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天の衣に竜の煌めき  作者: 陽向未来
第弐章 おぞましき者たち
19/31

第参話 うわさ

 帰宅した後、伊勢さんにメッセージを送った。

―自宅着! 今日は、ありがとう。とても楽しかった―

 すぐに既読になり返事がきた。

―こちらこそ、楽しかったです。ありがとうございました―


 この後も少しメッセージアプリで会話した。

 俺たちの関係というのは微妙なのだが、一応付き合いだしたということで一致した。

 だが、学校では目立たない地味子ちゃんを貫きたいらしくオープンにはしたくないとの希望だったのでOKした。

 椿さんにも素顔を、まだ見せていないのだそうだ。

『う~~~ん。本当に目立ちたくないんだな』

 俺は、そう納得した。


***


 今日も就寝すると高天ヶ原に来ていた。

 千葉先生が、楽しそうにしている。

「愛弟子よ。上出来だったな」

「えーーー? まさか、一部始終見ていたんですか?」

 冷汗がでた。これは恥ずかし過ぎる。


「そんな野暮なことはせん。集合の時や、たまーに仲良くしているかチラっと見た程度だ」

「ホントですかぁ?」

 俺は思いっ切り疑っていた。


「師を信頼せんでどうするのだ? 本当だ刀に誓おう」

「刀にですか? う~ん。剣豪が誓うのですから信頼することにします」


「なんだ? その”信頼することにします”とは失礼だぞ」

 言葉では文句を言っているが顔は笑っていた。

「なんとなく釈然としないだけです。でも刀に誓うとおっしゃったので信じることにしたんです」

 そういって、プイっとしてみせた。


「だが互いの信頼関係を築くのはとても有効だ。今後のことを考えてもな」

「打算で動いただけじゃないですけどね」


「わかっておる。お主らは過去もずっと一緒にいることが多かったからな。心配しておらん」

「え? 戦国時代以外でもですか?」


「うむ。詳しくは教えてやらん」

「けちーーー」


 そう言いつつ、俺は真顔になった。

「先生、真剣での修行を開始して頂きましたが、先生があんなに手加減してくれているのに、俺は全然でした。本当に地獄霊と戦えるのでしょうか?」

「弱気になっておるのか? そのために修行をしているのではないのか?」


「そうですが今朝、体中の赤い線を見たら不安になりました」

「謙虚なのは良いことだ。もう俺は充分に強いと思ったら転落が始まる。だから、そういう向上心は大切にするのだぞ」

 とても父性を感じる温かな言葉だった。


「ありがとうございます」

「地獄霊と戦うのは刀の腕だけではダメなのだ。ずっと話をしてきたが、心が弱いと付け込まれる。だから精神修行から始めたのだ」


「はい」

 そんな俺の様子を見て、先生は俺の肩をポンポンと叩きなから頼もしいお言葉をかけてくれた。

「大丈夫だ。俺が鍛えてきたのだ。師を信頼しろ」


「嬉しいです。先生についていきます!」

「うむ、良い返事だ。では始めるとしようか」

 こうして今日も、体中に赤い線が入ることになったが不思議と不安は消えていた。


***


 翌日、登校後にいつものように朝練をし教室に向かう。

 席に向かう間に、椿さんと伊勢さんと顔を合わせたので、「おはよう!」と挨拶した。


 席につくと徹が俺のところに来る。

正義(まさき)さ、今後試合には出ないと宣言したのに朝練は続けるんだな」

 そう、俺は辞退したのだ。あの北辰一刀流の千葉先生直々の修行をしている俺が、一般の試合に出るのは卑怯な気がしたからだ。

 青木部長から、しつこく理由を聞かれたが、「結果のためでなく自己鍛錬のために、今後は剣道を続けたい」と言い張った。

「部長にも言ったけど、今後も自己鍛錬のために朝練は続けるさ」


「この数ヶ月、少し変わったよな。剣道でも腕が上がっているのが俺でも肌でわかる。なのに試合には出ない。なんなんだ?」

「色々とね。考えがあるの」


「そのうち教えろよ」

「おうよ」

 ここで引いてくれるとことが親友だなっと思う。


「でだ、この前の土曜日に可愛い子ちゃんと並んでデートしていたという噂があるのだが、真偽のほどは?」

「え?」

 意表を突かれたため思わず声がでた。


「ってことは本当なんだな。相手は誰だ? 目撃者によると見たことのない子だったそうだ。この学校の子じゃないらしい」

『どうする? 伊勢さんは秘密にしたいと希望していたから何とか誤魔化さなくては……しかし目撃されていたのか! まぁ、相手が伊勢さんだと絶対に分からないだろうから、そこは安心だ』

