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天の衣に竜の煌めき  作者: 陽向未来
第弐章 おぞましき者たち
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第陸話 再戦

「俺はもう少し休憩してから帰るよ。伊勢さんは、先に帰宅してね」

 俺はそう言ったのだが、

「いいえ。私もお付き合いします。お話もお聞きしたいですしね」

 そう答え、目の前の椅子に座った。


「じゃ、そうしようか。その前に佐藤の方はどうなった?」

「未来さんが、スッパリと断っていました。佐藤さん、涙ぐんでいましたよ。でも、あれで諦めがつくと思います」


「そっか、俺は経験ないけどフルのも辛いんだろうね」

「そうですね。相手のことを考えてしまうと同情してしまいますしね」


『ん? 伊勢さん、経験ありって答えだな。そっか、煩わしいから地味子となり目立たないようにしてきたと言っていたから経験あるんだ。素顔はあんなに美人だもんな』

 そう思い至ったが口にはしなかった。

「佐藤さんとの話のあと、私と二人になったとき未来さんが言っていました。”私のことを好きになってくれた人にね。私がしてあげられることは心を鬼にして未練がないように思いっ切りフッてあげることくらい。でないと未練が残って次の人を好きになれないでしょ”って」


「……そうか、それは辛いね。彼女がしっかりしているのは分かっていたけど、そりゃモテる訳だ」

「そうですね」

 そう言いながら、伊勢さんは俺の顔を様子見している。


「ん? 顔に何かついていた?」

「いえ、未来さんに惹かれているのかなっと思っただけです」


「え? いや、人として好意はあるけど異性としては全然ないよ」

「本当ですか?」

 (いぶか)し気に聞いてくる。


「伊勢さんには話ちゃうけど、親友の徹が椿さんのことが好きなんだよ。俺が好きになったら友情壊れるって」

「そうなんですか……分かってましたけど」


「やっぱり? これって椿さん本人も感じてると俺は思っているんだけど、そう思う?」

「私が感じているくらいですから、あの未来さんが何も知らないってことはないと思います」


「そうだよねー、徹は本当にいい奴だからさ、何とか橋渡ししてあげたいな。そうだ! 今度、ダブルデートで誘えないかな?」

「……検討しますが、話題が完全に逸れていますよね」

 伊勢さんの目が、キッとしている。


「ごめん。じゃ、こちらの報告をするよ」

「はい」


「伊勢さんが視た通り白い女狐だった。嘘つきなのが好ましくって居心地が良いんだと言っていた。私と同じことを考えて行動してくれるからエレルギー補給もできると」


「やはり畜生地獄に堕ちた人ですね」

「そうなんだ」


「はい、噓で人を混乱させ、人生を狂わせたため地獄に堕ち、その考えに近い動物の姿になるのです。ネチネチと執念深い人は蛇の姿になります」

「なるほど、それなら間違いなく畜生地獄霊だ」


「大分、負傷していましたが苦戦したのですね」

「うん。かぎ爪での攻撃速度が速く、長刀では捌ききれなくなったところで太ももを嚙まれ足を止められた」


「よく助かりましたね」

「相手が、遊び始めたんだ。移動速度を活かしてヒット&ウェイでジワジワとね。で、遠距離からカマイタチ攻撃をしてきた」


「狐がですか?」

「うん。意外だったよ。だけど途中で先生の言葉を思い出して目に頼るのではなく気配を感じることで攻撃を凌げるようになった」


「でも熱田さん、足の怪我を負っていたから攻撃できないですよね」

「それがね。弓が欲しい! って想っていたら、天翔を創ってくれた虹色の竜の声がして、”弓が欲しいと強く想え!”って言うからイメージしてみたら天翔が弓に変化したんだ。矢も想いの力で創って一撃を与えたら逃げていった」


