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赤い侯爵と白い花嫁  作者: 杉野みそら
第十三章 不穏な影

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哀れな二人

リディアはあと一押しだと思った。目の前で男の理性が崩れ落ち、自分と同じ位置まで落ちてくるのを蛇のように待ち構えていた。



 リディアの言葉にランスの喉が思わずゴクリと鳴る。仄暗い思いが鎌首をもたげ、アリアの白い肌が脳裏を過ぎる……


(まさか……アリアに手を出していない?……あんなに独占欲をむき出しにしていて、俺を殺さんばかりだったのに……)


 *


 冷たく、誇り高く、血の一滴までも侯爵らしい男。カリス・ヴァレンティ。

 周囲の誰しもが「理想」と呼ぶ男が……たった一人の少女に……手も出せていないだと??


 自分でも知らぬうちに口角が嫌な感じに吊り上がっていく。


 いつだってカリスは、欲しいものを当然のように手に入れてきた。まるでそれが当然だと言わんばかりに。

 両親が亡くなった後もその「当然だ」という態度は変わらなかった。

 冷たい。愛されて育ったくせにあいつはどこまでも冷たかった。寂しい、悲しいなどという気持ちは表にはおくびにも出さなかった。どこまでも高潔で誇り高く、血のように赤い瞳は揺るがずに。


 それでも触れないものがあったとは……


【カリス様はまるでアリアを宝物のように扱って、大切にしすぎたのよね!】


 そうか。カリス・ヴァレンティ!お前にも暴けない神域があったのか!!あの誇り高いお前がな!


【そんな……アリア嬢の純粋な気持ちを騙すようなことは……】


 ランスの中で、先程までの理性がぐにゃりと歪んでいった。


 アリア。可憐で透き通るような……あの、誰よりも穢れのない少女にまだカリスは触れていない。


 アリアを汚したくないという思いと、あの白い肌に触れてみたいという気持ちでいっぱいになる時がある。


 俺が、あの子をこの手で……


「……はは、これは愉快……」


 その時の俺は多分もう狂っていたのだと思うーー


 どれだけの自制をしようとも、引き返せないほどに。


 リディアが扇子の内側で笑みをこぼしたのが分かった。

ランスは劣等感拗らせすぎて気持ち悪いよ!!


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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