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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第十五章 アリアの救出

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ランスの後悔

カリスは着実にランスを殺そうとしていた。赤い悪魔を怒らせた恐怖を味わわせるために……


※ランス視点です。

 その姿、まさに氷の侯爵。俺の中で、晩餐会の夜が走馬灯のように押し寄せてきた。


 あの時も、カリスは同じ目をしていた。その殺気、その視線だけで殺されそうな……


【これが氷の侯爵たる所以か……噂は本当だったのだ!なんと恐ろしい。目が合っただけで殺されそうだ!】


 あの時はよく逃げおおせたものだ。だが今は、足がすくんで動かない。


 目が合っただけで殺されそうに熱いのに、熱がなかった。 

 あまりに静かで、その殺気だけで殺されそうだ。


 その目はただーー”結論だけ”を見据えていた。


(……ああ、俺は馬鹿だ)


 子供の頃から何度も張り合ってきた。

 腕力でも、剣でも、勉学でも、女でも負けた。


 悔しかった。

 羨ましかった。


 何においても、カリスには勝てなかった……


 いつもカリスは勝つのが当然だと言わんばかりで。焦りも動揺もなく、ただ前を見る人間の目をしていた。

 だが今のカリスの目は違う。 


 “すでに俺を殺す未来まで見えている目”だった。


(勝てるわけがない、こんな化け物に……)


「ランス」


 名前を呼ばれただけで、背筋が跳ね上がる。返事ができない。喉がひきつって声が出ない。


「お前は……俺の大切なものを汚そうとした」


 淡々とした言葉。

 だがその裏にあるものは、底なしの奈落だった。


「待て、待ってくれ!カリス……俺はリディアに(そそのか)されただけなんだ!あの子がこうすればいいって言ったから……」 


 張り付いた喉から、やっと声が出た。そうだ、俺はアリアを救うために…… 


「……リディア?」


 カリスがわずかに目を細める。


「そ、そうだ。リディアだ……あの子は言ったんだ!アリアはお前という悪魔から解放されるんだ……赤い悪魔から!!俺はアリアを悪魔から救ってやったんだ!」


「……アリアを救った、だと?」


 カリスの声は低く、乾いている。俺の弁明を聞いてもなおどこまでも冷静だった。 

 

 やがて奴は静かに息を吐く。


「お前は……自分がしたことが、まだわかっていないのか」


 部屋の空気が変わった。 


 ゴクリ、と俺が生唾を呑む音だけが部屋に響いた。


 俺は……


 ああ、俺は……本当に愚かだった。カリスからアリアを救う??


 そんな事を一瞬でも思ったばかりに……願ったばかりに……!


 カリスは一歩、こちらへ足を踏み出す。

 その足音が、雷鳴よりも恐ろしく響いた。


(来るな、来るな……来るな!!)


「ランス……お前には……俺が味わった恐怖の一片でも、わからせてやらねばならない」


 カリスが静かに剣を抜くのがわかった。ガタガタと体が震える。動けない。


【俺が味わった恐怖の一片でも、わからせてやらねばならない】


 ああ……ああ……充分だよカリス!!もう充分味わった!!お前が味わった恐怖を!お前の底知れぬ怒りを!!赤い悪魔の恐怖を!!


「ランス。安心しろ……せめてもの情けだ。楽に殺してやる」


(俺は……死ぬ。カリスに……殺されるのだ)


 俺は後悔した。一度でもカリスに勝とうなどと思ってしまったことを。


 そして何より……


 カリスの大切なものを、アリアを奪おうとしたことをーー

「勝てるわけがない、こんな化け物に」この一言はランスは完全に負けを認めた瞬間です。でもどうして、敵のはずなのに哀れなんでしょうね?


※なかなか手を下さないカリス様に今気付きました。汗


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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