった。一体何がこいつをこんなに堕としたのか。
俺はランスを無視してアリアの元に駆け寄る。
「……アリア……怖かっただろう」
俺は眠っているアリアに話しかける。優しく、包み込むように。先程の雨で濡れたのか、銀白色の髪が白い首筋に張り付いている。
「もう大丈夫だよ……アリア……」
そう言ってアリアの頬を触ると、青白かった頬がかすかに血色を取り戻した気がした。
(聞こえているのか?……俺が助けに来たのがわかったのか?……)
どちらにせよ、もう決して離しはしない。
アリアを抱きしめ、その頬にそっと口付けて、今にも溢れ出そうな感情をグッと飲み込んだ。
(アリア……本当に無事でよかった)
抱き上げると、いつもよりも軽く感じた。体温もずっと低い……
「……ックソッ……アリア……」
俺は従者にありったけの毛布を持って来させてアリアを包んだ。
「しばらく我慢してね……」
冷たいおでこにキスを落とした。
その冷たさに、俺の手は驚くほど震えていた。
ようやくアリアを救出しました。ランスは殺されるかと思ってたけど殺されなくてよかったね。
カリス様のアリアへの優しい言葉に涙。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




