壊れた人形のように
ついにリディアを屋敷に招き入れたアリア。
リディアの話とは果たして……
※アリア視点です。
応接室には、白百合を模した香炉の煙が静かに漂っていた。
深紅のカーペットに陽が差し込み、窓辺のレースが風にゆらめく。
「お久しぶりね、アリア。この部屋、ずいぶん趣味がいいのねぇ」
リディア様はひとしきり部屋を見渡して感嘆のため息を漏らした。
「あ、ありがとうございます。カリス様が私の好きな白を基調にしてくださったの。それで……素敵にしてくださったんです」
カリス様のお名前を出したらリディア様は怒るかしら?怒らないよね。私の気持ちはすでに伝えているし……
「ふーん……」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
「……とても素敵ね。まるであなたの透き通るような瞳みたいで。清らかで、眩しいわ」
リディア様はそう微笑みを浮かべ、椅子に腰を下ろした。
(なんだろう、なんか……リディア様の微笑みに違和感を感じる。前まであんなに感情豊かだったのに……今はまるで)
壊れた人形みたい……
リディア様のその笑みは柔らかいのに、目だけが異様にギラギラしていて……
……怖い。やはりお迎えするべきではなかったの?
「アリア、私あなたにずっと謝ろうと思っていたの。舞踏会の時も、その後二人で会った時も。私……あなたにひどいことを言ってしまったわ」
「え……」
「謝罪をさせてちょうだい。あの時は本当にごめんなさい」
【あなたは見た目も儚いし、大人しい性格だから、女を虐げて悦に浸りたいサディストな男達の注目の的だった】
【どうせカリス様も、その虚弱で薄幸そうな雰囲気で虜にしたのでしょう?】
「さまざまな嘲りを駆使して、あなたを罵ったわ」
リディア様……!
「……そんな。もう謝罪はお受けしています。……あの時は私も未熟でした。自分のことで精一杯だったから……」
リディア様はわずかに目を伏せ、唇の端に小さく笑みを浮かべた。
このお話とは関係ないですが、性善説って信じますか?私は信じたいと思うけど、なかなかうまくいかないと思いますね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