「父方の東京に住んでいる従妹が、名古屋に来てたんで観光案内したんだよ」


「ほーーー、俺にそんな話が通よすると?」

『流石、小学校からの付き合いだ。こんな話したことないもんな』

「だから父方っていっただろ? 母方の親戚はみんな名古屋に住んでるが父方は日本中に分散してるんだよ。俺も幼いころにあったことがあるらしいが記憶にないくらいだ」

『我ながら、しれっと嘘が付けるもんだ』と感心した。


「えらく美人だったという話だぞ?」

「そうなんだよ! 俺もビックリした。従妹であんな可愛い子がいるなんてなー」


「従妹は結婚できるらしいぞ?」

「え? そんな気はないぞ。血の繋がりで安心感があったがな」


「へぇぇぇ? まぁ、いいや」

 そういって席に戻っていった。



 昼休憩で昼食を終えると、女子たちが俺の元に来て徹と同じことを聞いてきた。

「いや。だから、ずっと会ってなかった従妹なんだってば」

 何度も徹に説明したことを繰り返した。

『意外に、俺って注目を浴びてるんだな……今まで浮いた話がなかったから好奇心かも?』

 なんて思っていたら、意外なことが起こった。

 それは、翌日のことだ。


 桜組の女子が、「実は私なんだ」と言っているというのだ。

 瞬く間に、その話は広まった。

 その子の名を聞くと、『あー、確かに可愛い子だけど、何故に?』と疑問が湧いた。

 相手が利することなどないはずだ。

 大体、出掛けた相手を俺自身は知っているのだから、嘘と解る話だ。

『う~~~ん。謎だ』


 これまた昼休憩に女子たちに問い詰められた。

「いや、違うってば、従妹だって昨日話したじゃん」

「でも、桜組の雀咲(すずさき)さんが、そう話してるんだよ? 熱田くんって女に言わせておいて、自分は嘘つくの?」

 凄い剣幕で睨んでくる。

『身に覚えがないんだけどなー』


 桜組の雀咲(すずさき)朱里(あかり)は、一年のときに同じクラスだった。

 確かに可愛かったし、男子にも人気はあった。

 だが、俺にはまったく身に覚えがない。


 そんなとき話題の人が、俺のクラスまでやってきた。

「正義くーん。ごめんね。バラしちゃった!」

『へぇぇぇ?』


 俺は驚いて雀咲さんを見た。

『ん? なんか変だ。人相変わってないか? あんな吊り目だったっけ?』

 だが、クラスメイトは何も感じていない様子だった。

「熱田くん。彼女来たわよ、行ってあげなよ」

 背中を押されて、そのまま廊下まで出た。


 熱い目で俺を見ている雀咲さん。

「まーさーきくん! ごめんね。黙っていられなくなったの」

 手を合わせて、ゴメン! ってやっている。

「雀咲さん。ちょっと移動しよう」


 そう話すを、俺は三階の一番奥の空き教室まで移動した。

 階段を上がるところまで、何人かついてきたが、

「プライベートなことだから、付いてこないでね?」

 そう言いつつ目で圧力を掛けたら、退散していった。



 空き教室には、俺と雀咲さんと二人だけ。

「雀咲さん。どういうことか説明してもらえるかな?」


 なんだろう、この違和感。

 だが雀咲さんは、こういうのだ。

「熱田くんが女の子とデートしたって話を聞いたよ。しかも、この学校でないということだった。だから名乗り出てあげたのよ」


「どうして? 雀咲さんに何の得がある? 俺には嘘だってバレバレじゃないか。そんな見え見えの嘘をついてどうなる?」

「女心の分からない人なんだぁ。見た目は抽象的にしか伝わってないから、この学校でないとは言い切れないじゃない? だから貴方以外には分からないよね」


「そうだけどさ。何故、私がって名乗り出てどういう気なの?」

「そんなこと言わないと分からないの?」

 そういうと距離を詰めてきたので、とっさに距離を取る。


「雀咲さん。人相変わった? なんか俺の知っている雀咲さんにしては目が細いし鋭いんだけど、何かあった?」

「何もないわよ。失礼ねー。相手は従妹さんなんでしょ? じゃぁ、私が彼女になってもいいってことだよね?」


「へ?」

「二年になって熱田くん文系クラスにいっちゃうし、私は理系だったから今後クラスが一緒になることってないじゃない?」


「そりゃそうだね」

「だ・か・ら、私を彼女にして!」


「え?」

「私、ずっと好きだったの……」

 雀咲さんが、もじもじし始める。


 しかし、何とも言えない違和感をぬぐい切れない。

「いや。雀咲さん、確か彼氏いたんじゃなかった?」


「別れたわよ。告白されたからOKして付き合ってみたけどつまらない人だったの。だから思ったの! 私には熱田くんしかいないって!!」

「なんか変だよ? 雀咲さん、大丈夫?」


「全然、普通よ! 熱田くんこそ、大丈夫なの? 私の告白……そんなに、どうでも良いの?」

「ちょと冷静になろう! ね? また放課後に、この教室で会おうよ」


「それならいいわ! じゃあ放課後、楽しみにしてる」

 雀咲さんは、軽い足取りで教室から出ていった。

 

 教室を去る瞬間、白い尻尾が視えた気がした。

『あっ! 幻想か? いや、雀咲さん変だったよな……まさか!?』

 あの吊り目に、白い尻尾。

 得体の知れない者の気配を感じた。

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