「そんなことが! 武器が変化するなんて凄いですね」

「ホント助かったよ。白女狐も、それに驚いて動きが止まって避けるのが遅くなったから、矢を当てることができた」


「それで、雀咲(すずさき)さんは狐が離れて冷静に戻って帰っていったのですね」

「それが不思議なんだ」


「何が不思議なんですか?」

「椿さんのときは、椿さんにとっては数秒の出来事で俺が九字を唱えたことしか知らなかったのに、雀咲さんは全部視えていたんだ」


「え?」

「伊勢さんも意外なんだね。何で彼女は視えていたんだろう」


「それは不思議ですね……一旦おいておいて、それでどうなったのですか?」

「怖くなって顔が真っ青だったよ。だから早く帰って、今までのことを反省して嘘をつくのよやめなよって伝えたら、素直に帰っていった」


「うーーーん」

 伊勢さんは、迷っている感じだった。


「どうしたの?」

「いえ、今はショックを受けて冷静になっているようですが簡単に嘘つきを直せるでしょうか? 今までの蓄積で、なかなか素直になれないのではと思いました」


「確かに自分が直そうと思っても、今までの被害者からの目は変わらないもんな」

「その狐、一時的に逃げただけなので、また雀咲さんに憑りつこうとすると思います」


「あのまま帰してはいけなかったのか……考えが及ばなかった」

「いえ、今日すぐに帰らせたのは良かったと思います。でも、近いうちにまた熱田さんを狙ってくるでしょう」


「それなら大丈夫だ。もう奴の攻撃は当たらない。心眼で対応できる」

「今度は、本気で殺しにきますよ」


「う~~~む」

「次は、私も一緒に戦います」


「え? でも」

「でもじゃありません! 私はパートナーです!!」


「は、はい……では、お願いします」

 気圧されてしまった。

「素直が一番ですよ」

 伊勢さんの笑顔が怖かった。


「じゃ、帰ろうっか。伊勢さんの治癒のお陰でもう大丈夫だ、ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」


 そうして駅まで一緒に帰り、改札口で別れた。



 その夜、何故か高天ヶ原に呼ばれなかった。

 何もない朝は不思議だった。

 朝練後に教室に向かうと、俺の2年(ひのき)組の前に、雀咲さんが待っていた。


『む! 狐が戻っている』

 早々に雀咲さんに再度、憑りついたようだ。

『反省できなかったのか? 慣性の法則ってあるから、心の方向もそう簡単には変えられないのか……』


「まーさーきく~~~ん。今日も~ほ・う・か・ご・に、いつもの場所で私、待ってるね」

 笑顔でそう俺に言うと、楽しそうに桜組の方に帰っていった。


「熱田~! モテるな。ひゅーひゅーーー」

 クラスの中から冷やかし声が飛んできた。


『こういうのは否定すると却って面倒になるよな』

「そうだな。今までモテたことがなかったから光栄だよ」

 とだけ答え席についた。


 クラスの中からは、

『え?』

 という声が様々から聞こえた。


 徹がやってきて、こっそり耳打ちしてくれた。

正義(まさき)な、前にも話したのに自覚はないようだけど意外にモテるんだぞ。なのにあんなこと言ったら嫉妬されるぜ」

「えぇぇぇ?」

 そう口からでたが、急いで手で口を封じた。


***


 そして、放課後。

 伊勢さんにもメッセージアプリで伝え、空き教室のカーテンなどで姿を隠してもらった。

 そして、雀咲さんが来た。


「まさきくん! お待たせ。ちゃんと来てくれて嬉しいなー」

 白々しい、もう目が違う。昨日と違って雀咲さんの意識が薄いのは朝から分かっていた。

 白女狐に完全に操られているようだった。


「白女狐さん、白々しいからやめなよ。今すぐ、雀咲さんから離れろ! 二度と雀咲さんがに憑りつくな!!」


「あんたにそんな事を指示される覚えはないわよ。昨日は油断したけど、今日こそ殺してあげるわ!」

 その声は雀咲さんのものではなく、白女狐の声だった。

『ここまで同調しているのか……』

「では、昨日と続きをしようか」


「怪我人だからって手加減しないわよ」

「いいぜ!」


 俺は精神統一後、心の中で『高天ヶ原の神々よ。ご加護を!』と念じ、

(りん)(ぴょう)(とう)(じゃ)(かい)(じん)(れつ)(ぜん)(ぎょう)!」

 気をのせて九字(くじ)と発っし、最後に両手で柏を打った。

 周りの空気の流れが止まり三次元と四次元の狭間に移行する。


 すると、今回も雀咲さんの後頭部から、あの白女狐が現れた。

「凄いわね。今回も強制的に、この子から引きずり出されたわ」


「お褒めに預かり光栄だ」

「今日は殺す!」

 すると、もう一匹普通の色の狐が現れた。


「え?」

「ふふふ。この子に憑りついている常連は私だけど、たまに別のが憑りついていたのよ。だから今回は一緒に戦うことにしたの! どう弐対壱よ」

 白女狐と、茶狐が勝ち誇ったように笑いだした。

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