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111話

 さて、お松さんが同行するのは良い。ここで会ったのも何かの縁、悪い幽霊じゃないし亡くなった経緯も非常に同情するものがある。

 ただアンデットを相手にする際、破邪の経文で成仏してしまわないかが気がかりだ。収納できたりしないかな? 一応幽霊だから生きてるって訳でもなさそうだし。

 お松さんを見ながらそんなことを考えていたせいか、収納が発動しお松さんの姿がかき消える。


「あ、収納できた」


 これで戦闘能力のないお松さんでも戦闘中は安全だな。巻き込んで成仏させる心配もない。

 いや、成仏して良いのか? でも未練を残したまま無理矢理ってのも可哀想だ。しかしこれは追憶の広間だとどうなるのだろう。ねこさん曰く、テイムしている相手なら連れて行けるはずだが、幽霊はどうなるのか……ちょっと試してみよう。


 追憶の広間にやってくると、ねこさんたちが集まってきて声をかけてくる。


「んにゃ、人間さんですにゃ。お城に行かなかったんですかにゃ?」


「怖くて行けなかったわん?」


「いや、頑張って行ったんですよ。それで少し試したいことができてまた来たんです」


「試したいこと?」


 ソファーに移動してテーブルの上にお松さんを取り出してみる。すると頭を抱えてしゃがみこみ、プルプルと震えているお松さんが現れた。

 お、出せた。これはどういう扱いになるんだろう?


「人形ですにゃ」


「動いてるわん」


「凄くプルプルしてます」


「震えているわねぇ」


「試したいことというのはこの人形のことだったんです」


 お城に入ってから追憶の広間にやってくるまでのことを説明し、ねこさんにどういう判定なのかを尋ねてみた。


「多分ですけどアイテム判定ですにゃ。だからここに来られたんですにゃ」


 ふむ、お松さんはアイテム判定になるのか。やはり人形に乗り移っているからかな? しかしこれで緊急時は収納なり、追憶の広間なりに避難してもらうことができるな。

 もっとも、お松さんの旦那さんを探す以上人のいるところではお松さんを外に出しておかないといけないか。あっ、お松さんのいう旦那様が人間なのか幽霊なのか、後できちんと確認しておかないとだな。


「それより人間さん、人形が凄く震えているけど何かしたんですわん?」


「いえ、特には」


「お話を聞いた限りでは不可抗力でいきなり収納してしまったのでは? それで驚いてしまったとか」


 そういえばそうだった。ロバさんの言葉にハッとする。まだお松さんには収納のことは詳しく話していなかった。謝らなくては。


「お松さん、いきなりすみませんでした」


「な、何もない。いや、無いのにある? 全てが帰る場所……無限の……」


 お松さんは一体収納の中で何を見たのだろう? これまで意識のある存在が収納に入ることはなかったので、非常に気になるがそんなことよりお松さんの正気が失われている。何とかしなくてはいけない。


「あらあら、これはいけませんね。ちょっと失礼」


 そう言うとチャボさんはお松さんを抱き抱えて食堂に向かっていく。ついて行こうとすると、決して覗いてなりませんよ? と言われて広間で待つように言われた。大丈夫なんだろうか?


「チャボねぇに任せて大丈夫ですにゃ」


 ねこさんの言葉通り、しばらくするとチャボさんと楽しげに話すお松さんが食堂から出てきた。


「お松さん、無事だったんですね。わざとで無いとはいえ、すみませんでした」


「あ、お兄さん。どうしたんですか? 急に謝って」


「あれ、覚えてないんですか?」


 頭の上に疑問符を浮かべているような顔をして、お松さんが首を傾げる。どうやら先ほどまでのことは覚えていないようだ。

 ちらっとチャボさんを見るが、ニコニコと微笑んでいるだけで言葉は返ってこない。覗いたらダメだと言うくらいだし、教えてはくれないか。


「いえ、覚えていないならそれが良いんだと思います。とりあえず、申し訳なかったです」


「変なお兄さん」


 再び収納に入れたらどうなるのかとか、色々と気になることはあるが、その後はお松さんの旦那さん探しの話題で、女性陣が大変盛り上がっている。蚊帳の外という訳でもないが、入って行きづらい。

 追憶の広間の説明はチャボさんがしてくれたようで、自分は特にすることがないし、掲示板にお松さんの旦那さん募集の書き込みをしておこう。


 もう結構遅い時間だというのに、夜更かし勢が即座に反応を返してきた。エルフの次は美少女幽霊か、佐藤さんに任せればあらゆる属性の美少女を発見してくれるかもと書かれる。

 自分が探しているのはモンスターなんだけど……画像うぷという書き込みを無視して、まだまだガールズトークを繰り広げるお松さんを残し、追憶の広間を後にして眠ることにした。

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